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お父さんのバイブル本


反地球シリーズJ・ノーマン
 本シリーズの舞台となるゴルは、地球と同じ公転軌道上に太陽を中心にして反対側にある惑星。つまり地球からは決して見ることのできないという設定だ。
 地球から拉致された大学教員タール・キャボットが、このゴルという異世界を舞台に波乱万丈の冒険を繰り広げる展開は、これだけみれば数あるバローズ・タイプの異境冒険小説の亜流の一つにすぎない。

 しかしそれだけに納まらないのが本シリーズ。
 たしかに一巻、二巻までは、主要な舞台となるのが、王政や帝政でなく古代ローマを想起させる都市国家だったりするものの、まぁよく出来たバローズ・タイプの亜流といった感じだ。しかし三巻以降、ゴルの軌道を“反地球”の位置に安定させるほどの科学力を持った<神官王>や、彼らに敵対する<他者>の存在といった物語世界を大きく広げる設定が出てくるようになり、あるいはこのような物語世界の背骨の設定の他にも、個々の文化の緻密な設定など、すでに亜流としての位置を越えている。発展系と言っていいだろう。
 表紙と挿絵がバローズ作品と同じく武部本一郎(三巻まで)だというのも、非常にポイントが高い点だ。

 しかしだ。さらに本シリーズを特徴づけているのはこれだけではない。ここまでなら諸手を上げて誰にでも推薦できるのだが、本シリーズの最大の特徴は、女性の扱いである。
 本シリーズで言うところの女の幸せは、

力ある男に隷属して奉仕することである。


 いやぁ、フェミニズムの徒が読めば怒り爆発間違いなし。  このジョン・ノーマンの思想?は、「ゴルの神官王」あたりから目立つようになるが、次の「ゴルの遊牧民」で、エリザベスというこれも地球からの拉致被害者が登場してからは箍が外れて爆走状態だ。(この巻からは加藤直之が代わって表紙を担当しておるが、当時中学生の私にとって、これをレジに持っていくのがどれほど大変だったことか。付属していた帯を上側にずらして裸を隠したことを覚えている。)

 このエリザベスがタール・キャボットの奴隷兼愛人となるのだが、しかしこのフェミニズム論者にとっては噴飯ものとは言え、このアクの強さで持って本シリーズをばっさり切り捨てるには、あまりに惜しい。

 「ゴルの巨鳥戦士」のヒロインでタールの恋人であるタレーナは、二巻以降六巻に至るも行方不明のままという、トンデモない放置プレイ継続中である。ぜひとも創元社には、続巻を刊行するという大英断を下してほしいところだ。

 というのが、私の二十年来変わらぬ願望である。