天眼の王6![]()
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そして翌朝目覚めた美羽は飛び起きた。隣に誰かが寝ていた形跡があったからだ。
当然それはイエランだろう。美羽は慌てて寝室から飛び出たが主部屋の中にイエランは居なかった。
「ミウ様、おはようございます!」
その室内で美羽が目覚めるのを待っていたルルナの元気な挨拶だけが返って来た。
「ルルナ、王は?もしかして・・・もうお出かけ?」
「はい、王は先ほど出かけられましたけど・・・あっ!手紙を預かっています!」
ルルナが差し出したのは手紙と言うよりも走り書きのようなものだった。
―――黒翔の件は心配無い―――
たったそれだけの簡単な文章でも美羽を喜ばせるには十分なものだった。
その手紙を宝物のように胸に抱きしめた。
「何かいいお知らせですか?」
ルルナが興味津々に聞いて来た。美羽は頷き、喜びに浮んだ涙を指でぬぐった。
「黒翔国が元通りになるの」
「えっ!じゃあ、天眼が手を引いた?」
美羽は嬉しそうに頷いたがルルナは複雑な気持ちだった。
王達の帰還でその噂は流れていた。王がそう言っていたとか・・・
下々の者は難しいことは良く分からない。ルルナも常春の楽園と言われる黒翔国に行ったことが無いからその良さは大げさな噂ぐらいしか知らない。
聞けば聞く程、自国より良いという感じぐらいだ。だからこの決定を残念がる者は多いだろう。
美羽はルルナらしく無い難しい表情に笑顔を引っ込めてしまった。自分は嬉しいが天眼国にとっては全く逆だと言うことを思い出した。
「あの・・・ごめんなさい・・・私・・・」
美羽はルルナに嫌われたく無い。でも何と言っていいのか分からなかった。
ルルナはこの地に生まれ育ってこれと言った不満は無い。ちょっと夢を描いていただけだから少し落胆しても美羽の晴れやかな笑顔を見る方が良いと思った。
(王もきっとそう思ったんだろうな・・・うん、そうよ!)
ルルナは身近にいるからようやく王の気持ちが分かり始めたところだ。美羽を大事に思っているのが良く分かる。ルルナは何時ものように明るく、にっこりと微笑んだ。
「良かったですね!でも、まさか帰るとか言わないですよね?」
「ルルナ・・・も、もちろん、私は帰らない。私はこの国が好き!ルルナもメラも大好きだから黒翔に帰りたいなんて思わないわ!」
「一番好きなのは王でしょう?」
ルルナが悪戯っぽく言うと美羽は真っ赤になってしまった。そして小さな声でもごもご言った。
「そ、そうよ・・・す、好き・・・なの」
最初と比べると美羽は本当に表情が出て来たとルルナは思った。
綺麗だけど薄幸な主がいつも哀れで堪らなかった。だから幸せになって欲しいと願う。
そして早朝から宮殿の最奥にある王府に赴いたイエランだったが、昨日感じた違和感が今日は全く無かった。七家の当主達も何時もと変わらない様子だ。昨日の今日だから彼らも全員早朝から出揃っている。今日は七家以外の重臣達とリネアが黒翔国から一時戻り会議に加わる予定だ。
黒翔国の返還条件と法国への賠償請求の件・・・裁可するものは山積だった。
(今日も遅くなるか・・・いや、帰れぬな・・・)
イエランは心の中で溜息をついた。
しばらくは寝る間も惜しんで仕事をこなさなければならないだろう。
美羽と過ごした夢のような数日のツケを払わなければならないようだ。
これで忙しい最中、いそいそと美羽のもとに戻ればそれこそヴァリやオーベリが言ったように毒されているだの骨抜きにされていると言うのを肯定してしまう。
自分がそう言われるのは仕方が無いとしても美羽がまるで毒婦のように言われるのが嫌だった。
(彼女は毒婦どころか聖女だ・・・清らかな心を持つ美しい天使)
イエランは神託など信じない。
しかし白き両翼の天の使い≠ニいう一文は好きだった。美羽がとても神聖なものに感じるからだ。
「顔が緩んでいるよ、イエラン」
カルムの耳打ちにイエランは、はっとし顔を引き締めた。
(カルム・・・いつも通りだな)
いつもと変わらないカルムの様子にイエランは安堵したがその横に付き従っていたラーシュが居ないのに気が付いた。
「カルム、あの者は?」
「あの者?ラーシュの事でしょうか?昨日は顔見せの為、同行致しましたが今日は私の用で出かけさせております。何か?」
カルムが表の顔用の公的な口調で返して来た。ラーシュが不在だから違和感が無いのだろうか?
