1999年9月
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@松本清張の日本史探訪 (1999)
松本清張・対談角川文庫歴史薀蓄
324頁667円★★★

 先月の司馬遼太郎に続いての松本清張。司馬遼太郎のものが、時代の古い順に源義経織田信長と続くのに対して、本書は著者の嗜好に即して、卑弥呼天武天皇古代史メインの感がある。まあ、新しいところでは大岡越前守田沼意次なんかもあるのだが…。
 全般において、司馬遼太郎よりも対談での発言が少ないような気がする。

(2014/6/3改訂)

A風の武士 上下 (1961)
司馬遼太郎講談社文庫時代
285頁/275頁514円/514円★★★★

 著者の未読作品のうちであえて面白くなさそうなものを取上げてみた。面白そうなやつを読むのはもったいない気がするからだ。【注1】  著者の作品は、創作が多ければ多いほどしょーもなくなるというわたしの法則に則って、本書を選んだ。

 幕末、旗本の次男坊として暇を持余していた柘植信吾は、町道場の師範代を片手間の生業としながらぶらぶらしていたが、ある日道場主の身辺に得体の知れない山伏を見てから、あれよあれよといううちに熊野山中に存在するという謎の安羅井国と、そこに隠された財宝をめぐって幕府、紀州藩の間の暗闘に巻込まれていく。

 部分的に新選組山崎蒸なんかが出てきたりするが、基本的に歴史上の人物や事件は絡ませない純時代小説である。時代設定を幕末に置いたのも、最後に江戸に戻った信吾が、自分の知らない間に<ネタバレ反転>鳥羽・伏見の戦いを経て徳川の世が終っていることを知って、浦島太郎のような気分になるという点を加えたいがためだけの設定のようだ。

 なんとも不思議な感触で、いわゆるお宝獲得・秘境探検活劇の設定にもかかわらず、またきちんと誘拐・救出・ちゃんばら等々、冒険小説を形作るガジェットは揃っているというのに、自己韜晦しまくる主人公を始めとし、脇を固める女性陣や悪役等の人物造詣が妙に活劇を活劇にしていないという、なんとも腰の座りの悪さを感じる本である。その点、以前ずんどこの評価をつけた「妖怪」に通じる部分がやはりあるのだが、なんというか、書き方次第ではこういった冒険小説も有りなのかという点にえらく驚いてしまった。ちょっと感心を込めて評点を高くしてみた。

【注1】それから早15年。「菜の花の沖」「胡蝶の夢」など未だに読んでいない作品も…。
(2014/6/3改訂)

B日本地図の楽しい読み方 (1997)
ロム・インターナショナル編文庫地理蘊蓄
233頁476円★★

 昔からわたしは出不精なので、歴史に比べて地理の知識がとても少ない。いまだに四国・九州には足を踏み入れたことがないし【注2】、関東以北もお寒いものだ。本来歴史も地理も渾然と相互に影響を与えながら宗教、文化、民族を形作る大きな要因となるものだから、もう少し常識を深めようと思って本書を読んでみた。
 しかしながら、はっきり言って断片的な情報の羅列で、全く記憶に残っていない。

【注2】その後15年、四国へは伊予松山へ一度。九州へは仕事で博多に一回、日食トライで志布志から佐多岬へ一回上陸を果たした。
(2014/6/3改訂)

C空想科学読本 (1996)
柳田理科雄宝島社科学薀蓄
245頁1200円★★★

 なんとなくぱらぱらめくっているうちに、結局全部再読してしまった。やはり1冊目が一番笑える。【注2】
 こういう本を解説してもしかたがないが、身長と体重から考えるウルトラマンやガメラの構成物質の組成、または存在しうる体型といった基本的な話題から、ウルトラマンが怪獣を一本背負いしたときに発生する熱、振動、音がどれほどの被害を産むかの考察。あるいはウルトラ水流を使用すると地球が壊滅する理由は?といったネタは、ちょっとした物理の常識があるだけで十分理解できて面白い。
 笑いをとるために、こじつけていちゃもんをつけている箇所もかなり見られるが、息抜には最高だ。

【注2】この時点で二冊しか読んでいないが…。
(2014/6/3改訂)

Dこれだけは知っておきたい! 世界史100の大事件 (1999)
綿引弘知的生きかた文庫歴史薀蓄
340頁648円/619円★★★

 本書もそれぞれの事件(項目)にストーリーがあるわけではないので、すでにほぼすべて、記憶できずに流れてしまった…。
 しかし世界史の教科書のように世界を適当にブロック分けしとるのではなく、地域に関係なくあくまで年代順に並べるというのが面白い。“北京で蝶々がはばたけばニューヨークでなんたら”のように、歴史のダイナミズムはそれぞれの地域が世界中にに影響を与え、また与えられて流動していくものだ。世界というものは決して便宜上分けられたように、ヨーロッパ、中東、インド、東南アジア、中国等といったブロックで独立したものではないことは当り前の話だが、日本のしょぼい教育を受けてきたわたしたちには疎くなってしまいがちなところだ。

