250000HIT お礼リクエスト作品 第5弾 

 今回のリクエストは「ベンゾロのお話」でしたので、パラレル設定で書かせていただきました。

 リクエストしてくださった方、よろしければタイトルをつけてやっていただければうれしいです。

 ご連絡、お待ちしています。

 

 

 

 

  No Title

 

 

すっかり夜も更けた深夜1時。

隣に寝ているゾロがうなされているのに気付いたベンは、まだ、だめだったかと思いながら、優しい手つきでゾロの頭を撫でる。

触れて見れば、そこはほんのりと熱をもち、汗をにじませていた。

 

いつもそうだった。

日中、一緒に買い物に行き、帰ってきて食事をして、布団を並べて寝る。

それだけだ。

でも、そんな当たり前のことが、ゾロにとっては心の重荷になるのだ。

「こんなに、幸せでいいのかって思ったら、不安な気持ちで胸がつぶれそうになる。」

初めてその言葉を聞いたとき、過去はまだゾロを苦しめているのかと愕然とした。

 

 

 

ベンがゾロに会ったのは、今から1年前のことだ。

組の若い連中が、シマで売りをしているのを見つけたので適当にぼこぼこにしたと報告してきたのだ。

おかしらであるシャンクスは、その子どもを一目見るなり、何らかの事情があると悟ったのだろう。

そういうところは、本当に鋭い人だ。

医者に連れて行ってやれと言われ、結局寝る場所として事務所の2階にある1室を貸してやることになった。

 

「布団は、そこにあるものを使え。話はまた明日、ゆっくり聞かせてもらうから、今日はもう寝ろ。」

そう言うと

「わかりました。おやすみなさい。」

とゾロは小さな声で答え、部屋の隅にたたまれていた布団を広げ、そのままごそごそと潜り込んだ。

疲れていたのだろう。ゾロは痛み止めを飲んでいたこともあって、すぐに眠ってしまった。

それを確認すると、ベンは静かに戸を閉めた。

 

 

1階に下りたベンを待っていたのは、この事務所の主、つまりはおかしらであるシャンクスだった。

「明日にでも、必要なものを買ってきてやれ。」

「ここに置いてやるつもりか?」

「誰かが面倒みてやんなきゃ、あいつは、まっとうには生きていけねぇよ。」

「わかった。」

「で、医者は何て言っていた?」

「あばらが折れてるから、しばらくおとなしくしてろって。」

「そうか。で、あいつの家族は?」

「親はいないらしい。親戚に預けられてたが、まともに飯も食わせてもらえず、結局飛び出してきたらしい。

まぁ、そこからはお決まりだな。金が無くなって、身体を売って、うちの若いもんに目ぇつけられたらしい。」

「絵に描いたようなパターンだな。」

こうしてゾロは、シャンクスの事務所に引き取られることになった。

 

 

翌朝、シャンクスとベンは改めてゾロを観察したが、ゾロは驚くほど静かだった。

何も言わなければ部屋から出てこようとはせず、部屋で一人静かに過ごしていた。

でも、何か手伝うように言うと、それを一生懸命にするし、食事のときには、あまり多くは食べないものの、「おいしい。」と言ってうれしそうに食べた。

聞かれたことには素直に答えるが、単語だけで答えることが多く、あまり学校には行っていなかっただろうことは容易に推測された。

 

それから3日後、ベンとシャンクスは急な仕事で1週間ほど事務所を空けなければならなくなった。

「ゾロ、一人で留守番できるか?」

「ここにいて、いい?」

「あぁ。好きにしていていいぞ。たまに誰かが顔出すかもしれないけど、気にするな。何か困ったことがあれば、そいつらに言えばいいから。」

ゾロは小さくうなずいた。

「それじゃあな。」

「土産、買ってきてやるからな。」

ベンとシャンクスは慌しく出て行った。

 

 

ベンとシャンクスはできるだけ急いで仕事を片付け、予定していたよりも1日早く戻ってきた。駅に着いてもなお、ゾロのために土産を買い込むシャンクスを見て、ベンはにやにやと笑っていた。

「何がおかしい?」

「おかしらが、そういう風に世話を焼く姿はあまり見られないから。」

「そうか?」

シャンクスは、別に珍しくはない、当たり前のことをしているだけだと言い、ベンの方こそ少しでも早く仕事を片付けようと躍起になっていただろうと言い返した。

「違いねぇ。」

二人は顔を見合わせてククク、と笑い合った。

 

