220000HIT お礼リクエスト作品 第7弾 

 今回のリクエストは、朔華さんからのリクエストで「海賊設定でサンジ&仲間に見守られるゾロ」です。詳しいリクエストの内容はあとがきにてご紹介させていただきます。

 タイトルも朔華さんにつけていただきました。リクエスト、本当にありがとうございました。

 

 

 

  そして滴は黄金に解けて

 

 

麦わらの一味が今回到着した島は、秋島だった。

「いいわね、やっぱり秋は。」

「なんだかとっても綺麗な島ね。」

「暑すぎず、寒すぎず、過ごしやすそう。」

「それほど大きくはないみたいだけど食料を調達できそうな町もあるし、いい感じですね。」

「そうね。ログがたまるまで3日かかるって言うから、さっさと必要な物の買い出しをすませて、明後日の朝、出発しましょう。」

「俺、医薬品を補給してきたいんだけど。」

「いいわよ。じゃあロビン、一緒にいってあげてくれる?」

「えぇ、喜んで。行きましょう、船医さん。」

「サンジくんは食料の買出しね。誰か荷物持ちに連れて行く?」

そう言うとルフィが

「俺、俺!島を探検しに行きたい!」

と立候補したのだが、

「あんたに食糧を預けられる訳ないでしょ。私が島を測量するのを手伝ってちょうだい。島を隅々まで歩かせてあげるから。」

とナミにあっさり却下された。

ウソップとフランキーは船や道具の材料を見たいと言っているし、ブルックでは重い荷物は持てない。

「となると、残るはゾロね。」

と結論を出して、みんなが一斉にゾロに視線を向けた。

ゾロはさっきまでは甲板で昼寝をしていたはずだった。

しかしそこにはすでにゾロの姿はなかった。

「ゾロ!」

最初にゾロの姿を見つけたのはルフィだった。

「ずるいぞ、ゾロ。先に下りるなんて。」

驚いたことにみんなが話をしている間に、ゾロは一人で先に船を降りていたのだった。

「ゾロ!あんたは一人で出かけたら必ず迷子になるんだから、戻ってきなさい。」

しかしゾロは何かに誘われるかのように、振り返ることもなく歩き出していた。

「全く、あの馬鹿は何を考えているのかしら。しょうがないわね。じゃあまずはウソップ、フランキー、あんたたちが留守番よ。誰かが船に戻ったらあんたも買出しに行ってきていいから。」

「了解。」

「サンジくんは、ゾロを追いかけて。捕まえたら、荷物持ちでも何でもさせていいから。文句を言ったら、私に借金返してからにしろって言ってやりなさい。」

「はぁい、ナミさん。」

サンジはそう言うと急いでゾロの後を追いかけた。

 

 

ゾロはゆっくりとしたペースではあったが、迷うことなく歩き続けていた。

サンジがゾロに追いついたとき、ゾロは立ち止っていた。まるで何かに取り付かれたかのように目の前の光景に見入っていたのだ。

「何が見えるんだ?このクソ剣士。」

サンジがゾロの肩をつかんで文句を言おうとした瞬間、ゾロの体がその場にくず折れた。

慌ててサンジが助け起こすと、ゾロは気を失っていた。

サンジは何が起こったのかわからず、とにかくゾロを背負って船に戻った。

「ウソップ、お前、急いでチョッパーを連れ戻して来い。」

「どうしたんだ?」

「ゾロが倒れた。」

「何だって?」

ウソップは急いで町に向かって走り出し、チョッパーを見つけて戻ってきた。

 

 

 

