プロローグ

 

「ぐわぁ!」

 

ゼイビアックス将軍との戦い後、ベンタラを守る騎士『仮面ライダー』の力…その中の一つ『仮面ライダードラゴンナイト』の力を先代である『アダム』より受け継いだ少年『辰輝たつき 統夜とうや』は鮫をイメージさせる見た事も無い水色の仮面ライダーと戦っていた。

 

「なんだ…あの仮面ライダーは?」

 

サメ歯状の刃を持つ大刀を構えながら、倒れるドラゴンナイトに近づいていく水色の仮面ライダー。

その姿を見ながら、疑問に思う。過去の戦いの中で存在していたベンタラで作られたカードデッキは自分が変身したもう一つのライダー…イレギュラーである『仮面ライダーオニキス』を含めても合計で13しか存在しないはずであり、目の前の仮面ライダーの姿はその13人の仮面ライダー達の姿のどれにも当てはまらない。

 

「どうだい、トウヤ・タツキ。君達のカードデッキのデータを元に作り上げた完全新作の仮面ライダー『アビス』の力は?」

 

目の前の仮面ライダー…『アビス』から聞こえる声に驚きのあまり、仮面の奥で思わず目を見開いてしまう。

 

「その声…お前…まさか…」

 

「その通り、久しぶりだね」

 

「…生きていたのか…ゼイビアックス!!!」

 

「生きていたのさ。それと、今の私は、『仮面ライダーアビス』だよ」

 

 

『SWORD VENT』

 

 

ゼイビアックス…いや、アビスの言葉を聞きながらカードデッキから抜き出したカードをドラグバイザーに刺し込み、『ドラグセイバー』を召喚する。

 

「オレの前になんで現れたんだお前は…?」

 

「いや、単なる私の作り上げた新型の自慢と機能チェックだよ。君達への別れの挨拶も兼ねているがね。どうだい、このアビスの力は? ユーブロン等の作った物よりも遥かに高性能だろう?」

 

「ふざけるな!」

 

そう叫びながら、ドラグセイバーを持ってアビスに切り掛かるドラゴンナイトだが、アビスは掲げた大刀『アビスセイバー』でそれを受け止め、

 

「おおっと!」

 

「ぐはぁ!」

 

もう一本のアビスセイバーでドラゴンナイトの体を切りつけ、

 

「はは、危ない、危ない」

 

そう言いながら体制の崩れたドラゴンナイトの体を蹴り飛ばす。

 

「ぐっ…こいつ…」

 

「やれやれ、私の目的は君をベントする事では無いと言うのに」

 

アビスを睨み付けながら、ドラグセイバーを杖代わりに立ち上がるドラゴンナイトだが、首を振りながらアビスはそう告げる。そして、

 

 

『STRIKE VENT』
『STRIKE VENT』

 

 

奇しくも同時に響き渡る二つの電子音。アビスとドラゴンナイトの手に装着されるのは、サメと龍の頭を模した手甲だった。

 

ドラゴンナイトに装着されたのは龍の頭を模した手甲『ドラグクロー』

 

アビスに装着されたのはサメの頭を模した手甲『アビスクロー』

 

互いに手甲を装着した腕を振り上げ、

 

「はぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
「ふん!!!」

 

二人のライダーの装備した手甲からから放たれる炎と水流…『ドラグクローファイヤー』と『アビススマッシュ』の二人のライダーの相反する力を持つ技。

炎と水の激突が生み出す爆風が二人のライダーを襲い、同時に発生した水蒸気が視界を奪う。不覚にもドラゴンナイトは行動が一瞬遅れてしまった。

 

 

『ATTACK VENT』

 

 

「がぁ!」

 

電子音が響くと同時に、正面からの銃撃に曝され、続いて真横から何者かに切りつけられ、トドメとばかりに殴り飛ばされる。

 

「どうだい、彼等が私のアドベントビースト…『アビスマッシャー』と『アビスハンマー』だ」

 