(2014/6/3改訂)

E誰(たそがれ)彼 (1989)
法月綸太郎講談社文庫推理
428頁641円★★★★

 新興宗教の教祖が瞑想のために密室の塔に上り、そのまま忽然と姿を消す。一方都内のアパートから男性の首無死体が、その愛人によって発見される。そしてその指紋から、死体が教祖であることが判るが…。

 首無死体と“誰(ぞ)彼”という題名から、人間の入れ替りがメインのネタだということは誰にでもわかる。昔から使い古されたシチュエーションだが、本書では三人兄弟を用意することで、なかなかに惑わさせてくれる。これはコリン・デクスターの感じやなと思って読んでいたら、あとがきで作者が意識していたと書いていた。探偵が次から次へと可能性を構築しては壊して、読者を混乱させるというスタイルだ。まあ成功しているのではないかな。

 とりあえずC・デクスターの「ウッドストック行き最終バス」よりは良かった。
 デクスターの傑作と言われている「キドリントンから消えた娘」は未読だが、それはともかく本書はなんといっても著者20代前半の作品だから、大したものである。

 再読時の感想はコチラ。
(2014/6/3改訂)

F自由軌道 (1988)
L・M・ビジョルド創元推理文庫SF
423頁740円★★★

 とあるワームホールに近い新興惑星の軌道上に浮ぶ研究・開発用宇宙ステーション“ハビタット”。そこ研究されているプロジェクトは、人間をより宇宙空間作業に適したように遺伝子操作すること。そして2本の手、2本の足の代りに、4本の手を持つクゥアディーたちが生み出された。そこに最終的な実技指導の教官として、会社から派遣されてきたレオ・グラフは、クゥアディーの少年少女と生活をすることになるが、ある事情から会社はクゥアディー計画を中断。クゥアディーたちを会社の備品扱いとして破棄するという通達が…。グラフは会社決定に反発し、クーデターを開始する。

 一連のマイルズ・ヴォルコシガン・シリーズの同一世界における数百年前の物語らしい。
 といってもワームホールは出てくるものの、舞台はほとんど一惑星の衛星軌道上に終始するので、両者の繋がりは特にない。著者の処女作ということで、後のマイルズものにおけるストーリーテリングに富んだ作品のような魅力はあまり感じなかった。主人公グラフとハビタットの責任者ヴァン・アッタの過去の確執なども今一つこなれていない感じだし、多少硬さが残った印象。
 処女作だからとは言え、ネヴュラ賞受賞作なのでもっと期待していたのだが…。

 遺伝子操作で作った人間を備品扱いするのはもちろん論外だが、実際のところ遠い将来を考えると、繁殖力の高いクゥアディーの集団を野放しとするのはかなりの大問題ではないか。現状だけの人道性のみを考えて、クゥアディーを引連れ別の地を目指すのは、資源垂れ流しの物質文明でもって20世紀を引張ってきたアメリカ人らしいお気楽な結末のような気がするが、ワームホールでの宇宙開拓が十分に発達していれば、宇宙の広さに対して些細なことなのかな。
 しかし繁殖力をなくすための避妊処理が人道性にかけるのは判るが、だからこそ理由はどうあれ、最初にクゥアディープロジェクトに関った人物たちの責任は重大だ。そのあたりに関する言及がすっかり抜け落ちていたのが、本書を面白く感じなかった理由だろう。  グラフのようにハビタット乗っ取りをたくらむよりも、マスコミに事実を流すほうが、十分に目的を果すことができたような気がする。社会全体への問題提起となるしね。

(2014/6/3改訂)

G巨大ロボット読本 (1999)
瀬戸龍哉/山本敦司宝島社まんが/アニメ薀蓄
251頁1200円★★

 鉄人28号からエヴァンゲリオンまで、まんが、アニメの巨大ロボットがどのように発展してきたか、という内容で書かれた本。

鉄人28号…ラジコン感覚で操縦する。
マジンガーZ…人間が乗込んで操縦する。
ゲッターロボ…合体・変形。
ガンダム…戦争感覚の導入。
エヴァンゲリオン…宗教・神へのアプローチ。

 といった発展のキーを取上げて解説している。
 因みに表紙の大きさの差は、設定身長に概ね比例させているようだ。

 まあこの関連に興味があれば、暇つぶし程度には面白なくもないが、1200円も出して読むほどではない…。

(2014/6/3改訂)

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