天眼の王5


(今日は全てやり手の家臣付きか・・・七家も本気で反対するつもりのようだな・・・)
会議の場で着座したイエランは前に居並ぶ面々を一瞥した。
ふとその時、今までに感じたことの無い違和感を覚えた。

(―――なんだ?この感覚は?)
イエランが感じたものが何なのか分からないままカルムの隣に着座する若者を見た。
繊細な容貌をしたその男が例のラーシュと言う兄弟だろうとイエランは思った。
癖のある重臣達の中で流石に緊張しているのか発する気は大人しいものだった。それでも神経質そうに気を張っている様子は手に取るように感じた。

「王、会議を始める前に先ほどお話しておりましたラーシュを紹介させて頂きます」
カルムが立ち上がりそう告げるとイエランは軽く頷いた。それを受けたラーシュが立ち上がった。

「初めまして・・・ラーシュです。今後共、宜しくお願い致します」
既に七家には紹介済みなのだろう。誰もがイエランの反応を見守っているようだった。

「こちらこそ・・・兄上。今後の身の処し方は長兄と相談されるがいい。もちろん私も相談は受けよう」
兄と呼びながら兄とは思わない尊大な態度のイエランにラーシュの自尊心は傷付いたが、それを全く面に出さなかった。

「恐れ入ります。田舎育ちゆえ右も左も分からない状態ですので宜しくご指導願います」
受け答えは特に気に留めるものでは無かった。大事な会議の前に取り分け重要と思えな
い新たな兄の存在はどうでも良いことだ。しかし何か引っかかるものを感じたイエランは続けて問いかけてしまった。
「―――ところで金の天眼の力の種類は?」
ラーシュが、にやりと微笑んだような感じだった。
年齢よりずっと若く見える少年のような顔の額に金の天眼が現れた。

「はい、開路と心眼を少々・・・」
ラーシュはそう言いながらイエランに向って心眼を向けた。カルムの心眼を押さえ込んだ程のその力を全開でイエランに叩き付けたのだ。
しかしラーシュの不敵な笑みが次第に焦燥へと変わってきたのは瞬く間だった。

(ど、どういうことだ!まさか?効かない?)
目の前のイエランに全く変化が見られなかったのだった。それどころか強力な壁のようなものから弾き飛ばされるようなものさえ感じた。隷従させるどころかその心さえ垣間見ることも出来ないのだ。

「開路と心眼か・・・開路は後日見せて貰うとして・・・心眼をやたら使うのは感心しない。すぐに閉じよ」
イエランが、ぴくりとも動かずに淡々と命令した。

(まさか・・・奴も心眼の持ち主だったのか?)
王の力は調べて来たつもりだった。心眼に心眼の力が通じ難いのは周知の事実だ。もし調査不足だったとしても心眼最強と言われていたカルムを封じる事に成功したラーシュは自信があった。
しかもカルムと同じく不意をついたものだったのに成功しなかったとは・・・信じられない事だった。

イエランは直ぐにラーシュの心眼が自分に向けられたことに気がついた。ある程度意思の力で心眼の力を封じることが出来るが、カルムのような金の天眼となればその力を完全に遮断するのは難しいものだった。しかしラーシュはカルム程の力が無いのだろう。
簡単にその侵入を防ぐ事が出来たのだ。イエランはそう思った。

(・・・何の思惑があって私の心を探りに来たものか・・・)
イエランは会ったばかりのラーシュのこの無礼極まりない行動の意味を測りかねた。
一応、忠告だけして事の真意は早急に調べようと心に留めただけにした。
とにかく今は黒翔国の問題が先決だった。
だからラーシュが天眼を閉じたのを確認すると彼の存在を忘れたかのように議題へと移って行った。

