2002年 5月
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@実録 柳生宗矩 (1971)
山田野理夫潮文社歴史薀蓄
225頁580円★★★★

 柳生宗矩個人だけでなく、柳生一族全般を解説した本だ。
 これも通販で手に入れたものなので、手元に届くまで中身は判らなかったが、昔懐かしい検印がついたもので驚いた。昭和46年の出版である。

 ある程度柳生通だと自分でも認めるようになって、いわゆるスター選手の石舟斎十兵衛、宗矩、兵庫助連也の事跡がわかってくると、興味はさらに脇の人物に向かう。わたしとしては石舟斎の叔父の松吟庵、宗矩の兄の久斎徳斎、兵庫介の兄の久三郎、弟の権衛門、連也の兄の新左衛門といったところの消息を詳しく知りたいと思っているのだが、そのあたりのことに関しては、やはり情報量は少なくて残念だ。

 特に柳生権衛門に関しては、仙台伊達家というメジャーな家に仕官した人物だが、その割に時代小説にも顔のある人物として登場した試しがない。
 伊達家の資料を本気で調べれば、多少の事跡は出てくるのだろうが、本屋に並んでいる程度の柳生関連本では、そこまでの調査がされた本をみたことがない。もちろん本書は「実録柳生宗矩」だから、そこまで求めるのは酷な事はわかっている。  ――のだが、「尾張柳生の人々」という1章が設けられているので、期待してしまうではないか。

 と不満をだらだらと書いてしまったが、なかなかに纏まりよく柳生一族の総覧ができるようになっている。です、ます調の文体がやや疲れるが、数十頁の「宮本武蔵伝」も併録しておりお薦めだ。

(2015/5/7改訂)

A機神兵団1、2 (1990)
山田正紀冒険/SF伝奇冒険
228頁/239頁640円/660円★★★

 以前OVAのレンタルで見た時は、とんがった顔のキャラクターに馴染めなかったものの、ロボットものでありながら、日中戦争時の満州を舞台にするという設定に多少感銘を受けた。真空管をぱこぱこ破裂させながら起動するシーンには笑わせてもらったものだ。むろん「サクラ大戦」などより昔の話である。

 その原作版がハルキ文庫からどっと出たときは、ちょっと二の足を踏んでいる間に店頭からは綺麗に消えたのだが、たまたまそれらを大手の本屋で見かけたで、つい買ってしまった。

 この二巻まででは、OVAで主役だったなんとかいう少年は姿を見せず、脇を固める三人の青年(一人は女か?)が、それぞれに雷神、龍神、風神のパイロットとなる過程が描かれた導入篇といったところ。
 「崑崙遊撃隊」でもそうだったように、著者の描くこの時代の中国はなかなか魅力的だが、エイリアンとそのテクノロジーを使った機神という要素を除けば、本シリーズのほうがリアルな舞台を用意できるので、後半歯止めが効かなくなって訳わからなくなった「崑崙遊撃隊」よりも、かっちりまとまってくれる期待はある。

 やっぱりとっちらかるかもしれないが。

(2015/5/9改訂)

Bふりだしに戻る 上下 Time And Again (1970)
J・フィニイ角川文庫
348頁/341頁540円/540円★★

 イラストレーター、サイモンは、とある男にスカウトされて悩んだものの、政府の機密であるという<プロジェクト>に参加した。平凡な外観の建物の中に設置された<プロジェクト>の巨大な吹き抜け空間は、さまざまな時代と場所のセットに区切られていた。いくつかのセットの中には、その時代に暮らしているかのように演技する人がいた。観客席やカメラはどこにもないというのに・・・。

 ジャック・フィニィが書いた「盗まれた町」は、わたしの好きな1冊だ。
 侵略テーマの古典的傑作で、何度か映画化(映画はどうということのない出来だが)もされていて、ハインライン「人形使い」よりも好きだ。
 その著者の時間テーマの作品と聞けば、いやがうえにも期待が高まるというもの。

