220000HIT お礼リクエスト作品 第6弾 

 今回のリクエストは、たぷさんからのリクエストで「オールキャラのお話」です。詳しいリクエストの内容はあとがきにてご紹介させていただきます。

 リクエスト、本当にありがとうございました。リクエストしてくださったたぷさん、よろしければタイトルをつけてやっていただけるとうれしいです。ご連絡、お待ちしています。

 

 

 

 

  No Title

 

 

思い起こせば、数日前からゾロの様子はおかしかった。

もともと、ゾロにはある癖があった。

それは無意識に首の後ろに手をやることだ。

しかし最近、首の前、つまりのどの辺りに手をやっているのだ。

最初はのどの調子でも悪いのかと思ったが、声に異常はないし咳をしているような様子もない。

どうかしたのかと思ってその後も注意して見ていると、どうも鍛錬にも力が入らないらしく、普段よりも短い時間で切り上げてしまうことが多い。

さらに、いつもは半そでシャツに腹巻、と言った薄着でいることが多いのに、今朝は珍しく上着を羽織っていた。

 

「何やってんだ、あいつ。」

サンジが小さく呟くと、本を読んでいたチョッパーがそれに気付いて返事を返してきた。

「あいつって誰だ?」

そう言って、サンジが見ている方に視線を送った。

そこには、いつものように船縁に寄りかかって昼寝をしているゾロの姿が目に入った。

「ゾロのことか?」

「あぁ。」

「ゾロが寝てるのなんて、別に珍しくないんじゃねぇのか?」

「それはそうなんだけどよ。」

サンジ自身、自分が気付いた違和感をうまく言葉にできず、どうにも歯切れが悪い。

「そんなに気になるなら、俺が見てこようか?」

「いや。あいつ、寝てたらそう簡単には起きないだろ。後でいいよ。」

「そうか?」

「あぁ。そのうち、腹が減ったら起きてくるだろ。」

そう自分を納得させるように呟くと、サンジはキッチンへと戻っていった。

 

 

そして昼食時。

「腹減った〜。」

というルフィの大きな声が響き渡ったのを合図に、俄かに船の中が賑やかになる。

「うるさいっ!」

と叫ぶナミの声や

「レディが先に決まってるだろ。ナミさ〜ん、ロビンちゃ〜ん。」

と呼びかけるサンジの声が船内に響き、それらに導かれるように、チョッパーもラウンジへと足を踏み入れたが、そこにゾロの姿がないことに気づく。

(まだ寝てるのかな・・・)

と考えて、そう言えばサンジがゾロの様子がおかしいことを気にしていたことを思い出した。

「ゾロのこと、起こしてくる。」

そう言ってチョッパーはゾロが昼寝をしていた場所に向かった。

 

 

ゾロは先ほどと同じ場所で、身体を丸めるようにして眠っていた。

しかしいつもとは明らかに違うことがあった。

「ゾロ、大丈夫か?みんな、大変だ、ゾロが、ゾロがぁ〜!」

それに気付くなり、チョッパーが大声を出した。

その声はみんなが食事をしていたラウンジまで響き、何事かとみんながいっせいに飛び出してきた。

「チョッパー、どうした?」

仲間の危機かと、口に物をつめこみ、頬を膨らませたまま先頭に立ってチョッパーの元に駆けつけた。

そしてルフィもまた、ゾロの異変にすぐに気付いた。

「ゾロ、お前、サンジに怒られるぞ。」

そのセリフは後ろにいたサンジの耳にもはっきりと届いた。

「ん?何の話だ?」

状況がわからないまま、ゾロの姿を確認したサンジもまた、首をひねる。

 

おかしい。

食事の支度をする前に確認したときには、倉庫に入っていた食糧に異常はなかったし、ゾロは今日はキッチンには顔を出していない。

それなのに、ゾロは、ゾロの顔は・・・。

 

そんな中、あっさりと答えを出したのはウソップだった。

「ゾロ、お前、おたふくやってなかったのか。」

「おたふく?」

そこでみんなが揃って首をひねった。

どうやらこの船に乗っている人間に『おたふく』は認知されていなかったらしい。

「はぁ、これだから常識のない人間は困るんだ。いいか、よく聞けよ。おたふくってのは、熱が出て、こうやって頬が腫れる病気なんだ。」

とウソップは腕を組んで、うんうんとうなづきながら呟いた。

そう言われて、仲間たちが改めてゾロの顔を確認する。

ゾロの顔は頬が腫れていて、ルフィがゾロが何かをつまみ食いしたのではと勘違いしてしまうほどだったのだ。

しかも、発熱しているせいか肌がほんのりと赤みを帯びていて、こうやってみんな集まって騒いでいても目を覚まさないのだから、どうやらかなり具合が良くないらしい。

「ゾロ、病気だったのか。俺がもっと早く気付かなきゃダメだったのに、ごめんな。」

そう言ってチョッパーが近づこうとしたとき、ウソップがはたと冷静になって、

「ちょっと待て。」

と止めた。

「ウソップ、何なのよ一体。」

「おたふくってのは、すごく人にうつりやすいんだ。」

「えっ、そうなの?じゃあ私もこんな風に顔が腫れちゃうの?」

「別にずっと腫れっぱなしって訳じゃねぇよ。でも、きっとおたふくを知らねぇってことは感染したことがないんだろうから、うつらないようにしばらくゾロとは離れてた方がいい。」

「ウソップはおたふくになったことがあるのか?」

「あぁ。子どもの頃に罹ったから大丈夫だ。だから俺がゾロの世話をする。」

「船医さんはトナカイだから、大丈夫なんじゃない?」

「それもそうか。じゃあチョッパー、まずはゾロをベッドに運ぼう。」

「わかった。」

そう言うとチョッパーが人化してゾロを抱え上げ、そのまま医務室へと運んだ。

 

