220000HIT お礼リクエスト作品 第9弾 

 今回のリクエストは、つるぎさんからのリクエストで「小悪魔胡蝶」設定のお話です。

 つるぎさん、リクエストありがとうございました。

 

 

 

   小悪魔胡蝶 4

 

 

約束していた店の前に立ったゾロは、すでにONEの衣装を取り去っており、どこにでもいる青年のようだ。

しかし心の中は複雑だった。

いけないことをしているようなスリルもあれば、ただ思い人に会えるという純粋な喜びもある。

けれどそれだけではなく、本当ならば交わることのない相手といつまでこうして一緒にいられるのだろうかという不安もあるのだ。

 

ただ、これは運命なのだろう、とゾロは考えた。

敵対する立場にあることも、それでも出会ってしまったことも。

だとすれば、今更離れることなどできないのだ。

ゾロは、意を決して店のドアを開けた。

 

 

 

「お疲れさん。」

先に来ていたスモーカーが声をかけた。

スモーカーも海軍の制服を脱いで、リラックスした服装だった。

ゾロはなんでもないように悠然とした態度で、スモーカーの向かい側の席に座った。

「ここは、何が美味いんだ?」

メニューを覗きこみながらゾロが問うと、

「カニは食えるか?」

とスモーカーが応えた。

「あぁ。問題ねぇ。」

「じゃ、それと白ワインだな。」

と言って店員を呼ぶと、大量の注文を伝えた。

 

 

「今日のステージはどうだった?」

「今日も良かったじゃねぇか。衣装も良かったしな。」

とスモーカーがにやりとほほ笑む。

自分が買ってやった服を着て、何も知らない海兵たちの前で歌うゾロの姿を見るというのは、スモーカーにとっては、この上ない楽しみとなっていた。

「あんた、いいのかよ。このままで。」

「何がだ?」

「いつまでも、俺たちのこと、捕まえないで。」

「捕まえてほしいのか?」

「そういう訳じゃねぇけど。」

「だったら、いいじゃねぇか。これも偉い人間の特権だ。」

「まさか、あんた・・・」

俺たちが捕まりそうになったときに、その情報を捻りつぶしているのではないか、と咄嗟に思ったゾロがそれを問いただそうとすると、スモーカーがそれを制した。

「言っとくが、俺は自分の正義に恥じるようなことは、してねぇよ。大体、捕まえるのは現行犯って決めてるんだ。」

なるほど、それなら今、ONEとしてここにいる自分を逮捕しない大義名分ができるわけだ。

「さすが、偉い人は違うな。」

「あぁ。だから余計なことは考えるな。」

そこへ、注文した酒と料理が運ばれてきたので、二人はそれを堪能した。

ガツガツと、若者らしい勢いで食事をすすめるゾロに対し、スモーカーは葉巻をくわえながら余裕の表情を浮かべている。

ふと手を止めてそれに気付いたゾロが、突然面白くなさそうな表情になる。

「どうした?口に合わなかったか?」

「そんなんじゃねぇ。」

「じゃあ、なんだ?」

「あんた、俺のこと、馬鹿にしてんのか?」

「そんなつもりはないが。」

「だって、食いもんに夢中になってる俺のこと見て、笑ってただろ?」

「確かに笑ってはいたが、でも馬鹿にしていた訳ではない。」

「じゃあなんだよ。」

「俺だけが知っているというのは、思いのほか気分の良いものだと思ってな。」

そう言って、テーブルの下で脚をゾロに向けて伸ばし、トントンと膝をノックした。

その意味に気付いたゾロが、にやりと笑う。

「何だよ、もう我慢できなくなったのか?」

「食べる姿も、なかなか色気があるからな。」

「そうか?」

と言いながら、ゾロが濡れた指先を口に含んで、上目づかいでスモーカーを見た。

 

 

会計を済ませると、スモーカーは先に立って歩き、1軒の宿屋の前で足を止めた。

「ここでいいか?」

「場所なんて、どうでもいいクセに。」

ここに来ても、どうにか余裕のある表情を装っているゾロに、スモーカーは何も言わずに黙ってチェックイン手続きをする。

 

どうせ旅の途中だ。

誰に見られようと、どう思われようと関係ない。

そう言いきってしまえれば、どれだけいいだろうと思うことがある。

しかし、自分は海軍の正義を背負う立場であり、そして相手は自分が追っている海賊だ。

そして、お互いにその立場を捨てることはできないのだ。

だから、あまり大きくはない宿屋を選び、偽名でチェックインする。

少しでも、この関係を長く続けられるように。

 

 

今回の部屋は、それほど大きくはないものの、清潔そうで安心する。

宿代に色を付けた甲斐があったと、スモーカーは一人安心する。

「先にシャワー、使うか?」

部屋のカーテンを閉めながら問えば、ゾロがどんと背中に抱きついてきた。

「ん?」

と首を後ろに回してゾロの顔を確認しようとするが、ぎゅっと抱きついているせいでよく見えない。

「どうした?」

「もう少し、このまま。」

そうくぐもった声で言うので、スモーカーはそのままゾロの好きにさせておいた。

 

しばらくすると落ち着いたのか、

「シャワー、浴びてくる。」

と言ってゾロはバスルームに駆けこんで行った。

 

 

まさかゾロが、こんな行動を見せるとは思わなかった。

元海賊狩りで、今は高額の賞金首である海賊。

そのくせ、ONEとして何食わぬ顔で海兵の前で歌う妖艶な姿を見せる。

鷹の目のミホークに追うことを許されるほどの剣士でありながら、

でもこうして一緒にいて見れば、時折、ほんの時折だが、

20歳に満たない若い青年らしい姿を見せることもある。

本人はそれを隠して、あくまで一人前の大人として自分の前に立ちたいようだが、

どうやらそのギャップがなお、魅力を増すことには気づいていないようだ。

 

どれも本当の彼でありながら、どれもまた仮初の姿ような、その掴みどころのなさが、ますます彼を手放せなくさせる。

 

本当なら、今すぐ彼とは距離を置くべきなのだろう。

しかし、もう離れられない。

 

 

捕えられたのは、どちらだろうか。

 

 

 END

 

 

 

 

ということで、小悪魔胡蝶の続編でございました。

今回は、最初はゾロ視点で、後半はスモーカー視点で、お互いにお互いの関係を不安に感じながらも離れられないと思っている、という様子を書かせていただきました。リクエストだけで続いているこのシリーズ、今後も皆様にかわいがっていただければ幸いです

リクエストしていただいたつるぎさん、素敵なリクエストありがとうございました。

    

       

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