
その時、空間が歪んでカルムが現れた。美しい銀色の姿の額には金の天眼が開いていた。夜になって残して来たリネアが心配で様子を窺っていたカルムは変事に気がつき丁度この場へと向っていたのだ。
「カルム!」
リネアはカルムの胸の中に飛び込んだ。
「リネ――」
「カルム!何も言わないで!早く、早く連れて帰って!」
背を向けていたサガンは流石に振り向いた。
そして歪む空間の中に消えて行くリネアを見た・・・彼女が愛する兄は全裸の妹を守るように自分のマントで包んでいた。だから顔は見えなかった・・・ただ艶やかに流れる漆黒の長い髪だけが揺れるのを見た・・・猛牙の真っ青な空の下でも、色鮮やかな植物の中でもくっきりと浮び上がる闇夜よりも黒い髪―――
サガンは思わず手を伸ばし、リネアの名を呼んでしまいそうだった。
お前を愛せないそんな奴と行くな!と叫びたかった・・・しかしそれは愚かな自尊心が邪魔をした。
そして空間が閉じたと同時にサガンは言葉にならない声を上げた。
それはまるで獣の咆哮のようだった。
「もう会うこと無いだと?当たり前だ!誰があんな言うことも聞かない!命令ばかりする高慢ちきな女なんか二度と会うもんか!あんな・・・あんな女・・・馬鹿野郎!あいつなんか呼びやがって!あいつのせいでグズグズ悩んでいた癖に!あんな尻軽女なんか――」
サガンは膨れ上がる怒りに全身が熱く燃えるようだった。自分で帰れと言ったのにカルムと去って行くのは許せなかった。
「あんな色が抜けたような男の何処がいいんだ!俺の方がよっぽど―――」
サガンは思わず飛び出た自分の言動に驚き続きの言葉を呑み込んでしまった。
そしてさっきからネストリの事など忘れてリネアの事ばかり考えている事に気が付いた。
そしてふとテーブルの上に無造作に置かれた首飾りが目に入った。
これがどういう意味のものか知らないリネアが気に入っていたものだ。光線の加減で星が浮かび上がる碧い宝石―――まるで自分のもののように文句を言って欲しがった。それが煩いから首に掛けてやると嬉しそうに彼女は微笑んだ・・・象牙色の肌に揺れた碧玉―――
サガンはそれを乱暴に掴むと走り出した。そして走りながら指笛を鳴らす。外に飛び出たサガンが空を見上げるとエンライが大きな羽音をたてて降り立つところだった。それさえ待てずにサガンは地面を強く蹴って跳躍しエンライの背に飛び乗った。
目指すのは雪と氷に閉ざされた白銀の国―――
その頃、リネアとカルムは開路を進んでいた。歩いているというよりも空間に浮かんでいる道を滑っているような感覚だ。周囲は渦巻いて輪郭がぼやけているが目の前には見覚えのある風景が見えていた。直ぐ近くに見えるのに近付けば遠のく感じだ。長距離を瞬時に繋ぐ開路でも多少時間は要する。
それをリネアは永遠のように長く感じていた。
「リネア、大丈夫?」
カルムは口を噤んだままのリネアを窺うようにそっと聞いた。
「・・・どうしてそんな事聞くの?私の心なんて全部視えているでしょう?隠す気力なんて残ってないんだから・・・」
リネアの言う通り彼女の心は手に取るようにカルムには視えていた。
だからこそ大丈夫かと聞いたのだ。多分、リネア本人よりカルムの方が彼女の気持ちが視えている。
それは驚くもので信じ難いものだった。
「・・・もうすぐ着くよ」
カルムはかける言葉に迷いそれだけ告げた。
リネアは、はっとして後ろを振り向いた。振り向いても後ろの空間は既に閉じている。
サガンの後ろ姿はもう見えない・・・
「・・・戻ろうか?」
リネアはカルムの言葉に驚き一瞬瞳を大きく見開いたが首を横に振った。
カルムは複雑な気持ちだ。リネアの危険な自分に対する気持ちが薄れていると感じたがそれがまさかあの猛牙の男に傾いているとは・・・信じられないものだった。しかしそれを証明するかのようにこんなに心を乱している彼女をみるのは初めてで・・・良かったと思う反面、あんな男に?と思った。
それでもつい・・・戻るか?と訊いてしまった。
