第二話『ドラゴンと少女達の出会い』

 

「…はぁ…流石にこう、毎食だと飽きるよな…。」

適当に買ってきたファーストフードを食べながら溜息と共にそう呟く統夜。

食事は安い物で簡単に済ませているのだが、それが毎日続くといい加減飽きが来る。金銭面…『人権無し』と言い切って躊躇無く金を巻き上げる事ができる相手もそう出会えるものではないのだから。主に市民に絡んでいる管理局員とか。

間違いなく生活費を稼ぐ為の行動は犯罪行為なのだが、そこら辺は右も左も分からない上に戸籍も住居も何もない異世界で生活する事になって、一人でゼイビアックスと戦うことになった統夜としては、『悪人に人権無し』と言う事で仕方ないと即座に判断していた。

「…はぁ…やっぱり一人じゃ限界があるよな…。…今更ながら、尊敬するぜ…レンさん…。」

思わずそう呟いてしまう。

統夜自身、流石に一人と二匹だけで出来る事は限界が有るのは理解している。だが、それでも信用できない相手(時空管理局)にベンタラやライダーの事を話すよりはマシと考えて、こうして一人で戦う事を選んだのだ。



キィィィィィィィイン…



ペットボトルの水を飲み干した時、モンスターの出現を告げる音が聞こえてくる。

「出たか。今日は何もないと思っていたけどな…。」

溜息交じりでそう呟き、鏡へとカードデッキを向け様とした時、ドラグレッダーが顔を出して首を振る。

「…鏡の中に入るな? どう言う…っ!? そう言う事か!?」

頷くドラグレッダーの姿を見て、自分の考えが正しいと判断するとビルから飛び出すと近くに止めてあるバイクに飛び乗り、鏡へとカードデッキを向ける。

「KAMEN RIDER!」

統夜がドラゴンナイトに変身すると同時に彼の乗るバイクもその形をドラグサイクルへと姿を変える。

そして、ドラゴンナイトは近くの鏡へと飛び込む。




 

 

 

 

数十分後…

「モンスターが出たのはあのリニアの中か。」

まだ遠くに位置するレールを走るリニアを眺めながらドラグサイクルの上でドラゴンナイトはそう呟く。

モンスターの出現しようとしているらしいこの場所まで、人目に触れない様に鏡の中を経由してドラグサイクルで走って来た訳なのだが、

「さて、どうやって入り込むかな…って、戦闘中!? 新手のモンスター…じゃないな…。」

モンスターと言うよりも戦闘用の機械らしき物…ドラゴンナイトは知らない事だが、管理局では『ガジェット・ドローン』と呼ばれているそれと数名の管理局員らしき人影が戦っている姿を確認すると、姿を見られるのは拙いと思いリニアのレールから距離を取り、その様子を確認する。

向こうがモンスターの存在を知っているのか知らないのかは別にして、管理局の魔導士らしき人影はガジェットと戦っている事から、既に手遅れかまだ動いていないかどちらかなのだろう。

そう考え、先回りしスピードを落とすであろうカーブの近くで待機、戦闘のドサクサに紛れリニアの中に飛び込み、モンスターの活動する鏡の中で戦う事を決める。

管理局から逃げるのは鏡の中にさえ飛び込んでしまえば簡単な事だろう。そうなってしまえば、向こうには自分を追跡する術等ないのだから。

(…タイミングを合わせて…。失敗したら厄介な事になるしな…。)

そう考えていた時、ドラグサイクルのハンドルを握りながらリニアに視線を向けていたドラゴンナイトの視線が驚愕に染まる。

「あれは、ディスパイダー!? …でも、前にレンさんが戦った奴とは色が違う…。…亜種って所か?」

色こそ違うがある意味思い出深い(主に『折れたぁー!?』とか)、見覚えのある巨大な蜘蛛型モンスター…蒼い『ディスパイダー』がリニアの先頭車両に飛びつき、リニアを脱線させていたのだ。

「久しぶりの大物か!? 迷っている暇はないか…急がないと被害は大きくなる。」

舌打ちをしつつ、モンスターが出現している以上は迷っている暇はないと判断し、ドラグサイクルを走らせ、ドラゴンナイトは脱線したリニアへと向かう。



 

 

 

 

 


その日、機動六課の戦闘メンバーはリニアに積まれているロストロギア『レリック』の回収の任務に当っていた。

ガジェットと名付けられた戦闘機械と戦いながらも無事リニアに乗り込む事が出来、そのまま行けば無事回収できるはずだった。

「やあ、可愛らしいお嬢さん方、私に何か用かな?」

レリックの入ったケースを片手にアビスセイバーの一本を開いた腕に持ちながらサメをイメージさせる水色の仮面と鎧を身に纏った男…ゼイビアックスの変身したライダー、『仮面ライダーアビス』は自分と対峙する二人の少女…『スバル・ナカジマ』と『ティアナ・ランスター』に対して穏やかな口調でそう告げる。
口調こそ確かに穏やかだが、纏っている空気はそんな態度とは正反対の物を感じさせる。

