天眼の王19![]()
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毎日欠かさずイエランの看病をしている美羽だったが看病と言っても何もすることが無かった。
イエランは寝ているだけで目を覚まさないのだ。医師ロエヌは自然治癒で力を回復させているから動物が冬眠したようなもので心配はいらないと言っていたが美羽は心配で堪らなかった。
この数日、目覚め無いから食事もしていないのだ。本当に深く眠っているだけだった。
だから美羽は連日連夜イエランの眠るベッドの近くに腰掛けて目覚めるのを待っている状態だ。
しかし今朝は少し席を外して簡単な湯浴みと着替えをして来たところだった。
寝室に戻るとさっきより部屋の中が明るいことに気が付いた。病人がいるから窓には日よけと防寒の為、木製の内戸をしている。それが一ヶ所少し開いているようだった。明暗の中で目を慣らすように瞬きした美羽は、その朝日の射す中にイエランを見つけた。
彼は椅子に腰掛け窓の外を見ていたが美羽の訪れに気がつき顔をゆっくりと向けた。
「―――美羽」
美羽は自分の名を呼ぶイエランに返事出来なかった。何日も聞いていなかったイエランの美羽≠ニ優しく呼ぶ声を聞いて胸がいっぱいになってしまったのだ。涙が込み上げてくるようだった。
「美羽?どうした?」
イエランは立ち上がろうと腰を浮かしたが悪態をついてまた座った。
「情けない・・・戸を開けてここに座るのが精一杯だとはな。忌々しい限りだ」
「お、起きて大丈夫なのですか?あっ、お食事を!それともお水の方が」
あたふたと心配する美羽にイエランは微笑みかけた。それを見た美羽の鼓動が一気に跳ね上がった。
「急がなくていい・・・水を飲ませてくれ。喉が渇いてカラカラだ」
「あ、は、はい」
水差しから水を注いだ器をイエランに運んだがそれを受け取ってくれなかった。
「美羽、飲ませてくれと言っただろう?手がまだ思うように動かない」
「あっ、ごめんなさい」
美羽は器をイエランの唇に寄せようとしたが違うと言われてしまった。
「飲み難いから口移しがいい」
「く、口移し!」
美羽は頬を赤く染めた。
イエランは美羽の反応を楽しんでいる感じだ。きっと飲めないと言うのは嘘だろう。
(でも・・・本当に飲めないのかも・・・)
そう思うとイエランの命令に逆らうことは出来なかった。
自分で水を含み椅子に座ったままのイエランに恐る恐る顔を近付けさせ、そっと唇を重ねた。
顔だけが寄せられた不安定な体勢は触れ合うのは唇だけだった。しかし美羽から触れた唇はあっという間に主導権が逆転してしまった。美羽が水を移す間も無くイエランの舌が入ってきたのだ。美羽の中でイエランは自分の舌の渇きを癒すかのように蠢き始めると水が少し唇からこぼれおちてしまった。
「んんん・・・まっ・・・うっうう・・・ん」
イエランの思うように動かないと言った手が美羽の後ろ頭を支えて深く口づけを交わすようにと、ぐっと押して来る。冷たかった水が口の中で温まって自分で飲み込みそうだった。それでも量が少なくなってくるのはこぼれるのが半分とイエランが絡め取って行くのが半分だろう。そして水が完全に無くなった時、イエランの舌の柔らかさと温かさを感じた。だからじんわりとお腹の下が熱くなって来た。
そして今度は水では無く唾液で口がいっぱいになってくる。
「あふっ・・・ん・・・うんん・・・ん」
息継ぎもする間も無く舌で責め立てられて飲み込みきれない唾液が唇の端からこぼれているのを感じる。イエランは無くなった水を求めるのと同じように美羽の舌を吸い上げる。
