220000HIT お礼リクエスト作品 第10弾
今回のリクエストは、はっちさんからのリクエストで「海賊設定サンゾロ ゾロが風邪をひく」お話です。はっちさん、リクエストありがとうございました。タイトルもはっちさんにつけていただきました。
バードキス
それは嵐の日のことだった。
「今日は船の揺れがひどいでしょうから、早めに休みましょう。」
とナミが言ったので、みんな夕食を早々に済ませるといつもよりも早めに部屋に戻った。
そのため、嵐に気を取られていて誰一人ゾロの様子がいつもと違うことに気づいていなかった。
いつもと違うこと・・・それは夕食をほとんど食べなかったことであり、酒も飲もうとしなかったことであり、そしてひどく汗をかいていることであり・・・。
気づける要素はいくつもあったのに、誰ひとりそのことには気づかなかった。
夜になるまでは。
その日の夜、ナミの指摘したとおりに船はひどく揺れていた。
幼い頃の記憶のせいで嵐が苦手なサンジは、そのことを気取られることのないように、ボンクに潜り込み、眠った振りをしていた。
とにかく余計なことを考えずに、ただ眠ることだけに集中しようとしていた。
ところがそのとき、サンジの耳に声が届いた。
「んーっっ。」
それは紛れもなく苦痛を訴える声だった。
サンジは誰の声か確かめようと起き上がって暗闇に目をこらした。
ブルックは船番だ。
ルフィもウソップも寝ている。
フランキーもチョッパーも寝ている。
ということは、ゾロか?
サンジはゆっくり近づいた。
ゾロは朦朧とした意識で、苦しんでいた。
額には汗をかき、呼吸は速く、浅い。
サンジは、すぐにチョッパーを起こした。
「チョッパー、起きろ。チョッパー。」
サンジはできるだけ他の仲間を起こさないように静かにチョッパーの体を揺すった。
「ん?もう朝飯か?」
「違う。寝ているところ悪いんだが、起きてくれ。」
「どうしたんだ?」
「ゾロが、やばそうなんだ。」
その言葉が寝ぼけていた船医の頭を一気に覚醒させた。
チョッパーは飛び起きると、医療用カバンをつかんでゾロのところにやってきた。
チョッパーはすぐに異変を感じ取った。
チョッパーは暗闇に横たわるゾロに声をかけた。
「ゾロ、俺だ。大丈夫か?」
しかし、返事はない。
チョッパーは恐る恐るゾロの額に手を触れてみた。
「ひどい熱だ。今、薬出してやるからちょっと待ってろ。」
そう言ってからチョッパーは後ろにいたサンジに声をかけた。
「サンジ、明かりをつけてくれ。みんなを起こして、氷や毛布の準備をしてくれ。」
「わかった。」
サンジは言われたとおり、部屋の明かりをつけた。
そして恐る恐るゾロの方に目をやった。
ひどい顔色だな。
まず最初に思ったのはそれだった。
額には脂汗がにじみ、はぁはぁと熱い息をもらしていた。チョッパーが薬を探している間も、苦しみ続けているゾロ・・・こんな姿を見るのは初めてのことだった。
フランキーが先に起きたので、急いでウソップとルフィをたたき起こすと、ゾロのそばにしゃがみこんだ。
チョッパーが薬の用意をしている間、少しでも苦痛を和らげてやりたいと思い、
ゆっくりと布団の上から身体をさすってやった。
それに気づいたゾロが、ゆっくりと目を開けてサンジを見た。
「サンジ・・・」
「あぁ。大丈夫だ。今、チョッパーが楽にしてくれるから。」
「息が、苦しい・・・」
「あぁ。わかった。大丈夫だ。もう少しの辛抱だ。」
苦痛を訴えるゾロの潤んだ瞳を見て、サンジは思っていた。
まるで子どものようだと。
たたき起こされたウソップとルフィはすぐにチョッパーにこき使われていた。
氷を用意し、新しいタオルを用意し、洗面器に水をはり、熱を少しでも下げられるようにできるだけのことをした。
フランキーは医務室の準備を整えている。
