2000年 2月
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@探偵小説の「謎」 (1956)
江戸川乱歩教養文庫推理小説薀蓄
229頁600円★★

 最近やたらと店頭に並んでいる“なんたらの謎”本の感じだが、実は44年も前に出版された乱歩の探偵小説分類のようだ。
 昭和30年当時と言えば、松本清張に始まる社会派ミステリの時代がぼちぼち始まってしまう時代ではないか。本書の出版時期はいわゆる“本格推理”斜陽時代の始まりにあたっていたということができるだろう。
 出版された当時、どれほどの意義があったのかわからないが、今読むと少々陳腐に感じる。

(2014/4/28改訂)

A空想歴史読本 (1999)
円道祥之メディアファクトリー特撮/アニメ薀蓄
281頁1200円★★

 また懲りもしないで、こんな本を買ってしまった。「今度は文系だ!」というコピーにちょっと笑ってしまったのが運の尽きである。
 いろんな漫画やアニメの事件を、一元的に年表に並べようというところに土台無理がある。
 とりあえず読んだ直後に古本屋へ叩き売ってしまった…。

(2014/4/28改訂)

B葬儀を終えて
 After the Funeral (1953)
A・クリスティーハヤカワ文庫推理
350頁621円★★★★

 クリスティーの中でも比較的評価の高い作品の1つ。

 富豪の葬式で久しぶりに集った親戚たち。その中で故人の少し頭の弱い妹のコーラが口走った一言、「あれっ、彼は殺されたんじゃなかったの?」
 そして後日、コーラは死体となって発見される…。

 なかなか魅力的な出だしで、ラストの真相にも十分虚をつかれた。これはいわゆる叙述トリックだが、この時代の叙述トリックは少し珍しいのでは?
 「アクロイド殺し」も広義においてはそうだが。

 本書はまあ、トリック的にはなかなかだと思うが、全体的に地味な印象だ。
 叙述トリックの作品は映像化し辛いし、知名度が低くなるのは仕方がないところか。

(2014/4/28改訂)

C刺青殺人事件 (1953)
木彬光ハルキ文庫推理
385頁880円★★★★

 日本の推理小説の評論本を読んでいると、必ず目にするのが本書「刺青殺人事件」だ。一度は読まなければと前から思っていたが、売ってなかった…。
 今回ハルキ文庫から出版されたわけだが、しかしこの文庫はえらく割高だ。これまで絶対買わんと固く思っていたが、読書欲に負けてしまった。しかし200円は高いと思う。

 横溝正史「本陣殺人事件」から遅れること2年。長編では初の本格密室トリックを用いた推理小説と言われている。
 東大医学部標本室に納められた刺青の薀蓄から筆を始め、地雷也大蛇丸綱手姫の三様の刺青を彫られた兄妹にまつわるこの事件は、なかなかに訴求力のあるいい雰囲気を出している。

 密室トリック自体はそう印象に残るものではないし、名探偵神津恭介のスーパーマンぶりはあまりに陳腐で笑ってしまうが、やはり推理小説ファンならば読んでおかねばなるまい。

 ところで、普通刺青(いれずみ)と読んでいるが、本文中では何べんも“しせい殺人事件”とルビをふっている。

(2014/4/28改訂)

D貸しボート十三号 (1953〜1958)
横溝正史角川文庫推理
358頁★★★★

 本書には少々思い入れがある。
 わたしがまだうぶだった昔、横溝正史の作品に興味はあるが、当時の角川文庫表紙絵は、下から懐中電灯の光を当てたような気持ち悪い人物が並んでいて、とても気持ちが悪く買う気がしなかった。その中では、本書の表紙に人物は描かれておらず、これなら買ってみようかと何度か手にとってみたことがあった。

 結局買わなかったが。
 「ポツンと浮かぶボートの中に、首を途中まで挽き切られた男女の死体」という折り返しの文章が、表紙の血染めのボートのむしろ閑散とした画に、なにがしかの情景を加えてしまっておぞましかったのだ。なんとも微笑ましい話ではないか。

 時は流れ、横溝作品の短編の中で「貸しボート十三号」は結構評価が高いという話をどこかで耳にしたので、あらためて読んでみるかと探してみれば(その時には、著者の有名作品はすでに読んでいた)、一時期あんなにずらりと並んでいた角川文庫の横溝作品も、いつの頃からか数が減り、最近の新版には含まれていないのだ。しばらく探していたが、あきらめて古本を買ってしまった。
 しかしなんだ。そんな経緯があって思い入れのある本だったが、イメージと中身はやっぱ別物であった。なにやら、くさい青春ものを読んだような読後感だ。ま、シチュエーションとしてはなかなか面白かったが。