「うっっ・・・んん・・・んっ」
いつもの事だが美羽はもう何が何だか分からなくなってしまった。
それにいつの間にか後ろ頭を支えていたイエランの手は背中の服の止め具を外し始めていた。段々と背中に早朝のヒンヤリとした空気を感じた。脱がされているのだ。唇は塞がれ抗議が出来ない。
背中から開いた服は、するりと美羽から抜け落ち両腕からも抜き取られてしまった。だから胸と下腹部に付けた下着だけだ。
天眼国の女性用の下着は透けるように薄いのが特徴だった。
黒翔国では衣服が薄地なので逆に下着類は透けないように厚手のものを着用していた。だがこの国ではお洒落が下着のようで普段衣服で使われないレースや薄手の素材を使った下着が好まれていた。
しかも色が派手なものが多い。薄地は我慢出来るとしてもこの色には美羽は抵抗を感じた。
黒翔ではもちろん表に透けるような色物は着ない。
そんな色を着ているのは女を売る娼婦だけだと言われていたからだ。国が変われば習慣もかなり違うとは言っても着る度に溜息を洩らしていた。
それを察してくれたメラが淡い色を特注してくれたのだった。
だから今日は天眼国風の薄地でも色は白だった。美羽としては着なれた色で安心して着たのだが・・・
イエランの目はそれが間違えだったと語っていた。美羽の白い肌を更に引き立てるその清純な下着姿にイエランの瞳が一気に欲情で燃えたようだった。
イエランが気に入ったせいか下着は脱がされずそのままだった。
薄い布地の上からイエランの指が花芯を撫で上げた。
「やっ、あっ・・・っあっあん!」
久し振りに触れられたそこはこれを待っていたかのようにとても敏感になっている。
「美羽、私はまだ思うように動けないからもっと私に近付け。もっとだ」
美羽は言われるままにイエランの開いた両足の間まで進んだ。これ以上は椅子が邪魔で前に行けないという所まで・・・
イエランを見下ろしているようで落ち着かなかったがそれどころでは無かった。
イエランが身体を前に倒しかけたと思ったら美羽の片足を掴んで自分が座っている背もたれに乗せたのだ。美羽はよろめき床についていた片足を踏ん張った。それでも爪先立ちのようなもので不安定な上、イエランの顔の近くで美羽は両足を開いた状態のようなものだ。恥ずかしくて一気に火がついたように真っ赤になった美羽だったが、足を下ろそうにも靴紐が背もたれの彫刻にひっかかってしまって自分ではどうすることも出来なかった。
「な、何を・・・やゃぁ――くっ・・・んんっあ、あ、」
美羽は悲鳴のような声を上げた。
片足が開いてぴんと張った下着の上からイエランの舌が花芯の上を貪るように舐めたのだ。
「やっ、止めて!あんっ・・・あ、ぁあっ、あっ!」
布越しの愛撫は直接与えられる快感とは違う感覚だ。イエランもそれを楽しんでいる様子だった。
美羽は不安定な状態で仰け反った。馬鹿みたいに上がっている足も震えている。
下着が濡れているのはイエランの唾液のせいか美羽の溢れて来た蜜のせいか分からない。それでも濡れた不快感が一層気持ちを煽りたてるようだった。
「だいぶん濡れてきたな・・・下着が透けている。嫌らしいな美羽・・・」
「そ、そんなこと・・・い、言わないで・・あん・・あっ、っん」
「どうだ?直接触って貰いたいか?」
「い、いや・・・あっ、あ・・・」
「嫌?もっとと言う意味か?それとももういい?」
こういう時のイエランは意地悪だ。焦らして、焦らして美羽が懇願するまで容赦なく焦らすのだ。