 ところがどっこい、作者の興味はタイム・パラドックスを上手くあしらったエンターテインメントにはまるでなかった。彼の興味はあくまで1880年代のニューヨークの風景と生活だ。サイモンが描いた当時の風景がかなりの枚数挿入されているという凝りよう。この執拗な情景描写を堪能できるのは、ニューヨーク在住の歴史マニアくらいではなかろうか。
 おそらく特に日本に興味を持っていないアメリカ人が、石川英輔「大江戸神仙伝」を読めば、近い印象を受けるのではないだろうか。

 一応サイモンの恋人の養父母にまつわる手紙の謎を解くというプロットが挿入されてはいるものの、興味を牽引するにはとても足りない。だらだら続く情景描写【注1】を我慢して読んでるうちに、手紙の謎ってハテなんだったかなと思ってしまう程度。
 サイモンが1880年代でジュリアに巡り逢うに及んで、この三角関係はどのように折り合いをつけるのかと思ったが、これもへなへなの肩すかしで、作者の興味がそんなところにないことがよく判る。

 ラストは時間テーマにつきものの寂寞感を宿していい感じだし、時間旅行を計画する<プロジェクト>の描写は新鮮だったから、だらだら情景をバッサリ削ればそこそこの良作になったと思うのだが。

【注1】この当時自由の女神の右腕だけが、にょっきりマジソン広場に生えていたという興味深い記述もある。

(2015/5/9改訂)

C歴史にはウラがある (1996)
ひろさちや新潮文庫歴史薀蓄
254頁400円★★

 よくある歴史ウラネタ本だが、同じ時代の東洋西洋の人物を併記したコラムに惹かれて購入。
 しかしいつものようにわたしが間抜けなのだが、最初の聖徳太子マホメットは良しとして、これに続く西洋人がコロンブスガリレイニュートンナポレオンといった具合に、自然科学から皇帝まで、それなりに幅広くピックアップされている一方、それに比較される日本の人物が、蓮如天海鉄眼、良寛だ。都合11組の取組み全ての東代表が坊主というのはないだろう。

 それにしたところで、それぞれの比較で何らかの類似や関連を示唆しているのならともかく、単に並べておるだけ…。  どうも著者は仏教哲学が専門のようだが、これでは仏僧に特に興味のあるごくごく一部の人間に、「この坊さんのいた時代の西洋の有名人にはこんな人がいますよ」という紹介をしているだけである。
 栄西一編なら良いが、鉄眼や白隠とか言われて誰が知ってる?

(2015/5/9改訂)

Dゴールデン・フリース
 Golden Fleece (1990)
R・J・ソウヤーハヤカワ文庫SF
296頁600円★★★★★

 恒星間ラム・ジェット宇宙船アルゴで47光年彼方の惑星コルキスへ旅立った一万人の調査団。到着まで八年の長旅だ。地球へ残した友人や家族とは二度と会えないと知りながら、このギリシャ神話になぞらえられた調査計画に参加した一行は、コンピューター“イアソン”によって、船の航行から団員各々の健康状態まで、万全に管理されている。
 そんな中旅程の四分の一が近づいたある日、女性科学者ダイアナが加速中の船の外へ出て死んだ。だがそれは自殺に見せかけた殺人だった。そして犯人はイアソン。
 船内の全てを掌握しているこのコンピューターは、船内のクルーに自殺であることと説明するが、納得の出来ないダイアナの元夫アーロンが、独自にの死の真相を探ろうとする。だがそのの動きの全ても、イアソンに掌握されているのだった。

 いわゆる倒叙ミステリのSF版。
 犯人であるコンピューターの一人称で叙述されるのがなんとも面白い。
 ほどほどに人間臭い一方で、合間々々にいかにも無機的なコメントが挿入される。TNGデータ少佐で慣れてはいるが、非常に効果的な演出だ。宇宙船のコンピューターが殺人を犯すと言えば、いやでも「2001年宇宙の旅」を思い出してしまうが、エンターテインメント性は本書のほうが遥かに高い。

