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 @ニュースの大疑問 最新版池上彰講談社+α文庫
社会薀蓄★★★★
379頁800円
 普通のニュース番組では、基本的に政治・経済の用語や国と国との関係等、それが初出でなければ説明をしてくれやん。NHKの「週刊こどもニュース」の偉大なところは、解りやすく噛み砕いて説明してくれるだけでなく、何度でも説明を繰り返してくれるところじゃ。せっかくのニュースも受け手の知識が低いと自分で判断することができんからのお。本書では、政治経済、国際関係、環境にエネルギー問題等々の常識の底上げをすべく、こどもニュースで培った経験でもって解りやすく伝えてくれとる。「これが週刊こどもニュースだ」が番組の裏話的な編集だったのと異なるとこじゃ。よくある雑学本よりは、自分の周りの社会の“今”を知るのに役立つ良い本じゃ。
 Aバベル-17S・R・ディレーニィハヤカワ文庫
SF★★
301頁640円
 人類が宇宙空間に広がり、二大勢力となって戦争に明け暮れる時代、言語のエキスパートである宇宙きっての詩人、リドラ・ウォンは、敵側陣営の破壊活動の際に決まって傍受される謎の信号、バベル-17の解読を軍に依頼される。バベル-17が言語であることを突き止めたリドラは、より理解を深めるために自ら船員を集め、宇宙船の船長となって飛び立つ。しかしその船には早くも敵の破壊工作が…。
 なんとも妙な表紙。パッと見た分には昔の田中美佐子にも似たアジア系の女性(よく見ると目つきも怖いし、デッサンも狂ってる)と、そのバックのむきむきの腕2本。なんとも怪しげじゃな。
 この表紙にひいてしまい、スペ・オペとの裏表紙の紹介にもかかわらず今まで敬遠しておったが、…そのまま敬遠しとけば良かったわ。
 牙やら獣毛やらを自分の体に移植するのがお洒落であるとか、パイロットはむきむきの格闘家やないとあかんとか、はたまたモルグから霊体人を連れてくるとか、胡散臭い設定が然程の説明もないまま、有無を言わせぬ勢いで紹介されるのはまあ良しとして、本書の肝である(筈の)“言語”に関する講釈に今ひとつ感銘が持てなかったのが、この評価の大きな原因じゃ。
 英語圏の人間はどうか知らんが、もともと人称がはっきりせず責任の所在も不明確にさせやすい日本語文化圏のわしらにとって、然程感銘を与えるほどの考察がされておるとも思えん。そういう認識論の展開ならば、神林長平の「敵は海賊」とかのほうが鋭いじゃろう。
 バベル-17にしても、わずか二言三言で複雑な理論を完璧に伝達することのできる言語という設定は、こりゃなかなかでかく風呂敷広げたもんじゃと思っとったら、結局テレパシー絡みのようじゃし。
 よくわからんかったが、バベル-17は人のテレパシー能力を誘発させる言語体系という理解でええんじゃろか。
 再読すればもっと深みが出るかもしれんのお。その気は起こらんが…。
 どうもわし、ワイド・スクリーン・バロックも肌に合わんようじゃ。全ての設定が中途半端に感じてしまうようじゃ。
 B北斗の人司馬遼太郎角川文庫
歴史★★★
514頁620円
 幕末の剣豪千葉周作の前半生を描いた、司馬遼太郎には珍しく兵法者を主役にした作品じゃ。千葉周作には、それまでの剣術の持っていた必要以上に神韻を帯びさせた装いを廃止し、誰にでも解る言葉で広く剣術を普及させたという功績があるんじゃ。この時期の剣術ブームから、通常ではなかなか交流する場のなかった地方の若い武士たちが、剣術だけでなく思想的な影響を受け合いながら、幕末の攘夷のエネルギーとなっていったことを考えると、周作の歴史上の位置は大きなものがあるじゃろう。おそらくは著者もその辺りから千葉周作に興味を持ったんじゃろうのお。
 実は本書の前半はかなりたるいもんがあるのじゃが、後半の奉納額をめぐる樋口一門の馬庭念流との争いは、わしのそれまで
の理解以上に合戦の様を呈しておって手に汗握らせる山場じゃ。
 その分後半生は略譜としてさらっと流されるだけなのが辛いところで、後に周作の玄武館の支道場を率いた弟の良吉について、本編ではさっぱり触れられず、修行時代の周作とどう関係していたのか全く解らんままじゃ。曲がりなりにも、幕末の超有名人坂本竜馬が門下に入っておったわけじゃし、盛況していたはずじゃから、それ相応の実力を持っていたと思うんじゃが・・・。
 Cニューヨーク・ブルース アイリッシュ短編集6W・アイリッシュハヤカワ文庫
サスペンス★★★
419頁583円
 追い詰められる孤独な人間を描かせたら右に出るもののないアイリッシュの短編集じゃ。
