250000HIT お礼リクエスト作品 第4弾
今回のリクエストは「海賊設定でルゾロのお話」とのことですが、実はさらに詳しい設定もリクエストしていただいていますが、それはお話の最後に書かせていただきますね。なお、展開上オリキャラが登場します。ご了承ください。
リクエストしてくださった夕南さん、素敵なリクエスト、本当にありがとうございました。
タイトルも夕南さんにつけていただきました。
共にいる理由
麦わらの海賊団が今回立ち寄ったのは、夏島だった。
「過ごしやすそうね。」
穏やかな気候に、ナミがうれしそうに声を上げた。
カモメが気持ち良さそうに空を舞い、眩しい太陽が照りつける。
「こんなに爽やかな気候は久しぶりね。」
「スリラーバークの後だと、尚更太陽が眩しく感じるぜ。」
みな、太陽の光に恵まれたこの島を一目見るなり気に入ったようだった。
「ちらっと見えた市場も、食材が豊富そうだし、後はログが貯まるのにどのくらいの時間がかかるが問題だな。」
「チョッパー、どう?」
「鳥たちが言うには、5日間だって。」
「5日間、ならちょうどいいな。」
「うん。休養するのにぴったりだよ。」
そう言ったチョッパーの視線の先にいたのは、ゾロだ。
スリラーバークでこれまでにないほどのダメージを受けたゾロだったが、意識を取り戻してからは、何事もなかったかのように過ごしている。
(まだ、治るはずないのに。)
チョッパーがどれだけ言っても包帯を勝手に取っては、無謀な鍛錬を繰り返している。
サンジが言うには、ばれない程度に食事の量が少なくなっているらしい。
「みんなでのんびりしましょう。」
そう言ったナミの言葉に、チョッパーはほっと息をついた。
島のはずれに船を止め、船番として残ることになったフランキーとウソップを残し、他のメンバーが早速島の中心地へと向かった。
「すっげぇ〜。」
漂ってきた美味しそうな匂いに、ルフィとチョッパーが顔を綻ばせる。
公園らしき場所に並ぶ屋台から、様々な食べ物が売られていた。
「なぁなぁ・・・」
とルフィがすがるような眼でナミを見たときだった。
「お母さん!!」
いきなり子どもの声が響いた。
麦わら海賊団の中に、母親はいない。
公園で遊ぶ子どもが自分の母親を呼んだだけだろうと誰もが思っていたのだが、その子が駆け寄ってきて掴んだのは、ゾロの手だった。
「お母さん、抱っこして。」
にっこりと笑ってそう言われ、誰もが唖然としてその子とゾロを見つめた。
「おい、ケン、勝手に・・・」
後から追ってきた父親らしき男が、子どもに向かって話しかけたのだが、ゾロのことを見て驚いて言葉を途切れさせた。
「おいおい何だよ、いきなり。」
「すまない。ケン、こっちにおいで。」
「やだ、お母さんと一緒がいい。」
「その人はお前のお母さんじゃ・・・」
男性がそう言って子どもに言い聞かせようとしたが、それを制したのはゾロだった。
「ケンって言うのか。」
そう話しかけながら、子どもの身体をひょいと持ち上げた。
「わーい。」
子どもはすっかりご機嫌で、にこにことゾロに笑いかける。
「お母さん、お母さん。」
そう言ってなつく子どもの様子を見る父親の表情は、切なさを隠せない。
「何か、理由がありそうね。」
ナミがそう言うと、父親がゆっくりと頷いた。
「ゾロ、あんたはその子と遊んでてちょうだい。私たちが話を聞いておくわ。勝手に歩き回っちゃだめよ。」
結局、ナミの指示によりゾロとチョッパーが子どもと一緒に過ごし、サンジとブルックがルフィのお守りを、そしてナミとロビンが父親から事情を聞くということになった。
「私は、カイトと申します。あの子は、私の息子でケン。3歳です。」
「私たちは、たまたまこの島に立ち寄っただけ。あなたとは初対面だと思うけど、もしかして以前、どこかで?」
「いえ。今が初めてです。」
「でもゾロの顔を見たとき、動揺していたみたいだけど。」
「それは・・・、彼が似ていたからです。」
「似ていたというのは、ケンくんのお母さんに、ということね?」
「はい。」
「息子さんが間違えてしまうほど、彼と奥さんは似ているのかしら?」
「髪の色が、同じなんです。実は妻は息子がまだ幼いうちに亡くなったんです。なので、写真でしか見たことがないんですよ。」