今のリネアが初めて出会った頃のようだったからかもしれない。
母の愛情が欲しくて堪らないのに我慢をしていたあの悲しい子供時代の彼女のようだ。
リネアは愛情に飢えている。それはイエランもカルムも同じだった。しかしイエランは美羽という存在と出会ってそれを手に入れた。リネアはまた手に入らないものを欲している。
最初はカルム・・・そして今度は猛牙国のサガンだ。
だが今回は―――
開路を渡りきった時だった。無事に天眼の水晶宮の一角に到着したリネアの瞳は何かを決意したかのように強く輝いていた。そして驚く事を口にしたのだ。
「ねえ、カルム。私の為に暖かな国をくれるって言ったわよね?―――私、猛牙国が欲しい。あの国を私に頂戴!」
「リネア!」
「私が全軍を率いるわ!」
「何を馬鹿なこと――」
「狂ってなんかいないわよ。私は正気。逃げ帰るなんて馬鹿なことをしたわ。弱気になってしまって・・・本当に馬鹿だった。奪えばいいのよ・・・サガンが私をいらなくても私は彼が欲しいの!誰にも渡したく無い。私のものにならないのなら国ごと奪って殺してやる!そして胴から離れた彼の首を抱いてやるわ!」
「リネア!猛牙国に攻め入るなんて出来ない。分かるだろう?それは無理だってこと!」
カルムは説得しようとしたがそれが無駄だと感じていた。リネアは昔から一度口にしたことは絶対に曲げようとしなかった。しかもこんな軽はずみな事を絶対に言わない。
「五大国の不可侵条約があるからなんて言わせないわよ!それは黒翔国を攻めた時に崩れているじゃない!文句を言う国があるなら私が全部滅ぼしてやるわ!」
天眼国が本気になればリネアの言う通り五大国でも滅ぼすことは可能だろう。それが可能だから歴代の王達はやらないだけだ。結果が見えるもの程退屈でつまらないものは無い。だから条約という枷は無いに等しいものだと自分達は思っているが、外交上他国には同調してやっているという考えだ。
カルムは大きく溜息をついた。
「イエランの時も覚悟はしたけれど・・・今度こそ猛牙とやらないといけないだろうね・・・」
以前、美羽がサガンに囚われていた時、猛牙国に攻め入る覚悟をした。イエランがカルムの身を挺した制止でも聞かなかったからだ。それは戦にまで発展しなかったものの今回はリネアが初めて口に出して願ったものだ。可愛い妹の願いなら何でも叶えてやりたかった。カルムは自分に向けられる恋情さえもリネアが口に出して本当に願ったのなら禁を犯してでも叶えてやっただろう。
しかしリネアは絶対にそれは願わなかった。だから苦しまないようにと術をかけたのだが・・・
「リネア、君の本当の願いなら私は叶えよう。もう一度聞くよ。本当に猛牙が欲しいんだね?私が君を・・・お前を妹では無く一人の女として愛してやる・・・抱いてやると言っても?」
リネアは驚き息を呑んだ。
カルムは真剣だ。それが証拠に滅多に見せないカルムのもう一つの顔・・・一切の感情を消し去ったような氷の表情でリネアを見下ろして立っている。少し前なら舞い上がって喜んだ言葉なのに今は・・・脳裏に浮ぶのはカルムと似ても似つかない野蛮な上に尊大で怒りっぽいサガンの顔しか浮ばなかった。
それにカルムはそういう振りをしてくれるだけだ。只の男と女のように身体を重ねてもカルムの愛情は妹に対するものから一歩もはみ出さないだろうとリネアは感じた。
(そんなのは違う・・・私は・・・)
氷のような顔をしていたカルムの表情が和らいだ。彼女の心を読んだのだ。
「分かったよ・・・リネア。疲れているだろうから今日はもう休みなさい・・・」
「私は――あっ・・・」
カルムは無理矢理リネアに心眼を使って眠らせた。崩れ落ちる彼女をすくい上げ自分の宮へと取りあえず向った。
リネアが目覚めるとそこは肌寒い部屋だった。
視線だけを巡らせれば壁は重苦しい織物で覆われている。夢では無かった―――
天眼国に帰って来たのだ。
(私の宮じゃないわね・・・カルムの離宮?)
