第三話『仮面ライダードラゴンナイト』
妙に空気が重い…。それの原因は完全武装…とは言わないがドラゴンナイトの姿でヘリの中で不機嫌オーラを纏っている統夜だろう。
さて、そんな妙に重い空気の中で、なのは達に案内されて『機動六課』の隊長室にドラゴンナイトは居た。
「私は機動六課部隊長の『八神 はやて』と申します。先ほどは隊員達を救ってもらってありがとうございます」
部隊長と名乗るショートカットの女性はそう言ってドラゴンナイトに頭を下げる。
「機動六課スターズ分隊隊長の高町なのはです。先ほどは危ない所をありがとうございました」
「同じくライトニング分隊のフェイト・T・ハラオウンです。先ほどはありがとうございました」
そう言ってここに連れてきた二人の女性、なのはとフェイトの二人も頭を下げる。
「貴方の出身世界と名前を教えて貰えませんか?」
「………………『仮面ライダードラゴンナイト』だ。出身世界…と言う概念は良く分からないが、一応、地球と言う事になるな」
妙にレンを意識した口調でそう名乗る。後者は嘘ではないし、前者にしても100%嘘ではない。ドラゴンナイトは“この姿”の名前であるのだから。
「ドラゴンナイトさんって言うんか、変わった名前やな…ってどう考えても偽名やないかい!」
「って、偽名とは失礼な、“この姿”の時はそう名乗ってるだけだ!」
ドラゴンナイトの言葉にはやてと名乗った女性から切れのいいツッコミが飛んでくると思わずそう反してしまう。そして、軽く息を吐くと、ドラゴンナイトの体が赤い光に包まれ、ドラゴンナイトへの変身を解除する。
その光景に驚いて身構える、その場に居る三人の女性達を他所に、変身を解いた統夜は会話の主導権を自分の方に持ってくる切欠になったかと思い笑みを浮かべながら、ドラゴンナイトのカードデッキを持ち、
「改めて、オレは辰輝「「「統夜くん!?」」」…へ?」
自分の名を名乗ろうとした統夜は突然自分の名前を
「……お前達…どうしてオレの名前を知っている…?」
警戒を露にしながらドラゴンナイトのカードデッキを構えながら周囲を見廻す。鏡の向こうに逃げれそうな場所は人間の生活空間の中になら幾らでも存在しているのだ。
「ま、待って、ほら、私達、小学校三年生の時、聖祥大附属小学校で同じクラスだった」
「え?」
そう言われて考え込んでしまうが…はっきり言って思い出せない。…そもそも、日本ではそれほど親しくしていた相手など居なかったはずだし。
「………悪いが覚えてないな………。確かに、それくらいまでは日本に居たけど、こっちは転校先のアメリカでの生活の方が長くて刺激的だったんだ」
「えー、そんな」
「それは酷いよ、統夜くん、私達はちゃんと覚えてたのに!!!」
「せやで、こんな美少女三人の事を忘れるなんて、酷いで!!!」
「って、自分で美少女言うな! 大体、オレと同級生なら、もう19だろ…少女と……スミマセン、少女デス」
思わずそう言いそうになった時、目の前の三人からゼイビアックスも真っ青な殺気を感じ取り片言でそう言うしかなかった。
「それは良いとして…あの怪物や統夜くんの召喚した龍は何者なんや?」
「…さあな…訳の分からない化け物でいいんじゃないか?」
下手に相手に情報を渡しても良い物かと考え、はやての問いに統夜はそう惚ける。
「じゃあ、質問を変えようか?」
そう言ってモニターに刑務所を襲ったアビス達の映像を見せる。
「っ!? アビス…ゼイビアックスか?」
その表情に驚愕を貼り付け、思わず呟いてしまう。
「ふーん、やっぱり、この統夜くんが変身していたのと同じ姿をした人の事を知ってるんやな。出来れば、魔法が効かない理由も教えて欲しいんやけど」
はやては悪戯が成功した子供のようにニヤニヤと統夜を楽しそうに眺めている。
