第六話『悲しみの真相と模擬戦の開幕』

 

「この辺だよな…。」

ドラゴンナイトへの変身を解いた統夜はフェイトを抱き抱えながら、最初に飛び込んだ場所に戻って来ていた。

「まったく、下手な所から戻ると変な所に出る所までベンタラに似てるよな。」

以前にはベンタラから元の世界に戻った瞬間、適当な所から戻った時には壁にぶつかると言う間抜けなオチまで付いた事も有ったりする。

流石にこんな状態のフェイトを抱えたまま機動六課の建物の外に出るのは避けたいと思いながら、近場の鏡面へと視線を向ける。その鏡面に映し出される光景は間違いなく、機動六課の建物の中の景色が見える。

「あまり、人目に付かない方が良いかな?」

早めに戻りたい所だが、鏡面から出てくる所を誰かに見られて、下手に説明して時間を取られたくは無い。抱えていたフェイトへと視線を落としながら、そう呟く。ベンタラと言った部分は聞かれていない様だ。

あのライダー自体にフェイトを殺す意思はなく、いたぶっていた為に助ける事が間に合ったのだから、その点では幸運と言っていいだろう。

「ん…。…あっ…統夜くん!」

「ん? 目を覚ましたのか、フェイト。」

「う、うん。また、助けてくれて、ありがとう」

「ああ、気にするな。オレも雑魚レッドミニオン相手に足止めされてなきゃ、もっと早く助けられた。」

今まで意識を失っていたフェイトが目を覚まして顔を赤くして統夜の名前を呼ぶと、統夜もそんな彼女に視線を落としながら、安堵した表情を浮かべる。

「あの…青い蟹みたいな仮面の人は。」

「あの青蟹インサイザーモドキはオレがベントした。幸いにも、向こうのデッキにもベントの機能が有ったみたいだな。」

「ベント?」

聞きなれない言葉をフェイトが聞き返す。つい自然と『ベント』と言うライダー達の専門用語が出てしまったのだ。統夜は『しまった』と言う表情を浮かべ、溜息を付くと、『ベント』と言う現象について説明する。

「ベントって言うのはオレ達仮面ライダーにある一種の“最終安全装置”だ。致死量のダメージを受けた場合、ライダーの変身者の安全を確保する為に“アドベント空間”と言う手出しできない第三の別の空間に転送される。」

最後に小声で『だから、比較的安全に殺し合いが出来る』と付け加えておく。もっとも、殺し合いに安全も何もないのだが。

だが、統夜としてはアドベント空間から救出する方法の無かった頃は、ベントも死と大して変わらない事実として捉えていた頃に比べれば相手をベントする事に躊躇が無くなったと思ってしまう。

…無事救出する方法があると知ってからは、はっきり言って『我ながら考え方変わったな』等とも考えてしまっている程である。

そしてもう一つ、ゼイビアックスに利用されている、彼曰く『悪のライダー軍団』の構成員達には精々アドベント空間の中で御主人様ゼイビアックスに出して貰うまで反省してもらおう等と物凄く過激な事を考えていたりもする。

「まあ、分かり易く言えば…変身して居る時は簡単には死なないとでも思ってくれればいい。」

どう考えても、ぶっちゃけ過ぎだろう。幾らなんでも場合によっては死ぬし、流石に殺傷設定で白い魔王の全力全壊な砲撃を食らえばベントされる前に死ぬだろう。

「それじゃあ、あの青い仮面の人は何時戻ってこられるの?」

「…そりゃ、ゼイビアックスの都合だろうな…。まあ、アドベント空間からの救出手段を持っているのもこっちじゃ奴だけだろうし。カードデッキも回収してたしな。」

「そう…なんだ。」

それは完全に予想だがゼイビアックスの行動から考えて、アドベント空間からの何らかの救助手段が有るのには間違いないだろう。そう答えた後、フェイトの返事を聞き流しながら出入りできそうな鏡面へと視線を向ける。