イエランは、ふとそう感じてしまった。いずれにしてもこういう勘は当るものだ。
「あの者の件で話したい事がある。後で時間を作ってくれ」
「承知致しました」
時間を作らなければならないのはカルムでは無くイエランだろうが、とりあえず目の前の案件に取り掛かったのだった。
そして黒翔から戻って来る筈だったリネアから急報だけが届けられた。
―――海翔が何者かに拉致されて行方不明。遠見を駆使して捜査中―――
とのことだった。その一報に初めシンと静まり返った重臣達は次第にざわめき始めた。嫌々ながら承知した返還だがそれを返す主が居なくなったのだ。このまま行方不明になれば良いと思っても仕方が無いだろう。そして残されたのはたった一人の王族は天眼の王が所有している。
『誰の謀ですかな?貴公では?』
『滅相もない。謀だと不味いでしょう。他国からまた責められる』
『他国の顔色を窺って何とする。我々は天眼族だぞ』
『姑息な手段をとったと他国から嘲りを受けるでは無いか?』
『我らがしたと言う証拠は無い』
『馬鹿言え、どこの誰が王子を攫って得をする?王女ならまだしも』
ひそひそと小声で言いたい事を言っていた。要するにこのまま海翔が居なくなれば良いと言うのが大半の声のようだった。そして答えを求めるかのように皆がイエランに注目した。
その視線を受けた王イエランが口を開いた。
「例え王子が見つからなくとも黒翔国の返還に変更は無い。黒翔は黒翔族に任せる。王族が絶えたなら神の遺産も同時に失われただけだ。後どうするかは自分達で考えさせたらいいだろう。我が国が手を引くとはそういうことだ」
イエランの揺ぎ無い言葉に皆が静まり返った。しかし諦めの悪い者が恐る恐る異を唱えた。
「恐れながら・・・王は黒翔の王女を手に入れておいでです。王女が唯一の神の遺産を継ぐ者であれば必然的に・・・その・・・」
勇気を出して言った男はイエランの冷ややかな鋭い視線に言葉を継げなかった。
「彼女は我が国の神託の娘だ。天眼国のものであって黒翔国のものでは無い。だから黒翔のいざこざに関わらせるつもりは無い。皆もそのように心するように」
イエランは美羽をそう位置づけた。更に皆には追い討ちを掛ける。
「王子が居なくなって良かったなどと思っているような者は誇り高い天眼族にはいないと思っている。そうであろう?人の弱みにつけ込んで甘い汁を吸うようなやからは一族に居ない筈。だから我が国に着せられた汚名を晴らさなければならない。黒翔国の王となる海翔を見つけ出してその天眼の敵から救出する。我が国の名誉の為に―――そう心得よ!」
イエランは海翔の救出を天眼族の名誉に置き換えた。そう言われれば皆反対する者は居なかった。
「さようでございますな。今回で十分他国も我が国の恐ろしさを実感したことでしょうぞ。そして偉大さを示す機会となったというもの。我らの度量の広さを知らしめるにはうってつけでございます。殺しても飽き足りな無かった翅虫共に温情をかけ、いつでも黒翔と同じ目にすることも出来ると脅かしつつ、我らは寛容だから見逃してやる・・・ということを分からせる。それに我が国が何世代も待ち望んでいた神託の娘が現れた。全てはこの幸運を我らにもたらす為に世界が動いているようだと思いますぞ」
驕った考え方を付け加えたのはオーベリだ。昨日の意見と大違いだった。しかし今日のオーベリの言葉は自尊心の高い皆を十分に満足させた。不満も吹き飛び昨日とは打って変わった様子となったのだった。イエランは今日のオーベリはまともだと感じた。昨日が可笑しかったのだ。
(それにしてもオーベリ・・・上手いことを言う)