「ゾロ、帰ったぞ。」

事務所に入るとシャンクスが大きな声でゾロを呼んだ。しかし返事はない。

「寝てるのか?ゾロ?」

ベンがゾロの使っている部屋のドアを開けた。

「ゾロ!!」

ベンの慌てた様子に気づいたシャンクスも部屋に飛び込んだ。

「どうした?」

「ゾロ、ゾロ!」

ゾロは部屋の真ん中ですっかりと憔悴しきっって倒れていた。

「しっかりしろ、ゾロ!目、開けろ!」

シャンクスがゾロの頬をパンパンと叩いて、目を開けさせた。

「んんっ。シャンクス?」

「そうだ。気がついたか?」

「おかえりなさい。あの、ごめんなさい。」

ゾロが慌てて答えた。

「何で謝るんだよ。」

「出迎え、できなかった。」

「それはいい。お前、何してたんだ?」

「何も。」

と、ゾロは答えたがよく見ると、ひどくやつれていて顔色も悪く、少し痩せたようだった。

「お前、飯、食ってたか?」

しかしゾロは答えない。

「ちゃんと答えろ。飯を食っていたのか?」

ゾロは小さな声で、最初だけ、と答えた。

「理由を言え。」

ゾロは怒られているのだと感じ、すっかり怯えていた。

それに気づいたベンがとりなすようにゾロに促す。

「おかしらは、お前を心配してるんだ。怒らないから、言ってみろ。」

でもゾロはなかなか口を開かないので、ベンが一つずつ質問していくことにした。

「金、持っていなかったのか?」

そう聞かれたゾロはようやく答えた。

「持ってる。」

「じゃあ、買い物に行けばよかっただろう?」

「買い物は、行った。」

「じゃあどうして飯を食っていないんだ?」

「買い物に行ったとき、声、かけられた。」

「声?誰に声をかけられたんだ?」

「昔の客。」

恐らく以前にゾロを買った客が、たまたまこの町に住んでいたのだろう。

「それで、買い物に出るのが嫌だったんだな?」

「またやらせろって言われたけど、もうしないって約束したから。」

とゾロは答えた。

「でも、だったら、出前か何か取れば良かっただろう?出前のとり方くらい、知っているだろう?」

するとゾロは顔をほんのりと赤くした。

「知らなかったのか?出前、取ったことないのか?」

するとゾロは消え入りそうな声で、ない、と言った。

「それで、6日間、何も食ってなかったのか?」

ゾロは首を振った。

「最初に買ったお菓子あったから。それと・・・、水、飲んだ。ごめんなさい。お金、払うから。」

二人は一瞬、顔を見合わせた。

しかしまずはゾロに何か食べさせるべきだと判断した。

「ゾロ、腹減ってるだろう?土産、買って来たから食え。」

シャンクスは大きな袋から買って来たものを取り出し、ゾロに渡した。

ゾロはそれらの箱を開けては二人に感謝の言葉を述べ、ちょっとずつ食べた。あまりに遅いペースで食べるゾロをいぶかしんでシャンクスが声をかけた。

「随分ゆっくり食うんだな。」

「ごめんなさい。」

「謝らなくていい。自分のペースで食えばいいから。」

そう言ってゾロが食べる様子を見ていたが、ようやく異変に気がついた。

「お前、ひどい汗かいてるぞ。」

しかしゾロは何も答えずに、ただ目の前の食料を片付けようと必死になっているようだった。

「ゾロ、ちょっと手、止めろ。」

ゾロはそう言われて手を止めたものの、顔はうつむいたままだった。

「大丈夫か?具合、悪いんじゃないのか?」

そう尋ねると、ゾロは小さな声で

「痛いだけ。」

と答えた。

「どこが痛いんだ?」

と聞くと、ゾロはそっと自分の右わき腹に手を添えた。

あばらを骨折しているんだった・・・と思い出したシャンクスは薬を飲んだのか?と尋ねた。

「もう、なくなった。」

とゾロが答えたので、シャンクスはベンにゾロを病院に連れていくよう指示した。

「すぐに行こう。」

そう言われたゾロはおとなしくベンの後を付いて事務所を出て行った。

 

 

「鎮痛剤を打ったから眠くなるよ。それと、点滴をしておこうな。1時間ほどで終わるから、それまで寝ていていいぞ。」

そう言われたときにはもうゾロは眠りに落ちていた。

ヤクザ相手の仕事に慣れているその医者は、いつもとはまるで違う、優しい目でゾロが眠っているのを確認すると、ベンが待っている部屋に戻った。

「あいつは?」

「眠ったよ。1時間したら点滴が終わるから、そうしたら連れ帰ってもいいが・・・」

「何だ?」

「ここに置いておいてもいいぞ。」

「どういうことだ?」

「あの子は、驚くほど忍耐強い。今回も、前回も、痛いとか辛いとかいう言葉をなかなか口にしない。大人だってそんなには辛抱できないものだよ。君たちがそれに気づいてやれないなら、ここに置いていけ。怪我がちゃんと治るまで、預かってやるから。」

「あんたは、随分、あの子を気に入ったようだな。」

「それはあんたも、赤髪もそうだろう?」

「そうだな。だから、あいつは連れて帰る。」

「そうか。大事にしてやれよ。薬を渡しておく。お前が預かっておけ。」

「どうしてだ?」

「前回、あの子に渡した薬は3週間分だ。それが10日で無くなったから、と言えばわかるな?」

「あぁ。俺が預かって、ちゃんと飲ませる。」

「それでいい。」

1時間後、ベンはゾロを連れて事務所に帰った。

 