「そ、それを此方へ渡してください! それは…。」

「危険な物なんだろう? そんな事は分かっているさ。しかし、困った事に私にはどうしても、これが必要でね。申し訳ないが君達に渡す訳には行かないのだよ。」

そう言ってアビスが何かの合図をすると、リニアを震動が襲う。

「きゃあ!」

「な、なに!?」

「なに、代わりと言っては何だが、私からのプレゼントと言った所だよ。それでは、ごきげんよう。」

そう言ってアビスは近くの鏡面に飛び込んでいく。

ティアナは慌ててアビスの消えた鏡面に触れてみるが、当然ながらアビスのようにその中に入れるわけも無い。

「どうなってるのよ?」

「ティ、ティア。」

『ゲェ。』

ディアナがスバルの言葉に振り向くと、二人の居る車両よりも後部に位置する車両からイモリをイメージさせる赤いモンスター、レッドミニオン達が二人の居る車両に姿を現す。

「この化け物って…刑務所を襲ったあの仮面の男が連れていた奴等…。くっ! この化け物!」

そう叫びながらティアナは自身の拳銃型のデバイス『クロスミラージュ』から魔力弾を放つが、

「ゲェ!?」

直撃したレッドミニオンの一体が吹き飛ばされ、後に居た仲間を巻き込んで倒れるが、当った場所を撫でながら立ち上がり、何事も無かったかのように立ち上がる。

「なっ!?」

「だったら、これは如何だ!?」

「ゲェッ!?」

スバルが近づき頭をぶん殴ると、先ほどと同じ様に仲間を巻き込んで後に倒れる。今度は下敷きにした仲間達から『重いから、早く退け』と言う様な仕草でどかそうとしているが、なかなか動く様子はない。だが、そんなレッドミニオン達を避けて別のレッドミニオン達が前に出る。

……………なお、数体のレッドミニオンは上に載っている仲間を退かして、下敷きにされた仲間を助けていたりもしている。

「全然効いてないよ〜。」

「こんな所じゃ、追い詰められるだけ…逃げるわよ!」

「う、うん!」

ティアナの言葉に従ってリニアの外に飛び出した瞬間、

『シャー…。』

「「え?」」

ディスパイダーの吐く糸に捕獲されてしまう。

「くっ、アクセルシューター!」

上空から白い魔導士『高町 なのは』が二人を助けようとディスパイダーへと魔法を放つが、ディスパイダーは巨大な前方に有る足の内二本を振るいそれを防ぐが、何度かの直撃にディスパイダーの前足の一つが吹き飛ぶ。

「やった!」

「さすが、なのはさん!」

初めてモンスターにダメージを与えられた事に喜ぶが、ディスパイダー自身は怒りを覚えたように、機械的になりながらも人型になった蜘蛛と呼べる上半身がなのはを睨み付けると二人を捕獲したように粘着性の糸を放つ。

「なのさん!」

「きゃあ!」

何回かは避ける彼女だったが、避け切れなかった糸が腕に絡みつき、続いて他の糸が絡めとる。

「ひっ!」

捕獲した彼女を連れ去ろうとするレッドミニオン達にさえ『邪魔をするな』と言わんばかりの様子で攻撃を仕掛け、引きずり寄せる。

ディスパイダーに浮かんでいる意識は『怒り』…ゼイビアックス製のライダーと契約した上級のモンスターと比べて圧倒的に下級に位置する能力のモンスターだが…否、だからこそ、ライダーでもない人間に傷つけられた事に屈辱を感じているのだろう。

『…こいつは、生かしては置かない…殺す』と言う憎悪の感情。

「なのは! なのはを…放せ!!!」

フェイト・T・ハラウオン』がディスパイダーへと切りかかるが、ディスパイダーは残った前足を振るい彼女を迎撃する。それと同時にその前足も折れる。

『シャー!!!』

再び浮かぶ感情『憎悪』…迎撃した彼女に粘着性の糸を吐き、そのまま地面へと貼り付けにする。

「(まさか…このまま私を食べ…。)…やだ! やだ!」

『最初はこいつだ』とでもいう様な態度でディスパイダーは糸で捕獲したなのはを引きずり寄せる。なのはは思わず恐怖で眼を閉じる。

「なのはさん! フェイトさん!」

「やだ! 放しなさいよ!」

糸で捕獲されたままレッドミニオン達に捕獲されるスバルとティアナの二人。


このままなのはとフェイトの二人は己の体を傷つけられた事に怒るディスパイダーに食い殺され、スバルとティアナの二人はゼイビアックスの元へと連れ去られる事となる。

 

 

ドガァアア!!!

