220000HIT お礼リクエスト作品 第3弾
今回のリクエストは、「シャボンティ諸島に到着したゾロ」です。今回は、アニメ派の皆様には若干のネタばれとなるかもしれません。(と言っても、実際にはないシーンのねつ造ですので、あまり本編とは関係ないと言えばないのですが・・・。)気になる方はお気をつけくださいね。
とよさん、素敵なリクエストをありがとうございました。タイトルもとよさんにつけていただきました。
再出発の前に
シャッキーの店で呑気にグラスを傾けていたレイリーの表情が変わった。
「あら、どうしたの?」
「いや、ついに始まると思ってな。」
「始まるって何が?」
「すぐにわかるさ。」
レイリーがそう言ってにやりと笑った。
レイリーは島に入ってきた気配をはっきりと感じ取っていた。
以前会ったときとは比べモノにならないしっかりとした気。
(随分、鍛えられてきたものだな。)
思わず表情が緩む。
まだ他の仲間の気配は感じないから、どうやら一番最初に乗り込んできたようだ。
しかし、気配は一向に店に近付かない。
どうやら、島に無事に着いたことでビブルカードから目を離したようだ。
そう当たりをつけて、レイリーは腰を上げた。
「どこに行くの?」
「落し物を拾ってくる。」
「落し物?」
「早い者勝ちだからな。」
そう言ってにやりと笑う。
「あまり、若い人をからかっちゃダメよ。」
「からかう?そんなことはしない。まだ私から教えられることがある、それだけだ。」
そう言うと、レイリーはシャッキーの店から出て行った。
それを見送ったシャッキーは、余裕の表情を浮かべてタバコに火をつけた。
ゾロは、レイリーの予想どおり約束の地シャボンティ諸島に到着すると、ビブルカードを懐へと仕舞い込んでいた。
(ここまでこれば、もう問題ねぇ。)
番号を見れば自力で行き先まで着けると考え、目の前の番号を確認する。
「13番だったな。」
どうやら奇跡的に店のある島の番号は覚えていたらしい。
しかし、番号がわかったところで、そこにまっすぐに辿りつけるかどうかはまた別の話だ。
ゾロは、自分としては目的地に向かっているつもりでいたが、なかなか目指す番号には行きあたらない。
「おかしい。」
数時間ほど迷って、ようやくゾロの心にはこのままでは今日のうちに店にたどり着けないのではないかという気持ちが生まれた。
別に、たどり着けないから困るというわけではないが、せっかく順調に島に着いたのに、ここで遅れを取っては面白くない。
もう一度、ビブルカードを取り出そうかと思った瞬間、ゾロは気を感じた。
強さを得たものだけがもつ、特有の気。
ゾロは振り返ってそちらに目を向けた。
そこに立っていたのは、シルバーズ・レイリーだった。
「おっさん・・・」
「久しぶりだな。」
「おう。」
「少し、良いかな?」
「あぁ。」
ゾロはレイリーの後に続いて歩き出した。
レイリーが案内したのは、薄暗い場所に立つ1軒のバーだった。
「見たところ、イケる口だろう?」
にやりと笑って見せたレイリーにゾロ笑顔を返した。
早速ジョッキを2つ頼むと、奥のブースに腰かける。
「どんな2年を過ごしたか、見せてもらおう。」
そう言うと、レイリーは自分の顎をなでながらゾロの顔をじっくりと眺めた。
「うん、なるほど、そういうことか。」
ゾロが何も言わないのに、レイリーは一人納得している。
「何がなるほどなんだよ。」
「いや、2年前に会ったときとは別人のように気が強まっている。」
「あんときは、特別だ。」
「そうだな。しかし今は、傷も癒えているようだし、剣士として覇気も使いこなせるようになっている。」
「覇気?何だ、それ。」
「知らんのか?まぁ、言葉でどうこう教えるような奴ではないだろうな、あいつは。」
「そんなことまでわかるのか?」
「あぁ。色が似ている。」
「そういうものか?」
「あぁ、そういうものだ。」
「じゃあ、あいつも、いやあいつは変わらねぇか。」