止めてと懇願してイエランの頭にしがみ付いた。しかしそれがまた悪かった。今度は放置されていた胸に愛撫が移っただけだったのだ。やっぱり下着の上からイエランはゆっくりと乳首を中心に舐めたり噛んだりしながら、それがツンと尖って薄い下着を持ち上げて透き通るまで執拗に続けられた。
もう下は濡れ過ぎてべったりと張り付いている。
「はっあんんっっ・・・やっ、いやっ・・・んんっっ・・・そ、そんなこと・・・しないで・・やっ」
一点だけを愛撫されて気がどうかなりそうだった。
しかも布越しの刺激はもどかしくて堪らない。それでも確実に高められていった。
「いやっ・・・そこだけ・・・なんてっあ・・・っっん」
「物足りないか?もっと触って欲しいのだろう?」
「ち、ちがっ・・・あん」
イエランが片方の胸の下着を押し上げて強く揉んだ。
ぞくりと快感が背中に走り声を上げてしまった。がくがくと膝も笑っている。
ぐっと胸を掴まれ指の間からこぼれた尖りをイエランは、カリッと甘噛みした。
「あっっ・・・」
「ここ・・・カルムが同じようにしていたな。感じていただろう?美羽?」
「やっ、ち、ちがっっ・・・あっ、あっ、ああ」
イエランの目が細められてその瞳の奥が炎のように揺れていた。美羽に非が無いとは言ってもカルムとのあの行為を怒っているのだろう。
美羽はどうしたらいいのか分からなかった。イエランの怒りを解く方法が分からない。
眉をひそめていると美羽の床につけていた片足が持ち上げられて身体が宙に浮いた。
「きゃっ!何を!」
「少しきついかもしれないが私もこの方が楽だからな・・・いくぞ、美羽・・・」
美羽はいつのまにか勃立して上を向いているイエランの昂ぶりを目にした。
浮かされていた自分の身体がそれを目指して沈んで行く。驚いた美羽は四肢を強張らせた。
「美羽、力を抜け」
「で、でも!」
挿入される瞬間を自分で直接見るのは初めてで怖くなってしまった。
「い、いやっ!いやです!」
足をバタつかせ始めた美羽にイエランは舌打ちした。
「怖がるな、美羽。いつも挿れているだろう。大丈夫だ」
「で、でも!」
美羽の抗議虚しく勃立したものに向って身体を沈められた。
「きゃぁっ・・・あ、あ、」
蜜の溢れた場所に、ずぶりと挿しこまれたものはいつもよりずっとずっしりとした質量を感じた。
それを受け入れる為に繋がった部分がいっぱい、いっぱいに広がっているのも感じる。それに、
「うあっっんん・・・あ、あ、あっお、奥まで・・・いっぱい・・・」
「くっ・・・美羽、力を抜け」
イエランはそう言って挿入で押しやられた下着の横からのぞいていた花芯の小さな尖りを撫でた。
「ひゃぁ――っあああっ」
びくびくと美羽の柔らかな内腿が震えていた。
「美羽、動かすぞ」
「ま、まって・・・」
もちろん美羽の制止を聞くイエランでは無かった。
美羽の脚の付け根を持ち昂ぶりが抜ける寸前まで身体を持ち上げると一気に落とした。
「んあああっっ!」
抜ける喪失感を感じたと思ったら急な圧迫感を与えられるのだ。美羽は自分の重みでいつもより深くめり込んで来るそれに目眩がしそうだった。そして深く繋がったまま両脚を揺っては小刻みに上下されるから堪らなかった。狂ったように喘ぎ声がこぼれる。
ぬちゃぬちゃとイエランの熱い塊を抜き挿しする音が何時もより大きく聞こえてくるようだった。
「はぅ・・・あ、あ、あぁう、っんん・・・いやっ」
その時、寝室の扉を叩く音がした。
「目が覚めたと思って来てみたら何やっているんだ!イエラン、イエラン」
扉の外に居るのはカルムのようだった。イエランの目覚めを感じて部屋に押しかけて来たようだった。美羽はその声に驚き身体を緊張させた。
