2001年12月
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@マーフィの呪い 魔法の国ザンス12
 Man from Mundania (1989)
P・アンソニイハヤカワ文庫ファンタジー
545頁880円★★★

 さえない大学生のクレイは、“あなたの生活にうるおいを!”という謳い文句に乗って、通販で怪しげなソフトを手に入れた。彼自身謳い文句をほとんど信用してなかったが、そのソフトに対話形式で入力した彼の望みは、なぜか偶然にも実現化する(ようにみえる)。彼の望みはずばり女の子と友達になること。何度目かの試行錯誤で知り合った女の子の名前はアイヴィ。ハンフリー捜索のためにヘブンセントを作動させたザンスの王女だった。

 5歳も下の弟ドルフがすでに2人も婚約者をもうけたというのに、17歳のアイヴィには浮いた話の一つもない。というところでやや焦りを覚えた?彼女の探求の旅である。  ただしどちらかというと、魔法の存在を信じていないクレイ目線で物語が進み、その点多少新鮮味があったような気がする。
 今回ハンフリー一家の帰還とはいかなかったが、ますます登場人物の世代交代が進んだようだ。

 それにしても、クレイは“人は良いがさえない風貌で、友人もそういない。異性に魅力的に映ることもない”といった描写が再三出てくるが、表紙の彼はちょっと格好良すぎではないかい?

(2016/10/12改訂)

A土方歳三散華 (1978)
広瀬仁紀小学館文庫歴史
255頁533円★★★★

 『沖田総司恋唄』が気に入って以来、著者の本を探しているが、これがなかなか見つからない。しかし小学館文庫で出されている本書は、今の処手に入りやすいようだ。

 『沖田総司恋唄』もそうだが、沖田より土方のほうが表舞台に立っている期間が長いので、250頁そこそこの本書は、かなり駆け足で土方を追っている。それでも、潔く池田屋事件の後から筆をおこしているので、鳥羽伏見の戦い以後の函館までの落日期にも50頁ほどは割いている。

 ダイジェスト的な中編といった印象で、組内粛清に明け暮れたような暗い面はほとんどオミットされているし、蝦夷地に渡ってからの土方が関与した有名なエピソードである宮古湾海戦がばっさり端折られていたりもするが、著者の新撰組像はわたし好みだ。
 端折られた部分は『新選組風雲録』五冊で補完されてるのだろう。なんとか手に入れたいものだ。【注1】

 【注1】その後入手したけど…。

(2015/1/31記)

Bセントールの選択 魔法の国ザンス13
 Isle of View (1990)
P・アンソニイハヤカワ文庫ファンタジー
538頁900円★★★

 翼あるセントールの子供として、将来を嘱望されているチェが誘拐された。両親のチェスクとザップは、ザンス王の協力の下一大捜索を開始する。将来ザンスの未来に大きく影響を与えるだろうと予言されたチェの運命は・・・。そして事態はザンス全体を巻き込んで、飛行性の生き物と陸行性の生き物の戦争へと発展する。

 今回はザンスとはまた別な異世界が追加され、その世界から迷い込んだエルフのジェニーが登場。
 うーむ、シリーズが終わる気配は微塵もない。【注2】

 チェはゴブリンの洞窟都市に連れ去られたことが早々と判るが、彼はゴブリンの娘のグウェンドリンと、異世界から来たジェニーの運命を左右する選択を迫られることになる。これはドルフと2人の婚約者問題と韻を踏んだような展開だ。
 チェはまだ幼いというのに大変なことだ。知恵あるセントールだから、まぁいいだろう。
 実際本書では、グウェンドリンとジェニーの問題が片付いた後、景観の島でドルフの結婚式がクライマックスとなっている。景観の島(Isle of View) というのが本書の原題であるが、I Love You の洒落になってるらしい。

 しかしナーガ族のナーダと数百年の間眠り続けたエレクトラをめぐるドルフの結婚問題は、とんでもなく微笑ましい。
 というか初夜シーンとともに解決。こっぱずかしいぞ。

 【注2】現在39巻まで出ていて、今年(2016年)の出版予定もあるじゃないか。わたしは16巻で挫折したので、すでに2.5倍・・・。

(2016/10/19改訂)

C謎の宇宙船強奪団 キャプテン・フューチャー6
 Star Trail to Glory (1941 spring)
E・ハミルトンハヤカワ文庫SF
260頁300円

 鉱物資源の豊富な水星の宇宙船製造会社の各社で、テスト飛行中の船があいついで奪われるという事件が発生した。各船のテスト・パイロットは、ふと周りの景色がかすんだかと思うと、宇宙服を着て宇宙空間に放り出されているという。
 チコ・クレーターにあるフューチャーメンの研究所では、“生きている脳”サイモン教授が自由に移動できるように、彼の脳を収めた筐体に磁力ビーム発生器を取り付ける改良を施していた。暇を持て余したアンドロイドのオットーは、フューチャーメンの愛機コメットを持ち出してドライブと洒落こんだが、なんと機体ごと謎の一味に強奪されてしまう。フューチャーメンは、至急地球から太陽系警察のエズラ・ガーニー司令と船を呼び、残された手がかりから金星へ向かう・・・。

