250000HIT お礼リクエスト作品 第1弾 

 今回のリクエストは、「シッケアールでゾロの左目の傷に関するお話」です。

 リクエストしてくださったとよさん、素敵なリクエスト、本当にありがとうございました。またタイトルもとよさんに付けていただきました。

 

 

 

 

 翡翠の記憶

 

 

 「ゾ〜ロ〜。」

2年ぶりに再会したゾロにルフィが大声で名前を呼びながら抱きついた。

しばらくの間、その感触を確かめるようにぎゅっ、ぎゅっと抱きしめる。

「ゾロ、また強くなったな。」

そう言ってにしし、と笑った顔がふと、表情を消した。

「ゾロ、目。」

「ん?」

「見えないのか?」

「あぁ、開かねぇよ。」

「そっか。」

「何か、問題あるか?」

「うーん、問題はねぇけど、でももったいねぇ。」

「もったいない?」

「ゾロの目、俺、好きだったのにな。」

「何だよ、おめぇもかよ。」

「ん?どういう意味だ?」

「いや、あいつも同じ様なこと、言ってたからよ。」

そう言うと、ゾロはちょっと照れたような表情を浮かべた。

 

 

 

「おい、それは何だ。」

屋敷に戻ってきたゾロを一目見るなり、ミホークが声をかけた。

ゾロの頭の上には、シッケアール王国に住むヒューマンドリルの子どもが乗っかっていたのだ。

「修業してたら、近くに落ちてた。」

「生き物が落ちてるはずがないだろう。」

「それより、飯。」

「自分でやれ。」

「そうする。」

ゾロは呑気に子どものヒヒを乗せたまま、食べ物を探して屋敷の中をうろついた。

そのとき、いきなり目の前にペローナが現れた。

「ギャッ。」

驚いたヒヒは慌ててしがみついていたゾロの頭に爪をたてた。

「いてっ。」

ゾロは慌ててヒヒをはがそうとしたが、必死にしがみついているので、なかなか離れようとしない。

「おい、ゴースト女。どっか行け。」

「ふん。お前なんて、勝手に猿どもと血まみれで遊んでればいいんだ。」

拗ねたようにふわりと飛び去っていくペローナを見送りながら、どうにか暴れるヒヒを頭から下ろし、腕に抱き抱えた。

「目に血が入っちまったじゃねぇか。」

ぐいっと腕で血をぬぐいながら、まだ怯えるヒヒを優しい目で見つめる。

そうすると、ヒヒも段々と落ち着いてきて、ゾロに甘えるような仕草を見せ始めた。

(そう言えば、チョッパーも最初は俺のことを見て怯えてたくせに、いつの間にかよく肩車するようになってたな。)

ゾロは仲間のことを懐かしく思い出した。

このときの傷が、始まりだった。

 

 

「ん?どうした。」

最初に異常に気がついたのは、ミホークだった。

剣の稽古をつけると約束をしたものの、ミホークは基本的にはあぁしろ、こうしろと言うのは性に合わないので、ゾロが剣を振るう様子を適当に眺めるか、ごくたまに己の太刀筋を見せるくらいしかしていなかった。

それでもゾロは、できるだけのことを吸収しようとしているらしく、いつでも真剣な目つきで人間離れした鍛錬を繰り返していた。

それが今朝はどうにも様子がおかしい。

「別に、何でもねぇ。」

そう言いながら、手の甲で左目をぐいっとこすった。

「目がどうかしたか?」

「何でもねぇって。」

ちょっとイラっとしたように応えたゾロに、ミホークはますます違和感を覚える。

幼い頃からの習慣なのか、あれだけ傍若無人ぶりを発揮していながらも、年長者への礼儀はわきまえているのが、これまでこの島で共に過ごすうちにわかっていたからだ。

「ロロノア?」

「今日は、もうやめる。」

そう言って踵を返したゾロを何も言わず見送っていたミホークだったが、数メートル先でゾロの身体がゆらりと揺れたのに気付くと慌てて駆け寄って腕をつかんだ。

「具合が悪いのか?」

突然身体を支えられて驚きながらも、ゾロ自身、自分の身体に起こっていることがよくわかっていないのか、戸惑った表情ですがるようにミホークを見た。

「わかんねぇ。なんか、ふらふら・・・する。」

そのままミホークに体重を預けるようにして、必死に身体のバランスを取ろうとする様子に気づき、ミホークはゾロの身体を抱き上げた。

ただ事ではないと感じ、ミホークは急いで屋敷へと走った。

 

「おい、すぐに出てこい。」

屋敷内にいるであろうペローナに声をかけて、ゾロをベッドへと寝かせる。

「何だ?」

「こいつの看病をしていろ。」

「また怪我でもしたのか?」

「わからん。急に倒れた。俺は医者を呼んでくる。」

「医者なんて、いるのかよ。」

「この国にはいないが、少し離れた島にいる。急いで連れてくるが、それまでこいつを見ていろ。」

そう言われて改めてゾロを見ると、かなり調子が悪そうな様子で、横になっているのも辛そうだ。

「早く、帰ってこいよ。」

「あぁ、わかっている。」

ゾロをペローナに託し、ミホークはすぐに屋敷を後にした。

 