「ゾロが倒れたって?」

「あぁ。」

サンジはゾロの体を医務室のベッドに寝かせていた。

チョッパーはゾロを診察した。

しかし熱がある様子もなく、これと言った原因を見つけることはできなかった。

しばらくそのまま様子を見ていたが、ゾロは1時間ほどして意識を取り戻した。

「ゾロ、気づいたか?」

「チョッパー?」

「あぁ。お前、いきなり倒れて、サンジがここまで運んできてくれたんだぞ。」

「そっか。」

「どこか痛いところはないか?」

「いや、大丈夫だ。」

「本当か?ゾロがちゃんと言ってくれないと、わかんないんだからな。」

「そんな、心配することねえよ。」

そう言うとゾロは何事もなかったように起き上がった。

「ゾロ、もう少し休んでいた方がいいんじゃないか?」

「いや、もういい。ありがとうな。」

「ゾロ・・・」

「そんな顔しなくても大丈夫だ。」

ゾロは優しい笑顔をチョッパーに残して部屋から出て行った。

でもその笑顔はどことなく悲しそうで、チョッパーは何とも言えない不安な気持ちを覚えた。

 

 

 

その後、戻ってきた他のメンバーとも相談し、予定通り明後日の朝に船を出すことにしたが、みんな心の中ではゾロのことが気になっていたので、結局翌日はみんな船に残り、ただ静かに過ごしていた。

そして島を出る当日は、それぞれが朝早くから出港に向けてみんなが慌ただしく動いていた。

ゾロは昨夜から見張りを兼ねてトレーニングルームにこもっており、フランキーが様子を見に行ったときは毛布にくるまって座って眠っていた。

本当だったら夜の見張りも必要なかったのに本人がやると言ったのでやらせたが、まだ無理をさせない方がいいだろうと誰もが思っていたので、フランキーが

「ゾロのことはそのまま休ませといた方がいいな。」

と言うと皆、大きく頷いた。

 

 

数時間後、ようやく船も良い風をつかみ、予定どおりの航路に乗ったのを確認してナミは

「もう大丈夫だから、一休みしましょうか。」

と言った。

「よし、サンジ、おやつくれ。」

とルフィがねだったので、

「しょうがねぇな。」

とサンジが手早くおやつと飲み物を用意した。

「レディには、スペシャルジュースをご用意しました。」

島が秋島だったことで、果物や穀物を中心にしっかりと食糧を補充できたので、サンジも張り切って腕を揮ったようだった。

「すっげぇ〜。」

ルフィやチョッパーがうれしそうにおやつを頬張り、出港の慌ただしさから落ち着きを取り戻した。

そして、ふと思い出したように

「あっ、ゾロ、そろそろ起きたかな。」

とチョッパーが呟いた。

「俺が見てくるよ。」

サンジがすぐに答えてトレーニングルームへと向かった。

 

 

