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| @ | 終りなき戦い | J・ホールドマン | ハヤカワ文庫 |
| SF | ★★★★ | ||
| 366頁 | ― | ||
| 「終りなき平和」が出てから無性に読みたくなって、友人に借りてしもうたわい。本書が出た当時、ハインラインの「宇宙の戦士」とよく比較されたもんじゃが、「宇宙の戦士」に思い入れのあったわし(“鷹派思想”、“戦争肯定”などと叩かれる同書じゃが、わしは単純に、世間知らずの青年の成長物語として大好きじゃ。余談じゃが、映画の「スターシップ・トゥルーパーズ」にスタジオぬえのパワード・スーツが出てこないのは、同スーツの段ボール着ぐるみを作ろうと企んだことのあるわしにとっては、やはり寂しい。)は、あえて比較するのが嫌で読まなかった記憶があるんじゃ。 しかし今回読んでみてわかったのは、本書におけるパワード・スーツは小物のガジェットにすぎず、ウラシマ効果のワンダーと、 | |||
| 軍隊組織に対する強烈な風刺が本書の中核じゃ。最初はそういうこともわからず、目次を見ると、“マンデラ二等兵”から始まって、“マンデラ軍曹 西暦2007年〜2024年”、“マンデラ少尉 西暦2024年〜2389年”、“マンデラ少佐 西暦2458年〜3143年”と並んでおり、おいおいお前はペリー・ローダンか!さすがは“終りなき戦い”やと呆れる思いじゃったが、ウラシマ効果ですな。マンデラ自身は数年しか年をとっておらん。 しかし過酷な環境で待機と訓練と防衛に明け暮れながら、戦争の大局もわからぬまま、ちょっとしたミスや自分の関与できない要因でどんどんおっ死んでいく兵士たち。戦争の不条理っちゅうもんじゃのお。 その中でマンデラは自分の意志というよりは、流れに飲み込まれて兵士を続け、恋人のメアリイゲイとも配属が変われば永久の別れとなり(ウラシマ効果のせいじゃ)、気がつくと最古参の指揮官となり、スピードの遅い世界から見れば1000年の戦いを続けるんじゃのお。 作中でマンデラは自分の名前が、“曼荼羅”からきたものだと話すシーンがありちょっと失笑してしもうたが、宇宙の理からすれば万事諸行無常の響きありじゃ。 その分ラストのオチには愕然とする思いじゃったが、陳腐なネタも本書でやられるとそれなりに感動してしもうたわい。 | |||
| A | そんな日本語力では恥をかく | 日本語倶楽部・編 | KAWADE夢文庫 |
| 語学薀蓄 | ★★★ | ||
| 219頁 | 476円 | ||
| 題名のとおり、誤って使われることの多い日本語のフレーズや、漢字の使い分けを集めとるんじゃな。ワープロが普及してかえって文書の誤字が増えた気もする今日この頃、母国語くらいきちんと使いたいわなあと、まあ軽く読み飛ばしたわけじゃ。 間違っているフレーズがまず挙げられ、それに対しての説明と正しい表現が示されるわけじゃが、これが結構その間違ったフレーズを見ても、どこがおかしいのかわからんかったりするんじゃ。言い回しや慣用表現の誤用、漢字の使い分け等多岐にわたっていろんな誤用があることに驚くわい。 なるほどそのとおりやなあ、というのが多いが、中にはえっと思うやつもあったりするのが悲しい。“卒直に言えば”、これは間違 | |||
| いで正しいのはこちら“率直に言えば”。うーむ、間違っとった。たしかに変換すると卒は出てこん。 しかし言葉は生き物やから、当然ながら誤用と言われているものが、すでにスタンダードになっているものもあるようじゃ。なかなか興味深いもんじゃの。 これは本書に載っていた内容ではないんじゃが、“憮然とする”という表現。この意味は失望したり、どうしようもなくてがっかりしたりする様のことじゃが、あきらかに最近は“むっとする”意味で使われとるよなあ。 | |||
| B | 凍える牙 | 乃南アサ | 新潮文庫 |
| 警察 | ★★★ | ||
| 512頁 | 705円 | ||