ベッドの上掛けの上に広げられていた兎の毛皮のガウンを羽織ったリネアは窓辺へと向った。
寝室は暖を取る為、窓は一つだけだが近付けば外気の寒さが伝わって来るようだった。極寒の地でも夜着は就寝しやすいように肌触りの良い薄物だ。身分が高ければ部屋は何時も暖かく寝具は軽く暖かな高級品だからだ。それでも猛牙国のような・・・着ているか着ていないか分からない感じの薄物では無い。
何から何まで元通りだ。
「空も鉛色の雪雲・・・当たり前よね・・・」
リネアの瞼には真っ青な空が浮んだが・・・それも束の間・・・小さく嘆息をもらした。
そして窓に背を向けた時、水晶宮にけたたましい警報が鳴り響いた。
「何事なの!」
リネアは急いで窓を開けると身を乗り出して外を窺った。
「ま、まさか!」
リネアは驚きそれ以上言葉が出なかった。水晶宮の上空を旋回しているのはエンライだ!
リネアは鼓動が一気に跳ね上がり全身に血が逆流して目眩がしそうだった。
そして天眼が開き一瞬にして姿を消した。
王城の水晶宮では突然現れた猛牙国の神の遺産エンライに奇襲かと色めきたっていた。
しかもその背に乗っているのは悪名高い暴虐の王子サガンだ。
「美羽を狙って来たのか!」
イエランは朝議の最中その報を聞くなり玉座を蹴り倒すように立ち上がると怒鳴った。しかも額に線が刻まれ薄っすらと天眼が開きかかっている。
「王よ、落ち着かれますよう・・・」
カルムがやんわりと激昂するイエランを嗜めた。そしてそっと耳打ちした。
「そんな怖い顔をしない、しない。みんな怖がっているだろう?目的はミウちゃんじゃないよ・・・たぶん」
イエランが、ギラリとカルムを睨んだ。
「何を知っている?それにこんな近くに現れるまでお前が気付かない訳が無いだろう?何を企んでいるんだ」
「うわ〜そんなこと言う訳?相手は神獣だよ。それこそ雷のように速く飛ぶんだから気が付いた時はもう此処に到着していたよ」
カルムのこの口調からすれば猛牙国の奇襲という訳ではないとイエランは判断した。そして自分に任せてくれと言うカルムに従って玉座に掛けなおした。
「ありがとうございます。では行って参ります」
カルムは軽く頭を垂れて朝議の間から外へと向った。そして上空に向って叫んだ。
「突然の来訪、非礼この上ない!何用です!猛牙の王子よ!」
爆風が降り積ったばかりの雪を舞い上げてエンライは水晶宮の前庭に降り立った。
「お前に言われる筋合いは無い!お前もいきなり来ただろうが!出せよ!」
「出せ?何を?」
尊大な態度のサガンにカルムは冷やかに訊き返した。
その時、リネアが瞬間移動で現れた。
まだ夜着のままで見るからに男物のガウンを纏ったリネアの姿を見たサガンは怒気をあらわにした。
その狂おしいまでの形相にリネアは思わず後ろへ一歩退いたぐらいだ。
サガンは胸に荒れ狂うドス黒い嫉妬を抑え込むように大きく深く息を吸って吐いた。隆起した逞しい胸が大きく上下する。猛牙の国を出た時のままの格好のサガンは剥きだしの褐色の肌を冷気にさらしたままだ。突き刺すような冷たさなど気にならなかった。もう目の前のリネアしか目に入らないのだ。
自分らしくなく女の後を追いかけ今初めて懇願しようとしているだけだったのだが・・・
「―――願いが叶ったのか?」
「えっ?」
「俺は良かったなって祝福は出来ない。今からお前を不幸にするんだからな」
「何を言っているの?」