イエランは心の中でそう呟いた。美羽が自分のものになる為に全ての運命が動いているというような言い回しが気に入ったのだ。本当にそんな気分だ。
美羽に一瞬で恋をし、求め続けて手に入れた―――
神の遺産よりも素晴らしい宝だとイエランは思っている。それも自分だけの宝だ。
(この件は解決するまで彼女には伏せていよう・・・)
美羽に心配をかけさせたく無い。それよりも海翔を心配する彼女を見たく無かった。
そう思ったイエランはその間、美羽に会うのを忙しいと言う理由で避けようと思った。彼女に会えばどうしても海翔の事を聞かれるだろう。美羽の顔を見れば嘘が言えるかどうか・・・自信が無かった。
今まで散々騙してきたのに情けない話だ。
しかし事態は糸口を掴めぬまま日にちだけが過ぎて行った―――
美羽は心配で堪らなかった。
毎日、珍しい贈物は届くがイエランの姿を見ることが無くなってしまったからだ。
少しでも部屋に帰って休む暇も無い程忙しいらしい。
それでは身体を壊してしまうのでは?と心配してしまうのだ。
「今日もお帰りにならないのかしら?」
この数日、すっかり元気が無くなってしまった美羽にメラとルルナはどう答えていいのか困ってしまった。彼女達も王の様子は分からないのだ。あれこれと探って見たが中央の様子を教えてくれる者はいない。ぴったりと扉を閉めたかのように重苦しいものだった。
普段とは何か違うとは思うのだが不確かな事を美羽に告げて心配を増やすことは避けたい。
「そうですね。とにかく今、お忙しいみたいなので・・・」
「そう・・・そうよね」
美羽は溜息をつきながら窓の外を見た。今日も雪が降っている―――
イエランから自分が良いと言うまで部屋の外に出るなと連絡が入っていた。
心配無いと言ってもまだ不安定な情勢だから用心させたいとのことだった。
初めての恋・・・勇気を出して国を捨て大切だった兄を振り切って選んだ恋人は天眼の王。
決して自分だけのものには出来ない人なのだ。イエランには責任を負わなければならないものが多い。
それがこんな時は少し悲しくなってしまう・・・
そんな時、客がやって来た。王の居室まで訪ねて来るのはカルムぐらいだが、今はどちらかと言うと美羽がいるから他を近付かせないと言う方が正しいだろう。しかし訊ねて来た客は断れない人物だった。噂に聞く新しい王兄ラーシュだ。表向きは今度、王と結婚するだろうと噂される美羽への挨拶だが本心はイエランのことを探りに来たのだ。王が大切に宮殿の奥深くに隠していると言う噂の美姫。
(神託の娘が一番奴に関わっている筈だ・・・彼女の頭の中を覗けば何もかも分かるだろう)
ラーシュはイエランを操れなかったがそれを助ける弱みを探していた。
天眼の力あるものが王となるがイエランの力は天眼族の誇る念動力だ。その力も大なり小なり色々ある。木の実を転がす程度のものだったり山をも砕く力を持つ者だったり・・・もちろんイエランは後者だ。心眼の力が強ければそういった力を持つ者を支配するのも可能だった。しかしカルムでさえもイエランを抑えることが出来ず王になれなかった。念動力を操る者は強い精神力を要する。
イエランはそれが桁外れだから心眼に支配されないのだ。
カルムが駄目でも自分ならば・・・と思っていたラーシュだったが敵わないと知った今でも王座を諦め無かった。その弱みにつけ込み精神的に揺さぶりをかけた後に支配を試みようとしているのだ。
既に支配下にあるカルムを精神探査したが特に何も出なかった。
次に目を付けたのが美羽だった。噂を聞けば二通りあった。王は美しい彼女に目が眩んでいると言う話と、神託の娘という価値は認めていても敗戦国の姫という冷たい扱いしかしていないと言う話だ。
いずれにしても美羽と会えば全てはっきりするだろうと思った。
