第十四話『ドラゴンナイツ』

 

ホテルから僅かに放れた森の中、アビスの見ていたモニターに映っていたローブの様な物を纏っている大柄の男性と、薄い紫の髪の少女の姿があった。

 

その二人の前に通信用のモニターが現れる。

 

『ごきげんよう、騎士ゼスト、ルーテシア』

 

通信に映った人物は機動六課が追っている犯人の『ジェイル・スカリエッティ』。

 

「ごきげんんよう」

 

「何の用だ?」

 

ルーテシアと呼ばれた少女が挨拶を返して、ゼストと呼ばれた男が素っ気無く要件を求める。それが二人のスカリエッティに対する感情の温度差を物語っていた。

 

『冷たいねえ。近くで状況を見ているんだろ? あのホテルにレリックは無さそうだが、実験材料として興味深い骨董が一つ有ってね。少し協力してくれないか? 君達なら実に造作も無い事の筈なんだが…』

 

「断る。レリックが絡まぬ限り、互いに不可侵を守ると決めた筈だ」

 

スカリエッティの言葉をゼストと呼ばれた男は即答で断る。直も言葉を続けようとした瞬間、彼等の元に近づいてくる足音に気が付き、そちらの方へと視線を向けると、

 

「お前は?」

 

『最近、現われているモンスター達と…仮面の戦士か?』

 

自身のアドベントビースト三体を従えたブレードがその姿を現す。そして、ブレードの前に、丁度ゼスト達とブレード達の間に通信用のモニターが現れる。

 

『やあ、始めまして。ミスター・ジェイルとミスター・ゼスト、それから、そちらのお嬢さんはミス・ルーテシアで良かったかな?』

 

そのモニターに映った顔は統夜達が知っている人間に化けたゼイビアックスの顔の一つだった。

 

「貴様、何者だ?」

 

『これは失礼、自己紹介が遅れてしまって申し訳ない。私はゼイビアックス将軍。彼は私の忠実な部下…仮面ライダーブレードだ』

 

自分達の名前を知っているゼイビアックスに対して警戒を露にするゼストと呼ばれた男だが、ゼイビアックスは自身の名を名乗る。

 

『ゼイビアックス? 確か、管理局では異世界から来た宇宙人エイリアンと言う事になっていたね』

 

『おお、これはこれは、かの有名なジェイル・スカリエッティ博士に知っていて頂けるとは光栄だね。君の作った玩具は中々面白くてね…私のライダー達の追加装備として使わせて貰っているよ』

 

『やれやれ、大した物ではないとは言え勝手に使われるのは良い気分がしないね』

 

『ハッハッハッ…これは失礼。何れそちらにお礼に伺おう。ところで、ミスター・ゼスト、ミス・ルーテシア、君達に一つお願いがあるのだが』

 

「断る」

 

スカリエッティとの会話を終えると、ゼストと呼ばれた男に話を振るが、要件も聞かずに断られる。

 

『酷いな、君達に対するプレゼントと報酬も用意していると言うのに…』

 

「断ると…それは!?」

 

通信の映像の中に映し出されるゼイビアックスの持っている宝石を見て、

 

『そう、君達の欲しがっている『レリック』だ。此方でも幾つか回収して、中々使えるエネルギー源として活用させてもらっているんだが…聞けば、君達もこれを欲しがっているそうじゃないか?』

 

「…何が望みだ?」

 

『おお、要件を聞いてくれる気になったんだね。用意した甲斐が有ったよ。なに、簡単な仕事だ』

 

ゼイビアックスの言葉に合わせてブレードがゼストにそれを投げ渡す。

 

「これは?」

 

『それがプレゼントの仕事道具だ。ブレード君やトウヤ・タツキ君が使っている仮面ライダーに変身する為のアイテムだ』

 

『ほう!』

 

ゼストへと渡された無地のカードデッキをスカリエッティが興味深げに眺める。

 

『ユーブロンと言う我々を裏切った天才科学者が開発した仮面ライダー。手元に有るのは全て私が作り出した物はコピーだが、私なりの改良を加えてある。変身する者の能力次第ならオリジナルのライダー達にも勝てるだろうね。其処にいるブレード君の様にね』