 

 

「んっ・・・。」

額に乗せたタオルが冷たかったのか、ベッドで寝ていたゾロが少し身じろいだ。

「ゾロ?」

ウソップが声をかけると、ゾロはゆっくりと目を開けた。

「ゾロ、大丈夫か?」

「ここ・・・は、医務室か?」

「あぁ。ゾロ、お前、おたふくって聞いたことあるか?」

「おたふ・・・く?」

「お前、おたふくに罹ったんだよ。それで熱が出た。」

「そうか。」

そう言いながら、耳の下に手を当てる。

「そうそう、その辺りが腫れてくるのもこの病気の症状だ。」

「そうか。」

そこへ医学書を片手にチョッパーが入ってきた。

「ゾロ、目が覚めたのか?」

「あぁ。」

「大丈夫か?」

「おたふく、なんだろ?」

「そう。正確には流行性耳下腺炎って言うんだ。多くは子どものうちに罹るんだけど、ゾロは罹ってなかったんだな。」

「初めて、聞いた。」

「そうだな。この船で知ってたのはウソップだけだったしな。とにかく、熱と腫れが引くまで、おとなしく寝てなきゃだめだぞ、ゾロ。」

「・・・あぁ。」

そこまでの会話で疲れてしまったのか、ゾロはまた静かに眠りに落ちた。

その落ち着いた寝顔に、チョッパーとウソップも安心して医務室から出て行った。

 

 

その後、数日の間、ゾロは熱と耳下の腫れに苦しんだ。

汗をかくので水を飲みたいのだが、腫れがあるせいで物を飲み込むのに苦労した。

「ゾロ、辛いだろうけどちゃんと水分を摂るんだぞ。」

そう言ってチョッパーが飲み物を差し出すが、数口飲み込むのが精一杯の様子だ。

おたふくは通常子どものうちに罹る病気なので、大人になってから罹った場合、重症化してしまう場合がある。

ゾロは体力があるが、このまま高熱が続いてしまうと合併症を引き起こす可能性がある。

特に、今日は時折襲ってくる吐き気のせいでかなり体力を消耗しているようだった。

 

実際ゾロ自身も、まさか、ここまで苦しいとは思わなかった。

傷の痛みやそこからくる熱は経験があるし、自分の身体の回復の見通しがもてるので乗り切ることができる。

それに対して、このおたふくという奴はいつになったら治るかもわからないし、発熱状態が続くと、こんなに体力が落ちるとは思わなかった。

多少無理をしてでも、鍛錬をした方が良いと思うのだが、チョッパーが止めるより先に身体が悲鳴を上げる。

さらにそこへルフィが追い打ちをかける。

感染する可能性があるのでゾロの近づくことを禁止されているルフィは、いつもの元気は消えて、心配そうな表情が消えない。

時々、大きな声で

「ゾロ、早く元気になれ〜!!」

と海に向かって叫んだりしている。

その声がゾロの耳にも届き、それがなおさらゾロの気持ちを焦らせる。

「俺だって、早く元気になりてぇよ。」

そう呟いて、再び眠りへと落ちていた。

 

 

 

それからしばらくして、サンジが医務室に入ってきた。

マスクをつけたサンジが持っていたトレーには、水の入ったコップが載っていた。

「ゾロ?」

眠っているのかを確かめるように小声で話しかけると、ゾロはかすかに身じろいだものの、まだ目は開けなかった。

サンジはトレーを横にあった机に置くと、静かにゾロの額に手を伸ばした。

先ほどまで載せられていたであろうタオルはすっかりぬるくなって、顔の横に落ちていたので、静かに持ち上げ、ついでに額で体温を確かめる。

「まだ、高いな。」

そうマスクの中で呟く。

これだけ熱が続くと、水分を摂らせた方がいいだろう。

そう判断して、ゾロの身体を優しく揺する。

「おい、ちょっと身体を起こすぞ。」

そう声をかけてゆっくりとゾロの身体を少し持ち上げる。

顎に手を添え、持ってきたコップを唇にくっつけた。

朦朧としながらも、ゾロはおとなしく水をこくりと飲んだ。

「よしよし。」

そう言ってサンジが頭を撫でてみれば、ゾロの表情が穏やかになった気がした。

「ゆっくり休めよ。」

サンジの言葉に素直にうなずき、ゾロは再び眠りに落ちた。

(素直なのもいいけど、やっぱり早く元気なゾロに会いてぇな。)

いつもは喧嘩ばかりだけれど、でもだからこそ、病気のゾロを見ると戸惑ってしまう。

洗面器の水で冷やしたタオルを改めてゾロの額に乗せ、サンジは医務室を出た。

 

 

 

1週間後、ようやく熱や腫れの症状が落ち着き、久しぶりにゾロはみんなの前に顔を見せた。

「ゾロ、いきなり激しい鍛錬はダメだぞ。」

と言いながらも、チョッパーもうれしそうだ。

「おう。」

 

やはり誰かが体調を崩せば、みんなが心配し、誰もがその回復を願う。

それが仲間なのだろう。

 

再び笑顔があふれた旅が始まる。

 

 END

 

 

 今回のリクエストは、「ゾロがおたふくになるお話。」というものでした。私自身、おたふくは小さい頃に罹ったのであまり記憶がないんですが、大人の場合は結構大変みたいですね。いくら体力のあるゾロでも、こんな感じになるかなぁと想像しながら書かせていただきました。

たぷさん、素敵なリクエスト、ありがとうございました。

 

    

       

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