第七話『烈火VS烈火』
「「「うわぁぁあ…カッコいい。」」」
模擬戦の様子を観戦していたエリオとキャロの年少組+スバルは統夜のドラゴンナイトへの変身を見て目を輝かせていた。
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」」
先ずは両者叫び声を上げてのぶつかり合い。ドラゴンナイトのドラグセイバーとシグナムのデバイス『レヴァンティン』がぶつかり合う。
(…くっ…重い…。それに、剣の技術じゃオレの方が不利だな…。)
統夜はその一瞬のぶつかり合いでそう判断する。
そもそも、レイピア型のカードリーダーを主力武器としたウイングナイトやセイレーンと言ったライダーとは違い、ドラゴンナイトは使用頻度こそ高いが剣での戦いが主体と言う訳ではない。
「どうした、その程度か?」
「冗談、これからが本番!」
そう叫び、ドラゴンナイトはドラグセイバーを斜めに構え、シグナムとの鍔迫り合いを止め、横に走る。
(さてと…どうする、何処までライダーの能力を見せるか…?)
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
そんな事を考えながら、此方へと向かってくるシグナムの姿を一瞥し、ベルトに有るデッキから一枚のカードを引き抜き、ドラグバイザーに装填する。
『GUARD VENT』
近くの鏡面から現れたドラグレッダーの腹部を模した盾『ドラグシールド』を両肩に装着した時、シグナムは下段から切り上げる。
「そんな物も呼び出せるのか?」
「そう言う事!」
シグナムの剣を素早くドラグセイバーを持たない手で持ったドラグシールドで受け止めながら、ドラグセイバーを振る。
「ふっ!」
「くっ!」
今度はシグナムがそれを避け、逆に反撃の形でレヴァンティンを振るわれるが、ドラグシールドでそれを防ぐ。
何回かそんな攻防を繰り返した後、ドラゴンナイトはシグナムが距離を取った瞬間を逃さず、彼女へと向けてドラグシールドを投げる。
「はぁ!」
それを切り払った瞬間、ドラグシールドの影から近づいたドラゴンナイトの振るうドラグセイバーが舞う様な流れで切り付けられる。
「なに!?」
「くっ…。おぉぉぉぉぉぉぉぉぉおお!!!」
それに反応して受け止め、レヴァンティンに力を込めてドラゴンナイトを押し返す。片手で振るうドラグセイバーと両腕で持ったレヴァンティン…。ドラグセイバーを弾かれる事で生じる不利を素早く判断すると、地面を蹴り、シグナムの剣を受け流しながら跳び、距離を取る。
(…ドラグレッダーはまだ温存…ガードとソードのカードはもう使ったし、後は三枚…サバイブとファイナルベントは除外して、ストライクベントだけか。)
手持ちのカードと使用可能なストライクベントのカードの破壊力を考えながら、シグナムへと視線を向ける。一応、彼女の甲冑はBJと言う魔力で構成された防護服らしいのだが、それでも流石にモンスターを一撃で倒す事の出来るカードを使うのは戸惑われる。
(どっちにしても、アタックベントとストライクベント…この二枚だけで戦うしかないか…。ファイナルベントは…余程の事が無い限り、ダメだな。)
思わずドラゴンナイトにも他のライダーの様に特殊系のカードを入れて欲しいとも思ったが、考え直す。ドラゴンナイトの能力を考えれば、特殊系のカードは使いこなせなければドラゴンナイトの能力を殺す結果は生んでも、プラスにはならないであろう事は直に理解できる。
(無い物ねだりは止めだ。今ある手札で出来る事を考えるだけだ!)