「初めましてミウ姫。ラーシュと言います。一度ご挨拶でもと思って来ました。今後共、宜しく」
「こちらこそ、宜しくお願いします」
ラーシュのいきなりの訪問に美羽は戸惑っていた。
部屋の中にはメラやルルナが一緒に居るとは言っても嫌な気分だった。養父の影響で男に対する恐怖心が抜けないのだ。特に最近酷い目ばかりあっているから尚更だ。
しかし彼の瞳はそういった男達とは全く違っていた。今までの男達は強い劣情を宿していたが彼からは何も感じなかった。感じないから危険では無いと思いたいがそういう気にも何故かなれない。
美羽の中から何かざわざわとするものがあった。
メラ達は彼の後ろに方に居たから見えなかったが突然金の天眼が開いた。
美羽は一瞬驚いた顔をしたが直ぐに微笑んだ。
「本当に兄弟だと王と一緒なんですね。きれいな金色・・・」
ラーシュは馬鹿な!と叫びたかった。
イエランと同じく美羽の心が読めないのだ。当然そうなれば記憶も視ることは出来ない。
金の天眼が開いていると察知したメラが危険を感じて美羽の側へやって来た。そのメラの心は手に取るようにラーシュには読めた。美羽を守ろうとする気持ちとラーシュへの不信感に敵意だ。
「ミウ様、こちらに」
「メラ?どうしたの?」
メラが美羽を庇うようにラーシュとの間に立ちふさがった。
(どういうことだ?彼女は黒翔族の筈・・・心眼を持つものでは無いだろう?)
ラーシュは先日のイエランといい、今日の美羽といい・・・こんなにも力が通じないことは初めてだった。そうなると焦りを通り越して苛立ちが強くなる。
「ご挨拶の他に何か御用がございますか?無いようでしたらお帰り下さいませ。ミウ様にはこれから予定がございますので」
「メ、メラ」
美羽はイエランの兄に失礼な態度をとるメラに驚いた。もちろん籠の鳥状態の美羽にこれからの予定など無い。メラの態度はラーシュを逆に冷静にさせた。ここで悶着を起こしても立場が悪くなるだけだ。ラーシュは天眼を閉じると瞬時に仮面を被るように人懐っこい微笑みを浮かべた。
「失礼。姫があまりにも美しかったので驚いてしまった。驚くと天眼が開いてしまうんだよね。驚かせてしまってごめんね」
メラはその言葉を信用しなかったが美羽は少し微笑んだ。
「王も・・・王も怒った時、天眼が開きます。同じですね」
「はははっ、そうだね。こないだ見たけど・・・確かにそうだね」
あの時の敗北感をラーシュは思い出した。美羽はそんなイエランをよく見たが、リネアに言わせると滅多に無いことだと言っていた。ラーシュはそれを知らないからイエランは冷厳なとは噂だけで実は熱しやすい性格なのだと誤解しているようだ。
熱くなるのは美羽に関してだけなのだがラーシュはまだ気がつかないようだった。
(確かに美しいが・・・それだけだ・・・)
ラーシュは美羽に性的にも興味を覚えなかった。
母親に歪んだ愛を押し付けられたせいか女という生き物を嫌悪していた。
息子だけを生きがいとした母の盲愛ぶりは異常だった。ラーシュを他人に関わらせなかったのは出生を秘密にしたいだけでは無く、息子を誰にも取られたく無いという執念のようなものだったのだ。
幼い頃から心眼で心を侵され身体も無理やり強要され続けた。母親との性的行為は世間的に許されないと知らない時から何故か吐き気を覚えていた。それを知った時はやはりと思った。誰が見ていなくても身体に流れる血が拒否していたのだろう。思い出すだけで嫌悪感が湧いてくる。
「・・・ラ・・・シュ・・・ラーシュ様?」
美羽の呼びかけに物思いに耽っていたラーシュは、はっと我に返った。
(こんなところで、ぐずぐずしている暇は無い!)