リネアはサガンの言っている意味が分からなかった。しかし自分の姿を燻る炎を宿した暗い瞳で見ているのに気が付いたリネアは、はっとした。
(まさかカルムとのことを誤解しているの?でもそれって・・・)
「サガン、私は――」
「賭けに勝ったのは俺だったよな?」
リネアの言葉を遮ったサガンは憤りを抑えながらそう言った。そしてリネアの返事も待たずに続けた。
「負けたら何でも言うことを聞くと言った―――お前は俺の側にずっといろ!」
リネアは驚き瞳を見開いた。聞き違いかとさえ思った。
「聞こえなかったのか!リネア!」
苛々とサガンが怒鳴った。
「勝手は許しませんよ。そんなこと出きる訳無いでしょう?リネアは王姉であり私の妹。そして天眼軍の総帥・・・その辺の女とは違うのですよ。いい加減にして頂かないと我らも黙っていません。王は既に天眼で貴方の頭を狙っています・・・彼女の軍将達も同じく・・・」
サガンは鼻で嗤ったがリネアは真っ青になった。イエランの金の天眼が開いているのを感じたからだ。
「駄目!イエラン!駄目よ、カルム!止めて!」
リネアは氷のような顔をしているカルムの腕にすがって訴えたが、サガンが更に激昂した。
「おいっ!そいつから離れろ!」
怒鳴ったサガンが大股で雪煙を上げながらリネアに近付くとカルムから剥ぎ取った。
サガンとカルムの視線が絡み合う。
「リネア・・・この男の首が欲しいと言っただろう。今、叶えてあげるよ」
凍えるような声でカルムが言った。しかしサガンはまた鼻で嗤っただけだった。
「リネア、俺の首が欲しかったのか?そう言えば蛇連鎖が解けたら殺してやるって言っていたよな?お前が俺のものになるならいいぜ。俺の首どころか全部お前のものだ。これもな・・・」
サガンが珍しく微笑んで言うと驚いたままのリネアの首に碧玉の首飾りをかけた。
リネアは震える手でその石に触れた。ネストリの宴の前、着替えに戻ったリネアにタイトが教えてくれた・・・これは王位継承者の証だと言われた。無闇に欲しがってねだる代物では無いものだと指摘されたのだ。もちろんそれをねだる女は今まで居なかった。それくらい意味のあるものでそれを与えられるとしたら継承者を産む女ぐらいだからだろう。
碧い石に星が薄っすらと浮んでいる。天眼の弱い陽の光りではくっきりと浮かびあがらないのだろう。それともリネアの瞳が涙で霞んでいるからかもしれない。
「リネア、俺の側に来い!俺は・・・俺はそう願う!」
とてもお願いしている言い方では無かったがリネアには十分だった。半分こぼれた涙を指で拭ったリネアは何時ものように高慢に微笑んだ。
「お願い出来たじゃない。浮気は許さないわよ!アイダなんか呼んだらその場で首を落としてやるから!」
「アイダ?ああ、居たなそんな女。俺はお前一人で充分だ」
「じゅ、充分って!まだ試してもいないのに良くそんな事言えるわね!」
「試す?馬鹿野郎!そんなことばかりじゃないに決まっているだろうが!お前は違う!そういう意味じゃない!抱くだけの女なんかどうでもいいに決まってるだろう!それにそれだって試さなくても分かる。お前は最高の女だ!」
リネアは不覚にも真っ赤になってしまった。相変わらずのサガンの開けっ広げな性格と物言いにドキドキしてしまう。
「リネア・・・」
リネアはカルムの自分を呼ぶ声に再び緊張が走った。
しかし真っ直ぐに好きだった兄カルムと向き合った・・・今では本当に異性として好きだったのか?
