220000HIT お礼リクエスト作品 第2弾
今回のリクエストは、夜のゾロ争奪戦。ということで今回は、パラレル設定です。
トーコさん、素敵なリクエストをありがとうございました。タイトルもリクエストしてくださったトーコさんにつけていただきました。
愛しい人
空には満月。
しかも今日は雲ひとつない絶好の月見日和だ。
「久しぶりに、行っちゃおうかなぁ。」
ベンに無理やり渡された書類と格闘しながら、シャンクスは呟いた。
シャンクスは居酒屋チェーンを経営する会社の社長であり、ベンは副社長だ。
事務的なことは基本的に部下に任せながらも、そのカリスマ性で社員たちから絶大の信頼を寄せられているシャンクスは、やはり人の上に立つ人間なのだろうとベンは思っている。
しかし、それでもどこか子どものようなところのあるシャンクスは、気を許せばすぐに仕事をサボろうとする。
それを戒めるのが自分の仕事だ、とベンは思っている。
「その仕事が終わってからじゃねぇと、ここから一歩も出れねぇことはわかってるよな。」
「ベンちゃん、硬いこと言うなよ。」
「そうか。じゃあ俺は先に失礼・・・」
「ちょっ、ちょっと待て、ちょっと待て。わかったよ。ダッシュでこれ終わらせるから。」
「それが正解でしょうね。あいつは不真面目な人間は嫌いですからね。」
あぁ、やはりどこに行こうとしているかバレていたかとシャンクスは苦笑いした。
今、シャンクスが気にしている相手は、ゾロだ。
ゾロは現在、シャンクスの会社で働いているが、知り合ったのはもっと前だ。
ゾロの学生時代からの友人であるルフィの保護者のようなことをしているので、その縁でゾロと顔を合わせることがあったのだ。
今時珍しいほど硬派なところもあるが、天然なところもあって、実にからかい甲斐、いやかわいがり甲斐があるのだ。
しかし狙っているのは自分だけではないようなので、油断はできない。
とにかくさっさと仕事を終えて、様子を見に行こうと再び仕事に集中し始めたのを見て、安心したようにベンは部屋を後にした。
結局その2時間後に片付けるように言われた仕事を終えたシャンクスは、あっと言う間に上着を羽織り、出かけようとする。
ベンはいつものことなので、ただ一言
「送りますよ。」
と言って車のキーを見せた。
「ありがとな、ベンちゃん。」
シャンクスはウキウキで部屋から飛び出した。
途中、いきなり車を止めて
「ちょっと待っててください。」
と言うと、ベンは一人で1軒の店へと入って行った。
そこは、近所でも有名なアイスクリーム屋であり、ゾロも以前ここのアイスが大好きだと以前言っていた。
(これでポイントUPだ。さすがベンちゃん。)
シャンクスは、アイスを見て満面の笑顔を見せるゾロを想像し、にやりと笑った。
ピンポーン、と部屋のチャイムを鳴らしたが、応答はない。
窓を見れば明かりがついているから、留守ではないはずだ。
(おかしい・・・)
ドアノブを握り回してみるが、鍵がかかっている。
こうなったら仕方がない。心の中で近所のみなさんに申し訳ない、と思いながらシャンクスはドンドンと大きな音をたててたたき始めた。
「ロロノアさ〜ん。」
大きな声で名前を呼ぶ。
そうすると、中からバタバタというイライラを感じさせる足音が響いてきた。
がちゃりと鍵が外される音がして、ドアが開く。
「ゾロちゃ〜・・・、あら。」
出てきたのはゾロではなかった。
「何であんたがここにいる訳?」
「近所迷惑だ。すぐに帰れ。」
そう言い放ったのは、ジュラキュール・ミホークだった。
ジュラキュール・ミホーク。
それは今、シャンクスにとって最大のライバルの名だ。
と言っても、商売敵ではない。
昔、お互いにまだ若い頃、ときどき一緒にやんちゃをする仲だったのだが、ミホークがゾロが高校のときに剣道を指導していた講師であることがわかってから、何となく交遊が復活したのだ。
と言っても、他にあまり興味を示さないあの男がゾロにだけ関心を示していることから、ミホークもまた、ゾロを狙っているようだから、油断はできない。
そう言えば、昔からどこか好みが似ていることが多かったと懐かしくは思いつつ、それでもゾロを譲る気はない。
「俺はゾロちゃんに会いに来たのであって、あんたのしかめっ面を見に来たわけじゃねぇんだけど。」
「俺としても、お前が来ることは予定には入っていない。さっさと帰れ。」
大の大人二人が玄関で言い争っていると、部屋の中から
「ミホーク、誰か来たのか?」
というゾロの声が聞こえた。
「いや、隣の住人が部屋を間違えたようだ。」
「ふうん。じゃあ、早く続きやろうぜ。」
(続き・・・やる?!)