 他に2編が収められているが、「湖泥」はミニ「悪魔の手毬唄」という感じの話であった。舞台も同じく横溝作品では猟奇殺人のメッカである岡山だ。以前に別の中篇集で読んだ記憶がある。
 もう一編はよくある愛憎のもつれ絡みのやつで、ほとんど印象に残っていない…。

(2014/4/29改訂)

E海外ミステリ探偵ベスト100 (1994)
仁賀克雄現代教養文庫推理小説薀蓄
217頁520円★★

 2月は推理小説のジャンルに傾きすぎてしまった。本書は小説ではなく資料本だが、少々データが古い。

 わたしが海外ものでカバーしているのはほとんどが古典なので、70年代以降が舞台となる探偵たちには縁遠いが、最近のシリーズで唯一のお気に入り、D・ウィンズロウニール・ケアリーが含まれていないのはいただけない 。

 本書を読んで魅力を感じた本も特になし。
 「日本の探偵ベスト100」を読んでみたい。

(2014/4/29改訂)

Fオランダ紀行 街道をゆく35 (1989〜1990)
司馬遼太郎朝日文芸文庫紀行
397頁600円★★★★★

 オランダと言うと何を連想するだろうか。チューリップ? 風車? ポルダー? フィヨルド?ん、これはノルウェーか…。
 しかし歴史が好きならば、鎖国時代の日本における唯一の西洋へ開いた窓(司馬遼太郎は針の穴ほどと言っている)から射し込んできた蘭学との関わりを考えるだろう。

 ところで日本史に出てくるのは、リーフデ号ウィリアム・アダムスヤン・ヨーステンなどが出てくる国交最初期の話か、またはあくまで蘭学としての日本との関わりで捉えられるくらいで、出てくる人物といえば、シーボルトくらいか。“国”としてのオランダはなかなか見えてこない。そこら辺りが本書でかなり明確になった思いだ。

 普通市民革命と言えば、イギリスフランスのそれを思い浮かべてしまいがちだが、オランダの独立戦争は16世紀、日本ではまさに戦国時代だった訳だ。この当時のオランダの商人魂が、イギリスの東インド会社をも凌駕し、オランダ東インド会社をして東の辺境地であった日本までを商売の対象とした。スペインポルトガルと違って、宗教/植民地戦略のような臭いもなかったのだろう。
 世界に肖像画は数多あるが、貴族ではない名無しの一般人の肖像画としての最古のものは、この当時のオランダ商人のものらしい。
 肖像画で思い出したが、著者は絵画にもかなりの関心を示している。レンブラントゴッホの人物像、特にゴッホの人物にはかなりのページを割いている。社会人としてはとんでもなく無能だったゴッホを支えた弟やその妻のことなどは、わたしも全然知らなくて興味深かった。

 画家と言えば、――これはベルギーだが――ルーベンスについても触れている。ルーベンスと言えば「フランダースの犬」
 ネロパトラッシュは、ノルウェーはアントワープの聖母大聖堂に掲げられたルーベンスの絵を一目見て死ぬが、そのルーベンスの絵が、白黒ながら紹介されている。

 他にも幕末に勝海舟たちを乗せて、太平洋を渡った咸臨丸が建造された港の情景など、歴史心をくすぐる話が満載だ。

(2014/4/29改訂)

G青狼の拳 餓狼伝・秘篇 (1987)
夢枕獏双葉文庫格闘
325頁476円★★★

 再読である。
 いつの間にかこのシリーズの文庫も数を重ねているが、なんでだか手元にはこの外伝と、1、2、4,5、6巻しかない。ということは3巻以降読んでいない筈。それで3巻を買ってきたが、2巻までの筋もすっかり忘れていて、まあ読み直さないと仕方がないといったところ。
 本外伝は確か2巻の次に出たのだが、時系列では1巻よりも数年前、主人公丹波文七がプロレスの梶原に屈辱的に負けてから半年ほど後の話である。

 丹波は関節技を手に入れるため、サンボのスペシャリスト河野の教えを受けようと彼に近づくが、河野に思惑を持つ柔道の梅川、仕込杖の土方といった“餓狼”たちとの死闘に巻き込まれていく…。

 巻き込まれるというか、丹波は好きで関わりに行っている。
 なんにせよ、空手VSプロレスという大きな流れを持った本シリーズにおいて、日本刀という異物との対峙が本書のキモである。本編よりも面白かったような気がする…。

(2014/4/29改訂)

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