それから数時間後、ミホークは医者を連れて戻ってきた。

「こいつを見てやってくれ。」

そう言われてゾロに近づいたのは、まだかなり老齢と思われる医者だった。

医者はゾロを診察し、静かに言った。

「この目はもう駄目だ。」

「何だと?」

「ウィルスにやられとる。このまま放っておけば、さらに感染が広がり、命を落とすことになるだろうな。」

「では、どうすれば?」

「目に溜まっている膿を出さなければならん。」

「ならすぐに、やれ。」

「ここでか?何の設備もないのに?」

「切らなければ命を落とすのだろう?」

「だが失敗すれば多量の出血を引き起こす。こんな何の設備もないところでオペはできん。」

「では、私が斬ろう。」

「何?」

「要するに、目を斬って、膿を出させれば良いのだろう?」

「ほう、こいつの命を預かる覚悟があると?」

「こいつが追ってこなければ、またつまらない人生に逆戻りだ。」

「なるほど。では、斬るのはお前に任せて、処置は私がやろう。」

ミホークは、横たわるゾロにそっと声をかけた。

「ロロノア、ロロノア。」

「ん?・・・俺・・・」

「何も気にしないで、ゆっくり休め。」

「ミホー・・ク?」

「あぁ。目が覚めたら、今よりも気分が良くなっているはずだ。」

「・・・うん。」

ミホークに宥められるまま、ゾロは深い眠りについた。

医者が麻酔を注射したときも、ミホークがその目に心をこめた太刀筋を刻んだときも、そこから溜まっていた膿が流れ出たときも、全く目を覚ますことはなかった。

 

 

「何だ?」

朝、ペローナが起きてくると、珍しくゾロが起きていた。

どこかに移動しようと思ったらしいのだが、なぜか階段の前で首をひねっている。

「どうかしたのか?」

「階段、動かしたか?」

「はぁ?何を言ってんだ?」

「いや、昨日までとなんか違う気がして・・・」

自分でもその違和感の理由が説明できないので、つい言葉尻が弱くなる。

「お前、昨日は寝てたじゃねぇか。」

「俺が、寝てた?」

「あぁ2日間、寝っぱなしだったぞ。」

「そう、なのか?」

「それにお前、気づいてねぇだろう?」

「何がだ?」

「お前の頭に巻いてある包帯に。」

「包帯?」

そう言ってゾロは、改めて自分の頭に巻かれた包帯に触れ、初めて自分の左目まで覆われていることに気がついた。

「何だ、そういうことか。」

理由がわかれば特に問題ないらしく、ゾロはそのまま階段を降りようとする。

「それだけかよ。」

「別に問題ねえ。それより腹減った。」

そう言うと、そのまま歩いて行ってしまった。

 

この男にとって片目を失うことはその程度のことなのだ。

いや、この男だけではない。

何のためらいもなく目に刃を向けたミホークだって同じなのだろう。

だからこそ、処置を終えた後、ただ一言

「惜しいことをしたな。」

と呟いたのだ。

彼らは、剣士としての不利など何も感じないのだ。

それよりも、あの澄んだ翡翠の目を1つ失ったことを惜しむのだ。

若干の距離感のずれを、階段が動いたのか、程度の感覚で済ませてしまうのだ。

「馬鹿な男どもだな。」

それでも、自分もあの瞳が一つなく見られなくなったことは惜しいと思うし、それでも片目になったところであの男の強さは変わらないだろうとは思うのだ。

「私は、あいつらとはちがーう!!」

そんな叫びが、古城に響き渡った。

 

 

 

 

 

「ゾロ、誰のこと、思い出してたんだ?」

「ん?お前らと離れてた2年間を思い出してただけだ。」

「ふーん。ゾロ、2年でまた強くなったか?」

「あぁ。強くなった。」

「そうか。またゾロと戦いてぇな。」

「そうだな。旅をしてりゃあ、またそういう機会もあるだろう。」

(あいつらと再会することも、な。)

そう言って、ゾロは穏やかにほほ笑んだ。

 

 END

 

 

 今回のリクエストを頂いたときに、まず頭に浮かんだのはゾロの左目の傷痕の綺麗さでした。胸の傷はあれだけ派手なのに、目の傷は本当に綺麗で、もしあれがミホークに付けられたものだとしたら、それは戦いの上ではないだろうなということでした。

優しさのこもった傷というか、愛情を感じる傷のように見えて、そこから浮かんだのがこのお話でした。

あまり弱り要素は入れられなかったですし、怪我の経緯等は絶対に原作ではありえない設定だと思います。それでもゾロやミホークにとって、片目を失うことは剣士としては全く問題ないのだろうというのが、私のあの傷に対する思いです。

とよさん、素敵なリクエスト、本当にありがとうございました。

 

 

    

       

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