「あー…。…そっちが信じられるかどうかは別にして、これから話す事は“全部”真実だ」
そう溜息を付きつつ、主にモンスターとゼイビアックスについて話し始める。
エイリアン等と言われても直には信じられないだろうが、そもそも異世界とか魔法等と言う物を扱っているのだから、その辺は問題ないだろう。
先ずはモニターに写るレッドミニオンを指差し。
「先ず最初に言って置く。魔法が効かない理由については分からない。このモンスター達は地球侵略を企む悪のエイリアンの手先だった」
そう教えた後、物凄い音が聞こえ、はやて達の方を見てみると…何故かはやてが机に突っ伏していた。
「って、どう考えても、嘘やないかい!」
「あー…信じられないかもしれないが、これは嘘じゃない。何処から話すべきか迷うけど、話しておこう、ゼイビアックスとオレ達仮面ライダーの戦いを…」
そう言って一息入れると、
「全ての始まりは一年前…カリフォルニアのhigh
schoolの学生だったオレが聞いた、妙な声…後で知った事だけど行方不明になった父さんの声に導かれて、このカードデッキとアドベントビースト、ドラグレッダーと契約した事に始まる」
そう、全ては一年前に始まった統夜の戦い。ゼイビアックスとの戦いは既にそれよりも前に始まっていたのだが、自分にとってはそれが始まりである。
それから語られる事は、父の声に導かれてカードデッキを手にした後、異世界『ベンタラ』の戦士、『仮面ライダーウイングナイト』・レンとの出会いと、ドラグレッダーとの契約。ベンタラを侵略したゼイビアックス将軍が次は地球侵略を狙っている事、それをベンタラの事を省いて話す。
奪われた他のライダーのカードデッキを地球人に渡し、様々な手段で騙し、ウイングナイトであるレンを倒そうとしていた事。
『インサイダー』、『トルク』、『トラスト』を初めとするゼイビアックスに利用され、統夜とレンの二人と戦った敵の仮面ライダー達。
その中にも仲間になってくれた者達も居た。
そして、騙されながらも説得に応じ共闘する事となりながらも、ゼイビアックスの忠実なる僕、敵のライダー『ストライク』のファイナルベントからウイングナイトを庇いベントされたスティング。
「…まあ、これから先にも色々と有って、本来の所持者達が復活した事で全員が揃ったオレ達仮面ライダーは見事ゼイビアックスを倒し、地球の平和を守ったのでした。と言うのが、オレ達の戦い……だったはずだ」
そう言いながら、統夜は次はアビスを指差す。
「ところが、倒したはずのゼイビアックスはこうして、生きていたと言う訳だ。オレ達のシステムをコピーして生み出した未知の仮面ライダー『アビス』として」
「それじゃあ、あの仮面の「アビスだ」アビスの正体は、そのゼイビアックスって言う統夜くん達が戦ったエイリアンになるの?」
「ああ。素顔は確認してないけど、あの声と話し方は間違いなく、ゼイビアックスだ」
フェイトの問いに画面の中に写るアビスを睨みつけながら、統夜はそう答える。
「でも、そのゼイビアックスってどうして犯罪者を脱獄させているのかな?」
続けて告げられるのはなのはの問い。…ゼイビアックスの一連の行動を見て、自分達のカードデッキのコピーを作り上げた事を考えれば…この世界に来る前に聞いた言葉が真実だとするならば。
「簡単な話だ。そもそも、一年前にオレも別の意味で疑問に思った話だ。カードデッキを渡された人間は詐欺師やハッカーは居たけど、その中には仲間になってくれた良い奴もいた」
思い出すのは、地球の『仮面ライダースティング』だった男、『クリス・ラミレス』の事。
「…態々面倒な事をしなくても、刑務所の犯罪者にカードデッキを渡せば、お手軽に作れるだろう…悪のライダー軍団が」