「(人気もないし…あの辺が良いか。)無駄話はこの辺にしておいて、さっさと戻るとするか。直に医務室に連れて行ってやるから、もう少し我慢してくれ。」

「う、うん。」

「あー…それと…後で良いから、教えてもらえるか?」

他にももう一つだけ教えておく必要が有るのだが、先ずはこれから聞くべきだろうと判断したのだ。

「え? なにを。」

「…高町から聞いた…オレが何かしたなら謝るから言ってくれ…。…オレに有ってから泣いてたそうだけど、十年前のオレが何かしたのか?」

「え? ち、違うよ!」

統夜の言葉をフェイトは慌てて否定する。そう、彼女が伝えたい事は、

「? まあ、あとで教えて貰えれば良い。」

そう言って鏡面を潜って機動六課の建物の中に戻ろうとした時だった。

「あ、あの、私。」

フェイトから告げられる、“想い”は、

「統夜くんの事が好き!」

十年前に告げられずに終わった、想い。

「…Why…?」

思わず六課の建物の中に戻った時、そう言ってフリーズしてしまう統夜だった。

 

 

 






さて、暫くフリーズしていた統夜だったが、再起動したのは、統夜を探していたなのはとばったりと会った時だった。

「にゃぁぁぁぁぁ!!! 何が有ったの、フェイトちゃん、統夜くん!?」

「あー…後で話すから、フェイトを医務室に連れて行ってくれ…。」

その際の会話より抜粋。



 

 

 






医務室

「えーと、シャマル先生でしたっけ…フェイトは大丈夫ですか?」

「大丈夫よ、傷は多いみたいだけど、深い物は無いし痕も残らないわ。でも、念のため、今日一日は安静にしていてね。」

この医務室の主(何故かこの言葉が想像された)『湖の騎士シャマル』からの返事に表情にこそ出していないが微かに安堵を浮かべる。

「良かった〜。でも、フェイトちゃんが手も足も出なかったなんて…。」

「せやな。それに、ゼイビアックスの手下がこんな所にまで入り込むんやなんて、統夜くん、何か対策とかはないん? 何か有るんやったら、教えて欲しいんやけど。」

シャマルの診断に心から安心すると言う様子のなのはと、自分達の本拠地の中にまでゼイビアックスの手下が入り込んでいると言う危険に対する対策を考えるはやて。

「対策って訳じゃないけど…フェイトなら、敵のモンスターの動きや、向こうでの戦いを見る事が出来ると思うぞ。」

「「「「え?」」」」

統夜の意外過ぎる言葉にその場に居た全員が声を揃えて言った。

「で、でも、私、今まで何も見えなかったのに!?」

「そ、そうだよ、何でフェイトちゃんだけ。」

「ああ、検査が終わってから教えておこうと思ったけど…なあ。」

そう言った後窓まで歩くと統夜はそれを指先で二、三回程つつき。

「モンスターは直接接触した人間にしか見えない。そう言った意味じゃ、あの時、あの蜘蛛に襲われた高町やナカジマ達にも見えるはずなんだけどな…。」

フェイトはシェルクラブに攫われた時にその存在には気づいていない様だった。それから考えると、

「まあ、鏡の中に居るモンスターが見える様になった知り合いには、向こうまで連れ去られた人しか居ないからな…比較対象が少なすぎるけど…。」

その身近な比較対象は、以前のゼイビアックスとの戦いの協力者のジャーナリスト『マヤ・ヤング』…彼女はモンスターに襲われた事でベンタラの存在を認識できるようになった訳だが、ベンタラに連れ去られても居た。