水蒸気が晴れていき、視界が開けた時、何時の間にかアビスの左右にはサメ型のモンスター『アビスマッシャー』とシュモクザメ型のモンスター『アビスハンマー』が存在していた。恐らくは先ほどの攻撃は二体のモンスター達による物なのだろう。

 

「さて、落ち着いて話をしようじゃないか、トウヤ君?」

 

「お前なんかと話す事なんて無いな。」

 

そう言って『ATTACK VENT』のカードをカードデッキから抜き出し、それをドラグバイザーに装填しようとするが、

 

「やれやれ…過激だね、君は。まあ、聞きたまえ。私はこの世界から立ち去り、新天地へと旅立とうと思っているのだよ」

 

「なに?」

 

「悪くない話だろう。君達仮面ライダーに敗れ、こうしてアビスを初めとするカードデッキのコピーが完成した今となっても、流石に地球とベンタラで君達仮面ライダーと戦っても勝ち目が薄いと思った訳だよ」

 

アビスの言葉に疑問を覚えながらも、ドラゴンナイトは一言一句聞き逃さない様に耳を傾ける。それと同時にアビスの動きにも最大限の注意を払っている。

 

「…何を言っているんだ…お前?」

 

「まあ、行き成り言われても信じられないのも無理はないだろう。だが、これは事実だ。それに、君達にとってもいい話だろう? 敵である私が地球からも、ベンタラからも居なくなるのだからね」

 

「…どう言う意味だ? お前が地球からも、ベンタラからも居なくなるって言うのは」

 

「旅立つのだよ…君達仮面ライダーの居ない世界へと、俗に言う『異世界』へとね。君に会いに来たのは、お別れを言いに来たのだよ。さようなら、親愛なる仮面ライダードラゴンナイト! 二度と会う事も無いだろうから、ユーブロンや他のライダー達にもよろしく言っておいてくれたまえ」

 

「っ!?」

 

思わずアビスの言葉に言葉を失ってしまう。

その言葉を信じるのなら、ここでアビスを逃せば、かつて地球やベンタラで起こった事が別の世界にも起こってしまうと言う事になってしまうのだから。しかも…その世界には…

 

「仮面ライダーが居ない…お前達に対抗する術がない。そう言う事か?」

 

「その通り。そして、その世界に渡ってしまえば、仮面ライダーのデッキはこうして私が作り上げたコピーしか存在していない。その世界で悪のライダー軍団を作り上げ、この私が、その世界を支配するのだよ」

 

「そんな事を…オレが…オレ達がさせるとでも思ったか!!!」

 

「そうだろうね。だが、考えてみたまえ、君達には別の世界へ渡る方法は無い。つまりだ。君がどれだけ頑張っても、私と戦う事は出来ないと言うことだよ」

 

そう告げてアビスはドラゴンナイトへと背を向け、カードデッキから一枚のカードを取り出し、アビスバイザーへと装填する。

 

 

『FINAL VENT』

 

 

アビスがカードをベントインするとアビスマッシャー、アビスハンマーの両モンスターが背中合わせに立ち、水の竜巻を作り出し全身を巨大な渦を巻く水の壁が隠した時、水が弾け、ドラゴンナイトのアドベントビースト『ドラグレッダー』よりも巨大なホオジロザメ型のモンスター『アビソドン』が出現した。

 

「な!? モンスター同士の合体!?」

 

「何も、驚く事は無いだろう? ストライクにも同じ事は出来たはずなのだからね」

 

そう言ってアビスは何かの作業を始めると、アビソドンは空中をまるで水中の様に泳ぎながら、ドラゴンナイトへと襲い掛かる。

 

「くっ!」

 

「では、トウヤくん、こちらの準備が終わるまでの間、そこで私のモンスターと遊んで居てくれたまえ」

 

アビスの言葉に答える様にアビソドンの顔の中央からアミーナイフ状のノコギリが出現し、接近戦形態であるノコギリザメを思わせる『ノコギリモード』へと変わり、ドラゴンナイトを切り裂かんと突撃する。