そう、態々刑務所を襲撃したのには、ライダーが魔導師相手に何処まで戦えるかと言うテストや、ミッドチルダの人間のDNAサンプルの入手で有ると同時に悪のライダー軍団の構成員の選別。
「そ、そんな…いくら犯罪者でもそんな相手に協力するはずなんて「そうかもしれないけどな。少なくても、オレは一人そのエイリアンに忠誠を誓っていた奴を知っているぞ」そんな…」
フェイトの言葉を遮るように告げられるのは、『仮面ライダーストライク』こと『JTC』の事。戦う理由…どんな目的でゼイビアックスに忠誠を誓っていたのかはベントされるまで疑問だった男だ。
「兎も角だ。奴等は鏡の中のもう一つの世界を拠点にしていて、カードデッキを持たない者以外はモンスターかライダーに連れられない限りは行く事ができない。気にし過ぎも良くないけど、鏡面の前に立つ時は十分注意した方がいい」
統夜のその言葉に身構えてしまう三人だが、特にフェイトは慌てて飛び出そうとまでしている。
「ああ、今は大丈夫だぞ。ドラグレッダーにこの建物を警備して貰っているから、レッドミニオン程度の雑兵じゃ、数が多くない限りは安全だし、他のモンスターや敵のライダーが来た場合は、最悪はオレを呼ぶだろう」
正しくはドラグレッダーだけでなく、ドラグブラッカーも警備に参加しているのだが、それは全面的に伏せている。
先ほどの戦いの話でスティングが倒れるまでしか話さなかったのは、先代のドラゴンナイトのアダムの事を話さない為であり、オニキスのデッキとドラグブラッカーの事をなのは達に伏せて置くためでもある。
さて、そんな統夜の言葉に見るからに安心した様にホッとしている三人を視界の中に捕らえつつ。
「で、ここからは管理局員とやらとしてのお前達に聞きたい」
「え、統夜くん、時空管理局の事知ってるの?」
「当たり前だろ、何日前にこっちに来たと思ってる? オレはゼイビアックスと一緒にこっちに来たんだ。…こっちの世界に来てから色々と調べたんだ。流石に右も左も分からない現状だと、金と情報は重要だろ? そんな事より、オレの扱いはどうなるんだ?」
表情に真剣な物を浮かべながら、統夜はそう問い掛ける。
「辰輝統夜さん、私達は管理局員として貴方を保護しなければいけません」
「…分かった。だけど、オレは直に保護される訳には行かない」
真剣な顔で話し始めるはやての言葉にそう答える。向こうの事情も理解しているし、それは当然の行動なのだろうが…
「管理局は人手不足や。まして、こっちからは手出し出来ん場所から人を誘拐するような相手には対抗できへん」
「それで…?」
「次元漂流者として保護して、その後のことは本局の人達と話し合ってどうするか決める事になると思うんだ。」
「だけど、それだと、ゼイビアックスの好き放題にされる…。この世界の人々は何時何処から襲い掛かってくる怪物達と悪のライダー達に怯えて暮らすか、何も知らず、ゼイビアックスに誘拐されるかの二択だ」
「うん。統夜君は奴等と戦う力を持ってる。だから…」
ふと、フェイトと視線が合う。
「管理局に入るか、カードデッキを渡すか、か?」
「せや、それが地球の技術で作られた物なら、詳しく解析させてもらえれば、管理局でも作れるはずや。そうすれば、管理局もゼイビアックスと戦えるはずや」
今まではやて達に見せる様に持っていたカードデッキを握り、ポケットの中に仕舞う。ベンタラの事を伏せていたが、同時にカードデッキの開発者についても暈して話していた。カードデッキの開発者である『アドベント・マスター』、エイリアンの科学者『ユーブロン』については一言も。
「断る。これはオレは借りているだけだ。そんな物を勝手に貸す訳には行かないし、しかも、何時返って来るかも分からない」
カードデッキを持ったまま強制送還された所で、DNA情報を登録されている為に奪われた所で、統夜とアダム以外はドラゴンナイトには変身できないから心配は無いだろう。
