第十話『蠢く悪意』

 

??? SIDE

 

「なるほど、彼がこちらで身を寄せている連中が地球へ向かった事で、ドラゴンナイトは今ポイズンの活動エリアの中に入ったと言う訳か?」

 

「はい、その通りです、将軍」

 

統夜の変身する二つのライダーのアドベントビースト、ドラグレッダーとドラグブラッカーに気付かれない範囲で統夜の動きを監視させていた自身のアドベントビーストの一体、『ガルドサンダー』からの情報をブレードはアビスの姿のゼイビアックスへと報告する。

 

「ふむ、トウヤ君が他のライダーと戦う前に君や“彼”とぶつけておきたかったのだが、これでは後々のサプライズが薄くなってしまうな。」

 

「…将軍御自身の変身されるアビス以外は態とベンタラのライダー達のデザインを残したそうですが…それが理由ですか?」

 

「その通り! トウヤ君の驚く顔が楽しみだったのだがね。まあ、ヤドカリ君の時はリアクションが薄くて面白くなかったが…ブレード君、君を見た時の反応はさぞ面白い事だろう」

 

「はあ…。ドラゴンナイトだけでなく、妙に『仮面ライダーウイングナイト』の戦闘データや口調まで確認させていらっしゃるのは…それが理由ですか?」

 

「その通りだ。最初の戦いは無理して倒す必要は無い。ウイングナイトのモノマネでもして精々遊んであげたまえ」

 

「ハッ! …ところで、ポイズンへの命令は出さなくとも宜しいのでしょうか?」

 

「ああ、それは別に構わん。ポイズンは中々優秀だが、トウヤ君がポイズン程度のライダーの負ける様なら、彼にもう興味はない。仮にも……彼は私がベンタラのライダー達に敗れる最大の要因となった男なのだからね」

 

アビスの仮面の奥…憎しみを込めた口調で言い放つ。そして、アビスが何処からか取り出したのは一つの『カードデッキ』。

 

「彼に与える予定のこのデッキ、君のブレードのデッキ、そして私のアビスのデッキ。この三つのデッキのライダー。確実にドラゴンナイトを倒せるのは…それだけだよ。今のところはね」

 

そう言ってそのデッキを仕舞うと『良い事を思い付いた』と言う様に手を叩く。

 

「そうだな。彼だけに伝える心算だったが…この際だ。いやいや、私とした事が彼だけを贔屓してしまう所だったね。ブレード君、他のライダー達に伝えて来てくれたまえ」

 

そこまで言った後、アビスの仮面の奥でその表情を邪悪に歪めながら宣言する。

 

「…『仮面ライダードラゴンナイト、トウヤ・タツキを倒し、彼の持つカードデッキを持って来た者には、この私が何でも望む物を与える』とね。ブレード君、当然その権利は君にもある。」

 

「ハッ!」

 

アビスから告げられた言葉に一礼し、ブレードはその場を立ち去っていく。鳳凰の侍は鮫の仮面と騎士甲冑に正体を隠した悪魔からの言葉を、己と敗者を除く残された悪の円卓の座を埋める騎士達に伝える為に。

 

それと同時にその場の暗闇に浮かび上がるのはアビス、ブレード、シェルクラブの物を含んだ『11』のゼイビアックス製のライダーの紋章エンブレムがドラゴンナイトのエンブレムを囲む様に現れ、その数の合計はドラゴンナイトを含み全部で『12』となる。

 

始まるのは悪魔の主催した一つの戦いの宴。…その宴の主賓たる標的は龍騎士ドラゴンナイト

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 

「初めまして、八神部隊長から紹介が有ったと思いますが、仮面ライダードラゴンナイト、『辰輝 統夜』です」

 

「オレは『ゲンヤ・ナカジマ』だ。お前さんの事は子タヌキから聞いてるぜ」

 

「…タヌキ…プッ」

 

話の流れから考えて『タヌキ』とははやての事と直に理解して思わず笑ってしまう。妙にぴったりなイメージに。

 

「…例の怪物共による誘拐事件…あれの犯人の事や、それに唯一お前だけが対抗できるって事もな」

 

「はい、私も此方に向かう途中でそれを確認しました」

 