 皆がそれぞれ意見を述べる中、イエランは黙してそれらを聞いていた。相槌はもちろん口を挟むこともしなかった。ただ彼らが言葉を発する時に視線だけ動かし注視しているだ
けだった。
特に王に無言で見つめられた七家の家臣達は自分の主に加勢して張り上げていた声が段々と弱々しくなってしまう。その無言ほど怖いものは無いと思っているからだ。
しかしその中でも恐れず気炎を吐くのは過激派の筆頭ヴァリだった。

「王よ!そもそも単身で法国に乗り込む事態、浅慮だったと俺は思う!風魔鏡の存在を知っていてのその行動、考え無しとしか言えない!そして結果がこのような馬鹿げた取引!風魔鏡で天眼の力を封じられれば逃れる術が無いとは言っても結局は王のその行動が招いた結果だ!それを、はい、そうですか、と納得は出来かねる!」
いつも過激な意見が多いヴァリだが、堂々と王を批判する意見に流石に皆、息を呑んだ。
先日のように色々と毒づいたとしてもヴァリは王に面と向って言うことは今まで無かった。
それはイエランが怖いからだとかご機嫌を取っているとかでは無い。ヴァリ自身、王としてのイエランに心酔していた。認めているからこそ不満が募り他所でチラチラと愚痴が出ていたのだ。

それでもイエランはまだ黙っている。しかしこういう場合、カルムがだいたい仲に立ち緩和する方向に話しを持って行くのだがその彼は何故か黙していた。
一度吐き出した不満が止まらなくなったヴァリは続けざまに毒を吐いた。

「翅虫の娘は我が国に富と栄光をもたらすどころか災いしか運んで来ない!王もそれに毒されているとは嘆かわしい限りだ!オーベリ殿は反対するだろうが神託など無視をして敗戦国の王族など縊り殺せば良かったんだ!そう、今からでも遅く無い!この地から王を惑わす女諸共翅虫らを抹殺してしまえばいい!」
その時、今まで黙して着座していたイエランが、ゆらりと立ち上がった。全身から怒りを発しているようだった。まるで揺らめく青い炎が見えるかのようだ。

イエランは好きなだけ言わせていればいいと思っていた。言いたい事を有る程度言えば憤懣は多少晴れるだろうと思っていたのだ。カルムが言ったように王の権威で押し通すのは可能だ。
今は遺恨を抱いたとしてもそれは時と共に風化するだろう。
少しばかり夢を見ただけなのだ。今はその捌け口としてイエラン自身、非難されようが構わなかった。後は適当に宥めて話しを穏便に収めるつもりだった。その話も色々と用意していた。
しかしヴァリは言ってはならない事を口に出してしまった・・・
美羽を殺せば良かった、殺してしまえと・・・何度、美羽を失ってしまうかと恐怖を抱いたイエランにその言葉は最悪を通り越していた。例えようも無い怒りが全身を駆け巡るようだったのだ。

ここまで激昂する王を重臣達でもそう見るものでは無かった。冷厳なる王と呼ばれるがその言葉通りに人間的な感情が無く冷ややかで厳しくはあっても熱く憤るようなことは無い。
それだけでも居並ぶ彼らは恐れを抱く筈なのに今回は様子が違っていた。
また再び違
和感のようなものが漂い始めたのだ。
それを象徴するかのように老臣オーベリが驚く発言をした。