 

「ペット自慢の様に言ってんじゃねぇよ!!!」

 

ドラゴンナイトを切り裂かんと襲い掛かるアビソドンから逃げながらアビスへと向かって思わずそう叫ぶ。

 

「くそ! こっちは、お前と遊んでる時間は無いんだよ!」

 

 

『ATTACK VENT』

 

 

アビソドンへと反撃するべく、カードデッキからそのカードを抜き出し、ドラグバイザーへと装填する。

 

『グオォォォォォォォオ!!!』

 

鏡を門として出現したドラゴンナイトのアドベントビースト『ドラグレッダー』が咆哮を上げ、アビソドンへと炎を放つ。

 

『………!』

 

無防備にドラグレッダーの炎を浴びたアビソドンだが、ノコギリモードからホオジロモードへと戻り、ドラグレッダーへと向き直り目の部分を左右へと広げ、ハンマーヘッドを思わせる姿に変わると、そこからエネルギー弾を放つ。

 

『ガァ!』

 

ドラグレッダーは素早く体を動かしアビソドンの『ハンマーモード』が放つエネルギー弾を回避しながら、炎を放つがそれらはエネルギー弾で打ち落とされ、打ち落とされなかった炎の与えるダメージは決して大きな物にはなってはいない。

 

「食らえ!!!」

 

アビソドンの注意がドラグレッダーへと向かった瞬間を逃さず、ドラグクローから炎を放つ。

 

『っ!?』

 

ドラゴンナイトの攻撃を受けたアビソドンはドラゴンナイトの方へと顔を向け、エネルギー弾を放とうとするが、今度は別の方向からドラグレッダーからのブレスが直撃する。

二対一…巨大なアビソドンに対して数の上での優位を維持し、ドラグレッダーと連携しながら攻撃を仕掛けているが、有効打にはまだ届かず、アビソドンを倒す為には必殺の一撃となる『FINAL VENT』を使うしかない。だが、それを使った瞬間にアビソドンに大きな隙を見せてしまう事となる。

 

「どうする…。あの化け物モンスターとどう戦う…?」

 

決定打を与えられない事に焦りを募らせていくドラゴンナイトだが、

 

「うわ!」

 

『グルゥ♪』

 

突然、鏡の中からもう一体のドラゴン…ドラグレッダーに似た漆黒の体を持ったアドベントビースト…トウヤがオニキスのデッキを使っていた時のアドベントビースト『ドラグブラッカー』が姿を現した。

そして、その攻撃的な姿からは想像できない飼い主に懐く子犬の様な仕草でドラゴンナイトに甘え初める。

 

「ドラグブラッカー!? どうしてここに!?」

 

オニキスのデッキはドラゴンナイトの物を受け継いだ時にユーブロンに返したのだから、ドラグブラッカーの契約は彼の元に無いはずなのだ。

 

『ガァァァァァァァアア!!!』

 

ドラゴンナイトの言葉に答えず咆哮を上げながら、ドラグブラッカーはドラグレッダーと戦うアビソドンへと向かっていく。

ドラグレッダーに注意が向いている隙にドラグブラッカーはドラグセイバーを模した尾によってアビソドンの体を切り裂き、

 

『ガァァァァァァァア!!!』

 

漆黒の炎を叩きつける。

 

『グォ!?』

 

……………………近くに居たドラグレッダーも巻き込んで。

 

「…ホント…仲悪いよな…あいつら…」

 

心の中で溜息を付きながらも、ドラグブラッカーの出現は此方の優位になったのだ。ならばと、カードデッキからドラゴンナイトのカードデッキに刻まれている紋章と同じ絵が書かれた『FINAL VENT』のカードを抜き出す。

 

 

『FINAL VENT』

 

 

ドラグレッダーが前線から離脱し、ドラゴンナイトの背後で円を書く様に動き、同時にドラゴンナイトも中国拳法の様な体勢を取り、空中へとジャンプし、それを追いかける様にドラグレッダーも飛ぶ、