ドラゴンナイトはそんな事を考えながら、互いに振るう剣を回避しながら反撃を加える。そして、何回かそれを繰り返した後、偶然にも攻撃のタイミングが重なった瞬間、再び鍔迫り合いを行う。
「驚いたな…これで、一年程度の実戦経験とは…面白い。」
「お褒め頂き光栄だね。それと…オレは戦いを楽しいと思った経験は無いな。」
ドラゴンナイト…統夜は過去の戦いを楽しいと思った事は一度も無い。
ゼイビアックスから地球の人々を守る為の戦い、敗北した者には死と変わらないベントと言う未来しか待っていないライダー同士の戦い。とても、それを楽しい等と思った事は無い。そんな殺し合いを心から楽しんでいた狂戦士…JTCの変身した仮面ライダーストライクと出会ってからは特にだ。
「それは残念だ。」
「そうですか!」
鍔迫り合いを行いながら、シグナムの腹を狙って廻し蹴りを放つが、ドラゴンナイトの動きに気が付いた彼女はその場から離脱、回避した。
「せーの!」
そして、シグナムが離れた瞬間を逃さずドラグセイバーを投げ付ける。
「自分から武器を捨てるとは! 『STRIKE VENT』なに!?」
ドラグセイバーを弾いた瞬間、鏡面から召喚されるドラグレッダーの頭を模した手甲・ドラグクロー。
シグナムの懐に飛び込み、右手に装着したドラグクローでパンチを連打する。
「そんな武器まで有るとは。だが、その武器では…。な!?」
ドラグセイバーを捨てそれよりも間合いの短いドラグクローを装備したドラゴンナイトから距離を取ったシグナムの顔に驚愕の色が浮かぶ。
彼女の判断は間違っていると言えた。寧ろドラゴンナイトの武装ではドラグクローが一番射程は広く、破壊力が高いのだから。
ドラゴンナイトが振り被ったドラグクローの龍の口に炎が集まり、
「避けろよ…。はぁ!!!」
パンチアクションと共にドラグクローから炎が撃ち出される。
「なんだと!?」
ドラゴンナイトの放った火炎弾が足元に着弾し煙を巻き上げ互いの視界を奪う。一瞬だけ先ほど投げたドラグセイバーの位置を確認すると、土煙の向こうに居るであろうシグナムへと意識を向けながらドラグセイバーを拾う。そして、ドラゴンナイトがドラグセイバーを回収した瞬間、何かにより土煙が切り裂かれる。
「そんなのも有りか、便利だな、ホント!?」
土煙を切り裂いた蛇腹剣となったレヴァンティンを振るうシグナムを視界に納めながら思わず叫んでしまう。
「ふっ、それはこっちの台詞だ。お前は、武器を呼び出せる上、龍まで召喚できるじゃないか。ふふふ…本当に楽しいぞ。」
再度振るわれる蛇腹剣状のレヴァンティン。ドラゴンナイトは回収したドラグセイバーを盾にしてそれを受け止めるが、盾にしていたドラグセイバーを手放してしまい、そのまま蛇腹剣によってドラゴンナイトの胸部のアーマーが削られる。
少しでもそのダメージを最小限にする為に、後に跳び近くにある廃墟の中に飛び込んでしまう。
「ぐっ!!!」
防御してからの反撃が目的だったのだが、廃墟に飛び込んでしまった瞬間、ドラグクローを手放してしまった為に反撃はダメになった。
(あとは…ドラグレッダーを呼び出すか…ファイナルベントしかないけど…。どうする?)
「そろそろ、決着を付ける! この一撃で!!! レヴァンティン!!!」
残された手札をどう切るか、ドラゴンナイトがそんな事を考えていると、シグナムの叫びと共にレヴァンティンから薬莢が飛び出し、刀身を炎が纏う。
「うわぁ…直撃したらベントされないか…? 大体、大技過ぎないか…それ?」
どう考えても必殺技な一撃を放とうとしているシグナムに対して思わず突っ込みを入れてしまう。
「(…どうする…。手段としてはファイナルベントくらいしか思いつかないけど、危険すぎるから、あまり使いたくない…。だったら、避けるか…いや、今からじゃ間に合わない。……ファイナルベント以上に使いたくないけど……。)仕方ない…。」
結論を付け、カードデッキから切札を抜き出し、ドラゴンナイトは“変わる”。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!! 紫電…。」
『SWORD VENT』
「マグマ…。」
模擬戦の開始と同じ電子音と共に響くのは統夜の声。
「一閃!!!」
「セイバー!!!」
シグナムの放った紫電一閃と、廃墟の中から放たれた炎の十字斬『マグマセイバー』が激突しあい。