 アーロンがいかにして真相に辿りつくかという興味もあるが、本書で最大の吸引力を発揮するのはホワイダニット。なぜイアソンがダイアナを殺さなければならなかったのかだ。この点に関しても十分な満足が得られる。

 これまで読んだソウヤー本の中(三冊だけだが)ではダントツでベストだ。

(2015/5/9改訂)

E空想科学への大冒険 (1999)
未来科学研究所・編青春文庫科学薀蓄
233頁514円★★★

 類似本というわけではないが、題名が「空想科学読本」に似過ぎててちょっといやらしい。
 この分野にも類似本というか、同じ購買層を狙った本がぽろぽろ出てきた。元祖「空想科学読本」の対しては、と学会から批判本まで出版されている。それだけヒットしたということだ。わしとしては、確かに一冊目は面白かったが、巻を追うごとに急激にパワーダウンしていき、「空想科学映画読本」に至っては、取り上げた作品への愛のない、ただ欠点をあげつらうだけの本になってしまっている。いい加減にしろよという感じだ。

 とは言え本書は、題名は似ているものの中身は随分と異なっている。
 SFでよく耳にする有名なガジェットに、現代科学がどれくらい近づいているのかを紹介した内容だ。列記すると、

 “宇宙移住計画”…軌道エレベーターや火星のテラ・フォーミング
 “絶滅動物再生”…「ジュラシック・パーク」ほど簡単にはいかないぞ。
 “不老不死”…細胞の寿命を司るモータリン遺伝子
 “透明人間”…カモフラ・スーツ
 “人工冬眠”…実在の人工冬眠請負会社の紹介。
 サイボーグ”…ホンダの二足歩行ロボットとバイテクによる人工臓器。
 “宇宙旅行”…「タウ・ゼロ」「ゴールデン・フリース」でおなじみ、バサード・ラムジェット
 “架空動物製造”…遺伝子治療の現状。
 “人格改造”…各種脳内物質の紹介。
 “タイムトラベル”…ワームホール
 空飛ぶ円盤”における真空エネルギー
 人工知能”…ニューラル・ネットワークの紹介。

 NHK「サイエンス・アイ」で取り上げられるような最新の科学情報と、出所のよくわからないどう考えてもトンデモな話とがちゃんぽんに紹介されているが、なかでも“空飛ぶ円盤”の章の胡散臭さといったらひどいものだ。著者は矢追純一か?
 ここを読んで、すべての章が同じレベルで実現目前のように感じてしまう読者もいるのでは。心配になってしまう。

 ホンダのASIMOについて、適当な単語をどう並び替えて頭文字をとったのかは知らないが、これは誰がどう考えてもアシモフに敬意を表したとしか思えない。ところがいまだにそこを言及した文章をみたことがない。本書でもそうで、しかもロボット三原則まで引用しながら、J・W・キャンベルが提唱したことになっている。まあ、最初の基本的アイディアはそうだったのかもしれないが…。

(2015/5/9改訂)

F亜愛一郎の狼狽 (1978)
泡坂妻夫創元推理文庫推理
369頁680円★★★

 新本格のムーブメント以前に位置する謎解き重視の連作短編集。
 主人公のカメラマン、亜愛一郎の個性的なキャラクターが特徴とのことだが、うーん、期待ほどではなかった。どれも今ひとつ満足いかないというか。

 短編毎の内容を紹介するのは疲れるので控えるが、わたしを最も驚かせたのは、ストーリーやトリックではなく、亜愛一郎というこの名前。わたしはてっきり亜愛(あわい・いちろう)一郎だと思い込んでいたが、亜(あ・あいいちろう)愛一郎だったとは…。
 しかし奇を衒っただけで、この名前に深い意味はなさそうだ。
 他にも彼の設定が、黙って立っていればモデルのような二枚目だが、喋ればすっとぼけ、動けば運動神経が鈍そうにぎくしゃくと、しかしかなりの怪力の持ち主。
 個性的と言うよりも漫画的なデフォルメですわな。