ゲンヤの言葉に続いてギンガも肯定してくれる。

 

「まあ、こっちじゃオレ一人ですけど、地球には他にオレよりも頼りになる人達が11人は居ますけどね。それで…八神隊長に要請してまでオレをここに呼んだと言う事は」

 

「ああ、情けない話だがな。実は最近、この近辺で怪物共の誘拐事件が多発してるんだ。内の部隊の連中に被害は無いが、近隣の住人に被害が多くてな…」

 

(…ゼイビアックスがここを中心に活動してるって事か…? いや…寧ろ…)

 

ゲンヤの言葉に統夜は過去の地球での戦いの状況と照らし合わせていく。

 

(…ゼイビアックス自身じゃなくて、あいつの配下のライダーの方か…)

 

ゼイビアックスが態々一箇所を集中的に狙う理由も限られている。『統夜を呼び寄せる』と言う点だが、向こうにしてみればこれには何一つ利益が無い。統夜の居場所は『機動六課』とはっきりしているのだから、青蟹インサイザーモドキの時の様に向こうから勝手に出向いてくれば良いだけだ。

 

そこから考えると、ゼイビアックスが直接モンスター達の指揮を執っていると考えるよりも、配下のライダーが何か自分の目的の為にモンスター達を使っていると考える方が納得できる。

 

「それで、専門家としての意見はどうだ?」

 

「…断言するのは早いですけど、『ゼイビアックスの意図』や『モンスターの本能』と言うよりも、『人間の悪意』に満ちた行動って感じがしますね」

 

ゲンヤの問いにそう結論付ける。

 

「…人間の悪意…ですか?」

 

「ああ、ゼイビアックス側のライダー…人間がモンスターを使って動かしているって所だな」

 

「なるほど、そうなると被害を抑える為にはそいつを捕まえるしかないって訳か」

 

「…まあ、鏡の向こう側の世界で人を攫っていても仮面で素顔が見えないんですから、こっちの法で裁くのは難しいでしょうね。…別の犯罪でも犯してない限りは、ね」

 

誰にも認知できない世界で正体を仮面ライダーの仮面とスーツに包み隠して異星人の手下として人間を誘拐している。…とてもではないが、そんな物は管理局の法の中でもはっきり言って想定外…裁く事ができない犯罪だろう。

 

「だから、最後の手段として…オレが『ベント』してカードデッキを此方で回収するしかないでしょうね」

 

「「…『ベント』…?」」

 

統夜の言葉にある専門用語に対してゲンヤとギンガの二人が問い掛ける。

 

「ベントと言うのはライダーの持っている最終安全装置、規定ダメージを超えた装着者を護る為に安全な空間に閉じ込めるシステムです。ゼイビアックス製の物にもそれが着いている事は確認しているので、危険と言う事は無いですけど…」

 

そこまで言い切り、表情が暗くなる。

 

「…簡単な話が…オレが向こうの世界でライダーとして…『殺す』と言う意味です。ですが、事件が解決すれば、地球の仲間に連絡して救出する事も出来ると思うので…死ぬ訳ではないんですが」

 

言葉が沈む。要するに、統夜が提案する最後の手段は、規定ダメージを与えてカードデッキを奪い、ゼイビアックスが装着者ライダーを見捨てる様な環境を用意すると言う訳だ。

 

「…あまり取りたくない方法だな」

 

「ええ、ですから、なるべくなら犯人からカードデッキだけを奪って回収する事がベストですけど…」

 

そうなったら相手もカードデッキを奪い返そうと行動するかもしれないが、それならそれで捕まえる口実になる。

 

「…どっちにしてもオレ達はお前さんに頼るしかないって訳か…本当に情けない話だな…」

 

搾り出すように言ったゲンヤの悔しげな言葉が響いた。

 

 

 

 

 

さて、陸士108部隊に出向いた翌日からドラグレッダーが鏡の中で動いているのだが、結果は…

 

「多い!!!」

 

その一言に尽きるだろう。鏡の中ではレッドミニオン達が頻繁に動いているらしい。『サバイブ』で一層したくなる程の数こそ出てきていないが、それでも叫びたくなるほどの量がいる。…指揮官ユニットとしてか、レッドミニオンの中に時々妙に強い奴も混ざっているし。