「あいつ?ルフィくんのことか?」
「あぁ。あんた、ルフィと一緒にいたんだろう?」
「半年前まではな。」
「あいつは、変わらねぇだろう?」
「強くはなったぞ。」
「だろうな。でもあいつの根っこにあるものは変わらねぇ。ルフィは、失うことを何よりも怖がってる。だから、失わないために、どこまでも強くなろうとする。」
「兄を失って、もっと強くなると決意した。だが、それだけではない。」
「それだけじゃ、ねぇ?」
「あぁ。彼は仲間の絆を改めて感じた。」
「仲間、か。」
「兄を失っても、自分には共に闘い、旅を続ける仲間がいると彼は改めて実感したようだ。」
「でも、あいつはその仲間も自分で守ろうとする。」
「そうだ。だから、君たちはそれぞれこの2年で守られるだけの存在にならないように、鍛えてきたのだろう?」
「そうだ、な。」
「それに・・・いや、それ以上は言わない方がいいかな。」
「何だよ、その気になる言い方。」
「私は別にそういうことは気にしないが、君は案外初心なような気がしてな。」
「初心って、馬鹿にしてんのか?」
「馬鹿になどしておらんよ。ただ、そうだな、若さの特権とでも言おうか。」
そう言うと、レイリーはにやりと笑ってジョッキを空にした。
一方のゾロは、面白くないと思いつつも、どこか敵わないと感じてしまう部分もあり、それ以上何も言わず、残っていた酒を一気に呷った。
「そう言えば、君が一番乗りだな。」
そうレイリーが言えば、ゾロはうれしそうに笑った。
その珍しく幼い表情に、レイリーが意外そうな表情を浮かべた。
「何だよ、俺が一番乗りだと、意外かよ。」
「そうではないよ。そうではなくて、そういう表情もするのだなと思ってな。」
「・・・」
ゾロは何かを言おうとして、口を開きかけたが結局何も言わず、再びジョッキに手を伸ばした。
しかしすでに飲み干してしまったことを思い出し、気まずいような表情を浮かべた。
「何か言いたいことがあるんじゃないのかね?」
「いや、いい。」
「そうか?まぁ私もそれなりに長く生きてきたからね。」
「年よりは敬うもんだ。」
「それはありがたい言葉だな。では、私からも君に何か贈ろうか。」
「別に、何もいらねぇよ。」
「別に物を贈ろうと言うのではない。」
そう言ってレイリーは少し考えてから、徐に口を開いた。
「副船長というのは、船長と船員の間に立つ者だ。
一方的にどちらかに付いてしまえば、船の秩序は乱れるだろう。
しかし、船長も人であり、副船長も人だ。
特別な感情が育つのは、決して珍しいことではない。
そのことが、船にとって、船員たちにとってどう影響するのかはわからない。
それでも、運命には逆らえても、自然には逆らえないものだ。
あがいても、無駄だよ。」
その言葉を聞いたゾロは、ただただ驚くばかりだった。
レイリーがどこまで知っているのかはわからなかった。
ルフィのことだから、自分との関係について話していたのかもしれない。
しかし、何も聞いていなくても、この目の前の老人は、あっさりとそれを見抜いてしまうのだろう。
「やっぱ、敵わねぇな。」
ゾロは心からそう思った。
だからこそ、素直にレイリーの言葉を受け入れようと思った。
2年ぶりに会うルフィに、何と言葉をかけようか。
「会いたかった」と言ったら、ルフィはどんな顔をするだろうか。
そう考えて、ゾロはこれから始まる仲間との再会に思いを馳せた。
END
というわけで、「2年の修行を終えてシャボンティ諸島に到着したゾロ。ル×ゾロ前提でレイリーとゾロ」というお話でした。
レイリーさん、いい男ですよね。一瞬で何もかもを見通すような感じがいいなぁと思います。やはり天性の才能と力で仲間を引っ張る船長と、冷静に物事を見極め、軌道を修正できるのが副船長、というポジショニングって素敵よね、と思いながら楽しく書かせていただきました。
とよさん、リクエストありがとうございました。