「王よ。何故にそのようにお怒りになれる?ヴァリの申す通り、あの姫は神託の天の使いと言うよりも誠に厄病神のようだと思われますぞ。ですがヴァリの言うように殺してしまうには惜しい美しさ・・・それを使わぬ手はございません。他国への交渉材料の一つにすればよろしいでしょう。我らが黒翔国を手に入れたことが気に入らぬ蒼苑や洞国にでも―――カルム様にこちらの良いように少し頭の中をいじって貰って送り込むと宜しかろう。王もご実感されておりますでしょう?あの姫なら麗しい抱き人形となって見事に他の王も骨抜きにしてくれる筈。ふぉっほっほ・・・」
「それが宜しいでしょう。見目が良い娘はどんな宝より喜ばれるもの。それにあの色狂いの黒翔の王にたっぷりと性技は仕込まれているでしょうし。ほほほほ・・・」
驚いた事に常識派の女当主アグレルが同調し、ヴァリはもちろん今まで大人しかったドーラも賛成だと言って嗤っていた。そして皆のその様子に穏健派のトールスと気弱なエイセルは戸惑い顔だ。
驚いたのはオーベリとアグレルの家臣だ。
一つの意見とは言っても品の無い不快な提案・・・人道にも劣る意見を自分の主が言うとは思わなかったのだ。敗戦国の姫と言っても神託の娘。彼らはそれを信じ、彼女を奪還する為に王に従って来たのだ。
それを天眼族の禁忌でもある心眼で人格の組み換えしたうえ性奴として他国に売ると言うのだ。
誇り高い天眼族がとる行為では無いだろう。しかも王に向って骨抜きになっていると非難したのだ。
オーベリは口煩くても迂闊にそのような言動をする人物では無いし考え深いアグレルもそういう類では無い。だから正気の沙汰とは思えなかった。更に一番驚いた事にカルムも同じく嗤っていた。

オーベリの家臣が恐る恐るイエランの様子を窺った。先程まで空気が震えるかと思うくらい激昂していた筈の王がその怒りを静めていた。立ち上がったまま微動だしていないものの哄笑する者達をじっと見つめているだけだったのだ。

イエランは老臣の言葉に一瞬、頭に血が上ったが寸前で抑えた。神託に一番傾倒していたオーベリの言動に違和感を覚えたのだ。しかも他の者達の様子も可笑しいことに気がついた。彼らは何事でも意見をはっきり延べるが反対するにしても言う事が極端で苛烈過ぎたのだ。常軌を逸している感じだ。
ましてカルムだ。それこそ絶対に彼らに同調する筈無い。

(・・・カルム・・・何か考えがあるのか?)
「―――嗤いを止めよ」
イエランは声を荒げることなく静かに言った。
その額に金の天眼が覗いていた。感情に
よっても天眼は開く・・・平然と見えてもイエランは怒りをおさめてはいなかったのだ。静かに開く天眼は馬鹿げた嗤いを止めるには十分だったようだ。
皆が、しんと静まり返って自分達の主を見つめた。
その視線を受けたイエランは天眼を開いたまま、ゆったりと着座したのだった。
イエランの天眼は心に働きかける類のものでは無いが、その威力は恐怖に凍るものだ。
嗤っていた者達はふいをつかれたかのように呆然としている。

(そんな馬鹿な・・・呪縛が弱まるなんて!馬鹿な!)
ラーシュが瞳を伏せながら心の中で憤った。
イエランが感じた違和感の原因はラーシュだった。カルム同様、七家の当主でも扱いづらい人物、ヴァリとオーベリ、更にアグレルとドーラに金の心眼で暗示をかけていたのだ。自分の思い通りに動くようにと呪縛していた。イエランの王としての権威の失墜が目的であり、思ってもいない事を言わせたり心の片隅に潜む不満を大きく煽ったりするのはお手のものだった。
筋書き通りに話しの方向は進んでいたかに見えた―――
それなのに・・・操り人形達は糸が切れたかのように目的を忘れている。

目的を見失ったかのような七家の者達はもうまともな議論が出来なかった。イエランも手応えの無さを感じながらも話しは進んだ。結局、オーベリが言っていたように五大国の蒼苑国と洞国からの抗議の親書が毎日のように届いていたのは事実だった。内容は段々と過激になっていた。彼らも面白く無いのは当然だろう。黒翔国から不可侵条約を破った
破ったとしても戦火を開く前に他の五大国に調停を申し入れるのが筋だと言って来ていた。当然と言えば当然の事だ。
その昔、神の遺産を持つ彼らが争った時代は世界が混沌としてしまった。その愚かさに気がついた王達がお互いに結んだ条約―――小さないざこざはその後何度もあったが国を占領するような事態に発展する事は無かった。五大国同士が牽制し監視しあっていたのだ。だから黒翔の王も安易に考えていた。
まさか天眼国が城を攻めて来るとは夢にも思っていなかったと言う訳だ。その条約の崩壊で次は自分達かも・・・と恐れたものか?ただ羨ましいものか?いずれにしても両国は黙っていなかったのだ。
一方、五大国の一つ猛牙国は危うくその渦中に呑み込まれる所だったが自国の反乱でそれどころでは無かった。それらを背景にイエランは話しを推し進めた。それでも容易ではない。天眼族は誇り高く己が最も優れているという思いが強い。その彼らが他の国からの申し立てをすんなりと聞き入れるのは自分達が弱者に見られているようで酷く矜持を傷つけられるものなのだ。