| 深夜のファミレスで起こった突然の大火災。 目撃者の証言によると突如客の一人が炎を吹き上げたのだという。大惨事になったこの事件だが、科捜研の調べでは何らかの発火装置が使われた可能性が高い。捜査本部が設置されることになったこの事件に一人の女性刑事、音道が配属され、叩き上げの男性刑事滝沢と組むことになる。悪い人間ではないが、女性の相棒に馴染めず冷たい態度をとる滝沢と、夫と別れてからは孤独に、感情を出さずに淡々と捜査に臨む音道。二人の関係は当然のようにしっくりとはいかない。 一方、都内では大型の獣に噛み殺されるという事件が連続し、ファミレスでの発火事件とも繋がりを見せる。そして大型の獣の | |||
| 正体が徐々に見えてきたとき、音道には捜査の中心を成す重大な任務が待っていた・・・。 がさつな男性社会の中で気を吐く女丈夫の話だと思っておったが、バツイチで結構生活に疲れた普通の人物として描かれた音道貴子は逆に新鮮じゃった。時限発火装置での焼殺事件と大型獣を使った殺人という、かなりショッキングな事件を扱っているにもかかわらず、最後まで静かな物語じゃった。その中では、やはりクライマックスの首都高を閉鎖しての疾風と音道の一対一の追跡行が叙情的な盛り上がりを見せたわい。 わしの好みから言えば、もう少し予定調和的に滝沢と音道がかっちりとしたパートナーシップを確立してくれれば良かったんじゃが、滝沢が音道を認めたほどには、音道が滝沢を認められるような見せ場が滝沢に用意されとらんかったのは残念じゃ。結局二人はかりそめのパートナーとして、それぞれの日常に戻っていくんじゃのお。 | |||
| C | 風の万里 黎明の空 上下 | 小野不由美 | 講談社文庫 |
| ファンタジー | ★★★★★ | ||
| 344頁/363頁 | 629円/629円 | ||
| 「月の影 影の海」の直接の続編じゃ。前作で艱苦のうえ慶国の王、景王となった陽子の、玉座について以後の物語じゃ。 なにせ国が乱れ、荒廃を極めていた慶国は、王が立ったとしてもそうすぐに治まる筈もなく、官僚は政治の事など何も知らない陽子を侮り、自分の野心と保身に懸命じゃ。 本書は臣下にあしらわれ、王としての自信など欠片も持てない陽子と、それぞれに訳有りの、はっきり言って性格に大分難のある祥瓊と木鈴という2人の少女のそれぞれの成長と、出会いの物語じゃ。 前作もそうだったんじゃが、上巻は結構つまらん。根性の曲がった二人の少女がメインで、読んでてうっとおしいこと、このうえない。 それが★×5になっておるのは、下巻での水戸黄門構造。身分を隠して下界に下りた陽子は、結果的に国内 | ||
| の反乱騒ぎの渦中に巻き込まれることになるんじゃが、ラストの“控えおろう”、これにつきるわい。よくあるネタだろうがなんだろうが、エンターテインメントのツボっちゅうとこじゃな。わし、そこだけ2回も読んでしまったわい。 | ||
| D | 魔性の子 | 小野不由美 | 新潮文庫 | |
| ファンタジー/ホラー | ★★★★ | |||
| 432頁 | 590円 | |||
| 教育実習で母校に戻ってきた広瀬は、受け持ちのクラスに一人の不思議な雰囲気を纏った少年を見つける。高里というその少年にかかわると祟られるという噂が半ば公然と囁かれていた。以前にちょっかいをかけた何人かには不幸な事故が起きているらしい。高里の孤独感に、自分の学生時代とどこか共通点を感じ、なんとなしに気にかけていた広瀬だが、新たに高里をめぐって発生した事件は次々と波紋を広げ、エスカレートし、マスコミまでが関知する騒ぎとなる。親にすら見離された高里の唯一の保護者となった広瀬は、彼を守り抜くことができるのか。この現象が始まるきっかけだったと思われる、高里の少年時代の神隠し事件の真相とは!?・・・ | ||||
| “真相とは!?”といっても、本書だけを独立して読んでいるのでなければ、「風の海 迷宮の岸」の続編であることは誰もが知っとることじゃろうが、逆に全く知らずに本書を読んだならば、ラストの展開にはちょいとついていけやんのじゃなかろうか。 時系列的にはどうも本書が最も新しいようで、雁国と戴国がごたつきだしとるようじゃ。延王尚隆の動きも気にかかるとこじゃが、しかしシリーズ・キャラクターを使って、こうも毛色の違う物語を編み出せるところが恐れ入ったわい。 「風の海 迷宮の岸」では、大層な騒ぎのうえ使令に下した饕餮(とうてつ)の見せ場がなかったのが不満じゃと漏らしたんじゃが、まさかこないな活躍をするとはの・・・。 | ||||
| E | 図解雑学 電子回路 | 福田務/田中洋一郎 | ナツメ社 | |
| 科学薀蓄 | ★★★ | |||