と問われると分からなくなってしまう。サガンと余りにも違う気持ちだからだ。
「カルム、私はこの人の所に行くわ。今まで私を守ってくれてありがとう・・・」
リネアはそれ以上言葉が出なかった。そんな彼女をカルムは優しく見つめた。
「―――言葉にしなくても分かるよ。幸せにね・・・リネア。辛くなったら何時でも戻っておいで・・・何時でも君を見守っているからね」
「ふん!余計なお世話だ!リネアは俺のものだ!俺が今度から守る!」
サガンは怒鳴るようにカルムを睨んで言った。しかしカルムはそれを微笑ましく受け流した。
そして心の中では庇護していたものが旅立つ喜びと悲しみが渦巻きながらエンライに仲良く乗って飛び立つ二人を見送ったのだった。
切り裂かれるような冷気がリネアを襲った。エンライの飛行は天眼の地は不向きだ。
しかし止まれば動けなくなるだろう。兎の毛皮を着ているリネアより剥き出しの肌をさらしているサガンはもっと辛い筈だ。褐色の肌が赤く染まって氷のように冷え切っていた。温めてやりたくても凍え過ぎてどうしようにも無かった。
そしてやっと天眼国を抜け寒気が和らぐとエンライをゆっくりと飛行させ始めた。
「大丈夫?サガン」
「ああ・・」
嘘ばっかりとリネアは思った。サガンの唇は真っ青で奥歯がガチガチと鳴っていた。
リネアはスルリとサガンの首に手を回しその唇に口づけした。生ぬるい舌でサガンの氷のような唇を舐めて重ねた。熱が奪われている口内を舌で優しく舐め上げる。凍ったようなサガンの舌を探り当てると絡めて吸った。リネアは自分で攻めているのに下腹部がじんわりと熱くなり腰をくねらせてしまった。リネアからの熱が伝わり始めるとサガンの舌の動き出し、そして激しくなって来た。舌と舌が音を立てて絡み合い温まった唾液が唇の端から溢れて顎を伝っては冷たく冷える。
「ふっ・・・んくっ・・・んん」
冷たく凍えたサガンの手が暖を求めるようにリネアの肌に触れて来た。ゾクリと背筋に快感が走る。天眼ほどでは無いが温暖とは程遠い場所を飛行中だがサガンはもう国に帰るまで待てる状態じゃ無かった。リネアの背中をエンライに押し付け着ている夜着を引き千切った。手が凍えていて脱がせるより引き裂いた方が速かったのだ。
「乱暴ね」
「煩い!黙れ!」
「っ・・・あっ・・・ん」
サガンから乳房を揉まれてリネアは甘い声を洩らした。そしてザラリとする舌で既に尖り出していた胸の頂きを舐められると震えた。
「ああっ・・・そこ・・・ばかり・・・んっ・・・ああ・・・」
イヤらしく音を立てて胸に吸い付くサガンはもう片方の乳首だけを集中してこね回していた。胸の先に受ける刺激は下腹部に繋がっているような感じだ。ビリビリとした感覚が走り花芯をひくつかせる。
「あっ、やめっ・・・ぁあん・・・」
サガンはリネアの肌に紅い痕を残しながらその下腹部へと下がって行く。そして彼女の両足を抱えて胸に向って折りたたむと、サガンがニヤリと微笑みリネアを見下ろした。
「ちょっ・・・あんっ・・・だめ・・・こんな格好・・・あぁ・・・」
リネアの反応を愉しむようにサガンは彼女を見ながら丸見えになっている花芯を細く尖らせた舌で舐めた。折り込まれた両足がビクビクと震える。
「やっ・・・あっ・・・まって・・・ん」
リネアの蜜が溢れ前の恥毛を濡らし、後ろの蕾まで滴り落ちて来た。それでもサガンはチロチロと敏感な尖りをもどかしく舐める。
「も・・・もういいでしょう・・・は、早く来て・・・あっん」