第一、自分は現在カードデッキを所有している人間の中で唯一の地球人であり、元々ベンタラを守る力であるカードデッキは言ってみれば、ベンタラやユーブロンに借りていると言う感覚なのだ。そんな物を簡単に貸せる訳が無い。
第一、
「管理局に入ったら自由にゼイビアックスの動きに事由に対応できないだろう。一々上司にでも、伺いを立ててから退治しに行くのか?」
相手が出現してから直に動いても助けられない例は多かったのだから、自由に動けなくなっては被害は倍増する可能性も大だろう。
「それに、オレは管理局と言う物を信用等していない。そんな相手にカードデッキを渡すわけには行かない。第一、ゼイビアックスと戦った後はどうする? 流石に折角手に入れたこんな力を捨てるなんて事は出来ないだろう? 今度は人にでも向けるのか?」
挑発の意を込めた嘲笑を浮かべながら、そう問う。
もっとも、ゼイビアックスは兎も角、管理局にエイリアンのテクノロジーで作られたカードデッキの
「そ、そんな事、私達はしないよ!」
「『私達』ね。管理局全体だと、どうかな? まあ、それがそっちの判断だって言うなら、オレは逃げさせて貰う」
「「「え!?」」」
そう言って統夜が近くにある鏡面へと触れた瞬間、なのは達は驚愕の声を上げる。彼の言葉が正しいと証明しているように統夜の腕は深い水面に触れた様に鏡面の中に飲み込まれていた。
後は完全に飛び込んでしまい、鏡の中でドラゴンナイトに変身すれば鼻歌交じりに歩いていても逃げられる。
「ま、待て!」
「じゃ、じゃあ、私達を助けてくれへんか? 民間協力者として。」
「言った筈だろう、オレは管理局を「管理局は信用してないとは言ってたけど、私達を信用してないとは言ってへんやろ?」…。…………」
「だから、私達に力を貸して欲しいんや」
そう言って頭を下げるはやてを一瞥しながら統夜は、
「(…逃げようと思えばいつでも逃げられるし…。ここに居た方がゼイビアックスの情報も集まり易いか。第一、もう廃墟で毎日ファーストフードと言う食生活からも、抜けられる。)そうだな。管理局は信用できなくても、そっちは信用できそうだからな」
なのは達は統夜のその言葉に明るい表情を浮かべる。
「ただし、優先するのは飽く迄ゼイビアックスとその配下のライダー、モンスターと言った奴等への対応だ。それ以外でも協力できる限りは協力するけどな」
「ありがとうな、統夜くん。私達機動六課は統夜くんを歓迎します」
「ああ。」
そう答え、統夜ははやてから差し出された手を握り返す。多少彼の考えの中に打算は入ってはいるが…。
「あー…ところで、統夜くん、もう一つ聞いてええ?」
「あ、ああ;;;」
妙に黒い笑顔を浮かべながらはやては統夜へとそう問い掛ける。何故か心の中で危険と警鐘を鳴らしていた。
「実は丁度ゼイビアックスが関係してると思われる行方不明事件の後から、素行の悪い局員が何者かに襲われて金銭を取られてるちゅう事件が多発しとるんや」
「へ、へー…」
滝の様に冷汗を流しながら思わず眼を逸らしてしまう
「何か知っとるやろ、統夜くん?」
「…スミマセン…
プレッシャーに負けて自白した統夜くんでした。
さて、その後、それについての事情聴取が終わった後、なのはとフェイトの二人は仕事が有るとの事で部屋を出て行く事となる。統夜は手続きが必要な書類が有るとの事で残る事になったのだが、
「あ、あの…統夜くん…私達の事、本当に忘れてたの?」
部屋を出て行く時、フェイトにそう呼び止められる。
「ん? ああ、まあ色々と有り過ぎてな。特に父さんが行方不明になった後は色々と有ったしな。それに、十年も前の事なんてそうそう覚えて無いだろ?」
「…そう…なんだ…」
そう言ってフェイトは立ち去っていく。統夜にはその声は何処か悲しげに聞こえた。