彼女のそれは美羽の中に入っていたイエランの昂ぶりを、ぎゅっと締め付けた。
「つっ・・・美羽・・・」
イエランは一瞬声を洩らし、瞳を細めた。強い快感が走ったようだった。吐息のような声を洩らしたものの、それをもっと楽しむように激しく美羽を揺らし始めた。
「あ・・・・・・ぁ、ああ・・・だ、め・・・っ、もっ・・・」
「イエラン、入ってもいいか?」
カルムの声に美羽がまた四肢を強張らせた。
「い、いっ、やぁ・・・だめ・・・あっ、ああっ」
「くっ、美羽・・・凄い締め付けだ・・・だが、まだまだだ。自分で動いてもっと私を満足させて終らせろ。そうしないとカルムが入って来るぞ」
「そ、そんな・・・あんっ、動くって・・・んあっ」
両足を抱え上げられているのにどうしたらいいのか美羽には分からなかった。でもこんな姿をカルム見られたくない。宙に浮かしていた両足をイエランの背中に巻きつけて両手は意地悪な恋人の首元にしがみついた。そして自分で腰を揺らし始めた。
「そうだ、美羽。自分の気持ちがいい場所を探して動くんだ」
「んん・・・っ、は・・ぁ・・・・・・っぁ」
「気持ちいいのか?美羽?」
美羽は恥ずかしいと思いながらも沸きあがってくる快感に腰を振り始めた。それに合わせて美羽の中でイエランの塊が脈打つのが分かるくらい大きくなっている。
揺れる胸の先端にイエランが舌を這わせては吸い付く。
「あっ、あ、あ、あ・・・んっあ」
美羽は狂ったように腰を振り始めた。
「くっ・・・はっ・・・っっ、」
「・・・ご、ごめ・・・んなさい、き、きつい・・です・・・か?」
苦しそうにこぼれたイエランの声を聞いた美羽は彼の体調がまだ良くないというのを思い出した。
だから両足を緩め始めたがとイエランが顔を渋くした。そして舌打ちして美羽の腰を掴んだ。
「私を煽るな、美羽・・・酷くしてしまうだろう?」
「えっ、な、何・・・ひゃ!ああぅ・・・」
聞き返した答えを得ぬまま、座していたイエランが美羽ごと腰を上げると滑るように床に押し倒した。イエランの重みが美羽に圧し掛かり最奥を一気に突いた。
美羽は声を大きく上げそうになって両手で塞いだ。
「美羽、どうした?声をあげろ」
「くっう・・・い、いや、カ、カルム様が・・・」
イエランがニヤっと笑ったような気がすると、腰を穿っていたものが、ずるりと途中まで引き抜かれ、すぐに押し戻された。美羽の快感に下肢はガクガクと震えた。
「美羽、さっきのように足を背中に絡めるんだ」
美羽は言われるままイエランの背中に両足を絡めた。
そしてイエランの与える律動に合わせていつの間にか自分もグイグイ締め付ける。
「美羽、そう・・そうだ、いい子だ・・・美羽」
「くっ、あ、あ、あぁ、・・・はぁっ」
美羽は次第に声を殺すのを忘れイエランの動きに合わせて嬌声をあげていた。
「もっ、もう・・・ぬ、抜いて・・くるしい・・・あん、っん」
「抜いて欲しいのか?」
美羽は頷いたと思うが首を振ったかもしれないと思った。イエランの愉快そうな短い笑い声が耳元で聞こえたからだ。きっと首を振ったのだと美羽は飛びそうな意識の中で思った。
「い、い、じ・・・わる・・・も、もう・・・許し・・・てぇ」
「私が何だって?美、羽、」
イエランが美羽を貫く楔に身体の重みを乗せて一息に更に奥まで侵入して来た。
「ひゃっ!あう・・・っ!」
美羽は悲鳴を上げて思わず、ぎゅっと目を瞑った。イエランの熱い存在感に圧倒されそうだった。
その欲望の塊が熱く激しく脈打っている。イエランの熱い昂ぶりに美羽の快感に震える内壁が絡み付いて締め付けていた。