 

 

はずは無かった。

スバル達を捕獲していたレッドミニオン達をドラグサイクルが跳ね飛ばす。

ドラゴンナイトは無言のままカードデッキから二枚のカードを抜き出し、それをドラグバイザーへと差し込む。




『SWORD VENT』『ATTACK VENT』




「はぁ!」

電子音が響き渡ると上空から舞い降りるドラグセイバーを手に取り、ドラグサイクルから降りて、レッドミニオン達へと切りかかる。

『ガァァァァァァァア!!!』

それと同時に現れた赤い龍、ドラゴンナイトのアドベントビースト、ドラグレッダーが咆哮を上げながら打ち出す火炎弾でディスパイダーを吹き飛ばす。

「「きゃあ!」」

そして、ディスパイダーに近づくとなのはを引き寄せていた糸を尾を使って切り裂くと、そのまま周囲にいるレッドミニオン達へと火炎弾を放つ。

「龍を召喚した?」

「って、ちょっと、今のって、なのはさん達も危なかったじゃないのよ!」

「…ちゃんと、ドラグレッダーには当てないように言って置いたぞ…。」

ティアナの抗議の声にドラゴンナイトはレッドミニオン達を蹴り飛ばし、殴り飛ばし、切り裂きながらそう答える。

「そう言う問題じゃないでしょう!?」

「あれ?」

「どうしたのよ?」

「…うん…あの化け物達が居なくなってる…。」

スバルの言葉が示すとおり、レッドミニオン達はドラゴンナイトやドラグレッダーの攻撃によって受けたダメージで消滅していた。

「さて…と。そう言えば…その姿の時は散々だったよな…いい機会だ…あの時からどれだけ成長できたか、試させて貰うぜ!!!」

レッドミニオン達を片付けるとドラゴンナイトはディスパイダーに向かって走っていく。

『シャー!!!』

慌てて逃げようとするディスパイダーだが、逃げ道となる方向には既にドラグレッダーが回り込んでいた。

『ガァァァァァァァァァ!!!』

「はあ!!!」

ディスパイダーの足元に近づき、残された足を一本ずつ切り裂いていく。…しかも、バランスを崩して倒れる様に。

右の足を切り裂かれた事で右に倒れた隙を逃さずドラグレッダーが残された左側の足を切り裂く。



『STRIKE VENT』



素早くディスパイダーから距離を取り、ドラグレッダーの頭部を模した手甲・ドラグクローを装着し、パンチモーションと共に出現したドラグレッダーと手甲から炎を放つ。

必死に逃れようとするディスパイダーだが、身動きを取れない状態でドラゴンナイトの必殺技の一つ『ドラグクロー・ファイヤー』によって、爆散。

そのまま人型の上半身部分に二本の足を持った下半身が出来た『ディスパイダーリボーン』となり、大地を転がりながら倒れる。



『FINAL VENT』



ドラグレッダーがドラゴンナイトの背後で円を書く様に動き、同時にドラゴンナイトも中国拳法の様な体勢を取り、空中へとジャンプし、それを追いかける様にドラグレッダーも飛ぶ、

「ハァァァァァァァァアア!」

空中に舞い上がったドラゴンナイトは空中で一回転の動作、そして、ドラグレッダーがドラゴンナイトの周囲を廻る。

「ハァァァァァァァァ!!!」

そして、ドラグレッダーが炎を放つと同時にドラゴンナイトは飛び蹴りを放つ、炎を纏ったドラゴンナイトが一直線に飛び蹴りの体制でディスパイダーへと向う。

「ドラゴンライダーキック!!!」

ドラゴンライダーキックによって吹き飛ばされたディスパイダーから光の玉が現れ、ドラグレッダーはそれを捕食する。

「ふう…。」

軽く息を吐きながらドラグレッダーが鏡の中に帰っていくと、自分もここから立ち去ろうとドラグサイクルへと向かおうとした時、

「…どう言うつもりだ…?」

自分にデバイスを向けているなのはとフェイトの二人を視線の中に捕らえながらそう呟く。

「助けて頂いた事は感謝します。でも、ちょっと待ってもらえますか?」

「あの怪物の事とか、知っているなら話を聞かせてもらいたいんです。」

それに舌打ちしながらどうすべきかと思っていると、ドラゴンナイトの体を光の輪が捕獲する。

「…これが感謝している人間のする事か…?」

「すみません。でも、一緒に来てもらいたいんです。」

「(…見捨てとけば良かったな…こいつら…。)分かった…付いていってやるからこれを外せ。」

溜息を付きながらそう答えるドラゴンナイトだった。


こうして、統夜にとってはひどく不本意ながら、管理局に関わる事となったのだった。

ドラゴンナイト『辰輝 統夜』の物語は機動六課へと移って行く。

 

 

 

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