| 218頁 | 1200円 | |||
| 半導体の基本についてよりわかり良い例がないもんかと、ついついこの手の本を買ってしまったりするんじゃが、まあまあ可もなく不可もなくってとこじゃな。「電子はめぐる」のほうがより物語的で興味を持って読めたのお。 | ||||
| F | ターン | 北村薫 | 新潮文庫 | |
| ファンタジー | ★★★ | |||
| 418頁 | 590円 | |||
| 駆け出しのメゾチント作家森真希は、ある日自動車事故で意識を失った。そして目覚めたのは自宅の座椅子。そこから滑り落ちそうになって気がついたのだった。妙な夢を見たものだと一度は思った彼女だが、しかしなにかがおかしいことに気づく。既に経験した世界。他に誰もいない世界。そして記憶の中の事故にあった時間、彼女は再び自宅の座椅子に戻る。 自分以外の誰もいない閉ざされた1日を、孤独に繰り返し続けること半年近く、気丈に生きる真希だったが、庭で水を撒いていたある日、突然家の電話が鳴り出した・・・。 当然ながらK・グリムウッドの名作、「リプレイ」と比べながら読んでしまう訳じゃが、こっちは完全に恋愛小説じゃな。「空飛ぶ馬」 | ||||
| 同様、男性作家のくせに若い女性の感性で書かれた様々な枝葉については、まま感心したりもするんじゃが、小説全体としては恋愛ファンタジー。それですべてじゃな。わしの担当エリアではないわい。 しかし柿崎の矛盾は誰でも気づくと思うぞ。最後の作者の説明が苦しいとこじゃな。 柿崎で思い出したが、わしなんか、考えかたは明らかに真希より柿崎に近いわい。短兵急に女襲うのはどうかと思うが、誰もいない世界でキーのついた高級外車があれば乗り回すじゃろうし、律儀にカウンターに金を置いて品物を持っていく真希のほうが妙じゃ。 | ||||
| G | 心は孤独な数学者 | 藤原正彦 | 新潮文庫 | |
| 歴史/紀行エッセイ | ★★★★★ | |||
| 269頁 | 438円 | |||
| 数学者である著者が、3人の偉大な先人、ニュートン、ハミルトン、ラマヌジャンに思いを馳せながら、彼らの足跡を辿って旅をする。歴史と紀行のバランスは8:2くらいで、明らかに歴史が勝っているが、司馬遼太郎の「街道をゆく」等に勝るとも劣らない旅情色豊かな歴史エッセイで、さすが歴史小説家新田次郎の息子じゃと感心するわい。 あいにくわしは数学者とはさっぱり縁がないのでニュートン以外は名前を聞いたこともなかったが、多いに人間的じゃ。数学者なんぞというと別の生き物のようじゃが、どうしてどうして悩みを抱えて生きておったんじゃのお。 自分は宇宙の真理の大洋の渚で、ぱしゃぱしゃしているにすぎないと述べる謙虚さと、フックやライプニッツとの果てしない論争 | ||||
| を繰り広げるという攻撃性を併せ持ったニュートン。 四元数の基本式(式を見てもなにがどうすごいのかさっぱりわからんが)を発見した、純情なハミルトン。 そして本書の2/3を占めるのが、インドの一事務員ラマヌジャン。彼なんぞは大学で正規の数学教育を受けていないにもかかわらず、後に共同論文執筆者となったイギリスの大数学者ハーディが、「私の数学への最大貢献は、ラマヌジャン発見だ。」と言ったという天才らしい。 なんでも半年に1個の新定理を発見できれば、その数学者は十分優秀であるそうな。それがラマヌジャンの場合、ヒンズーの神様のお告げで閃いた新しい定理を、毎朝半ダースほど抱えてやってくる! それがどれくらいすんごいことか完全に理解の範疇から外れとる。 しかしラマヌジャンは周りの勧めに従い、彼のノートをハーディの下に送ってそれが認められたからこそ、こうして数学史上に名前が残った訳じゃが、それで彼が幸せになったかというとどうもそうでなかったりもする。 人間万事塞翁が馬じゃが、逆もまた真じゃ。 | ||||
| H | 真田忍侠記 上下 | 津本陽 | 講談社文庫 | |
| 時代 | ★★★ | |||
| 345頁/317頁 | 619円/619円 | |||