「つっ・・・くっ・・・よく締まる。嫌などころか絡み付いて離さないじゃないか?」
「そ、そ・・・そん、な・・・」
恥らう美羽に微笑みながら口づけしたイエランは絡みつくそれから強引に引き抜きかけては捻じ込み、また抜きかけては捻じ込む。
「やっ、や、あっ・・あ、やぁ・・・んっ」
与えられる律動が激しくなり美羽は、ひっきりなしに喘ぐしかなかった。
目の前がチカチカして息も苦しい。
「あ・・・あっ、も、・・・いっ・・・く、っ・・・」
美羽は遠のく意識の端に、どくんと腰の奥で熱が吐き出されたのを感じた。イエランの昂ぶりが爆ぜたのと美羽が意識を無くしてしまったのは同時だった。流石のイエランもまだ療養を要する身体でこの行為は無茶に近かった。いつもなら美羽を正気に戻して何度も続けるものだが今回は無理のようだ。
彼女の中から、ずるりと果てたもの抜くと、ごろっと横に転がった。
ふと視線を上げれば直ぐ側でカルムが呆れた顔で立っていた。
「―――覗き見か?カルム」
「覗き見するんなら自分の部屋で出来るさ。無茶苦茶なことして!」
「失神させるつもりは無かった」
「ミウちゃんのことじゃない!お前のことだ!だいたい大事に至らなかったのに無理した揚句、ぶっ倒れただろう!ミウちゃんには気を失っただけだと嘘を言ったけど瀕死の状態だったんだ!それを目が覚めた途端、こんなことして・・・呆れる」
悪態をつき続けるかと思ったカルムがイエランでも綺麗だと認める兄の顔が、くしゃりと歪んだ。
まるで泣きそうなのを我慢しているような顔だ。イエランはカルムの泣いた顔は見た事は無い。
しかしイエランやリネアの幼い頃、無茶をして危険な目にあった時はこんな顔をして怒ったものだ。
大人になればそんな馬鹿なこともしなくなり見る事も無かった・・・だから久し振りに見る顔だった。
「・・・すまない。カルム、心配をかけた」
裸同然で寝転がったままの謝罪では目が見える者の前では馬鹿にしているとしか思えないだろう。
しかし視力の無いカルムには関係なかった。イエランの真摯に謝る声の響きで十分だ。
カルムは、ふっと微笑んで手を差し出した。
「立てないのだろう?寝台まで運んでやろう。もちろん、ミウちゃんも」
「美羽に触るな!」
「まだ触れても無いだろう?怖いなぁ〜このままだと風邪ひくよ」
「うるさい!美羽は私が運ぶ!」
「運ぶって?ふふん、自分すら立てないのに?」
カルムの口調が愉快そうな感じになって来た。しかし、すっとそれを引っ込めて真面目な顔をした。
「イエラン、ラーシュのことだけど・・・」
カルムはそう言いかかって言葉を濁している間にイエランは取り敢えず何とか身体を起こしてその場に座った。そしてすぐ隣で気を失っている美羽を引き寄せ膝の上に抱きかかえた。
幸せそうに目を閉じている彼女にイエランは優しく微笑みかけながら口を開いた。
「足早に駆けつけたのはその件か・・・」
「ラーシュのしたことは許されるものじゃないのは重々承知している・・・」
「重々承知していてもあれを許せと願うか・・・兄上らしいな・・・ 」
「イエラン?」
カルムは久し振りにイエランが自分の事を兄と呼ぶのを聞いた。
「無力で守れなかったのを後悔しているのだろう?好きなようにしたらいい」
カルムは驚いて見えない瞳を見開いた。大きな罪を犯したラーシュの助命を嘆願しようとしていたがこんなにあっさり承知するとは思わなかったのだ。まだ金の天晶眼がもたらしたラーシュの行動も何も説明していない。半分はそのせいだと嘆願するつもりだった。
何も知らないイエランはラーシュが卑怯な簒奪者としか思っていない筈だ。それなのに?