 大きなハズレのない佳品揃いじゃが、自分が仕掛けた時限爆弾とともに閉じ込められた男の恐怖を描く「三時」。徐々に本性を現し始めた自分の夫から逃げようとする、ややホラーテイストの「命あるかぎり」。小心者がどんどん深みに嵌ってしまう、ブラック・ユーモアに満ちた「となりの死人」。そして珍しく田舎町が舞台の推理サスペンス、「送って行くよ、キャスリーン」といったところがお薦めか。
 わし、アイリッシュは若くして死んだものと思っていたが、どうも誰かと勘違いしておったようで、60年代の終わりまで存命しとった
んじゃなあ。表題にもなっている「ニューヨーク・ブルース」は初出が1970年じゃった。ちょっとびっくりじゃ。
 D平成お徒歩日記宮部みゆき新潮文庫
紀行エッセイ★★★
267頁476円
 なんともお気楽な簡易旅行(?)記。非常に興味深いテーマ――例えば江戸市中引き回しルートとか、江戸城城壁一周とか――での徒歩旅行ではあるが、結構中身は適当に端折った行脚じゃな。
 まあちょっとした暇つぶしには最適な小品とも言える。ベストセラー作家と言えども、考えてることはわしら凡夫とあまり変わらんのが微笑ましいのお。とは言え、社会派らしく社会問題についてもぽろっと小出しするのは流石か。
 しかし、怪しげな池や沼を見ると犬神佐清の足を思い浮かべるのは貴女だけではないと言っておこう。わし、かすれた声で口真似も入るよ。「俺はっ!犬神家に復讐することを誓ったぁ!」
 Eわが一高時代の犯罪木彬光ハルキ文庫
推理★★★
300頁680円
 東大教養学部の前身、一高敷地内の時計台で起こった人間焼失事件。・・・「わが一高時代の犯罪」。
 その続編で、水町家に起こった奇妙な事件を扱った「挽歌」。
 いずれも日中戦争が始まり真珠湾以前のきな臭い時代、名探偵神津恭介とそのワトソン役松下研三がともに一高に在籍中に起きた事件を扱っておる。どちらの作品も、“本格推理”として満足のいくものではないんじゃが、暴走時期の日本が背景ということで、松下の軽い語りにもかかわらず独特の雰囲気が漂っているのがなんともよい。また、「刺青殺人事件」で初めて神津恭介に会った時には、あまりに非のうちどころのない人物設定にいきなり食傷してしまったもんじゃが、こうして学生時代の神津などを読む
と、人物設定にも深みが出てきて興味深い。これぞシリーズ物の持ち味か。
 F講談 碑夜十郎(上)(下)半村良集英社文庫
時代★★★
472頁/392頁667円/619円
 時は天保、所は江戸。世話好きのお絹が通りすがりに拾ったのは、正体不明の裸の男。その男っぷりに人目で惚れたお絹が連れ込んだ蛇骨長屋で、男は無事意識を取り戻したが、記憶のほうはさっぱり戻ってこない。そこでお絹がつけた名前が碑夜十郎。
 お絹の周りの一癖も二癖もある男たちと知り合いながら、夜十郎もまた、権力を嵩にきて庶民を甚振るお上を手玉に取っていくことになるが、徐々に戻ってくる記憶では、どうやら彼は昭和の人間らしい。そして、幕閣で争う中野碩翁と水野忠邦の背後に見え隠れする“巨人様”と呼ばれる謎の男。その男の存在を知ったとき、夜十郎は・・・。
 読み始めた時には、時代劇からSFへシフトしていく壮大な話に違いないと想像しておったんじゃが、こりゃまたこっ酷くかわされてしもうたわい。「妖星伝」や「産霊山秘録」を書いた著者じゃから、わしの期待も仕方のないところなんじゃが、本書は“講談”とあるように、著者が折りにつけ講談調でしゃしゃり出てくる他にも、上手下手(かみてし
もて)だのといった舞台を意識した描写や、実際に芝居の演目の登場人物を出してきたりと、多分に実験小説のようなんじゃな。また、江戸の日常を描いたシーンが多くて、これはこれで興味深いとも言えるが、通常の時代SFに仕上げようと思ったら、半分の分量ですむことじゃろう。
 どう考えても著者の狙いは表現上の実験、または気分転換であって、物語としてはバランスも良くないし、ましてSFとしてのオチのつくものではなかったのお。
 G魔女の1ダース〜正義と常識に冷や水を浴びせる13章〜米原万里新潮文庫
言葉/文化薀蓄★★★★
288頁476円
 異文化の中で育ってきた人間とコミュニケーションを図るとき、それまで当然と思っていた常識のズレから様々な悲喜劇が発生するもんじゃが、同時通訳者ともなれば、異文化の橋渡しをその場その場で的確に伝達しなけりゃならんのだから、その苦労は大変なものじゃろう。逆にその分、それらコミュニケーション・ギャップの体験談はやたらに豊富で、次から次へと面白い挿話が続いて興味はつきん。著者が言うところの“尾篭な”ネタがえらく多いのは、著者が女性であるだけにあまりよろしくは感じやんが、実際現場ではそのような話が後をたたないんじゃろうのお。