「だから、なのね。」
「息子はどうして自分には母親がいないのか、ということをうまく受け止められずにいるんです。だからケンはずっと待っているんです。いつか、母親が自分のことを迎えに来るのを。」
ナミもロビンも、母親との辛い別れを経験しているので、写真でしか知らない母を待ち続ける幼い子どもの気持ちが痛いほどよくわかった。
「少しは、力になれるかしら?」
「えっ?」
「あんな仏頂面でも、息子さんの気持ちが少しでも慰められるというなら、ここにいる5日の間、彼を使ってちょうだい。」
「いいんですか?」
「どれだけ力になれるかは、わからないわよ。」
こうして、ゾロはこの島に滞在している5日間をカイトとケンの親子と一緒に過ごすことになった。
「ケン、いい子にしてたか?」
「うん。お母さん、いっぱい抱っこしてくれたよ。」
「そうか、良かったな。ロロノアさん、すいません。」
「いえ、構いません。こちらも、楽しませてもらいましたから。」
「あの、実は・・・」
カイトがナミたちとの会話の内容を伝えると、ゾロはあっさりと了承した。
「あいつらが問題ないって言うなら、俺は別に構わない。でもいいのか?」
「いいのか、と言うと?」
「俺は結局は、5日間しかここにいられない。」
そのとき、ケンがどれだけ泣いてせがんでも、それ以上一緒にいることはできないのだ。
「それでも、きっとケンにとって、大切な思い出になるはずですから。」
「そうか。で、俺はどうしたらいい?」
「よろしければ、家に来てください。」
そう言って案内されたのは、この島では一般的だと思われる住居だった。
小さな戸建で、置かれている家具は木製のものばかり。
「こっちこっち。」
とうれしそうにケンがゾロの手を引いて、自分のおもちゃなどが置かれているスペースに座らせた。
「お母さん、あそぼ。」
「おう。」
ゾロは軽い気持ちで答えた。
カイトが作った夕食を3人で食べ、ケンを真ん中にして3人で並んで横になると、子どもと遊ぶという普段とは違う動きで疲れが出たのか、ゾロはすぐに眠ってしまった。
そして夜中に目が覚めた。
ゾロは気づかれないように、小さく息を吐いた。
こうならなければいいと願っていたのに、結局こうなってしまったことに、思いのほか気持ちが落ち込んだ。
カイトがケンをそっと抱き上げ、別室へと運ぶのをゾロは気配で感じていた。
恐らく、子どもの目には触れさせたくないのだろう。
そのことだけは、褒めてやるかと思った。
だからと言って、みすみすやられるつもりはないが。
そして、自分に向けて刃物が振り上げられた気配を感じると、素早く身を起こしてカイトの腕をつかんだ。
はっとカイトが息をのむのが、暗闇でもはっきりとわかった。
「悪ぃな。命、狙われてるのには慣れてるんでな。」
そう静かな声で言うと、ゾロはカイトの手からナイフを奪い取った。
「まさか、本気でこのナイフで俺のことを殺せると思った訳じゃねぇんだろ?」
「それでも、それでも、あんたを捕えれば金が入る。」
「あんた、賞金稼ぎなのか?」
「昔な。でも、あいつが嫌がったんだ。」
「あいつ?」
「結婚の条件は、賞金稼ぎをやめることだったんだ。結婚するなら危ない仕事はやめて、一緒にいられる仕事にしろって言っておきながら、自分はあっさり病気になっちまって。」
「でも、あんなかわいい子ども、残してくれただろ?」
「そうだな。ただ、あの子が不憫でな。」
「不憫?」
「漁師の手伝いをしながらどうにか暮らしているが、決して楽な暮らしじゃねぇし、しかもこの廃れた島だ。
美味い物も、面白いおもちゃも買ってやれねぇで、我慢ばかりさせているケンに、たまにはいい思い、させてやりたかった。」
「あんた、馬鹿だな。あの子はそんなこと、思っちゃいねぇだろうが。
ただ親に抱っこされて、一緒に遊ぶのが一番の幸せだって顔に書いてあるじゃねぇか。
どうしてそれがわからねぇんだよ。」
「そうだな。本当にすまなかった。」
「謝るなら、俺じゃなくて子どもに謝ってやれ。で、俺はあと4日、ここに泊めてもらえるのか?」
「ロロノアさん・・・あなた。」
「俺みたいな物騒なのと一緒にいるのが嫌だって言うなら、このまま出て行くが?」