 

ゼイビアックスの言葉にブレードに対して警戒を露にするが、ブレードは直も武器も構えず立っている。

 

『使い方は簡単、それを持って鏡面に触れれば我々の活動する世界、君達仮面ライダーの戦場は居る事が出来る。但し、気を付けてくれたまえ、そのチケットは何人連れて入っても良くて期間は無期限に有効だが、再発行は出来ないからね』

 

そう言ってゼイビアックスは愉快そうに笑いながら、仕事の内容を告げる。

 

『仕事は簡単だ。別に他の者とは違って君に侵略者である私に協力しろ等とは言わないよ。どうせ協力などしてくれないだろうからね』

 

笑いながらそう告げると、ゼイビアックスはゼストへの要求を口にする。

 

『実は、君に手に入れてもらいたい物が有るんだ』

 

「手に入れたい物だと?」

 

『そう! 私の宿敵…仮面ライダードラゴンナイト、トウヤ・タツキ君の持つカードデッキだ!』

 

「付け加えるなら、向こうもタダでカードデッキを渡す訳が無い。ベントして奪い取れと言う事だ」

 

ゼイビアックスの言葉に補足する様に初めてブレードが初めて口を開く。

 

『ベントとは、ライダーにある最終安全装置だ。一定のダメージを受けると使用者の生命の安全の為にカードデッキを残してアドベント空間と言う場所に転送されるのだよ。だから、相手を殺してしまう心配は無い』

 

そう言ってゼストの持つカードデッキを指差す。

 

『まあ、私も君に直に決断してくれとは言わないよ、ミスター・ゼスト。今回は其処に居るブレード君とトウヤ君が戦うから二人の戦いを見て決断してもらいたい』

 

「…………」

 

ブレードはゼイビアックスの言葉に応え無言で一礼する。

 

『トウヤ・タツキ君のカードデッキを私の持つレリックと交換しよう。自信が無いのなら止めて貰っても構わない。他の人間に声を掛けるだけなのだからね。ああ、そのカードデッキは君の返答に関わらず持っていて貰って構わない、プレゼントを返せと言うほど私は心が狭くないからね。だが、このレリックは私が使わせてもらおう』

 

『ほう、レリックを何に使う心算なのか是非教えてもらいたいね』

 

『色々だよ、ミスター・スカリエッティ。一つは…こう言う事だ』

 

そう言ってモニターに映る映像がゼイビアックスからレッドミニオンに変わり、レリックのエネルギーを受けたレッドミニオンがホワイトミニオンに、ホワイトミニオンがブルーミニオンに脱皮する瞬間が映し出される。

 

まだ最下層のレッドミニオンが多い雑兵だけとは言え、無数にモンスター達の存在するその光景に思わず絶句してしまう。

 

『それでは、吉報を待っているよ。それでは、ミスター・スカリエッティ、その内にそちらに伺おう』

 

ゼイビアックスの言葉が終わりモニターが消えるとガルドサンダー達を引き連れてブレードは、

 

「そちらが動く時にあわせてオレもドラゴンナイトと戦う。将軍に協力するのなら、見に来れば良い。お前が倒す相手の力を知る意味でもな」

 

それだけ言い残し、その場から立ち去っていく。

 

 

 

 

 

 

 

ブレードとゼスト達が接触した頃、外ではフォワード達やシグナム達ヴォルケンリッターとガジェットとの戦闘が始まった。そして、それに合わせる様にホテルの中では出現したモンスター達によって、オークションの会場ではモンスターの出現によって悲鳴が上がっていた。

 

「ふっ!!!」

 

バリアジャケットの姿でレッドミニオン達と応戦しながら避難誘導するなのは達を助けながら、統夜はレッドミニオンの一体を殴り飛ばし、ある者は蹴り飛ばし、一体一体仕留めていっている。だが、最下級の雑兵レッドミニオン達とは言え、流石に変身もせずに統夜一人で全員を相手にするのは辛い物がある。

 

「統夜、これって」

 

「ガジェットだけじゃない、ゼイビアックスも此処を狙ってきたって訳だ」

 

以前のギンガの時の事を思い出すと、迂闊に鏡の中に飛び込んでモンスターと戦う事は出来ない。

 