「まだだ。初めてじゃないにしても俺のは大きいからお前に無理させたくない・・・」
リネアは思わず涙が出そうだった。女の身体のことなどお構い無しに欲望を乱暴に穿っていたサガンの言葉とは思えなかった。愛おしくて胸が高鳴った。だからサガンを誘うように蜜が溢れ出る。
「サガン・・・来て・・・」
ようやくサガンははち切れそうに擡げていた熱い塊をリネアの花芯にあてがった。それでも用心して蜜をそれに絡めるように滑らせた。硬く熱いものが敏感な部分をこするだけでリネアは快感でどうにかなりそうだった。そしてそれはサガンを欲しがってひくつく場所へ、グッと突き入れられた。
「ひっ・・・んっ・・・痛うっ・・・んん」
リネアは引き裂かれそうな痛みに耐え顔を一瞬しかめた。サガンの動きが止まった・・・
「おいっ!まさか・・・お前・・・初めて・・・初めてなのか?」
四肢の強張り方に膣の狭さがそれを語っていた。性交を経験済みの身体では無い・・・
「お前、男は知っているって言ったよな?リネア!」
「・・・嘘に決まっているじゃない。見栄を張っていただけ・・・それにカルムが好きだったのに他の男に身を任せる訳無いでしょう」
リネアは苦悶の表情のまま少し恥ずかしそうに言った。
「はっ、ははは・・・そうか・・・」
サガンは、ぶるっと震えると先だけしか挿し込んでいない状態なのにいきなり爆ぜてしまった。
「きゃっ!何!もしかしてもう終ったの?」
自分の中に熱いものが流れ込むのをリネアは感じた。
「はっ・・・俺としたことが。これくらいで小僧のように歓喜するなんてな・・・それにもう俺とやっている最中に他の男の名なんか呼ばせないからな!」
「どうしたの?ねぇ・・・な、何!あん・・・はぁん」
爆ぜたサガンの塊がリネアの中で再び硬度を増したようだった。ずっしりとした質量と圧迫感が急に広がった。
「さ、さっきよ・・・り・・・大き・・・い・・・あっ・・・」
「くっ・・・そうだな。リネア、力抜け!俺のを食い千切るつもりかっ!」
「ぬ、抜けって・・・言ったって・・・あっ・・・んん」
「ちっ!」
サガンは舌打ちしたが心は浮き立って仕方が無かった。生娘を乱暴に犯すのは何よりも好きだった。
女が泣き叫ぼうが己の猛るものを欲望のままにブチ込むだけだったのだが今はそんな気持ちでは無かった。初めて男を知るリネアが愛おしくて仕方がない。
その彼女に、ぬっと顔を近づけたサガンは口づけした。舌を絡めては口蓋を掻き回し吸い上げる。
その間にも片手はツンと尖っている胸の頂を親指と人さし指で抓んでは強く捏ね回し、そしてもう片方の手は繋がった部分をなぞっては、そのすぐ近くで控えめに膨らんでいる敏感な尖りを弄くった。
「はっ・・・くう・・・っあ・・・んン」
三方を責められたリネアは四肢が蕩けそうだった。悶えながらサガンを見れば凶暴な欲望を湛えた顔は真剣で焼き尽くされるかのようだった。荒れ狂う欲望をリネアの為に辛抱強く抑えているのだ。
リネアは胸が熱くなった。頭の中が沸騰しそうだ。
「サガン・・・もういいわ・・・ありがとう」
「つ・・・そんなに煽るな!」
リネアの中でサガンの塊がドクンと脈打った。サガンがジリジリと捻じ込むように入ってきだした。
ゆっくりと・・・ゆっくりと・・・そして最後は一気に突いた。
「つっ・・・あっ・・・ぁぁ・・・ん・・・」
しばらく二人は初めて繋がった余韻を愉しむかのように動かなかった。そしてリネアを抱くように伏していたサガンが上半身を起こすと彼女の腰に両手を添えた。
「そのまま力を抜いていろ・・・動くぞ」