「あれだけケンがなついているのに、物騒だなんて思いません。あなたの方こそ、もうここにいるのが嫌になったのでは?私のような心の弱い人間、幻滅されたでしょう?」
「子どもを育てるってのは、簡単なことじゃねぇ。それができてる人間が弱いわけねぇだろ?」
「ありがとうございます。もしロロノアさんさえよろしければ、ぜひあと4日間、ケンと遊んでやってください。」
「おう。」
その翌朝、目を覚まして隣にゾロがいないことに気付いたケンの大きな泣き声から始まった共同生活は、賑やか極まりないものだった。
さらに翌日は、様子を見にきたルフィも交じって、さらに慌ただしくなった。
麦わら海賊団は、海賊にしては旅自体はひどく呑気で自由なものだと思っていたが、実際に子どもと一緒にいると、それなりの緊張感と責任感があったのだと思い知った。
ケンはゾロやルフィにたっぷりと甘えて満足し、カイトはそんなケンの笑顔に癒され、そしてゾロは、チョッパーにどれだけ言われてもやめようとしなかった鍛錬もせず、のんびりと島暮らしを満喫した。
ただ時折、ルフィが何とも言えない表情で自分を見ていたのにゾロは気づいたが、あまり深く考えないようにした。
そして別れの時が来た。
前日の晩、カイトとゾロは酒を酌み交わしながら、ケンが大泣きするのは避けられないだろうなぁと話しあっていた。
それでも、こっそりといなくなるのはやめた方がいいだろうということになり、二人で涙を覚悟した。
しかし、実際にはケンは大泣きすることはなかった。
それまでゾロのことを、頑なに「お母さん」と呼んでいたケンが、初めて「ゾロ」と呼びかけると、
「今まで、お母さんしてくれて、ありがとう。」
と言ったのだ。
「ケン、もういいのか?」
「本当は、ずっと一緒にいたいけど、でも大丈夫。俺にはお父さんがいるから。」
「そうか。仲良く暮らすんだぞ。」
「うん。ゾロも、元気でね。また遊びに来てね。迷子になっちゃダメだよ。」
この数日で、ゾロが迷子体質であることは、ケンにもばれていたらしい。
「じゃあ、元気でな。」
そう言って船に向かって歩き出したゾロを、ケンとカイトはいつまでも手を振って見送った。
「おかえり。」
船に帰ってきたゾロを、ナミとロビンが笑顔で迎えた。
「ちゃんとお母さんの役割、果たせたの?」
「俺は母さんじゃねぇよ。」
「でも、随分穏やかな顔、してるわよ。」
「うるせぇよ。」
「あと、ルフィのこと、よろしくね。」
「よろしくって、何だよ。」
「あんたがいない間、随分神妙な顔してたわよ。」
そう言われて、あの日のルフィの表情を思い出した。
「行ってくる。」
放っておくこともできず、ゾロはルフィのところに向かった。
「ただいま。」
「おかえり。」
「ルフィ、お前何か気になることでもあるのか?」
「気になることなんて、ないぞ。」
「じゃあ、その顔は何だよ。」
「変な顔、してるか?」
「変っていうか、面白くない顔、してるな。」
「面白くない、か。確かに面白くねぇな。」
「何が面白くないんだ?」
「チョッパーがどれだけ言っても、鍛錬やめなかったのに、あの親子といるときのゾロは、強くなることとか、野望のとことか考えないで、優しい顔してた。」
「お前、それが面白くなかったのか?」
「あぁ。俺と一緒にいるときよりも穏やかなゾロの顔見てたら、なんだか面白くなくなった。」
それを聞いて、ゾロは思わずがっくりと肩を落とした。
「お前な・・・」
「何だよ。」
「ルフィ、お前が旅を続けている理由は何だ?」
「海賊王になるためだ。」
「そうだろ?そして俺はそのとき、世界一の剣豪としてお前の隣に立つと決めた。」
「約束、したもんな。」
「俺はその約束を守るために、そしていつまでもルフィ、お前の隣にいられるように努力は惜しまない。」
「でも、俺の前でもちゃんと休め。俺も、もっともっと強くなるから、ゾロが疲れたときや、怪我したときとか、安心して休めるくらい、強くなるから。」
「わかった。」
「よし、じゃあ出航するか。」
「おう。」
END
ということで、今回のリクエストは「ルゾロ前提で、ゾロのことをお母さんと呼ぶ子どもが出てくるお話」でした。リクエストにうまく答えられたかどうか心配ですが、お楽しみいただければ幸いです。
夕南さん、素敵なリクエストをありがとうございました。