薬を飲んでもゾロの苦痛はなかなか治まらないものの、少し様子が落ち着いたのを見計らって、ゾロを医務室へと運んだ。
そのちょっとの移動でも苦しむゾロを見て、どれだけひどい苦しみに襲われているのかとチョッパーは思い知らされた。
「チョッパー、ゾロ、大丈夫なのか?まだ苦しそうだぞ。」
「わかっているよ。もう少ししたら薬が効いてくると思うから、それまで我慢してね。」
チョッパーが申し訳なさそうに言った。
するとサンジが言った。
「チョッパー、まだお前がしてやれることはあるか?」
「えっ?」
「まだ飲ませる薬があるとか、何かすることはあるのか?」
「いや。あとは薬が効いてくるのを待つだけだから。」
「そうか。じゃあ出て行ってくれないか?」
「どういうことだ?」
「せっかく珍しくこいつが痛いって言っているんだから、ちゃんと受け止めてやりたいんだ。」
チョッパーは何を言われているのかわからなかった。
ルフィも不思議そうな顔をして俺も残っていいのか?と聞いてきた。
しかしウソップが怪訝な顔をしている二人をつまみあげた。
「サンジ、お前に任せる。」
「ありがとうよ、ウソップ。」
ウソップはルフィとチョッパーを連れ出して、ドアをしめた。
「何するんだよ、ウソップ。」
「俺は医者だぞ。ゾロの傍にいるんだ。」
「俺は船長だ。一緒にいてやるんだ。」
「馬鹿だな、お前ら。」
「なに?」
「チョッパー、医者であるお前がしてやれることはもうないんだろう?」
「でも、俺は仲間だからそばにいてやりたいんだ。」
「俺もだ。」
「でもな、ゾロはそういうの苦手だろう?俺、苦しいなんていうの、初めて見た。」
「そう言えば、そうだな。」
「それくらい、今のあいつは辛いんだ。それなのに俺たちがみんなでずっと心配そうな顔を並べていたら、あいつはそのうちそっちの方が辛くなって、苦しいと訴えることもなくなって、大丈夫だなんて言い出すんだよ。いつもそうだろう?」
「そうだな。あいつは、すぐに無理するからな。」
「だから今くらいは、静かにさせてやろうぜ。」
「でも、どうしてサンジはいていいんだ?」
「あいつが最初にゾロが苦しんでいることに気づいたんだろう?そのくらいの権利はあると思うぜ。
それに、ずっとサンジはゾロの背中をさすりながら、あいつの言葉を聞いてやっていたじゃないか。」
「そうか。そうだな。」
「わかった。今日のところはゾロのことはサンジに任せる。」
「あぁ。」
一方部屋に残ったサンジは、苦しがるゾロに付き添っていた。
「暑ぃ・・・」
なかなか効き目を現さない薬に、ゾロの体力も限界を迎え始めているようで、目からは涙があふれ始めていた。
「ゾロ、ごめんな。こんなになるまで、気づいてやれなくて。ずっと辛かったんだろう?」
サンジは反対の手でゾロの涙をぬぐってやりながら言った。
「ごめんな。大丈夫だ、そばにいるから。」
ゾロは背中にあてていた手を今度は頭にのせた。
ポン、ポンとやさしく、なだめるように乗せた。
ゾロはまるで魔法にかかったかのように、ゆっくりと目を閉じて、そしてようやく眠りに落ちた。
でもその寝顔はまだ苦しそうだった。
翌朝、ゾロのことを聞かされたナミとロビンも驚いていた。
「そっか。ゾロが痛いって言ってたのか。」
ナミは遠くを見るような顔で言った。
「どんな怪我しても、大丈夫だって言って眠って治す奴なのに、相当辛かったんだね。」
「うん。かなり我慢していたみたいで、薬もなかなか効かなくて。」
「とにかくサンジくんが付き添っているなら、私が代わりに朝ごはんつくるから、
あんたたちは顔を洗っていらっしゃい。」
ナミが食事の支度をしていると、キッチンにサンジが顔を出した。
「ナミさん。」
「あらサンジくん、おはよう。」
「食事の支度なら俺がやりますから。」
「いいのよ。サンジくん、昨夜はずっとゾロに付き添っていたんでしょう?
