三篇からなる中編集。冒頭の「喪の山」のみ、2年ほど前に読んでいたが再読した。
「自由軌道」が肌に合わなかったので一抹の不安があったが、「ヴォル・ゲーム」や「親愛なるクローン」同様、SFではおざなりにされがちな人物造詣の優れたスペオペとして、やはり面白くて安心した。
(1)「喪の山」(Mountains of Mourning/1989/頁)
士官学校を卒業して間なしのマイルズは、領主代行として辺境の因習に固まった村へ嬰児殺しの調査と判決に向かう。
おっそろしいほどにSFでない話だが、ヴォルコシガン・サーガの背景設定を深める重要な一篇。
主人公たちの星バラヤーは、他の星同様、地球からいくつかのワームホールを辿った植民星だったが、何らかの事情(説明があったかどうか忘れた…)でワームホールが閉鎖されてしまい、以降数百年完全に孤立した状態が続いた。この間にバラヤーは、封建領主たちが闘争に明け暮れる中世社会になっていたが、その後ワームホールは再び開き、再び宇宙社会へ復活する。だがバラヤー中央はともかくも、辺境ではまだまだ中世じみた慣習が色濃く残っている。
殺された嬰児は、少し兎口だったというだけで、村の慣習ではとっとと間引かれるのが当然だった。
この村を含む領主の息子がマイルズだが、村の尺度で測れば、骨が脆く、びっこで小柄、たまには顔面にチックも走る彼もまた、間引かれて当然のミュータントという訳だ。
その彼が、閉鎖社会の奇異な視線の中、犯人逮捕と公正な判決を下すという、心理的にドラマチックな話である。
以下の二編は、マイルズがデンダリイ傭兵艦隊の提督という裏の顔を持つようになってからの話である。
(2)迷宮(Labyrinth/1989/頁)
武器密輸、売春、人身売買等の犯罪で成り立っているようなジャクソン統一惑星を舞台にした、亡命者保護のための侵入作戦。人間外見じゃあないということを強烈に訴える話。
(3)無限の境界(Borders of Infinity/1989/頁)
捕虜収容所の中で素っ裸にされたマイルズから話が始まり、大規模な脱走作戦へと展開する。
どれもマイルズの魅力が十分に出た中編だ。
(2015/5/31改訂) |