「今だっ!やれい!」
「何っ!」突然・・・・そう突然の襲撃だった。アイシスを崇拝する下エジプトの兵士たちが又襲ってきた。カナンの命を狙って・・・。
(まさか・・・!こんなに早く二度目の襲撃を仕掛けてくるとは!)
「衛兵〜!何をしている!賊だ!であえー!!」すばやく腰から剣を抜き応戦体制に入る。何としても2人を・・・いや、3人を守る。今度こそかすり傷一つ負わせはしない。ウナスはその思いを胸に戦い始めた。
「賊だと!?ウナスっ」すばやく衛兵が駆けつける。その場は・・・・地獄と化した。賊の断末魔の叫びと、血のにおい・・・。和子を身籠るカナンにとってこれほどの衝撃はなかった。だが、今はジュリアンを守らなくてはならない。この子にこの光景を見せてはならない。まだ早すぎる!咄嗟にジュリアンの顔を胸に引き寄せた。・・・震えているのがわかる。自分も戦いたいが剣はさっきメンフィスに没収されてしまった。形勢は今のところおされ気味だ。人数に違いがありすぎる。おそらく向こうはこの襲撃を最後と決め、全てをかけてきたのだろう。かなりの大人数で押し入っている。
「アイシス様の御為に!死ねい!」剣が目の前に振り下ろされた。・・・だがカナンは女子の身ではあるとはいえ、武術の心得はある。並みの賊にやられるようなものではない。すばやく第一刀をかわした。足元にある剣が目に入る。それを拾い上げた。
「何よ!アイシス様って!私には何の関係も無いでしょっ!?」
「御身はキャロルの姪。アイシス様にとっては目障りな存在であることにかわりはない。あのお方のお目障りなものは何人たりとも生かしてはおかぬ。」首謀者であるその賊は答えた。ああ、またか。とカナンは思った。命を狙われるのはこの世界に来てからが初めてではない。現代にいたころもリード・コンツェルンの総帥の娘ということだけで何度も誘拐され、殺されそうになることもしばしばあった。下校途中に突然見知らぬ男に刺されたこともあった。自分には何の罪もないというのに!
「カナン!逃げろっ!」遠くからウナスの声が聞こえてくる。だが、今はかまってなどいられない。決着を・・・・つけねばならない。自分自身と・・・。
「私が邪魔なのでしょ?」
「何度も繰り返すつもりは無い。」
「そう。だったら、勝負しましょう。一対一で。このくらいのルール守れるでしょ?」
「ほざけ!」斬り合いが始まった。カキーンと刃が何度も何度も交わっては離れ、又交わる。どちらも一歩も引かない。だが、怪我をし、身籠っているカナンに長期戦は不可能だ。一刻も早くけりをつけたい。また、首謀者もあせっていた。早くけりをつけなければ援軍がきたら、皆殺しになってしまう。・・・・アイシス様の帰る場所が・・・守るものがいなくなってしまう!
「こしゃくな!死ね!」
「うるさいわ!」壮絶な斬り合いは尚も続いた。時は刻々と流れる・・・。
「ウナス!待たせたっ!」援軍が駆けつけてきた。先頭にいるのはメンフィス、そしてミヌーエ、ルカ!
「おお!カナンを頼みます!」
「任せろ!」メンフィスはかかってくる敵をなぎ倒しカナンのもとへと向かった。そこには息も絶え絶えのカナンと首謀者がいた。どちらにも所々に血が滲んでいる。
「どけぃ!何をしているカナン!逃げよ!」
「・・・・・・どきません。叔父様。ご無礼は承知。下がってください。」
「何を申す!逃げよ!」
「どきません!これは・・・私の最後の戦いです!」そう言うが早いかカナンはまた斬りかかっていった。カーン、カーン・・・・カキーン!剣が片方宙を舞った。
・・・・・・・・・首謀者の剣だった。ドサリ、と腰をつき、己をすごい形相で睨む首謀者をカナンは見下ろした。カナンの目には涙が溢れていた。
「知っている?何の関係も無い人から命を狙われる悲しさ?私はずっと悲しかった。小さいときから幾度と無く命を狙われてきた・・・・。会ったこともない人から・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」沈黙を持って首謀者は答えた。
「何も信じられなくなるの。友達も・・・・・・家族も・・・。世界中にたった・・・一人なんだって・・・・・ああ、誰も私を助けてくれないんだって・・・。孤独になるの。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
―― 3 ――