少し休んで。食事は私が作るから。」
「でも・・・」
「傍にいてあげたいんでしょう?」
「すいません。」
「ただし、サンジくんまで倒れるようなことになったらだめよ。
そうなったら、付き添い禁止にするからね。」
「はい。気をつけます。」
「ところで、ゾロの具合はどう?」
「今は薬が効いていて眠ってますけど、それでもまだ熱は引いてなくて。」
「そう。何かあったら言ってね。」
「はい。」
サンジは再びゾロのもとに戻った。
眠っていても、ゾロの顔は苦痛に歪んでいた。
薬で強引に熱を抑えているものの、なかなか収まる気配は見えず、どうしてこんなになるまで気づいてやれなかったのかと後悔ばかりが胸に押し寄せた。
「ごめんな、ゾロ。」
何度この言葉を口にしたかわからない。
でもゾロが元気になるまで何度でも口にしてしまいそうだった。
そのとき、ゾロが不意に目を開けた。
「サンジ?」
「あぁ。気分はどうだ?」
「最悪・・・」
「だろうな。まだ熱も下がってないからな。どうだ?少しは楽になったのか?」
ゾロはそれには答えず、
「サンジ、もう、謝るな。」
そう言って、目を瞑った。
そこへチョッパーが入ってきた。
「どうだ?」
「今、目をさました。でもまだ調子悪そうだ。」
サンジが答えた。
「そうか。でも今はこの薬しか用意できないんだ。ごめんな。」
するとゾロはチョッパーに
「お前も謝るな。」
と言った。その声があまりに弱々しくて、チョッパーは泣きそうな気持ちになった。
ゾロの熱は夜になっても下がる気配がなかった。
チョッパーが投与した解熱剤が効いているうちに睡眠を取り、それが切れると40度近い高熱と痛みに襲われることの繰り返しだった。
「風邪が悪化して、肺炎を起こしてるんだ。早く抗菌薬を投与しないと、いくらゾロが体力があると言っても、危険だ。」
チョッパーがそう宣言するとナミが言った。
「だとしたら、私達のやることは2つ。まず1つ目は交代でゾロに付き添って、ゾロが少しでも体力を維持できるようにすること。
2つ目はできるだけ早く次の島に向かえるように船を全速力で進めること。」
「そうだな。」
「ゾロのためにできることなら、何でもするよ。」
「じゃあみんなで交代でゾロの付き添いをしましょう。サンジくんは、少し休んで。」
「いえ、できるだけ傍についていてやりたいんです。」
「気持ちはわかるけど、これ以上傍にいたら、ゾロはあなたの心配までしなきゃならなくなるわ。
今は自分の体のことだけ考えさせるようにしなきゃならないから、あなたは少し休むべきよ。そうよね、チョッパー。」
「ナミの言うとおりだ。サンジ、昨日からほとんど眠っていないんだから、少し休まなきゃだめだ。すごく疲れた顔してる。」
「でも俺よりもゾロの方が辛いから。」
「そんなことはわかっているよ。でも、眠れないにしても横になるだけでも違うから。ね?」
「わかった。じゃあ少し休ませてもらうよ。」
「そうして。その間、私が付き添うから。」
「俺が付き添う。」
ルフィが言った。
「あんた、静かにできるの?ゾロを起こしたり、わがまま言ったりしない?」
「しない、しない。」
「そう。じゃあいいわ。」
こうしてクルーたちは交代でゾロに付き添ったり、船を早く進めるためにできるだけのことをした。
ようやく島に到着したのはその2日後のことだった。