(・・・以前の私なら当然無視だろう・・・)
イエランでさえ反対の事を言いながら心の中ではそう思っていた。しかし今は美羽の為、今後に憂いを残さず上手くまとめたかった。無理やり通すことで不満が残りこの地で暮ら
す美羽にその憎しみが向けられるのは避けたい。
(黒翔国も海翔もどうなっても構わない・・・美羽さえ幸せに微笑んでくれさえすればそれでいい・・・)
イエランは、ふと思い出した。
出かけに微笑んでいた美羽を―――あの微笑を守る為ならどんなことでもするだろう。
難航すると思っていた議題は思ったより早く終わり、結局のところ条件は付けるとしても黒翔国から手を引く事となった。

皆が退室して行く中、カルムをイエランは呼び止めた。

「カルム、残ってくれ」
「ラーシュも一緒に?もちろん良いよね」
カルムは振向かずそう言うと出て行きかけた扉を閉めた。もちろんラーシュはその扉の内側に居たままだ。先刻からこの新しい兄弟に何かと肩入れをするカルムだがその真意が未だに掴めない。

「いや、遠慮してもらう」
イエランが無表情にそう告げると、カルムが受け答える前にラーシュがそれを遮った。

「・・・いいよ、兄さん。僕は先に出てるよ」
そう言って素直に出て行くラーシュを二人の兄弟は無言で見送った。

「それでカルム、どういうつもりだったんだ?」
「どういうつもりって?」
「さっきの態度だ」
「態度?ああ、嗤ったことかい?」
「そうだ。お前が同調する必要もないだろう?」
イエラン少し拗ねたような顔をしていた。カルムの目が見えたのならそれを見て、きっと愉快そうにしただろう。しかし残念なことに彼は見えない。

「・・・嗤ったのは・・・」
言いかかったカルムは言葉がそれ以上出なかった。

「嗤ったのは?」
「そう・・・本当にそうだな・・・と・・思ったから・・・」
「なっ!」
イエランは驚いてぼんやりとした様子で喋るカルムを見た。聞き違いかと思った。まさか?

「なんてね。少しばかり彼らの味方をしていないと公平っぽくないと思ったからね。心配した?」
「馬鹿が・・・心配などしていない。驚かせるな。それにしてもオーベリ達の様子が可笑しくなかったか?」
「そう?別に・・・」
カルムがまた上の空で答えている。やはりイエランは何かが可笑しいと思った。何かが微妙にずれている感じがしてならないのだ。カルムと何を話してもその度に不安だけが残っていく―――


 体よく追い払われたラーシュだったがそれが腹立たしいよりも己の失敗に歯軋りしていた。
今回七家の者達にかけた暗示は加減し過ぎていたのだ。強烈にかけ過ぎると個性が無くなり直ぐに天眼で操作したと分かってしまうから手加減してしまった。今日の謀は無駄に終ったがまだまだだとラーシュは思っている。当然、簡単に王座を手に入れられるとは思っていないから焦ってはいない。

(弱みがある筈だ・・・きっと・・・)
初めて会った弟は年下とは思えないぐらい圧倒的な存在だった。噂通りの比類なき王に見えた。
それでも今回のように誰が考えても失策としか思えないようなことをしている。
イエランも完璧では無いのだ。だから心眼が効かないのならもっと弱点を探せばいいとラーシュは思ったのだった。ラーシュは何故かまだ知らない。
カルムの心を探れば直ぐに分かった筈のイエランの最大の弱点。それが美羽だと言うことを―――