そして、医務室の中に適当な鏡面を見つけると、それを指差し、

「鏡の中に何か見えるか? 部屋の風景や自分達の鏡像以外に。」

「なにも見えないけど。」

「何も見えへん。」

「それって…統夜くんの龍?」

統夜の問いに同じ答えを返すなのはとはやての二人に対して、フェイトだけには鏡を通して向こう側に居る彼のアドベントビースト、ドラグレッダーの姿が見えている様だ。

「はい、フェイトだけ正解。まあ、モンスターを見つけたら、逃げてオレに教えてくれ…。」

「う、うん。」

統夜の言葉に頷きながら答えるフェイト。

「ふーん。」

何故かニヤニヤと笑っているはやて。

「なんだよ、八神?」

「いや〜、なんか、フェイトちゃんだけ名前で呼んでいるのは何でかなって思ってなぁ〜。」

ニヤニヤと笑いながらそう聞いてくるはやて。何故か狸の耳と尻尾が生えている様に見えて、『チビ狸』と言うフレーズが浮かんで来る。

「……………………………………。頼まれたからそう呼んでるだけだ。」

思わず先ほどの告白を思い出して顔を赤くしながら、統夜は目を逸らしつつそう答える。…別に嘘など言ってないのだが。

「ふ〜ん、うちらが頼んでも、呼んでくれへんのに、フェイトちゃんが頼んだら、呼んでくれとるちゅうわけか〜。」

「…お前達も、名前で呼んで欲しいなら、呼んでやるぞ…。それより、なにかオレに用なんじゃないのか?」

「うん、統夜くんの模擬戦の相手が決まったから探してたんだけど、大丈夫なの?」

シェルクラブとの一戦とその前のレッドミニオン退治で、すでに統夜は一戦している訳なのだが。

「ああ、問題ない。少し疲れてる程度だ。」

「うん、それじゃあ、付いてきてくれるかな、案内するから。」

「ああ。じゃあな、フェイト。……返事は直には無理だけど、必ずする。」

「う、うん。」

統夜の言葉に顔を赤くするフェイトにそう言ってなのはに案内され、統夜は医務室を出て行った。

フェイトからの告白…それが嫌なわけが無い。だが、宿敵ゼイビアックスから告げられた呪いの様な言葉が統夜の心に、深く突き刺さる。



『いやいや、先代と同じDNA情報を持っているだけの事はある、君も裏切るのだね、ベンタラの仲間ライダー達を。』
『君は何れ彼女達に味方し…他のライダー達を“裏切る”。』




フェイトの想いを受け入れる事はベンタラの仲間ライダー達を裏切る切欠になってしまうのでは? そう考えると悩むしかない。受け入れてはいけないのではと思い悩む。




 

 

 

 





海に浮かぶ廃墟…なのは監修の空間シミュレーターに佇みながら統夜は、ピンク色の髪をポニーテイルにした炎をイメージさせる様な甲冑姿の美人の女性、『烈火の将シグナム』と対峙していた。

統夜は、悩みはあるが、今は目の前の相手にのみ心を向けようと決める。

「えーと、シグナムさんでしたっけ? なんで、そんなにも楽しそうなんでしょうか?」

「ふふ…実はリニアの映像を見てから、お前とは一度戦ってみたかったんだ。」

楽しそうに笑いながらそう答えるシグナム。

「悪いが、全力で行かせて貰うぞ。」

「まあ、美人からのお誘いなら喜んで受けさせて貰いますよ。」

彼女のようなタイプを相手に戦う前に下手な迷いを持ち込む事は失礼に当ると思い、心の中に有る迷いを切り捨て、シグナムから放たれる殺気を涼しい顔で受け流しながらカードデッキを取り出す。

そもそも殺気と言っても、彼女の向けてくる殺気はかつてのゼイビアックスの側近、JTCが変身した地球の『仮面ライダーストライク』が向けてくる“狂気”と共にぶつけられる殺気に比べれば、余程心地よい代物である。

「な!? 美人だなどと、わ、私のような…。」

「いや、十分すぎるほど、美人だと思うけどな、オレは。それじゃ、行くとしますか。KAMEN RIDER!」

その言葉に顔を真っ赤にしながら反応するシグナムに苦笑を浮かべながら、統夜はドラゴンナイトへと変身する。

そして、ドラゴンナイトがドラグバイザーにソードベントのカードを装填し、ドラグセイバーを召喚する事で臨戦態勢が整うと、互いに武器を構え、

「行くぞ、異界の騎士。」

「ああ。受けてたとう、この世界の騎士。…でいいのかな、この場合?」

“烈火”“烈火”、奇しくもこの一戦を受けるのは“同じ称号”を持った二人の騎士。

「ヴォルケンリッターが烈火の将シグナム…。」

「二代目仮面ライダードラゴンナイト、辰輝統夜…。」

「「参る!!!」」





重なる叫び、





烈火シグナム烈火ドラゴンナイトの決闘が始まりを告げた。




 

 

 

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