 

必殺技であるドラゴンライダーキックを放ち、指揮官と思われる妙に強い奴も纏めてレッドミニオン達を浮き飛ばすと、ドラゴンナイトは鏡の中から帰還する。

 

「あ、あの…お疲れ様です」

 

「…気にしなくていい…まだ少ない方だから…」

 

鏡の中から帰還した統夜にギンガが労いの言葉をかける。こうして、モンスターの出現を確認しては道案内を頼んだギンガと一緒にモンスター退治を繰り返している訳だが、連戦が続いている。

だが、何時かのゼイビアックスからの一時間おきの嫌がらせの一件の時に比べればそれは遥かに楽だ。まだ、戦っているのは三回連続程度なんだし。だが、明らかに誰かの意図を感じる回数であることは理解できる。

 

「…オレの推測は当りかもな…」

 

「じゃあ、こんなに誘拐事件が頻発しているのも」

 

「…ゼイビアックスかライダー…。そのどちらか、もしかしたら、両方の意図だろうな」

 

意図的にレッドミニオン達は陸士108部隊の近くで事件を引き起こしている。それは間違いなく、モンスターの意思だけでは無いだろう。

 

「…ライダーの…人間だとすれば…ゲンヤさんの部隊の誰かに恨みがある奴って所だろうけどな…」

 

仮にも平和を守っている組織の人間が、怪物が人を誘拐していると聞いて動かない訳には行かないだろう。モンスター達を利用して目的の人間をおびき寄せてから、ライダーの力を使って復讐する。…以前のフェイトの時と同じだ。

 

「…そう…ですか…」

 

「まあ、恨まれない人間なんて居ないだろ? 特にこんな仕事をしている以上は。」

 

少なくとも捕まえた犯罪者からは恨みを買っているだろう。だが、そう考えると今度はモンスターを使っておびき寄せようとしている事が分からない。

恨みがあるならシェルクラブが機動六課の隊社内でフェイトを襲った様に直接襲えば良い。周りに被害を出す事によって苦しめていると考えてもいいが…それは薄い気がする。

 

 

キィィイン…

 

 

思考を働かせながら休憩中の統夜の耳に聞こえてくる本日四度目のモンスターの出現を告げる音…

 

「またか…」

 

「またですか?」

 

「ああ、急ぐぞ!」

 

「はい!」

 

…既に三件ともモンスターは倒せているが、二人が駆けつけた現場では襲われた人は全員手遅れに…モンスターに連れ去られている。出現するモンスターや敵の配下のライダーに対応できるのが、統夜一人と言う時点で出来る事にはこうして限界がある。

 

…もっとも、肝心のカードデッキを作れる技術を持っている者が時空管理局…いや、ミッドチルダに存在しない時点で統夜の持っているカードデッキを元にした所で…いや、黄言い換えるべきだろうか…“例え作れたとしてもアドベントビーストが欠けたブランク体にしか変身できないライダーではモンスター相手には無力だ”と。始めて変身した統夜が良い例だ。

…現時点でカードデッキを…仮面ライダーや準じる者を誕生させる事ができるのは、僅か二人だけ、開発者であるユーブロン自身とコピーとは言え作り出したゼイビアックスだけだ。

 

 

 

 

 

 

「キャー!」

 

「助けてくれ!!!」

 

モンスターの出現を聞いて二人が駆けつけたのは公園だった。鏡…光を反射して鏡像を作り出す場所から現れるレッドミニオン達が公園に居る悲鳴を上げて逃げ惑う人達を自分達の世界に連れ去ろうとしている。

 

幸いなのは、ベンタラから地球に現れた時のように姿が見えないと言う事が無い点位だろう。逃げ出す人が出てくれるお蔭で被害は多少は軽減されている。

 

「させるか!」

 

統夜は子供を連れ去ろうとしていたレッドミニオンを殴り飛ばす。丁度背後にあった鏡面にぶつかり、そのまま鏡の向こう側へと追い返される。

 

「…悪いけどな…少しくらいは…オレもレンさんに鍛えられてるんでね!」

 