 

「ハァァァァァァァァアア!」

 

空中に舞い上がったドラゴンナイトは空中で一回転の動作、そして、ドラグレッダーがドラゴンナイトの周囲を廻る。

 

「ハァァァァァァァァ!!!」

 

そして、ドラグレッダーが炎を放つと同時にドラゴンナイトは飛び蹴りを放つ、炎を纏ったドラゴンナイトが一直線に飛び蹴りの体制でアビソドンへと向う…それがドラゴンナイトの持つ必殺技ファイナルベント

 

「ドラゴンライダーキック!!!」

 

炎を纏って放たれたドラゴンナイトの必殺の飛び蹴りがアビソドンへと直撃し、吹き飛ばす。その衝撃を受け、アビソドンはアビスマッシャーとアビスハンマーへと分離し、アビスの左右へと吹き飛ばされた。

 

「おお、まさか、アビソドンがやられるとはね」

真紅ドラグレッダー漆黒ドラグブラッカーの二体の(ドラゴン)を従えながらドラゴンナイトはアビスと対峙する。だが、当のアビスはそんなドラゴンナイトを前に余裕の態度を崩さずに立っていた。

 

「次はお前の番だ…アビス」

 

「いいや、残念ながら時間切れだよ、トウヤ君」

 

アビスがそう宣言するとアビスの背後にオーロラの様な灰色の歪みが現れる。

 

「それでは、さよならだ!」

 

そう告げたアビスはアビスマッシャー、アビスハンマーと共に歪みの中へと飛びこん行く。

 

「待て!」

 

同時にドラゴンナイトもまたドラグレッダー、ドラグブラッカーと共にアビスを追って歪みの中へと飛び飛び込もうとする。

 

「ぐっ…」

 

だが、ドラゴンナイトが別の世界へと渡る事を拒絶するかの様に、アビスの飛び込んだ灰色の世界の歪みはドラゴンナイトを押し返そうと反発する。

 

「こ・・のぉ……」

それでも、ドラゴンナイトはその歪みの先へと向かって一歩ずつ歪みの中へと進んでいく。ドラゴンナイトと同様に、彼の従えるドラグレッダーも、ドラグブラッカーも…。

そして、完全にドラゴンナイトが歪みの中へと入った瞬間、先に歪みの中へと飛び込んだアビスの背中が見えた。

 

「待…て……「掛かったな」なに!?」

 

アビスはドラゴンナイトを振り返りあざ笑うように告げる。

 

「確かに、私は君達ベンタラの仮面ライダー達に負けた。それは認めよう。だが、君一人では私に勝てないと言う事を忘れたのか?」

 

「っ!?」

 

アビスの言葉に思わず絶句してしまう。

 

「君達との戦いの影響で、こうしてライダーの姿になっていなければ、私は満足に戦う事も出来ない。それも認めよう。だが…君一人で何が出来ると言うのかね?」

 

その言葉にドラゴンナイトはアビスが自分の目の前に現れた理由をイヤでも理解する。ゼイビアックスに勝てたのは13人の仮面ライダー全員が力を合わせた結果だ。逆に自分一人で戦えと言われて、勝ち目が有るかどうか…それは誰よりも彼自身が一番理解している。

 

「まさか…。」

 

「追ってきても来なくてもどっちでも良かったのだよ、私は。君が付いてきてくれれば、私は君へ復讐が出来る。来なければゆっくりと向こうの世界を侵略する事ができるのだからね」

 

ドラゴンナイトを襲う浮遊感…アビスの姿が目の前から真上へと遠ざかっていく。

 

「それでは、異世界でまた会おう、トウヤ・タツキ君」

 

そう言ってドラゴンナイトへと背を向けて立ち去っていく姿を目に焼き付けながら、ドラゴンナイトはアビスをただ見送る事しかできなかった。

 

 

 

戻る