サガンの腰が蠢き強い抽挿が始まった。肌と肌がぶつかる音の間隔が次第に短くなって行く。
「あああ、あっ・・・あっああ・・・」
激しく揺さぶられるリネアは仰け反って声を上げるどころか息さえも出来なかった。痛みを忘れ甘い疼きが四肢に走る。
「ああっ・・・んん・・・はっ・・・サ、サガン・・・サガン!好き・・・よっ」
サガンの動きが一瞬だけ止まって、更に激しく深く突き出した。粘着音と肌のぶつかる音が大きく激しく響く。
「もっとだ!もっと俺を求めろ!」
「あっ・・・ぁ・・・サ・・ガン・・・あぁあ・・・っ」
喘ぎ声はかすれサガンを求め彼の動きに合わせて腰を揺らす。
「ふっ・・・クッ・・・」
サガンが目を細め快感を噛み殺した声を洩らすとリネアの胸が熱くなった。
「ね・・ぇ・・・感じた・・・の?サ・・ガン?」
サガンは舌打ちして深々と根元まで穿っていたものを更に奥に進めるかのように押し付けた。
そして一気に抜いて力任せに角度を変えて捻じ込む。その快感にリネアは仰け反って震えた。
「生意気な口は閉じろ!俺だけを感じてればいい!」
「あああ・・・くっ・・・あ、あ、あ・・・っ」
激しさを増した律動はエンライの背から落ちてしまうのでは無いかと思ったぐらいだ。
そしてリネアは再び熱く滾るものをサガンから注ぎ込まれた。その時、かすれる声でサガンはリネアに愛を囁いた。リネア自身、快感で朦朧としてはっきりと聞き取れていないがそんな言葉だったと思う。言葉が無くてもリネアには十分だった。サガンは自分によって満たされているのだ。
冷めた目をして乱暴に女達を抱いていた彼ではない。熱い目でリネアを見て触れる唇は言葉よりも雄弁で熱く激しく語ってくれている。
碧玉の首飾りがシャラリと音を立てた。サガンがすくってそれを弄んでいるのだ。目が合うとサガンが自信たっぷりに微笑んで唇を重ねてきた。リネアが舌を差し出しサガンの舌を受け入れた。舌を絡ませお互いを貪りあうような口づけ・・・それをふいに解いたサガンはリネアを覗き込んで言った。
「早く俺の子を産め。俺とお前の子は最強の男になる筈だ」
リネアは彼のその言葉に息を呑んだ。幸せで空を駆けていた心が真っ逆さまに落ちるような気持ちになった。
「―――貴方を越える子供・・・寂しがり屋さん、私が欲しかったのはそういう事?」
サガンは、ぽかんとした顔をした。リネアが悲しそうに言う意味が分からなかったからだ。
「何でそんな顔をするんだ?猛牙の男は好きな女にだけ子を産ませる。欲望だけで種付け回っている訳じゃないんだ!俺の子を産むのが嫌なのかっ!」
子を産めとは猛牙族の男にとって最高の愛情表現らしい。リネアは兄弟から化物と呼ばれたサガンが同等の力を持つ血族を欲しがったのかと誤解してしまったのだった。
リネアは腹を立てるサガンに抱きついた。もうややこしい言葉なんか要らない。
「サガン、私も貴方の子を産みたいわ。だからもっと貴方をちょうだい」
リネアの甘えた声でサガンの楔は再び反り返った。彼女を求めて熱く脈打っている。
「ああ、孕むまで、たっぷりと注ぎ込んでやる」
猛牙国まで最速で飛べば瞬く間につくが二人はゆっくりと飛行させ何度も何度も貪るように絡み合いながら帰った。最速を誇るエンライにとって角度を保ちながら揺れずに飛行するなど迷惑な命令だが誰にも邪魔をされない最高の場所を二人は見付けたようだ。
その後サガンは城に囲っていた女達を全部追い出してしまった。