「な、なんだと!?」
紫電一閃とマグマセイバー、二つの技のぶつかり合いによって爆発の近くに居たシグナムが吹き飛ばされる。そして、地面に叩きつけられたシグナムの目の前には…“ドラゴンナイトと同じ龍の意匠を持った赤い仮面ライダー”の持つ銃剣らしき武器が突きつけられる。
「オレの勝ちだな。」
「統夜…なのか?」
そう、強化形態である『サバイブ』へと変身した『仮面ライダードラゴンナイト・サバイブモード』のドラグバイザーツバイの変形した剣『ドラグブレード』を突きつけながら統夜はそう宣言する。
「その姿は…一体。」
「…ああ、これは、ドラゴンナイトの強化形態の『サバイブ』だ。流石に大技だと殺傷力が高すぎるんでな。非殺傷設定なんて便利な物はオレには無いし、少し奥の手を切らせて貰った。はぁ…これを出すつもりは無かったのに…。」
サバイブのカードで強化変身するサバイブモードの能力は通常時のドラゴンナイトに比べて能力は格段に上昇する。各カードの能力に至ってもシュートベントによるメテオバレットやソードベントによるマグマセイバー等の大技が使える等、元々高いドラゴンナイトの攻撃力を更に強化された結果となった。
唯一の不安点としては強力すぎる故に完全に使いこなしていないと言う点であるが、そもそも、サバイブモード自体の使用頻度も少ないのだ。
そう言ってドラゴンナイトサバイブはドラグブレードを元の銃に戻すと腰へと収め、ベルトからカードデッキを外し変身を解いて、手を差し出す。
「…あれ、よく考えれば…そうなると、オレの負けか…?」
元々サバイブのカードは使う気は無かったのだが、危険性が高いファイナルベントよりもサバイブモードでのマグマセイバーによる相殺を狙った訳であるが、隠しておく予定だった奥の手を早々に一つ使ってしまった結果である。
「…待て…お前は本気を出していなかったのか?」
統夜の手を掴んで立ち上がりながら、シグナムは統夜へとそう問い掛ける。
「いや、本気は出してたけど…枷は有った上に一対一の戦いにドラグレッダー呼ぶのもどうかと思ったんで最後まで呼ばなかったけどな…。」
「………ふ…ふふふふふ…。」
「あ、あのー…シグナムさん…でしたっけ…どうしたんですか?」
後ずさりしながら、笑い始めるシグナムから距離を取る。が、すぐに『ガシ』ッと音が響くほどの勢いで肩を掴まれる。
「あ、あのー…。」
「辰輝統夜、次は最初からさっきの姿で勝負して貰うぞ!!!」
「いや、強敵相手の強化フォームを最初からって「強敵だと!? 益々戦ってみたくなった。」…や、薮蛇!?」
目を輝かせて笑みを浮かべるシグナムに全力で引き気味の統夜である。思わずJTCに付け狙われていた頃のドリューはこんな気持ちだったのかと思って、今更ながら少しは助けてやっても良かったかな?等とほんの少し思ってしまう。
まあ、もっとも…………今の統夜の方が色んな意味で何百倍もマシで有るだろうが…。
結局、次は最初からサバイブモードでの模擬戦を約束された統夜くんでした。
(…バ、バトルマニアかこの人…。)
そう思わずには居られない統夜だった。
さて、こうして無事模擬戦も終了し、なのは達の元に戻った時、
「ほんま、統夜くん、何者なん?」
「第一声がそれですか、八神部隊長。」
行き成りはやてに言われた言葉に思わずそう答えてしまう。
「…何者かと聞かれたら…ただの一年の死闘の経験がある受験生ですけど。」
「でも、統夜くんの戦い振りを見てたら、たった一年だけの経験なんて思えないよ。」
なのはの言葉に笑みを浮かべ、
「敵は何時何処から出てくるか分からない上、こっちの戦力は最初は僅か二人なのに対して敵のモンスターは大群、しかも、オレ達が負けたら地球人類の危機なんだ。強くなるのに必死にもなるさ。」
そう言って、ドラゴンナイトのデッキを手にしてドラグレッダーと契約した時の頃を思い出す。
師であり戦友であるベンタラの戦士『仮面ライダーウイングナイト』…『レン』に実戦形式で鍛えられたり、ドラゴンナイトのカードの種類と効果を把握すると言う宿題を出されたり等々、今考えてみると苦労した記憶がある。
………軽い口調で言っているが、統夜はサラッと危険な事を言ってくれている。事実、統夜達が過去のゼイビアックスとの戦いの何処かで万が一負けていたら、地球の人々は今頃ゼイビアックスの星に連れ去られていた所である。
「…どうした…?」