| 九度山以前の真田一族の動きを知りたかったんじゃが、「真田太平記」のシリーズをこれ以上在庫に積み重ねるのはいかん。手頃なところで手を打つべしということで、久しぶりの津本作品と相成ったわい。 まあ“津本忍法帖”という売り文句に、ほとんど騙されることはわかっていながら、引っかかってしまったちゅうとこじゃな。 本書の主人公は猿飛佐助。彼や霧隠才蔵と徳川方の服部忍群との熾烈な暗闘を描いておる。通俗的には伊賀の霧隠と甲賀の猿飛と設定されることが多いが、本書では二人とも長野は上田の地元産として設定されており、津本作品の特徴どおり、あちらの方言ばりばりでしゃべりまくる。わしはそう気にはならんが、人によってはつらいじゃろうな。 さて、ここでの忍術じゃが、修験道の延長にある仙術に近い扱いじゃな。千里眼であったり、相手を自在に操っ | ||
| たり、ESPのようでもあるわい。正直言って、こやつら(佐助と才蔵)の能力は超人的で、おいおいお前ら、そんな能力があったら家康の首獲れるで!と突っ込んでしまったわい。しかしながら、こんなにも特殊能力の発達した奴らにもかかわらず、やはり津本作品の常で、キャラクターの個性はほっとんど現れやんのが残念じゃ。 大阪城攻めの徳川方の長陣のおかげで、陣場一面に排泄物のにおいの漂った風景描写が良かったかの。 | ||
| I | 名探偵の掟 | 東野圭吾 | 講談社文庫 | |
| 推理 | ★★★ | |||
| 329頁 | 590円 | |||
| 金田一耕介と等々力警部になぞらえた、
名探偵天下一大五郎と大河原警部が、小説中の人物としての自分たちのマンネリさにぶつくさ言いながら事件に挑む、軽いユーモア短編集じゃ。 とは言っても、密室、意外な犯人、ダイイング・メッセージにアリバイ崩しと、本格推理の王道テーマを各短編毎に料理しており、なかなかの労作で好感は持てるぞ。 | ||||
| J | 東の海神 西の滄海 | 小野不由美 | 講談社文庫 | |
| ファンタジー | ★★★ | |||
| 313頁 | 629円 | |||
| 「月の影 影の海」で重要な役どころを演じた延王尚隆と延麒の六太を主役とし、尚隆の創業初期の雁国騒乱を語る。十二国記のシリーズの中では最も時代的に早い物語じゃな。 雁国は元州の侯息、斡由は未だ荒廃の残る国土を憂い、中央に対してクーデターを謀る。その陰謀の下、昔知りあって自ら名前を付けてやった少年更夜に再会した延麒は、まんまと陰謀に嵌り囚われの身となる。 民の為の蜂起と称し、配下の信も厚い斡由に対し、自分流に徹し未だ評価の定まらぬ延王尚隆は、この試練にどう臨むのか。 斡由と尚隆はそれぞれ世を憂い、自分が改革することを任じておる。同じ到達点を求めていながら道の違う二人の矛盾が、 | ||||
| もっと上手くぶつかればより面白くなったじゃろうが、斡由がちょい腰砕けで残念じゃ。延麒を誘拐したこと以外は100%理想の人っていうのなら良かったんじゃが。 これは作者の思い入れが強過ぎるんじゃろうが、尚隆があまりにスーパーマンなのが少々いただけやんのお。 | ||||
| K | 六番目の小夜子 | 恩田陸 | 新潮文庫 | |
| ホラー | ★★★ | |||
| 323頁 | 514円 | |||
| その学校では奇妙な伝統行事が水面下で続けられていた。 毎年3年毎に実行される“サヨコ”。歴代の“サヨコ”は卒業式の日にこっそり下級生に鍵を手渡すことで代を重ね、そして3年に一度、始業式の朝、各教室の入り口に画鋲でとめられた逆さのチューリップが、今年がサヨコの年であることを告げる。 3年に一度というのがミソで、在校生にとって必ず初体験になることが伝説性を高めていくのだが、高校生のたわいもない行事であることには違いない。 しかしそのサヨコの年、津村沙世子が転校生として登場した年は、何かが変わろうとしていた。 最近NHKで復活した(?)連続ジュブナイルドラマで1回半ほど見て興味をそそられたんじゃが、TVで主役のように見えたポカリ | ||||
| スエットの女の子は原作ではチョイ役じゃ。TVはミステリタッチのライト・ホラーでなかなか面白そうな印象じゃったが、本書は話のつくりとしては、沙世子のミステリアスさを始めまとまりきらず半端な印象を受けたのお。いや、学生時分を振り返ってなかなかノスタルジックな気分にさせてくれたんで、そういう意味では軽く読むのに十分面白かったんじゃが、ホラーというよりはまあ青春小説じゃなあ。 結局文化祭用の「6番目の小夜子」の台本は誰が書いたんやったっけ。 | ||||
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