220000HIT お礼リクエスト作品 第4弾 

 今回のリクエストは、「タバコとアイツと俺の恋の続編」です。このシリーズはリクエストだけで書き続けているお話なんですが、皆様にご好評をいただいて本当にうれしい限りです。

 リクエスト、本当にありがとうございました。

 

 

 

 

  タバコとアイツと俺の恋 3

 

 

「はぁ、暑かったなぁ。」

外から戻るなり、ネクタイをゆるめながらサンジは息を吐いた。

今年は節電対策のせいか、どこの企業でも冷房にはかなり気を使っているらしく、建物の中にいても外にいても暑さが和らぐことはなく、外回りはかなり体力を消耗した。

「お疲れ様。」

同じ課の女の子が気を使って、冷たい飲み物を差し出してくれた。

「ありがとう。」

そう言ってにっこり笑えば、その子はほんのりと顔を赤らめた。

少し前であれば、そんな仕草に心を奪われ、すぐにでも誘いをかけるところだったが、今、サンジの頭にあるのは別のことだった。

(今晩、また誘ってみようかな。)

そう、サンジの頭の中にあるのはゾロのことだった。

ゾロとは月に数回、サンジの実家で二人で酒を飲む仲になっていた。

 

自分と同期でありながら、性格は正反対。

最初は全く気が合わないと思っていたのだが、実際に話してみれば、共通点もあったりして、思いのほか話が弾むこともあった。

また、何よりサンジがうれしかったのは、ゾロが自分の作った料理をうまい、うまいと最高の笑顔で食べてくれることだった。

(食べ物の好みって、結構大事なポイントだよな。)

そうなると、女の子よりも、ゾロを誘って美味しい料理を食べながら過ごす方が楽しいと思えてくるから不思議である。

これって、どうなんだろうと思いつつも、サンジは今日もゾロに声をかけようかと考えながら終業時間になるのを待っていた。

 

 

しかし、もうすぐ17時になろうとする時間、急に社内の雰囲気が慌ただしくなった。

「ん?何だ?」

他の社員が様子を見に行き、誰か、倒れたらしいと報告した。

「何だよ、熱中症か?」

「今日も暑かったからな。」

「夕方って、結構危ないらしいからな。」

そんな話をしているうちに騒ぎは収まったのだが、それから少しして誰かがサンジを呼ぶ声が響いた。

「おい、サンジ、いるか?」

それは、エースの声だった。

「はい、こっちです。」

サンジは、すぐに席を立って、エースのもとに向かった。

「エース先輩、何かあったんですか?」

「あぁ。ゾロが倒れたんだ。」

「えっ?発作ですか?」

「やっぱりお前、ゾロの持病、知ってたんだな。

「はい。一度、発作を起こしたときに出くわしたことがあるので。」

「そうか。じゃあすぐに医務室に向かってくれ。」

「わかりました。」

サンジの頭の中に、以前見たゾロの苦しげな表情が思い出された。

サンジはすぐに建物の2階にある医務室へと駆け込んだ。

 

 

「あの、こちらにゾロが運ばれたって聞いて。」

サンジがそう声をかけると、中からのんびりした声が返ってきた。

「あぁ、こちらですよ、サンジさん。」

そこにいたのは、ブルックだった。

この医務室はあくまで社員たちの健康管理をするための部屋であり、医者が常駐している訳ではない。

どちらかと言うと、カウンセリングなどメンタル面でのサポートなどが主な業務で、それを担っているのが、2年前からこの会社に勤めている臨床心理士のブルックだった。

「すいませんねぇ、いきなりお呼びして。」

「いえ。それでゾロは?」

「先ほど、喘息の発作を起こしかけてここに来たんですよ。お薬をお持ちでしたので、一応発作はおさまったんですが、暑さのせいでしょうかねぇ、まだ体調がお悪いようですので、一度通院された方がいいと思いまして。」

そこまで聞いても、サンジにはなぜ自分がここに呼ばれたのかがわからない。

ただ、はぁと言いながらブルックの話を聞く。

「お一人で病院に行くのは大変だと思いまして、どなたかお知り合いはいらっしゃらないかとお聞きしましたら、あなたのお名前が出たもので。」

「そうですか。わかりました、すぐにゾロに付き添って病院に行きます。」

「では、こちらへ。」

ブルックに案内され、薄い水色のカーテンの奥にいるゾロのところへと足を進めた。

「ゾロ?」

恐る恐る声をかけ、カーテンを開くとゾロはベッドに横になってはいなかった。

枕を背に当てて、足を伸ばし、ベッドヘッドに寄りかかるようにして身体を休めていた。

「横になると、呼吸が苦しいそうなんです。」

ブルックが、サンジの疑問に答えるように言った。

その言葉通り、ゾロは青白い顔で、ふうふうと大きく息をはき、必死に呼吸を整えているようだった。

「大丈夫か?」

とサンジが声をかけたが、ゾロは弱弱しく視線を向けるだけで精いっぱいのようだった。

「とりあえず、荷物取ってきます。」

サンジはそう言うと、あわてて医務室を飛び出した。

 