今の状況では変身する暇は無いと判断し、統夜は他の人達が逃げてくれるまでは素手で戦う事に決める。後ろにいた先ほど助けた子供はその子の親と思われる大人が連れて行ってくれたので心配は無いだろう。

 

ギンガもバリアジャケットの姿で戦っているのが視界の端に映る。レッドミニオン達に対する対処方法は伝えてある。魔法が効かない為に接近戦に限定されるだろうが、彼女の戦い方なら問題ないと判断できる。

幸い』と言っては不謹慎だが、レッドミニオンの九割は格闘経験がある物なら素手でも倒せる程度の敵。魔法に対する耐性があるとは言え機動六課のメンバーの中なら、統夜の(身を持って)知っている範囲では模擬戦で戦ったシグナムなら十分に勝てるレベル、スバルなら今はまだ鍛える必要ありだが成長次第ではレッドミリオン程度には十分に戦えるレベル、スバルよりも格闘技術の力量が上と予想できるギンガなら、十分戦えると言った所だろう。

 

「これがこの世界の現実か…。」

 

レッドミニオン達と戦いながら統夜はそう呟く。一人で出来ることには限界がある。それは統夜もよく理解している。己の実力を理解しているから、自分が居れば全てを護れる等と自惚れても居ない。だからこそ、悔しさを隠せないのだ。

 

統夜以外のライダー達はゼイビアックスが選んだ己の欲望のままにゼイビアックスに協力する者達。所詮は統夜には自分の手が届く小さい範囲でしか護れない。

 

「…だからってなぁ…!!!」

 

レッドミニオン達を殴り飛ばして、

 

「オレの手が届く範囲だけでも…お前達の好きにはさせない!!!」

 

統夜が叫びながら蹴り飛ばしたレッドミニオンが粒子化して消えていく。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

「ッ!?」

 

悲鳴が聞こえた方向を振り向くと丁度鏡の中から伸びた糸に巻きつかれている人の姿が見える。その状況に舌打ちし、その人の体を後に引く。暫くの力比べだが、先に糸が限界を迎えたお蔭で助ける事に成功する。

 

「気をつけろ、相手は雑兵レッドミニオンだけじゃない! 鏡面には絶対に近づくな!」

 

「ここは私に任せて、統夜さんはそっちに向かってください!」

 

ギンガに向かって注意を促すとそう言葉を返される。幸い先ほどの人を逃がした事で、これ以上の被害は出そうも無い。それを感じたのか、レッドミニオン達の中にも退却する固体も出始めている。幸いにも残っているのはあと数体だけ。

 

「………分かった。無茶だけはするな!」

 

「はい!」

 

ギンガへとそう言葉をかけて鏡面へと近づき、取り出したカードデッキを鏡面それへと向ける。そして、

 

「KAMEN RIDER!」

 

己へと力を与える言霊を叫び、その姿を仮面ライダードラゴンナイトへと変え、鏡面世界へと飛び込む。

 

 

 

 

 

 

『SWORD VENT』

 

 

モンスター達の存在している世界に飛び込むと同時にドラグセイバーを取り出し、目の前に居る蜘蛛を人型にした様な姿の緑色のモンスター『ソロスパイダー』へと切りかかる。

 

「はぁ!」

 

「ッ!」

 

振り下ろしたドラグセイバーの斬撃を避けるソロスパイダーをドラゴンナイトのドラグセイバーの剣戟が追う。

 

「…こいつ、始めて見るモンスターだな」

 

過去に戦ったものとは同一でない始めて見るソロスパイダーに対してそう呟く。今まで戦ったモンスターはライダーの契約モンスターを除いて全て過去に戦った経験のあるモンスター達だった。だが、そんな事は関係ない。

 

「始めて見る相手でも…倒すだけだ!!!」

 

ドラゴンナイトはソロスパイダーの吐く糸を避けながら舞う様にドラグセイバーで切りつける。

 

(…始めて見る奴だけど…こいつ、それほど強くない…。行ける)

 

そんな事を思いながら、ドラグセイバーの斬撃を受けて地面を転がるソロスパイダーに大して追い討ちをかけるべく、新たなカードをドラグバイザーに装填セットする。

 