ゾロのセリフに焦ったシャンクスが、大慌てでドアの隙間に身体をねじ込む。
「ゾロちゃ〜ん、俺だよ。」
「ん?俺?」
ゾロが裸足のままぺたぺたと足音をたてて玄関に出てきた。
「シャン?」
「おう。ほらゾロ、お土産だぞ。」
シャンクスはすかさず、手に持っていたビニール袋を差し出した。
「アイス!シャン、ありがとうな。俺がこのアイス好きなこと、覚えててくれたんだ。」
ゾロは満面の笑みを浮かべて袋の中に手を伸ばす。
「で、ゾロはこのおじさんと何してたのかな?」
「ゲーム。今、すっげぇ強い敵出てきてさ、あとちょっとだったのに。」
「ゲーム・・・ねぇ。」
そう言うと、シャンクスは意味ありげにミホークの顔を見た。
「そう言えば、シャンもゲームとかやるの?」
「当たり前じゃん。かなり上手いよ。」
「そうなの?じゃ、ちょっと手伝ってくれよ。」
「おう、お安い御用だ。」
シャンクスは乱暴に口を脱ぎ捨て、部屋の中へと入って行った。
ゾロの言葉を証明するように、テレビにはゲームの画面が映し出され、その前にはコントローラーが2台、放り出されていた。
「で、どの敵を倒せばいいのかな?」
「こいつ!めちゃくちゃ強ぇんだよ。ミホークと一緒にやってたんだけど、全然倒せなくてさ。」
「それで、俺がチャイム鳴らしても、出てこなかったのか?」
「ミホークが、いいから放っとけって。」
「ふうん。」
そう言って、シャンクスはミホークを意味ありげに見た。
恐らく、ミホークはチャイムを鳴らした相手が自分であることをわかっていて、邪魔をさせないようにしたのだろうがそうはいかない。
ここで、ゾロの感心をこちらに引き寄せようとシャンクスはコントローラーを手に取った。
実際、シャンクスはいつもベンに「いい大人が」と言われるほどゲーム好きなのだ。
もちろんゾロたちが苦戦したゲームなどお手の物だ。
「じゃあ、いっちょやりますか。」
床にどかりと座り込んで、ゲームを始めた。
ゾロがシャンクスの隣に座って袋からアイスを取り出した。
カップに入ったアイスが二つ。
ゾロはそれをじっと見て、少し考え込むような顔をした。
「どうした?」
それに気付いたミホークが声をかけた。
「アイス、2個しかねぇ。」
「そんなことか。私なら別に・・・」
「でも、せっかく来てくれたし。」
「ゾロちゃんは優しいねぇ。」
ゲームに夢中になっていたシャンクスも横目でちらりとゾロを見て言う。
「俺なら、ゾロちゃんと半分してもいいぜ。」
「でも、シャンだって暑い中で仕事してから来てくれたし。そうだっ!」
そう言うと、ゾロは財布と携帯電話を持って立ち上がった。
「どこへ行く?」
「コンビニ。じゃ、留守番よろしく。」
そう言うと、ゾロは笑顔で部屋を飛び出して行った。
部屋に残されたシャンクスとミホークの間に微妙な空気が流れる。
「あんたと二人きりになってもな。」
「それはこちらのセリフだ。」
一方、部屋を飛び出したゾロは一番近いコンビニへと足を向ける。
一度振り返って自分の部屋の窓を見て、ごめんと小さく呟いた。
コンビニの駐車場に行くと、そこに止まっている一台の車に近づく。
運転席の窓がゆっくりと開く。
「気づいたか。」
「うん。」
ゾロが普段よりも幼い表情で頷く。
実はベンがシャンクスに渡したアイスには、あるメッセージが込められていたのだ。
それは普段は買わない、イチゴ味のアイス。
これをシャンクスが持ってきたときは、それを買ったのはベンだというサインだった。
それに気付いたゾロは、もしかしたらまだベンは近くにいるのではないかと思って、このコンビニにやってきたのだ。
「乗るか?」
「うん。でもその前に・・・」
ゾロは、携帯を取り出してミホークの番号に電話をかける。
「ミホーク?偶然友達に会っちゃって、飲みに行くことになっちゃってさ。うん。だから、適当に遊んでていいから。え?誰かって?大学のときの知り合い。遅くなると思うから、帰るなら、鍵かけて新聞受けに入れといて。大丈夫、鍵は持ってるから。じゃ。」
電話を切ると、すぐに電源を落とす。
「じゃ、出すぞ。」
ベンが車を発進させた。
「うん。」
ゾロがうれしそうに笑う。
それを見てベンも満足そうにほほ笑んだ。
END
というわけで、今回のお話は、シャンクスVSミホークのゾロ争奪戦、結局はベンが漁夫の利的なお話でございました。「夜の」というリクエストでしたが、大人な雰囲気を出せなくてすいません。
シャンクスやミホークの気持ちを知りつつ、それをうまくかわして結局ベンにお持ち帰りされるゾロを思い描いて書かせていただいたんですが、思いのほかゾロが幼く、健全な感じのお話になっちゃいました。
トーコさん、リクエストありがとうございました。