あれから・・・・・・・・何ヶ月かの時が過ぎた。カナンのお腹は日に日に大きくなってくる。今では少しの距離を歩くのでさえ一苦労だ。ウナスとの仲は相変わらず睦まじく、あれ以来、喧嘩らしい喧嘩もしていない。
「おい!カナンっっ!またベッドから抜け出したな!」汗だくのウナスが追いかけてくる。カナンのお転婆ぶりは健在で・・・・。今日も午睡の時間だというのに眠くないから寝ない、と一言。・・・・・・・・言うなり唖然とする侍女をおいてベッドから抜け出していたのだ。
「いいじゃない・・・・。ちょっとくらい・・・。」頬をプーッと膨らませてカナンは反抗してみた。もちろんそんな事くらいでウナスは引きはしない。カナンはちょっと小走りして逃げたが身重の身で早々長くは走れない。すぐに捕まってしまった。
「駄目だと言ったら絶対駄目だっっ!」
ちょっと心配しすぎじゃないかしら・・・・・・・・。ジュリアンのときもそうだったけど。
カナンは中々、夫が外に出してくれないので最近ちょっと不満気味だ。無茶されたら困る、というけれど・・・・・もうしないわ!だから少しくらい・・・・・いいじゃない。
「ねえウナス。お願いよ。あとちょっとだけ、ね?」上目遣いでウナスを見つめる。彼はこうすればたいがいのお願いは聞いてくれるのだ。恋人時代に見つけた彼の弱点・・・・。今なおそれは健在だ。
「仕方ない・・・・・・・・。でもいいか!本当にちょっとだけだぞ!」
「はーい♪」キャッキャッとはしゃぐカナン・・・・。先を思うと少し不安になったウナスだったが・・・・外に出たいというカナンの気持ちを汲んでやることにした。
「なあカナン・・。あとどれくらいで生まれるんだ?」木陰で休むカナンの隣でウナスは尋ねた。
「また?もう、最近そればっかりよね。ウナスったら。」口もとに優美な笑みを浮かべながらカナンは言った。彼女のお腹はポッコリと膨れ上がっている。小食のためか、普段の容姿と大きく違うのはそこだけだ。あとは細い足も、華奢な腕も全く変わっていない。妊婦なのかどうか疑ってしまうほどに・・・・。
「今度の子はのんびりやさんなのよ。もうネゼグの言った予定日を10日も過ぎてるの。一体いつまでお母さんのお腹にいるのかしらね?」重いのよ?あなた?、と悪戯っぽく言いつつもそのお腹をなでる手つきはゆっくりと優しげで、お腹を見つめる表情は幸せそのものであった。ウナスはそんなカナンを見ていると自分まで何だか幸せな気分になってくるのであった。
「おい!あんまり母様を困らせるんじゃないぞ?早く出て来い!」ウナスはカナンのお腹に自分の手を当て話しかけた。
ポコッ!
「!?おい!今動いたぞ!」手に返ってきた元気な胎動にウナスは歓喜の声を上げ嬉々とした目でカナンに視線を移した。
「ふふふっ。だって父様はせっかちですもんね?あなたも困っちゃうわよね?」
「おいおい。聞こえてたらどうするんだ?やめろよ。」
ちょっとだけ・・・・・・・・のつもりだったが結局夕刻まで二人はそうしていた。
ナイルに風が吹く・・・・・・・ラー神がその姿を隠しゆく・・・・・・・・・
おおハピよ・・・・・・・・・・・・・・・・御身は偉大なり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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