ラーシュは簡単な挨拶だけ残してさっさと退室してしまった。
「本当に挨拶だけだったのですかね?」
メラはまだ警戒を解いていないようだ。
王から不審な男を近づけるなと厳しく言われている。それが王の兄でも例外ではないだろう。
「メラ、心配してくれてありがとう」
美羽はそう言った後、ふと目に入った机に数日前の出来事を思い出してしまった。それを思い出すと自然に身体が火照ってくるようだ。イエランからその机に押し付けられて受けた愛撫。嫌だと言いながらも最後までしなかったのが今ではとても心残りだ。耳元で囁かれた淫猥な言葉だけが耳に残って今でも木霊している。最近では夢にまで出てくる有様だ。とにかくイエランが恋しくて、恋しくて堪らない。
もちろん耐えているのは美羽だけでは無い。イエランもそうだった。何日も無駄な日を過ごし自分で決めたとは言え進展のない状況に苛立ちが募る。
「まだ、海翔の消息は掴めないのか!」
「そのようです。リネアも手を尽くしているようですが・・・これと言った手掛かりも無く」
カルムが事務的に答えた。
「―――分かった。カルム、黒翔に赴き天晶眼を使って遠見をしろ」
イエランも決断を下した。遠見に優れたカルムは国の重要な守護者だ。国の中心である水晶宮の守りにその眼を配っている。それを他国へ向わせると言うのだ。
「・・・王のお考えに従いましょう」
天晶眼を託されたカルムは黒翔国へと向った。
信頼するリネアとカルムならこの件を解決してくれるだろうとイエランは思ったのだった。だがカルムの守護が無くなった水晶宮に魔の手が忍び寄っているとは流石のイエランでも気がつかなかった。
鉄壁な水晶宮はカルムの張った天眼の力の賜物だった。
それが無い今、狙われたのは―――美羽。
美羽の悲鳴は男の大きな手のひらで遮られた。
目の前にはメラとルルナが倒れている。外傷が無いからただ眠らされているだけかもしれない。
後ろからいきなり抱きすくめられるように口を塞がれた美羽は抵抗しようともがいた。
「おっと、大人しくしな。そうじゃないと痛い目みるぞ」
美羽はその声に聞き覚えがあった。猛牙国で会った男だ。
確か宋と呼ばれていた・・・危険だと美羽は思った。逃げなければ!
「うっっ・・・・・・」
力いっぱい抵抗し始めた美羽に宋は舌打ちした。
「抵抗するなって言っているだろう。おれは手荒なことはしたく無いんだ!」
宋は嫌そうな顔をして美羽の口から手を離すと顎を掴んだ。
「い、嫌――っ!」
叫びかけた美羽に宋は唇を重ねた。
宋は奥歯で何か噛み砕きそれから流れ出たどろりとした液体を美羽に無理やり口移しで流し込んだのだ。痺れるような苦い液体を美羽が飲み込むまで唇は深く重ねられた。
「うっっ・・・くっ・・・う」
飲み込んだのを確認した宋は口づけを解き最後にぺろりと美羽の唇を舐めた。
「まあまあだが、お子様は趣味じゃないんでね。あんたというか・・・あの恐ろしい王様には関わり合いたく無かったんだが・・・こっちも大事なものがあるんでね。すまんな」
美羽はその声が遠くに聞こえた。意識が朦朧としてきたのだ。
崩れる美羽を宋は抱えると密かに姿を消した。深々と降る雪がその行方を消し去って行った。