 これまで自分の力では微動だにできなかったサイモン教授が、磁力ビームでなんと大気圏離脱すらできるように。恐るべきは電磁力! 核は使ってないのか?
 しかしいかんせん、独自に敵の秘密基地を追っていったのはいいが、活躍もそこ止まりで、結局はジョオンと同様に捕まってしまうだけなのはちょっと悲しい。
 ジョオンといえば、いつの間にやらカーティスをたらしこんでいるようで、「月じゃズーッとわたしのことを考えつづけてたくせに。賭けたっていいわ」とえらい自信だ。この会話に応ずるカーティスも、微笑ましすぎる・・・。

 それはそうと、本作の読みどころは、強奪団一味の捕り物とは直接的な繋がりはないものの、サーガッソー海への二度目の漂着だろう。
 前回の遭難時に使った脱出手段はもう使えないわけで、カーティスの頭脳と行動力の見せ処だ。前回にきちんと布石を敷いているところが、さすがはストーリーテラー、ハミルトンだ。

 クライマックスにはメーカー各社の最新鋭機による太陽系一週レースというものが用意されている。
 これは宇宙船会社各社が船を出し、水星をスタートして太陽を周回、内惑星から順番に、冥王星まで各惑星の宇宙港に寄港しながら水星まで戻ってくるというとんでもないものだ。しかもどうも半日程度で一周してるような・・・。恐るべき2015+α年の科学技術!

 てな訳で、アステロイド・ベルトを突っ切って時間短縮をしたり、惑星直列しているに違いない太陽系でのレース展開は、かなり広い心を持たないとなかなか楽しめないかもしれないが、<宇宙宮殿>での仮面舞踏会といい、旧きよき時代のスペオペは懐旧込みで心地よい。

 ついでながら、本書の合本版表紙はとてもいい。

(2016/10/19改訂)

Dベストセラー小説の書き方
 How to Write Best Selling Fiction (1981)
D・クーンツ朝日文庫小説薀蓄
361頁720円★★★

 自分でベストセラーを書きたいといった野望はとても持っていないが、職人クーンツが自分の執筆テクニックを本にしているのだから興味深い。
 繰り返し繰り返し、「ジャンル小説を書くことは、自ら読者層を狭くし、原稿料は下がり、収入は減るぞ。」とやられると多少辟易してしまうが、さすが職人と言ってもいい。もっとも本書は単なる小説の書き方ではなくて、たくさん売れる小説の書き方であるから、きわめて当然の意見でもある。

 しかしながらクーンツ作品は、“主人公に要求される五つの資質”なんて法則を律儀に守っているせいで、どの作品の主人公も同じように“個性的で厚みのある”人物になってしまっている。
 過去に傷を持つ主人公の男女/巨大または凶悪な敵/苦難の中で育まれる愛/そして希望のある結末。
 まさに偉大なるマンネリズム。ついでに犬も出しておこう。

 因みにわたしのクーンツベスト5は、こんなかんじ。
 1.『ストレンジャーズ』
 2.『バッド・プレース』
 3.『ファントム』
 4.『心の昏き河』
 5.『ライトニング』『ドラゴン・ティアーズ』

 どうしてもマンネリに気付く前に読んだ作品が多い。
 最近は“超訳”のせいで新作の文庫化がなく、昔の作品しか出ないのは淋しい。良い編集者を探して儲けるのもいいが、日本の出版事情にも目を配って、多くの読者が簡単に読めるようにしてくれないだろうか、クーンツさん。【注3】

 本書は驚くべきことに、文中から察して『ウィスパーズ』の直後に書かれたようだ。  わたしの選んだ作品は、まだ書かれていない時期。『ウィスパーズ』以前にはそれほど印象的な作品はないのだが、すでに売れっ子作家だったようだ。

 【注3】その後いろいろと出版されたが、以前のように、邦訳された本はすべて読むくらいの勢いはなくなった。オッド・トーマス・シリーズフランケンシュタイン・シリーズもまだ読んでない。

(2016/10/19記)

E捜査
 ?ledztwo (1959)
S・レムハヤカワ文庫
267頁580円★★★

 スコットランド・ヤードのグレゴリイ警部補が担当した死体消失事件。それは彼を始め、捜査側をひどく困惑させた。臓器売買目的か、禁止された人体実験か、精神異常者あるいは愉快犯か。しかし発生現場の一つである死体置き場には、消えた死体の傍により状態の良い遺体もあり、また別の現場である解剖研究所では、事件発生前には間違いなく窓は閉まり鍵がかかっていたという証言があった。グレゴリイは何らかの裏があるものと考え、捜査側の関係者をも疑ってかかるが…。

 あの『ソラリスの陽のもとに』『ストーカー』スタニスワフ・レム作品ということで、一筋縄ではいかないだろうことは重々解っていたが、SFミステリには違いなかろうと思って読んだのは甘すぎた。
 登場人物の一人が示唆はするものの、SF的な解釈などはまったくなく、まるでスッキリしない。
 日常生活でいかに不条理なことが起ころうと、人は――たとえ釈然としなくても――常識的な説明にすがることで、不可思議な現象に蓋をしてしまう。またそうすることで日常生活は維持されていく。