とにかく急いでゾロを病院に連れていかなければならない。

そんな使命感に燃えて、サンジは急いでオフィスに戻り、ゾロに付き添って病院に行くため、早退する旨を上司に伝えた。

上司もすでに騒ぎの要因をエースたちに聞いていたらしく、あっさりと帰してくれた。

ゾロの課にも立ち寄り、荷物を持って行こうとすると、すぐに

「サンジ、ゾロの荷物、まとめといたから。」

と声をかけられた。

ゾロと同じ課で働いているウソップだった。

おしゃべり好きで、細かい仕事を器用にこなすウソップは社内での知り合いも多く、サンジも会えば軽く言葉を交わすくらいの仲だった。

「ゾロの様子、どうだ?」

「とりあえず医者に診せてからだな。」

「そうか。ゾロの奴は一人暮らしだから、何かあれば連絡しろって言っといてくれ。」

「あぁ、わかった。」

サンジはウソップから荷物を受け取り、サンジはすぐに医務室に戻った。

 

 

「準備できました。」

そう声をかけるとブルックがゾロに肩を貸しながらドアのところまで歩いてきたのが目に入り、サンジはあわてて駆け寄った。

「代わります。」

持ってきた荷物をブルックに預け、代わりにゾロの横に立って肩を貸す。

ゾロはできる限り自分の力で歩こうとはするものの、身体にはほとんど力が入らないようで、サンジが抱きかかえるようにして移動した。

時折漏れ聞こえるゾロの呼吸音は、ひゅうひゅうと苦しげで、それが自然とサンジの脚を速めさせた。

そのままエレベーターで下に降り、ブルックが呼んでおいてくれたタクシーに乗り込んだ。

「グランドライン総合病院までお願いします。」

ブルックが運転手に声をかけたので、サンジが驚いたようにブルックを見た。

「ゾロさんのかかりつけの病院だそうですよ。担当の先生にも連絡を入れてありますから。」

医務室で働いているのは伊達ではないようだ。

「はい。」

と頷いて見せると、ブルックも後は任せたとばかりに頷いて返した。

 

 

 

タクシーが病院に到着すると、白衣を着た若い医者が車椅子を用意して待っていてくれた。

「ゾロ、大丈夫か?」

車から降りてきたゾロをすぐに車椅子に載せて、急いで病院に入って行った。

サンジも遅れないように、慌てて後を追う。

医者はすぐにゾロを治療室へと連れて行き、薬の吸入と点滴を始めた。

ようやく呼吸が楽になってきたのか、ゾロは力尽きたように身体を横にし、そのまま目を閉じた。

「もう、大丈夫だな。」

そう言うと、カルテに必要事項を書き込み、そこでようやく心配そうな顔で立っているサンジに気がついたようだった。

「あの、あなたは?」

「ゾロの同僚のサンジです。ゾロが会社で発作を起こしたので、付き添って・・・」

「そうだったんですね。すいません、挨拶が遅れました。僕はゾロの主治医で、トニーと言います。」

「あの、それでゾロは?」

「もう大丈夫です。でも、もう少し数値が安定するまでは入院ですね。」

「入院、ですか。」

「えぇ。あまり疲れをためないように、注意したのに、ゾロはすぐに無理しちゃうから。」

「すいません。」

「いえ、サンジさんが悪い訳では。」

「でも、俺がもう少し気をつけていれば。」

 

サンジは思い返していた。

ここのところ、暑い日が続いていて、ゾロは元気がないように見えた。

それでも、辛いとか、疲れたとか言う言葉を決して口にすることなく、近いうちに飲みに行こうと言ったサンジの言葉に頷いてくれた。

本当は、自分と飲みに行くよりもゆっくりと身体を休めたかったのではないか。

そう思うと、なぜ気づいてやれなかったのかという後悔の念が押し寄せてきた。

サンジはゆっくりとゾロに近づき、さっきよりもずっと穏やかになった顔を眺める。

「ごめんな。」

そう小さな声で呟いて、サンジはそっとゾロの頭を撫でた。

 

「あなたは、ゾロのお友達ですか?」

その様子を見ていたトニーが尋ねてきた。

「はい。」

「そうですか。ゾロは、これまでも持病とは比較的うまく付き合ってきたけれど、でもやっぱりこうやって時々頑張りすぎちゃうんだ。だから、これからもゾロのこと、支えてやってくれよな。」

そう言って、トニーはサンジに笑顔を向けた。

 

(俺がゾロを支える・・・)

サンジの頭の中にその言葉が大きく響いた。

一緒に酒を飲むだけでは、もう足りないほど自分の中でゾロの存在は大きくなっている。

それを改めて実感し、これからもっと、もっとゾロと近づきたい。

支えることはできなくても、隣にいて、疲れたときに寄りかかってもらえるような、そんな存在になりたい。

 

サンジの中で、これまで自覚できなかったゾロへの思いがはっきりと形作られた。

 

「はい。」

サンジは、トニーに大きくうなずくと、ゾロの手をしっかりと握りしめた。

 

 END

 

 

 今回のリクエストは、「タバコとアイツと俺の恋の続編。喘息の発作か何かで入院したゾロのところにお見舞いに行くサンジのお話。できればまだ出て来ていない麦わらの一味も出て来てほしいです。」というものでした。お見舞い、というより付き添いになっちゃったんですが、サンジくん視点のみで、ゾロが倒れて改めてゾロへの気持ちを自覚するようなお話にしてみました。いかがでしょうか。

素敵なリクエスト、ありがとうございました。

 

    

       

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