顔を青くしている医務室に居るフェイトを除いたなのは達隊長陣を見ながら聞く。
「い、いや…今更ながら、統夜くん達が頑張ってくれへんかったら…。」
「とんでも無い事になってたって思ったら…。」
「ああ。僅かにでも遅れたら今頃…全人類がゼイビアックスの星に連れ去られてたな。ゼイビアックスも全員の力を合わせてやっと勝てた相手なんだよな。」
「あはは…今度お父さん達に連絡しようかな。」
今更ながら、当時の戦いの壮絶さを思い出しながら、語る統夜に妙に空気が重くなる。
そんな人類の危機が現在進行形でミッドチルダで進行していると考えると顔色は悪くなる一方である。偶然にも聞いてしまったフォワード陣の顔色は特に悪い。
しかも、統夜にしてみればライダー達全員の力を合わせて勝てた相手に対して、今はドラゴンナイト一人だけで戦わなくてはいけないのだから。
(…何とかしてユーブロンに連絡を付けないとな…。ゼイビアックスの言葉通りオレ一人じゃ奴には勝てない。何とか、レンさん達に救援を頼もうにも、オレは下手にここを離れられないし…。)
確実に、そして安全に連絡しようと思えば地球に戻るしかない。だが、アドベントビーストだけでゼイビアックスの動きを完全に押さえられる訳がない。そう考えながら横目でなのは達へと視線を向ける。
(高町達にはベンタラやユーブロンの事は伝えられない、オレが行方不明になっている事で何かに気が付いてくれれば良いんだけどな…。流石にゼイビアックスが生きてる事には簡単には気づけないだろうし。)
個人でミッドチルダから地球へは連絡は取れず、なのは達に話を通すしかないが、そうなると下手をしたらユーブロンやベンタラの事も話さなくてはならないだろう。ゼイビアックスと戦う為に救援を頼む為にも何とかして連絡を取る方法を考えなければならない。
「ところで、統夜くん。フェイトちゃんが攫われた時、何があったんや、ちょっと前までとは様子が違う様やけど。」
その妙に重い空気を払拭する様にはやては口を開く。
「へ?」
はやての言葉にフェイトを助けてこっちの世界に戻った時にされた告白を思い出してしまう。
「あ、私もそう思ってたんだけど、何が有ったの?」
「…ナ…何ニモ無イゾ…タダ助ケタダケデスヨ…。」
明らかに動揺しながら顔を赤くして明後日の方向へと視線を向ける。どうも、精神的な面で弱い統夜である。
(…ハァ…。フェイトには、なんて返事をするべきかな…。)
なのは達の追求を受けながらそんな事を考える統夜で有った。
「それにしても…統夜くん、まだあんな力を隠してたんやな〜。他にも何か隠しとるんやないんか?」
「いや、ドラゴンナイトの力は一応サバイブで打ち止めだぞ。」
そう、《ドラゴンナイトの力》にはサバイブモード以上の物は無い。もう一つ隠し持っているオニキスのデッキの存在については言っていないだけで嘘は言っていない。
「ホントに? 他に何か有るなら、教えて欲しいんだけど?」
「ホントだ。」
なのはの問いに笑みを浮かべながらそう答えるのだった。
???…
「さて、仮面ライダーブレード。」
「はい。」
アビスの呼び声に答えるように、ウイングナイトに似た印象を持ちながら施されている意匠は『蝙蝠』のウイングナイトに対して『鳥と炎』、色は『青』と言った物とは違う『赤と金』、腰にはカードリーダーらしい日本刀の様な武器を持った鳳凰をイメージさせるライダー『仮面ライダーブレード』が片膝を付き、アビスの前に現れる。
「そろそろ、君にもドラゴンナイトと戦って貰おうと思っている。だが、くれぐれもベントだけはしない様に気を付けてくれたまえ。」
「分かりました。奴は将軍の宿敵の一人…簡単に倒れられては面白くないでしょう。」
「その通りだ。折角彼が私の招待に応じてくれたのだから、十分に楽しまなければね。それに、ドラゴンナイトと君の第一ラウンドは飽く迄おまけだ。本来はこれを“彼等”に届ける為の護衛だと言う事を忘れないでくれたまえ、ブレード君。」
そう言って二つのカードデッキを見せるアビス。
「心得ております。」
頭を下げるブレードに頷くとフェイトを抱き抱えている統夜の映像が映し出される。
「人は守るべき物が出来れば弱くなる。弱点が生まれる。そして、幸福の先に有る絶望は最も深い。君に味合わせて上げよう…最高の…絶望をね。」
そこに響き渡るのはゼイビアックスの高笑いだけ…ブレードは将に使える従者の如く頭を下げていた。。
戻る