 わたしには、キャラクターだけでなく、個々の短編にも不自然な演出というか、どうもこなれてないように感じてしまうのだが、このあたりの好みは読み手次第か。

(2015/5/9改訂)

G松永弾正 上下 (1998)
戸部新十郎歴史歴史
365頁/345頁648円/648円★★★

 松永弾正久秀とは言わずもがな、織田信長にまで一目置かれた悪党。主殺し、将軍殺し、そして奈良の大仏殿を炎上させた三大悪をやっちまった人物として知られている。そんな男を著者はどう料理するのかという興味があった。

 後に久秀と名乗る多聞丸が、弟の甚介とともに盗賊していた若い時分から書き起こされ、堺の天王寺屋宗達の口利きで三好家に仕官し、やがて成長した若君(三好長慶)の功臣筆頭として京を中心に活躍していく。
 無欲でマイペースな松永弾正。こちらの期待にたがわず、一般的なイメージとは真逆なところが面白い。後半生の悪名とのギャップをどう埋めるのかが楽しみな展開だ。
 応仁の乱以降、信長が立つまでの京都はあまり小説に取りあげられることがない。足利将軍家と管領細川家が入り組んで離散集合し、非常に理解しづらい時代だ。そこを整理できるのも嬉しい。

 他にも戸部作品では、同時代の様々な剣客が顔を出すのも特長だ。
 今回は久秀のボディーガードとして、居合の創始者として名高い林崎甚助が登場。さらに天王寺屋で知り合い、長い付き合いとなる柳生七郎左衛門、後の柳生松吟庵。特に七郎左衛門の初登場シーンは、戸部作品に珍しいくらいの緊張感があった。
 松吟庵が事実剣術使いだったのかは疑問だが、剣を教えた甥っ子が自分を越える器量だと、さらっと述懐するあたりは、ニヤリとしてしまう。もちろんこの甥っ子とは、後の石舟斎宗厳のことだ。

 ところが残念なことに、悪名を轟かせた松永弾正へと変わっていく過程をじっくり楽しめるのかと思いきや、これは物足りなかった。彼について回る三大悪行のひとつに主殺しがあるのは、不慮に死んだ長慶の嫡男三好義興と長慶自身の死の背後に、久秀が糸を引いていたと思われているからだが、本書では久秀は長慶を神の如くに仕えていた設定だから、彼らの早すぎる死は、京都の将軍達の自分勝手な振る舞いに心労が祟った所為であるとし、その復讐からの御所へ攻め込んで(将軍殺し)いる。

 これはいい。ただここで早くも幕が降りてしまうのである。
 エピローグ的に、晩年の顔形も変わってしまった久秀が信長と同席するシーンは設けられているが、これは付け足し程度。
 久秀がやったという三大悪行は、一族でもない素性も判らない出身にも関わらず、三好家の中で大出世したことに対する周囲のあてこすりにすぎないという解釈のわけだが、それに説得力を持たせるにはまだまだ描写が足りない感じ。

 しかし興味深く読了したことは確か。  なにせ三千円で買った「信長の野望・将星録」では、三好家でプレイしたくらいだ。いや松永久秀は町造りに建築にと、よく働くわ。  三好家の重要な武将であり、久秀の弟である松永長頼が出てこないのは腑に落ちないが・・・。

(2015/5/11改訂)

Hソリトンの悪魔 上下 (1995)
梅原克文角川文庫時代伝奇
296頁552円★★★★★

 21世紀初頭。与那国島沖に作られた海上人工都市、<オーシャン・テクノポリス>が一瞬のうちに海の藻屑と化し、数千人が犠牲となった。擬似遠隔操作潜水艇TOVの映像を介してその現場にいた、海底油田プラットフォーム<うみがめ200>の責任者倉瀬は、目に見えない何者かが衝撃波を撒き散らし、<オーシャン・テクノポリス>の基部を破壊してまわるのを見た。彼はこの惨劇に巻き込まれて消息を絶った娘の美玲と、<うみがめ200>に取り残された部下を救出しようと奔走するが・・・。