 

『STRIKE VENT』

 

 

上空から召喚されるドラグクローを装着し、ドラグクローを装着した腕を振りかぶると、ドラグクローの龍の顎に炎が集う。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ…!!!」

 

背後に現れたドラグレッダーと共にパンチモーションに合わせて撃ち出されたドラグクロー・ファイヤーが立ち上がったソロスパイダーに襲い掛かりその体を粉砕する。

 

「ふぅ…。」

 

爆炎を上げて吹き飛んだソロスパイダーを一瞥しつつ、ドラゴンナイトは周囲に注意を払うが他のモンスター達が現れる様子は無い。それを確認して一息吐くと、警戒を解く。

 

(…モンスターの動きがライダーの指示だったら、居ても可笑しくないと思ったけど…ハズレだったって訳か…)

 

ライダーの出現を警戒して、『ファイナルベント』を温存していたのだが、その心配はなかった様子だ。ライダーが何かの目的で集めていたモンスターが勝手に動いたと言う可能性も有る。だが…今回の事は統夜には一つだけ考えなかった…否、“考えたくなかった可能性”がある。

 

 

簡単な話だ…。

 

 

それは、自分が考えられる最悪の可能性…。

 

 

「…ゲンヤさんの部隊の中に…敵のライダーが…ゼイビアックス側の人間が居る」

 

先日、自分を紹介した時に自分の存在を知って…統夜達を単独行動させる為…敵のライダーが“狙っている人物から遠ざける為”だとすれば…。相手の狙いは、

 

「拙い!」

 

そう叫び、統夜ドラゴンナイトは先ほど飛び込んで来た鏡面へと向かって走る。切札ファイナルベントを使わなかったとは言え、ソロスパイダーと戦うのに時間を取られた。…正に状況は最悪…。

 

「無事で居てくれ…」

 

考えられる可能性…そこから敵の狙いは…統夜ドラゴンナイトからも、部隊からも遠ざけた…。

 

「ギンガ!!!」

 

ギンガ・ナカジマ』だと言う事に気が付いた。

 

 

 

 

 

「ふう。」

 

ギンガが相手をしていたレッドミニオンの中の最後の一体が鏡の中に逃げ出していく。それを知って、彼女は安堵の息を吐く。

 

後は鏡の無い所で統夜の帰還を待つだけだが…。

 

 

『ATTACK VENT』

 

 

遠くから彼女の様子を伺う紫の影と突然響く電子音。

 

「キャア!」

 

足元が崩れ中から現れた二つの鋏がギンガの両腕を拘束する。ギンガの足元から現れた蠍型のモンスター『ポイズンスコルピオ』は『動くな』と言う様子で首筋に毒針を突きつける。

 

「くっ。」

 

崩れる足場に両腕はモンスターに拘束、そして、動くなと言う様子で突きつけられた毒針。完全に捕らわれる形となったギンガに紫の人影が近づいていき、

 

「ッ!?」

 

首筋に手刀を振り下ろし彼女の意識を刈り取る。

 

「……統夜…さん……」

 

最後に自分の意識を奪った相手…『仮面ライダーポイズン』の姿をその目にしながら、統夜の名前を呼びながら、ギンガは意識を失った。

 

「…やっと手に入れた…」

 

仮面の奥で表情を歪ませながら、意識を失ったギンガの髪を撫でながらポイズンはアドベントビースト、ポイズンスコルピオへと指示を出す。

 

 

 

 

 

 

「…遅かったか…」

 

統夜がそこに戻った時には、足元の崩れた跡を除いて誰かが居た形跡はなかった。だが、それがアドベントビーストかモンスターによる物だと言う事は容易く推測できる。

 

「ドラグレッダー、頼む!」

 

鏡の中から頭を出して頷くドラグレッダーの返事を見て統夜も近くに有った鍵の着いたバイクに乗ってカードデッキを構えて鏡の中に飛び込む。

 

希望的な観測かもしれないが、急げばまだ間に合うと考えながら、敵に攫われた『手を伸ばすべき場所』に居る相手を助けると決意し、ドラゴンナイトはドラグサイクルを疾走はしらせる。






 

 

 

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