250000HIT お礼リクエスト作品 第7弾 

 今回は朔華さんのリクエストで「海賊設定サンゾロのお話」です。実際にはもう少し詳しい内容をお伝えいただいておりますので、詳細はお話の後ろに記載しておきます。

 リクエストしてくださった朔華さん、このたびはリクエストどうもありがとうございました。タイトルも朔華さんに付けていただきました。ありがとうございました。

 

 

 

 

  響かぬ声に想いを  

 

 

 

島に買い物に出るというチョッパーに付き添ってゾロが船を降りたのは、今から1時間前のことだった。

チョッパーの存在を面白がった地元の猟師に、妖しい薬を仕込んだ煙玉の攻撃を受けたのが40分前。

鼻が利きすぎるせいで全く使い物にならなくなったチョッパーを抱えながら、ゾロが船に戻ってきたのが30分ほど前。

そして、何だか俺も喉がおかしいと言って、ゾロが珍しくうがいする姿を見かけたのが10分前。

チョッパーも落ち着いたみたいだから診てもらえ、とサンジがゾロを医務室に連れて行き、改めて診察を受けさせた今、もうゾロはかすれた声しか出なくなっていた。

「ゾロ、ごめんな。」

自分のことをかばったせいで、症状が悪化したことを気にして、チョッパーがしきりに謝るが、それに言葉で応えてやることができないゾロは、ただ穏やかな顔で首を横にふった。

「気にするなってよ。」

サンジが代わりにそう言ってやれば、ゾロも頷いて見せた。

「とりあえず、二人とも今日は刺激の少ないメニューを用意するから、それ食って、おとなしく休んどけ。な。」

というサンジの言葉どおり、その日はスパイスを控えた特別メニューが用意され、幸い食欲は落ちなかったチョッパーとゾロは、二人揃ってその食事を堪能し、その日は早めに休んだ。

 

 

翌日には、チョッパーはすっかり元気になったが、ゾロはそうはいかなかった。

「すげぇな、ゾロ。今日も声が出ねぇのか。」

そう感心したように言ったルフィが、ふざけてゾロにちょっかいを出したが、

「ルフィダメだって。今、無理させちゃうと、治るのが遅くなっちゃうんだから。」

とチョッパーが注意する。

実際、ちょっと声を出そうとしただけで、ゾロは軽くせき込んでいる。

「ゾロ、ちょっと見せて。」

と言って喉を見たチョッパーが、ため息をついた。

「昨日よりも、赤くなってるな。」

それを聞いたブルックが、思い出したように言った。

「そう言えば、昨夜はゾロさん、寝ながら時折、咳き込んでいましたよ。」

「喉が荒れてると、炎症から熱が出ることもあるから、気を付けないと。うがいをまめにして、安静にしててよ。刺激物や汚れた空気には気を付けてね。」

そうチョッパーが言うと

「部屋の埃は大丈夫なのか?」

とフランキーが質問した。それを聞いたナミはすかさず

「今日は天気もいいんだし、今のうちに男部屋の大掃除をしちゃいなさい。」

と指示した。

「えーっ。」

っと反論しかけたルフィに拳をお見舞いし、急きょ男部屋は徹底的な掃除が始まった。

掃除中は埃が立つため、別室に行くように言われたゾロは展望室に上がり、見張りをしながらおとなしく待っていることにした。

 

 

穏やかな水音に交じって、時折聞こえてくる仲間たちの賑やかな声が心地よいと感じながら、ゾロはのんびりとごろ寝を決め込んでいた。

鍛錬することも考えたが、展望室に上がるだけで少し息苦しい感じがしたので、身体を休める方を優先した方がいいと考えたのだ。

寝てしまっても、妖しい気配があれば気がつくだろうと瞼を下ろせば、すぐに睡魔はやってきた。

ゾロは素直にその眠気に身を任せた。

 

 

 