 その美羽は不安な一日を過ごしていた。黒翔国のことと言うよりも海翔のことが心配で堪らなかった。そして重臣達が揃ったあの重苦しい部屋を思い出していた。
あの時もイエランは勝手に美羽が自分のものになるなら黒翔の民を根絶やしにしないと約束をした後で彼らに事後承諾させたという強硬手段だった。

(今回もあの時と同じ・・・)
美羽は眉をひそめて落ち着かなく立ったり座ったりしていた。
美羽が考えても黒翔国の返還というのは無理な話しだと思うから心配になってしまうのだ。
天眼の国に比べると黒翔が気候的にとても恵まれていたのだと痛切に感じた。
この極寒の地に住む人々が黒翔国に憧れるのも無理無いと思うのだ。
美羽は荒野の狼に襲われ雪崩に巻き込まれたこともある。
皆がそんな厳しい土地で暮らしているのだ。彼らのように神通力を持っていなければとても住めないとは言っても黒翔のような土地に住みたいと思うのは当然だと思う。
だからその皆の希望を潰して無理やり通すイエランが悪く言われるのも嫌だった。

そうこう思っていると、あっという間に夕刻になってしまった。
でもイエランは戻って来なかった。夜になっても・・・

「ミウ様、もうお休み下さい」
寝室の準備を終えたメラが心配な顔をして言った。
彼女も今日一日、落ち着かない美羽の世話をしながら見守っていたのだ。

「あの・・・王は?」
「王はまだご公務中のようです。遅くなると連絡が先ほど入りました」
美羽が残念そうな溜息をついた。

「お忙しいのね・・・」
「そうですね。ですから先にお休み下さい。そうされるようにとの伝言もございます」
イエランがそうしろと言うのならそうしなければならないだろう。
美羽は仕方なく頷くと広いベッドの中に潜り込んだ。そこは何回も寝た場所なのにとても広く感じてしまった。そして何だか怖くなってしまって小さく丸まる。

(・・・早く帰って来て・・・早く・・・)
呪文のように美羽はその言葉を心の中で繰り返した。そしていつの間にか寝入ってしまったのだった。それから随分経ってイエランが帰って来た。静かな寝息を立てている美羽を見れば相変わらず外敵から身を守るように小さく丸まって寝ている。
イエランは一瞬、むっとしが美羽の寝顔はとても幸せそうだ。だから逆につられて微笑んでしまった。一日の疲れが吹き飛ぶ感じだ。彼女の睡眠を邪魔しないようにそっと隣に滑り込んだ。

「美羽・・・」
イエランは囁くように名を呼ぶと温かな美羽を、そっと腕の中に引き寄せた。一度眠ったらなかなか起きない美羽はすんなりとイエランの腕の中に納まった。

「・・・お帰り・・なさい・・・」
美羽が突然呟くように言った。
起きていたのかと驚いたイエランは美羽を見たが、すやすやと眠ったままだ。

「寝言か・・・ずっと待っていたのだろうか?」
美羽は夢の中でイエランを出迎えていた。そして抱きしめられている。
夢と現実が重なっている感じだ。だから温もりが伝わり始めた美羽は次第に縮めていた手足を伸ばしイエランに擦り寄りだしたのだった。
堪らないのはイエランだ。中途半端だった今朝を思い出す。しかしそれは再び、ぐっと堪えると寝言を呟く薄く開いた唇にイエランはそっと口づけた。あくまでも眠りを妨げない唇の裏をなぞるだけの軽いもの。柔らかで温かな美羽の唇に欲情してしまうが幸せそうな眠りを妨げたく無かった。
それにイエランも流石に疲労困憊で、美羽の温もりが眠気を誘い何時の間にか眠りに落ちたのだった。



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