 いかにもはきはきと思った事を口にしそうな著者とはあまりお近づきになりたくはないが、話はとてもおもろい。
 H西からの絹の道(シルクロード)
  NEWTONアーキオVOL.9
Newton Press
考古学薀蓄★★★
185頁1720円
 とりあえずわしの敦煌、吐魯蕃、烏魯木斉旅行の補完として読んだ本じゃな。
 断片的なトピックで、あまり感銘を受ける記事はなかったが、折込のシルクロード地図は地理の復習に役立って、ほけーっと旅情に浸らせてくれるわい。
 いつの日か、ヒンズークシやパミールを越えて、西の中央アジアに行ってみたいものじゃ。
 タリバンが盛んなうちは危険じゃろうがのお。

 I孤島パズル有栖川有栖創元推理文庫
推理★★★★
381頁660円
 英都大推理研究会の紅一点、有馬麻里亜の伯父の別荘のある島に、そこに設置された25体のモアイ像が示すダイヤの隠し場所を発見するという名目で、夏のバカンスにやってきた部長の江神二郎と有栖川有栖。
 ところが宝捜しを肴にした楽しい旅行のはずが、まさかの連続殺人事件に巻き込まれてしまう。2年前、麻里亜のいとこの英人は、隠し場所を発見したと彼女に告げた直後に水死していたが、今回の事件にこの悲劇は繋がりがあるのか。無線機を壊され、隔離された環境で江神の推理は・・・。
 いや、「月光ゲーム」がわしにとっては完全なスカじゃったので、本書を読んだのは気まぐれ以外の何物でもないが、これが意外
に良かったわい。今回は学生が3人に絞られとることもあるじゃろうが、前作で鼻についた青春小説臭さも今回は程好いところで抑えられとる。舞台はドーナツを一箇所を千切ったような島に、その両端に一軒ずつの家屋を配置したという、いかにも移動の手段と時間に関係するトリックですよと宣伝しているようじゃが、わし深読みしてまんまと外してしもうたわい。宝捜し自体も興を添えて飽きることなく楽しめたのお。なんで登場人物を“アリス”だの“マリア”だのカタカナで呼びたがるのか、作者の意図はわからんが、とりあえず、評価の高い「双頭の悪魔」を読む意欲が湧き出してきたぞ。
 J挑戦!嵐の海底都市 キャプテン・フューチャー3E・ハミルトンハルキ文庫
SF
307頁360円
 太陽系内のどの惑星においても、体感する重力を一定に保つ重力等化機。その装置にかかせないグラヴィウム鉱石は、太陽系圏の交流には絶対にかかせない物質だが、水星、火星、土星、海王星でしか算出されない貴重な資源である。それら各惑星の貴重な鉱山が謎の宇宙船に襲撃され壊滅するという事件が発生した。そしてこの襲撃事件の重大さに慌てふためいた太陽系政府が北極の信号灯台を点滅させ、キャプテン・フューチャーを呼んだ時、あろう事かキャプテン・フューチャーは<破壊王>が差し向けた宇宙船に、すでに囚われの身となっていた!
 今回は最後に残った海王星のグラヴィウム鉱山を巡って、大海原の中――もちろん海王星は一面海に覆わ
れた世界じゃ!!――で“フューチャーメン”と<破壊王>との大勝負という趣向じゃ。“海悪魔”と呼ばれ伝説とされてきた海底人と精神を交換され、海底人の体で監禁されてしまうなどなかなかのアドベンチャーで、ここまでの3編ではまずベストじゃと思うぞ。
 しかしキャプテン・フューチャー世界では、水星から冥王星まであらゆる惑星間で交易が為され、重力等化機のおかげで各惑星人も他の惑星にどんどん進出しとるし、ついでに言えば、各惑星のグラヴィウム鉱山主が政府主席の呼び出しで、ごく気軽に小枠星帯まで会合にやってくるぐらい太陽系圏が狭くなっておるにもかかわらず、一般に認知されていない知的種族がごろごろしとる。前巻はスティックスの“魔法使い”に続き、本巻の“海悪魔”海底人。次巻には土星の伝説の鳥人が登場じゃ。まあ海王星も土星も、地球に比べて表面積が格段に広いから良しとしておこうか。
 ついでながら、本巻のトホホは<破壊王>の手下に捕まった冒頭のカーティス君、脱出するときに見張りをかわしたテクニックは、あの趣味の悪い、キャプテン・フューチャーの身元を証明するリングで、なんと見張りを催眠術にかけてしまいおる。もちろん“赤毛の天才科学者は、催眠術をも完全にマスター”してるのじゃ!
 しかしラストの挿話のように、事件解決後のカーティスが宇宙港周辺を歩いていて、ふと家族の憩いを目撃したときに見せる寂しさ、といった描写が、荒唐無稽な単なる宇宙ドンパチではない叙情を味わわせてくれるんじゃのお。
 けなしたり持ち上げたりと大変じゃが、この表紙のカーティス・ニュートンはとても20代半ばとは思えやんほど胡散臭い顔をしとる。目つきの悪くなったカーク船長のようじゃと思わんか。
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