それからどのくらいの時間がたったのだろう。

ゾロは、近づいてきた気配に素早く身を起こしながら考えた。

未だ男部屋からは仲間たちの声が聞こえているからそれほど長い時間はたっていないらしい。

大掃除に夢中になっている彼らは、まだ妖しい気配には気づいていないようだ。

上から警戒するよう呼びかけようかと思って、はたと気がついた。

自分は声が出なくて、安静にしろと言われていたのだった。

何か、大きな音でもたてて注意をこちらに向けさせるか、いや、それよりも自分でさっさと片付けた方が早いだろう。

そうと決まれば行動あるのみ。

ゾロが、チョッパーが言っていたことも忘れて勢いよく起き上がりがりかけたところに、思わぬ人物がやってきた。

サンジだった。

「おとなしくしてろ。」

そう言って、ゾロの前に湯のみを差し出した。

中からは少し甘みを伴う湯気が出ていた。

「?」

声を出すことができないので、少し顔を傾け疑問をぶつける。

「お前、チョッパーに安静にしてろって言われただろ?これでも飲んでおとなしくしてろって。」

そうサンジに言われて、ゾロは途端にぷくりと頬を膨らませて、不満そうな表情を浮かべる。

「そんな顔してもだ〜め。」

優しく言い返したサンジを、ゾロはさらに睨んで見せた。

「大丈夫だって。今はお前が頑張らなくても、代わりはちゃんといるから。」

その言葉を証明するように、下からルフィの威勢の良い声が響いてきた。

それに続くように、ウソップやフランキーが機械を起動させたような賑やかな音が聞こえてきた。

「な?」

勝ち誇ったようなサンジの表情に、ゾロは渋々ながらも小さく頷いた。

「よしよし。じゃ、お前はここでおとなしくしてろよ。」

そう言って、ゾロの頭をぽんぽんとなでると、サンジがその場を去ろうとした。

「んぁっ・・・ゴホッ、ゴホツ。」

慌ててゾロが何かを言おうとして、思わず咳き込む。

それに気付いたサンジが慌てて戻ってくる。

優しくゾロの背中を撫でながら、咳が治まるのを待つ。

自分だけが戦いに参加できないのが面白くないのだろうと思い、

「お前だけが残る訳じゃねぇよ。俺は、ルフィたちが暴れて帰ってくるから、何か食える物、用意するだけだって。」

そう言ってゾロを宥める。

するとゾロは、ゆっくりと深呼吸して息を整えた後、サンジに向かって手で払うような仕草を見せ、さっさと下に降りろと伝えた。

「わかった、わかった。また後で様子見に来るからな。」

そう言い残し、サンジは機嫌良く戻っていった。

 

 

(かわいかったな。)

さっきの拗ねたような表情や、渋々ながらこくんと頷いたときのゾロの表情を思い出し、サンジは思わずにやける。

今は声が出ない分、表情や仕草でゾロの気持ちを読み取ろうといつもより注意深く観察すれば、随分と表情が豊かで、かわいらしく見えたのだ。

(早く仕込みを切り上げて、かわいい顔を拝みに行きますか。)

そう気持ちを固めてキッチンに顔を出せば、女性陣二人がいた。

「何よ、サンジくんったら、そんなににやけた顔しちゃって。」

「にやけてますか?」

「思いっきり。そんなに無口な恋人はかわいらしかったのかしら?」

サンジとゾロの関係を知っているナミが、遠慮なくサンジをからかった。

「弱ってる恋人をいじめるような真似はしませんよ。」

そう答えたサンジに、異議を唱えたのはロビンだった。

「あら、そうなの?てっきりわざといじめていたのかと思ったわ。」

その言葉で、展望室での二人の様子を監視されていたのだとわかる。

この女性陣たちは、本当に油断ならない。

「いじめるだなんて、そんな。」

「だって、せっかく彼が甘えてきたのに、気付かないフリをしたでしょう?」

「気づかないフリ?」

「やだ、サンジくん、わざとじゃなかったの?」

ナミも便乗してサンジをからかう。

「それまでのかわいい表情に気を取られて、まさか自分のことを引き留めてくれるだなんて、思わなかったんじゃないかしら。」

「ゾロ、かわいそう。私、慰めてこようかしら。」

「えっ?!」

「だって、今頃一人残されて、あなたに無意識に甘えたことを寂しく後悔しているかもしれないもの。」

「ロビン、行きましょう。」

「えっ・・・、あの・・・、ナミさん?」

「まぁ、どうしてもって言うなら、1時間くらいなら戻ってきたルフィたちを大人しくさせておいてあげるけど。」

「本当ですか?」

「サンジくんは、いっつも美味しいご飯、作ってくれてるしね。」

「あら、でもさっきはゾロにだけ美味しそうな飲み物、差し入れしてたみたいだし。」

「あれはですね、はちみつを入れたダイコンのしぼり汁でして、まぁそれほど美味しいという訳ではなく、喉に良いと言われている飲み物でして。」

「ふうん。じゃあ私たちには、どんな飲み物を出してくれるのかしら?」

「それは、ご要望がありましたら、どんな物でも。」

「そう。じゃあ今晩は、美肌に効く飲み物をお願いね。」

「はい、かしこまりました」

「じゃあ、行ってらっしゃい。」

そう言って、二人は優しくサンジの背中を押した。

 

 

サンジが再び展望室に顔を出すと、ゾロは壁の方を向いて横になっていた。

飲み物を差し入れたカップが空になっているのに安心したものの、眉間にしわが寄っていて、いつもよりも険しい表情になっている。

昨夜、咳のせいであまり眠れなかったというのもあるだろうが、今のサンジには、ゾロが不貞寝をしているようにしか見えない。

固い床でこのまま寝させておくのがかわいそうになり、サンジは急いで男部屋から毛布を数枚持って、戻ってきた。

床に毛布を広げると、ゾロを優しく揺り起こした。

「ゾロ。起きて。」

その声でゆっくりと覚醒したゾロは、なぜサンジがいるのかわからず不思議そうな表情を浮かべる。

そして、優しい声に誘われるように、そばにいたサンジに身体を寄せる。

「寝ぼけてるのか?」

と言いながらも、無意識に恋人に甘えられて、悪い気はしない。

「ごめんな、一人にして。」

寝ぼけたゾロをさりげなく誘導して、自分の膝に頭を乗せさせた。

「今はそばにいるから、安心して。」

心なしか、ゾロの表情が和らいだ気がした。

 

 

                                                        END

                 

ということで、今回は「敵にやられて声が出なくなったゾロ。サンジに言いたいことが伝わりづらくて、無意識に甘えたような態度を取るゾロと、それが嬉しいサンジ。」というリクエストでございましたが、いかがだったでしょうか。なんだか、いつになく甘い感じのお話になりましたが、お楽しみいただければ幸いです。

朔華さん、このたびは素敵なリクエスト、本当にありがとうございました。

 

 

    

       

                                                   TOPに戻る   企画TOPへ