 ソリトンという減衰しない不思議な波は、前になにかで読んで興味を持っていた。
 だからといって、その波動が生命体だったら?などという発想はまったく浮かばない。たしかにスタートレック・シリーズなどでも、光の生命体などは陳腐なほど登場するが、この場合は粒子として捉えるイメージ。本書のように、海水の異温度界面に存在する純粋な波動の生命体とは…。
 脱帽だ。

 まあ海水の各レイヤーの界面は、光が屈折するようなことがあっても、複雑なパターンの2次元波動が存在できるようなかっちりと境界を仕切れるようなものではないと思うが、それはともかく、センス・オブ・ワンダーに満ちたすごいSFである。本書がSFかどうかという論議もあるようだが、それは軍事サスペンス、冒険サバイバル、ついでに家族再生まで盛り込んだジャンル・ミックスとしてエンターテインメント性が高いからだ。

 波動生命体とコンピューター・プログラムの類似が言及されてからは、やや新鮮味が薄れた気もあり、後半○○○と△△△が××××るなどはいくらなんでもやりすぎだとツッコミたくなるが、お馬鹿SFとしてのトンデモを補足して、ストーリーを盛り上げる様々なガジェットも満載だ。【注2】

【注2】生物の脳が発散するリファレンス・トーン。その応用のホロフォニクス・ソナー。油田のブローアウトを抑えるマッド技術等々。

(2015/5/11改訂)

I切り裂きジャック・百年の孤独 (1988)
島田荘司集英社文庫推理
271頁457円★★★

 1988年の西ベルリンで、娼婦の連続惨殺事件が発生した。その百年前、ロンドンを震撼させた切り裂きジャック事件を彷彿とさせるその陰惨な事件に、ベルリン警察が躍起になって捜査するが、事件の解明には光明を見出せず、焦りの色を隠せない。そんな中、不思議な男が捜査協力を申し出てくる。切り裂きジャック研究家だと自称するその男は、百年前の切り裂きジャック事件の真相が今回の真相でもあり、私にはその真相が解っていると嘯くが・・・。

 エラリー・クイーンジョン・ディクスン・カーといった大御所も取り上げた切り裂きジャック事件を、日本の新大御所もしっかりトライしていた。

 切り裂きジャック事件の解釈としては、かなりの力技であまり出来が良いとは思えないが、島田作品のファンならば、エピローグのよもやのサービスには唖然とするだろう。

(2015/5/11改訂)

J鉄の薔薇 La Rose de fer (1995)
B・オベールハヤカワ文庫冒険
364頁680円★★★

 プロの銀行強盗ジョルジュは、裏の顔を隠した商社員としての表の顔で、美しい妻マルタとの生活を送っていた。しかしブリュッセルの銀行を下調べで見張っていたある日、自宅で待っているはずの貞淑なマルタが、見知らぬ男と歩いているところを目撃する。裏の顔を隠しているのは自分だけではないのか? それともジョルジュが事故で失った過去に起因する何かがあるのか?
 自分の生き残りと過去を賭けて、スイスとドイツを駆け巡るジョルジュの前に、やがて“鉄の薔薇”と呼ばれる謎の組織が浮かび上がる・・・。

 主人公のヒロインと殺人者の独白を交互に並べて、なかなかのサスペンスと結末を演出していた「マーチ博士の四人の息子」の著者による第二段。本書は持ち味のサスペンスに、よりアクション性を高めたエンターテインメント佳編だ。
 あとがきでは、ストーリーに大きくかかわる精神心理の記述に対する物足りなさが取りあげられていたが、誰が敵で誰が味方か判らない中、機転と行動力で危機をすり抜けるジョルジュのテンポの良い活躍は十分に面白い。
 ただし謀略スパイものを読み慣れていると、本書のスピーディさを軽すぎると感じてしまう懸念はありそう。

(2015/5/11改訂)

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