ゾロは毛布にくるまって、窓を向いて座っていた。

「おいマリモ、そろそろ起きたらどうだ?」

そう言いながらサンジが近づくが、ゾロはまるで動く気配がない。

おかしいと思いながらゾロに近づき、顔を確認した。

ゾロは泣いていた。

声をあげるでもなく、窓の外をまっすぐに見つめるその瞳から、大粒の涙が次々とこぼれ落ちていたのだった。

「ゾロ!」

サンジが慌ててゾロの肩を揺すってみたが、ゾロはまるで反応しない。

「ゾロ、ゾロ!」

サンジが思わずといった風に声を少し大きくして呼びかけた。

すると、ふっとゾロは意識を取り戻したように、サンジを見た。

「・・・サンジ?」

「あぁ。ゾロ、大丈夫か?」

ゾロは、なぜ自分がサンジに抱きしめられているのかわかっていないようだった。

「何、やってるんだ?」

「ゾロ、覚えてねぇの?」

「何を?っていうか、今、何時だ?」

「もうとっくに夜が明けて、船は出港したんだぞ。」

「そうなのか?・・・ごめん。」

「それはいいんだけど、お前大丈夫なのかよ。」

「おう。問題ねぇ。」

「嘘言うなよ。」

「サンジ?」

「お前、自分でわかってるのか?」

「何をだ?」

「お前、今、泣いてたんだぞ。」

「泣いてねぇ。」

「泣いてたって、いいじゃねぇか。それよりも問題は、お前が全然自覚してないことだな。」

そう言うと、サンジはゾロの後頭部に手を添えて自分の胸へと押し当てた。

ゾロが突然のことに慌てて抵抗するが、サンジがそれを強引に押しとどめる。

「いいから、聞いてみな。」

「聞くって、何をだよ。」

「俺の心臓の音。」

「心臓の音?」

「そう。聞こえるだろ?心臓の音ってさ、心が落ち着くんだってさ。」

「俺は別に。」

「いいから、俺の生きてる証、聞いてみて。」

「生きてる、証。」

「うん。どう?」

「聞こえ・・・る。」

「だろ?じゃ、次。目、閉じて。」

気がつけば、ゾロはサンジの言うことにおとなしく従っていた。

「ゾロ、今回の島、どうだった?」

「久しぶりだった。」

「久しぶり?」

「金色だった。」

「金色って、あぁ、あれか。」

サンジも思い出していた。

あのとき、突然倒れたゾロの前に広がっていた光景。

それが一面の黄金色だったのだ。

 

「稲穂。秋になると、いっつも見てた。」

「お前の故郷も、あんな景色なのか?」

「毎年、見てたんだ。昔から、ずっと。」

「そうか。一緒に、ほんの一瞬だったけど、ゾロの故郷の景色、一緒に見られたな。」

「サンジ・・・」

「お前が、どんな気持ちであの景色を見てたのかはわからねぇし、気ぃ失っちまうくらい辛い思いがあるのかも知れねぇけど、でも一緒に見れたこと、俺はうれしいよ。」

 

 

ゾロは心の中で思い出していた。

本当にこれで良かったのか。

死んだくいなの刀を譲ってもらって、俺の名前を天国にまで響かせるんだって勝手に決めてここまでやってきたけれど、奪った命の重さを背負ったまま、またあの景色と向き合うのは、思っていた以上に辛かった。

だから島に近付いて、懐かしい黄金色の景色を見た時、耐えられなかった。

背負ったものの重さにも。

景色を見ただけで耐えられなくなった自分の心の弱さにも。

 

それなのに、サンジは何も聞かず、ただ抱きしめて、一緒にあの景色を見れたと言ってくれる。

それだけで、こんなにも心が軽くなる。

 

 

「あいかわらず馬鹿だな、てめぇは。」

恥ずかしさからそう言うと、サンジは改めて力をこめてゾロの身体を抱きしめた。

「失礼な奴だな。大体、俺から言わせればお前の方が馬鹿だよ。全く、何でわざわざ難しく考えて、自分を追いつめるんだろうな。」

優しい声でサンジは言葉を重ねる。

「大丈夫だ、ゾロ。お前が泣きたくても泣けなかったり、泣きたいことにも気づけないときには、俺がちゃんと教えてやる。泣かせてやるから、お前はこれからもお前の思うとおりにいけばいい。」

 

 

そう言って抱きしめてくれるサンジの腕の中は、悔しいけれど心地よくて、この場所を手放したくないと思った。

そう思ったら、自然とまた涙が出てきた。

「それでいいんだ。」

その言葉が、ゾロの心に知らずにたまっていたものを溶かし、涙と一緒に流していってくれるようだった。

 

 

 END

 

 

 

 

ということで、リクエスト内容は「海賊設定で、色々積み重なったものが限界を超えたけど、それを発散させるような泣き方を知らない、或いは忘れてしまってただ涙だけが止められないゾロと見守るサンジ(と仲間)。」でした。

涙が止められないというよりも、サンジの優しさでちゃんと泣けるゾロになってしまいました。

ゾロは自分の歩んできた道に決して後悔はしないと思うのですが、それでも時には辛いなぁと思うことも、不安を感じることもあるかなぁと想像しながら書かせていただきました。サンジ以外の仲間があまり活躍させられなくてごめんなさい。

リクエストしていただいた朔華さん、素敵なリクエストありがとうございました。

    

       

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