「どうした?カルム。驚いたような顔をして。私もリネアも本当に感謝している・・・兄上が居なければ私達はまともなものにはならなかっただろう。守りたいのだろう?幼い頃に自分が庇い切れなかったもう一人の可哀想な弟を・・・」
イエランは静かに微笑みながら美羽の金色の髪に指を滑らせて撫で始めた。
「イエラン・・・本当に?もしかしたら黒翔と全面戦争になったかもしれない!ミウちゃんだって危険だった!お前だって死にかけた!」
美羽に微笑みかけていたイエランが、すいっと顔をあげてカルムを見上げた。
「カルム、助けたく無いのか?そんなことばかり言って。私は好きにしたらいいと言った。二度も言わせるな。どうせ法を無視した事をするつもりだろう?それも黙認してやる」
イエランの言う事は当たっていた。カルムはラーシュの記憶の操作をしようと思っていたのだ。
それは国が定めた法では違法行為だ。記憶を抜くだけならば簡単な行為だが、それだけでは歪みが生じ人格の崩壊に繋がる率が高かった。だから抜くだけでは無く新たな記憶を植えつけ繋ぎ合せなくてはならない。そうなるとかなり高度な心眼の力でなければ出来ない技だ。
「ただし、美羽につまらない感情を持たぬように彼女は私のものだと強く刷り込め」
「はい、はい、分かっているよ。誰も恐ろしい天眼の王のものに手出ししようなんて思わないように君の恐ろしさを叩き込むよ」
冗談まじりの本気のイエランにカルムも同じ調子で答えた。
「奴にもそれが出来れば問題はないのだがな・・・」
イエランの言う奴とはもちろん海翔の事だ。
「・・・流石に風魔鏡の持ち主に記憶操作は無理だけど・・・君が望むなら天晶眼を使って記憶の消去ぐらいならやれない事は無いよ」
軽い調子で言うカルムをイエランは軽く溜息をついて見上げた。
「それは美羽が悲しむ。あんな兄でも腹立たしい事にとても慕っているのだからな。自分が兄から忘れられたらきっと悲しむに違いない。それに軽く言っているが風魔鏡の力はそう甘く無いと言うのは承知しているだろう?もちろんそれを仕掛ければ死に至るぐらい大変だというのも。そんな馬鹿な事は許さない」
カルムらしい考えはイエランにお見通しだった。海翔をあの場で殺すことも考えたが天晶眼があればこの方法を取っていただろう。
「・・・・・・ぅん・・・」
美羽が意識を取り戻しかけているようだった。
美羽・・・とイエランは優しく囁くと少し開いた彼女の唇に、そっと口づけを落とした。
「・・・・・・ん」
「やあ、おはよう。ミウちゃん」
美羽は戻り始めた意識の中でカルムの声が間近に聞こえ一気に覚醒した。
「えっ?カ、カルム様!きゃっ」
美羽は自分が何も着ていない事に気が付き身体を隠せるものを真っ先に探した。しかし脱がされたドレスは手に届く場所には無くイエランの腕が絡んでいて身動きも出来ない状態だった。
美羽は恥ずかしさで全身を朱色に染めた。
「クスッ、ミウちゃん、大丈夫だよ。天眼を開いて無いから全然見えていないよ」
「開けたら殺す!」
「はぁ?何?さっきまで死ぬのは許さないとか言っといて」
「あれとこれとは別だ」
「はい、はい。でもミウちゃんは二、三日此処には出入り禁止にするからね」
「え?」「カルム!」
「病み上がりなのに彼女がいたら無茶するだろう?暫くお預けだった分、我慢出来るとは思わないしね」
カルムの言う無茶をすると言う意味が分かった美羽は更に顔を赤くした。
「大人しく養生したらご褒美に数日の休暇をあげるよ」
「お前にそんな許可を貰う必要はない!」
「あ〜良いのかな?そんな事言って?何なら今、君の代わりにしている山積の仕事を全部ここへ持って来ようか?」
ラーシュの企ては金の天晶眼に操られていたという筋書きにするつもりだった。半分本当で半分嘘だがイエランの許しが出たからには完璧な嘘を構築するだけだ。それでもイエランが数日臥している実情は誤魔化せない。しかし王佐でもあるカルムの働きがあれば支障ないだろう。