 

車の中でゾロが眠ってしまったので、ベンが抱きかかえ部屋へと運んで戻ると、シャンクスが冷蔵庫の前に立っていた。

「どうした?」

「見てみろよ。」

「えっ?」

「冷蔵庫には、こんなに食い物が入っているんだぞ。あいつ、冷蔵庫を開けてもいないんだろうな。きっとこの中にあるものは他人の物で、取っちゃいけないと思ったんだろうな。水飲んだだけで金払うとか言ってたし。

大体、どうしてこの町にあいつの客がいたんだよ。」

「そうだな。」

「わがまま、言わせてやりてぇな。これがしたいとか、あれが食いたいとか、あそこに行ってみたいとか。」

「そうだな。色んなこと、教えてやらなきゃならねぇな。」

二人はそう心に誓った。

 

 

翌朝、ゾロが目を覚ますと、事務所の中はひどく賑やかだった。

ゾロは誰か客でも来ているのだろうと思って、部屋の中でじっと待っていた。

シャンクスとベンが帰ってきた、それだけでゾロには十分だった。それ以上は望まない。

壁に寄りかかり、膝を抱えて、ただじっと時が過ぎるのを待つ。

どのくらいそうしていたのかわからなかったが、突然部屋の戸が開いた。

そこにはベンが立っていた。

「ゾロ?起きていたのか?」

「おはようございます。」

「早く、来い。」

「でも・・・」

「何だ?」

「お客さんは?」

「何、遠慮してるんだ?お前はここの子になったんだろう?ちゃんと飯食って、薬飲まないと駄目だろう?」

そう言うと先に立って部屋を出た。

「よう、起きたのか?」

シャンクスが声をかけると、そこにいた10人以上が一斉にゾロを見た。

「お、おはよう、ございます。」

ゾロがあいさつすると、シャンクスがゾロを手招きした。

「みんなに、ちゃんと紹介してなかったからな。顔は見たことあるだろうけど、改めて言っておく。こいつは、ゾロだ。ゾロはここの人間だ。言っている意味がわかるな?誰であろうと、こいつを傷つける奴は俺が許さない。いいな?」

「はい、おかしら。」

「ゾロ、こいつらはみんなお前の家族みたいなもんだ。」

そう言われて、ゾロはただうなずくしかできなかった。

「よし。じゃあ飯、食え。」

シャンクスは自分の横の席に座るように顎で指示した。ゾロは黙ってそこに座る。

「飯、食えるか?」

ゾロは小さくうなずいた。

「よし、食え。でも無理するなよ。」

ベンがゾロのために皿を置く。ゾロはゆっくりと箸を動かして食べ始めた。

「良くなったら、一緒に買い物に行こうな。服、買ってやるよ。」

ゾロは黙ってうなずく。

半分ほど食べて、ゾロは箸を置いた。

「もういいのか?」

「残しちゃってごめんなさい。」

「無理するなって言っただろう?ちゃんと薬飲めよ。」

ベンが医者から預かった薬と水の入ったグラスを置く。

「薬は俺が預かる。ちゃんと量を守らないと駄目だ。痛かったらまた医者に連れて行くから、言えよ。」

ゾロはおとなしく薬を飲み、部屋へと戻って行った。

 

 

こうしてゾロはシャンクスの事務所で、主にベンに面倒を見てもらいながら生活することになった。

家族に大切にされるという経験に恵まれていなかったゾロにとって、この事務所での生活は新鮮で、温かなものだった。

荒くれ者の集まりではあったが、決して理不尽な仕打ちはされず、ゾロは初めて安心できる生活を手に入れた。

 

ただ、幸せになることに慣れていない彼は、「悪夢にうなされる」という形で過去にとらわれていた。

本人曰く、お前は幸せにはなれないぞと追いかけられる夢を見るのだそうだ。

まだ大人の庇護が必要な子どもが、だ。

「こんなに、幸せでいいのかって思ったら、不安な気持ちで胸がつぶれそうになる。」

という言葉を口にするゾロを、ベンはただ抱きしめてやる。

そして

「大丈夫だ。お前も幸せになっていいんだから。」

と言ってやる。

いつの日か、安心して幸せな気持ちを満喫できるその日まで。

 

 

 

 END

 

 

 

ということで、ベンゾロのお話というリクエストでしたので、パラレルでヤクザなベンと子どものゾロの出会いのお話を書いてみました。

色々と妄想がふくらむ設定にしてしまったので、ついつい長いお話になり、どうにかここでまとめたという感じになってしまいました。すいません。でも、機会があれば、ぜひまた続きを書きたいと思っています。

このたびは素敵なリクエスト、本当にありがとうございました。

 

 

    

       

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