猛牙国では婚姻という慣習は無いがリネア以外の女は必要ないとサガンは思ったようだった。それは猛牙族にとって珍しいことであり、天眼族のリネアを恐れてだとか噂された。それにそもそも天眼族の女が他の種族と交わることも稀であり何か大きな陰謀があるのでは?とも囁かれていたぐらいだ。
しかし二人と接する者達は口々にそれを否定した。二人共、お互いベタ惚れなのだと―――
城を壊すくらい大喧嘩をしてもその夜から周りが顔を赤らめてしまうぐらいイチャイチャとしているのだ。二人を見かけない時は決まってエンライが一頭いない。
そんな時は探さないのが城での暗黙の掟となっていた。お互い一歩も譲らない性格なのに不思議と上手くやっている。
だからリネアの胸に揺れる碧玉の首飾りが二人の子供に譲られるのもそんなに遠くないだろう。と言うのが今最も新しい噂だ。
リネアは燃え立つような緑の木々を眺めていた。憧れていた生き生きとした生命溢れる緑―――
それを背にした褐色の肌のサガンがやって来た。強い陽の光りに髪が金色に輝いて見える。
惚れ惚れとする体躯に覇気溢れるその姿は何時見ても胸を熱くしてしまう。
「何を、ぼけっと見ている?」
「もちろん貴方を見ているのよ」
「俺?惚れ直したか?」
「イエランも良い体躯だったからどっちが良いのかしら?と思っていたのよ」
「なにぃ―――っ!お前!弟にもちょっかい出していたのかっ!ま、まさか・・・」
リネアはクスリと笑った。
「寝てないわよ。貴方が初めてだって知っているでしょう?何でもそっちの方向に行くのは止めてよね。もちろん貴方の方が素敵よ」
「ふん!当たり前だ!分からないのなら証明するだけだからな!」
「ふふふっ、証明して頂戴」
「ああ、たっぷりとな・・・」
サガンの声はかすれた。何度抱いてもリネアを抱き足りない。時を忘れ抱いてしまうのは何時もの事だった。こんなに自分がたかが女一人にのめり込むとは思わなかった。抱くためだけの女なら幾らでもいた。しかしリネアはそんなつまらない女達とは違っている。女王のようの自分の横に立つ・・・嫌、立たせて良い女だった。自分の弱い所も全てさらけ出しても包み込んでくれる―――
リネアはもうあの怖い夢は見ない。サガンの腕の中でいつも安心して眠るからだ。肩の傷も痛まない。サガンがいつも忘れるくらいに抱いてくれるから・・・天翔る獣を見た時から運命は決まっていたのかもしれない。黄金の獣に捕まったのは果たしてリネアなのかそれともサガンが彼女に捕らわれたのか・・・お互いにそう思っているのかもしれない・・・
―終―
|
あとがき リネア&サガン編ようやく完結致しました。悪役だったサガンの暴虐ぶりをどうまとめようかと悩んで苦労しましたが何とかなりました。そんな彼を振り回してくれたリネアのお蔭です(笑)それにしても二人が喧嘩すると凄まじいだろうなぁ〜と思ってしまいます。でも先に折れて負けるのはサガンかな?リネアには結局、頭が上がらないような気がします。誰もが恐れる男なのに彼が愛する女だけは特別というのは私のツボですからねぇ〜(笑)それとサガンはリネアをベタベタ甘やかしている感じなのに実は自分が甘えている感じでしょうか(笑)今回発覚した彼の一面は寂しがり屋の甘えん坊さんでした。今後の二人の様子は他の外伝にも出ると思いますのでどうぞ暖かく見守ってやって下さい。 |
ネット小説ランキングに参加しています。投票して頂くと励みになります。
(投票はバナーをクリックして下さい)
感想はこちらまで
ゲストブックへ (URLは必須ではありません。お気軽にコメントください)