「この島なら薬も手に入ると思うぞ。」
「チョッパー、ウソップと一緒に先に船を降りて薬を調達してきてちょうだい。」
「わかった。」
「ルフィ、あんたは船の周りを警戒しておいてよ。」
「あぁ。任せとけ。」
「私はロビンと一緒に街に出て、ログポーズの情報を仕入れてくるから。」
その頃、ゾロに付き添っているのはサンジだった。
「島に着いたぞ。」
「そうか。」
「大丈夫か?」
「この位で死ぬかよ。」
これまでよりもちょっとだけ心強いセリフを口にしたところを見ると、ゾロも島に着いたことで安心したのだろうとサンジは思った。
しかしまだ安心はできない。
目的の薬が手に入らなければ、ゾロの体力が限界を迎えてしまうのだ。
「もうちょっとの辛抱だからな。俺たちは、絶対にお前を助けるから。」
「あぁ。」
ゾロは穏やかな表情で、眠りに落ちて行った。
チョッパーは大きい病院を見つけると、すぐに薬を手に入れて船に戻ってきた。
「ゾロ、これで楽になるからな。」
「あぁ、ありがと・・・な。」
「礼なんて、それはちゃんと治ってから、言えよ。」
照れたような、それでも医者らしい顔でチョッパーが返した。
その後、薬が効いたのか、ゾロの熱は下がり、どうにか身体を起こしていられるようになった。
「まだまだ、だからな。」
ゾロの心を見透かしたように、チョッパーが言った。
「何がだ?」
「身体がなまっちまった。早く鍛錬しねぇと、とか思ってるだろ?」
図星をさされて、ゾロが押し黙る。
「病気になったのは、ゾロが弱いからじゃない。問題は、調子が悪いと気づいても無理して、誰にも言わないで、悪化させたことなんだからな。」
それを聞いて、ゾロは素直に
「悪かった。」
と頭を下げた。
ゾロ自身、今回は仲間たちに迷惑をかけたという自覚はあるのだ。
「だったら、俺がいいって言うまで鍛錬は禁止だからな。」
「わかった、約束する。」
ゾロから約束という言葉を聞いて、チョッパーは満足そうに笑った。
その夜、サンジがゾロのための食事を持って医務室を訪れた。
「チョッパーが喜んでたぞ。」
「何でだ?」
「お前が約束してくれたってさ。」
「そうか。お前にも迷惑かけたから、礼、しなきゃな。」
「だったら、俺とも約束してくれねぇか?」
「何を約束すればいいんだ?」
「お前はさ、簡単に弱音を吐く奴じゃねぇし、辛いからって進むのを止めるような奴じゃねぇってのは、わかる。だからさ、今回みたく本当に辛いなって思ったら、俺にだけは正直に言ってくれ。」
「何だよ、今回みたくって。」
「もしかして、覚えてねぇの?俺に、苦しいとか辛いとか言ったこと。」
「言ってねぇ。」
「言ったって。」
「言ってねぇっ!」
照れたゾロは布団にもぐりこんでしまった。
おそらくその顔は熱が下がったのに、赤く染まっていることだろう。
「じゃ、ちゃんと飯食えよ。」
サンジは余裕の表情でそう言い残すと、医務室から出て行った。
布団の中で火照った顔を必死に収めながら、二度と風邪などひくものかと心に誓うゾロだった。
END
ということで、今回は弱りゾロ満載でお送りしました。
できるだけサンゾロ要素を盛り込みつつ、心配する仲間たちを書かせていただきました。
これでまた弱りゾロスキーさんが増えてくれるとうれしいです。
リクエストしていただいたはっちさん、素敵なリクエストありがとうございました。