イエランは諦めたような溜息をついた。
「・・・言う通りすれば良いのだろう。好きにしろ」
「そうそう、お兄ちゃんの言う事を聞いて寝てなさい。一人でね。じゃあ、ミウちゃんは連れて行くよ」
カルムが美羽に手招きをした。
「は、はい」
美羽は返事をしてイエランの腕の中から抜け出ようとしたが、ぐっと力を入れられて離れられない。
「あの・・・手を――」
美羽を抱く手を離してと言いたかったがその前に唇を塞がれてしまった。
「ん・・・」
するりと急に入って来た舌に、ぞくんと背筋が震える。
カルムの呆れたような溜息が聞こえたが、それに構うこと無くイエランの口づけは深さを増して行った。そして強く抱きすくめられていた手が、するすると美羽の背中を下り、丸く柔らかな双丘の間を通って花芯に辿り着くとまだ激しい行為の跡が溢れているそこに指が挿しこまれた。
敏感になったままのその場所に侵入して来たイエランの指は冷たく美羽の四肢が、びくんと震えた。
再び快感が全身に広がるようだった。
「んんんっ・・・っん」
美羽は駄目!と言いたかったが唇が塞がれて声が出なかった。
ぞくぞくと背中が震え胸の先端が尖ってくるのが自分でも分かる。カルムに注意されたばかりなのにこのままだと止まらなくなってしまう。駄目だ!
「ふっ・・・うっ・・・んんっ・・・」
「はいっ、そこまで!ミウちゃんの言う通り!駄目だよ。名残惜しんでの口づけぐらいは許してやろうと思ったけど、それ以上は駄目!」
深まりそうな行為にカルムも流石に制止をかけ美羽をとイエランを引き離した。
そして、さっと自分のマントを肩から外すと美羽を手早く包み抱き上げて出口へ向った。
「カルム!」
一瞬の出来事に唖然としたイエランは慌てて呼び止めるとカルムが振向いた。
「ミウちゃんを構うぐらいの余力があるなら自分で寝床へ戻れるだろう?ちゃんと寝ているんだよ。じゃあね」
美羽を抱いたカルムがそう言い残すと扉の向こうへ姿を消してしまった。
「・・・・・・カルムの奴。勝手なことばかりして・・・まあいい。休暇か・・・それもいい」
イエランがそう呟いて、ふと微笑んだ時、美羽は、ぞっと嫌な悪寒がした。
「さてと。ミウちゃんもゆっくり休んで体力を付けていた方が良いよ。イエランに約束した休暇は大変だろうからね。溜りに堪った欲求不満を吐き出されるだろうな。此処に帰って来て寝所に篭もった時以上かもね」
カルムの予想に美羽はやっぱり、ぞっとした。イエランには早く元気になって貰いたいけれど・・・
(私・・・大丈夫かしら?)
美羽はそう思いながらも期待で身体を震わせた。あと数日すれば二人で過ごす数日がやって来るのだ。美羽はちょっぴり怖い気もするがイエランが早く良くなるようにと祈ったのだった―――
終![]()
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あとがき 「天眼の王」終了でございます。外伝と言うよりも「天空の恋」の続編のようなもので、ずっとすれ違い続きだった美羽とイエランのラブラブ満載でしたが如何でしたでしょうか?ちょっとお気に入りだった宋&麗華のその後もこれで落ち着き、ほっとしています。この後、この二人はのんびりと田舎で暮らすのか?どんでん返しで法国を建て直し法王の座に就くのか?ご想像にお任せ致します。 美羽の謎を残しつつの終了ですがこれはまたの機会の布石で取って置きます。え?と言うことはまた続編あり??そうです!神の遺産を持つ種族は何カ国あったでしょうか?五大国でしたよね?まだあと二つ残っています。ははは…でも取りあえず周りを片付けて参りたいと思いますので次回作はリネア&サガンです。この組み合わせはかなりハードな感じが…それでは今後とも天空シリーズ宜しくお願いします。 |
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