 というのはあとがきに書いてあったことで、なるほどそのとおりだが、それが解ったからといって本書が面白いかと訊かれると・・・。

(2016/10/19改訂)

Fニルスのふしぎな旅(1)(2)
 Nils Holgerssons underbara resa genom Sverige (1906)
S・ラーゲルレーヴ偕成社文庫ファンタジー
297頁/308頁700円/700円★★★

 いたずら小僧のニルス・ホルゲルソンは、両親の留守中に小人の妖精をいじめた所為で魔法で小さく要請サイズにされてしまう。代りに動物の言葉が解るようになったものの、日頃のいたずらが祟って、ホルゲルソン家の動物たちにもいい気味よばわりされる始末。そのとき1羽のガチョウが北へ向かうガンの群れに誘われ、たどたどしくも一緒に飛び立とうとする。“ガチョウが逃げたら大損だ”とばかりに、ガチョウを止めようとしたニルスは、あっという間に空へ。こうしてニルスとガチョウのモルテンの長い旅が始まるのだった。

 NHKアニメ『キャプテン・フューチャー』の後番組、『ニルスの不思議な旅』の原作。
 大好きなアニメだった。

 そんなわたしとしては、ねずみのキャロットが登場しないのは淋しいところだし、ガン仲間もアッカ隊長以外はその他大勢扱い。ダンフィンですら影は薄い・・・。
 全4冊のうち2冊を今回読んだわけだが、ニルスの成長物語かと思いきや、そうでもない。
 いくらどうしようもないいたずら小僧だとしても、それは所詮いたずら。小さくなって入り込むことになった動物の世界は、弱肉強食の非常な世界である。
 ニルスをつけねらう狐の<ずる>(アニメではレックスだったか?)にもアニメのような可愛さはない。ニルスと知り合ったカラスの<うすのろ>が<ネタバレ反転>あっさりとかみ殺されたのには唖然とした。

 本書は少年の成長物語であるよりも、スウェーデン最南の西ヴェンメンヘーイから最北のケブネカイセまでの地理、歴史、風土を子ども達に教えるという側面がかなり大きい。土地々々の創世神話が紹介されたり、どのように土地が改造されてきたか等々、いい加減飽きるくらいなのだが、全く縁のない固有名詞が次から次へと出てきて、なかなか新鮮な気分にもなった。
 スウェーデンと聞いても、ストックホルムラップランドボルボサーブ、通信のエリクソンくらいしか思い浮かばない。あと印象的なのは性教育が進んでることか。

 おいおい残り2冊も読む予定だが【注4】、きつねの<ずる>と同じようにニルスたち道程と重なるように放浪し、ちょくちょく顔を出すオーサとマッツの姉弟が今後も物語りに絡むかどうか。
 アニメではそんな姉弟、出てきたかどうかも忘れてしまった。

 【注4】なんと2016年現在、まだ読んでない…。

(2016/10/19改訂)

G図解雑学 新選組 (2001)
菊地明ナツメ社歴史薀蓄
226頁1300円★★★★

 三国志に引き続き、図解雑学シリーズ第2弾。
 広い地域と半世紀もの年月を扱う三国志と違って、狭い地域でのたった7年の活動を扱う本書は、ほぼ時系列でイベントを追えるということもあり、『図解雑学 三国志』以上に解りやすい構成になっている。

 事件時の街路や部屋の図はもちろん、組の編成表は時期ごとに5回も紹介されるという、まさに痒いところに手が届く感じ。
 江戸帰還後の斜陽期に三分の一強が充てられているのも嬉しい。

 宇都宮城の攻略戦や母成峠の戦いをこれほど理解できたのは初めてだ。  土方歳三終焉の地である一本木の戦いでの状況もやっと整理できた。

(2016/10/19改訂)

H中国五千年 上下 (1979〜1980/1984)
陳舜臣講談社文庫歴史薀蓄
347頁/346頁590円/590円★★★★

 中国の五千年を700頁で紹介、つまり単純に考えて1頁あたり7年余りのペースで進む中国の通史。
 通史としてはかなりの駆け足な訳だが、非常に解りやすくまとめてられている。もちろん駆け足と言っても、国の替わり目には十分にドラマを感じさせてくれる。学校の教科書なんかとは比べ物にならない。やはり陳舜臣は、歴史小説よりもこういった歴史解説本かエッセイのほうが上手い。
 70年代末に書かれた本書では、中国共産党について客観的に記すには難しかったのか、1949年の中華人民共和国の成立をもって筆を置いている。

 となると、この後は『毛沢東秘録』で補間せねばなるまい。【注5】
 もちろん中国通史についてもっと詳しく知りたければ、著者の『中国の歴史』全7巻があるぞ。3000頁を超えるけど…。

 【注5】上中下巻すべて、2016年、未だ手つかず…。

(2016/10/20改訂)

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