付け加えるなら、今は彼女達の魔力による攻撃は中々決定打を与えられていない。そんな状態では余計に統夜が此処から離れる訳には行かないだろう。

 

(チッ! 仕方ないか…)

 

統夜は近くに有る鏡面を確認すると、ドラゴンナイトのカードデッキから一枚のカードを抜き出し、

 

「来てくれ、相棒ドラグレッダー!!!」

 

鏡面からドラグレッダーが現われる様に指示を出し、レッドミリオン達の相手を任せる。

 

「統夜君、その子を呼び出しちゃ…」

 

「炎は吐かない様に注意してる。フェイト!」

 

そう言ってドラグレッダーの契約のカードをドラゴンナイトのデッキに戻すと、それをフェイトに投げ渡す。

 

「これって、統夜の!」

 

「それを持って居ればドラグレッダーは指示に従う。此処はオレに任せて会場の人達を避難させろ!」

 

「で、でも、それじやあ統夜君は武器も無いのに、どうするんや!?」

 

はやての言葉に統夜は彼女達に視線を向けずに、レッドミニオン達に向けて構えを取りながら、

 

「こいつら程度なら…素手で十分だ! ハッ! 良いから行け、オレが心配なら、避難させて外を片付けて早く戻ってきてくれ!」

 

回し蹴りでレッドミニオンを倒して告げると、早く行く様に促す。

 

「う、うん!」

 

「直に戻ってくるから、統夜も気を着けて!」

 

「無茶したらあかんで、統夜君!」

 

そう言ってドラグレッダーを護衛につけたなのは達を見送ると、ポケットの中からオニキスのデッキを取り出し…レッドミニオン達に向かって笑みを浮かべる。

 

「さて…フェイト達にはああ言ったけど、オニキスになるのも久しぶりだな…」

 

正面に向けたカードデッキから光が奔り、Vバックルが出現する。

 

「行くぜ…KAMEN RIDER!」

 

黒い光が統夜を包み、その姿をもう一つのドラゴンナイト。最も新しい13番目の仮面ライダー、漆黒のドラゴンを従えし闇の龍騎士、『仮面ライダーオニキス』へと変える。

 

ドラグセイバーを召喚してレッドミニオン達の中に切りかかると、的確に攻撃の際には相手を鏡面へとぶつけられる様に仕掛ける。

 

会場に現われていたレッドミニオン達を消滅、または鏡の向こうへと追い返した事を確認するとオニキスはそのまま鏡の向こう側の世界へと飛び込んでいく。

 

 

 

 

「ここは…?」

 

パーティー会場から飛び込んだ先に有ったのは地下駐車場の様な場所だった。

 

そして、オニキスを囲むようにホワイトミニオン達とブルーミニオンが現われる。

 

「!? こいつ等まで!?」

 

レッドミニオンの上位種のモンスター達の存在を確認して思わずそう叫んでしまう。だが、ある意味ではそれにも無理は無いだろう。

 

だが、オニキスを囲む様に現われたモンスター達は攻撃を仕掛けずに遠くからオニキスを監察しているだけに見えた。

 

(こいつ等、どう言う心算だ?)

 

そんな事を考えていると何処からか足音が聞こえてくる。それに気が付いてオニキスがそちらへと視線を向けると、ホワイトミニオン達の囲みが其処だけ開き、その中から一人の仮面ライダーが現われる。

 

「なっ!?」

 

赤と金…何処かドラゴンナイトをイメージさせる色を持ち、鳳凰と侍をイメージさせる意匠だが、その姿は…見間違える訳が無い。

 

「…ウイングナイト…レン…さん?」

 

そんな筈が無いと言うのに思わずそう呟いてしまう。日本刀型の武器を背中の鞘から抜き取り、

 

「なるほどな、トウヤ、お前はドラゴンナイトじゃなくてオニキスに変身したのか?」

 

「…名前くらい名乗ったらどうだ…ゼイビアックスのライダー」

 

その態度はポイズンよりはマシだが、ウイングナイト…統夜と初めて出会ったベンタラの戦士であり、最後まで共に戦い続けた仲間、誇り高きベンタラの戦士と同じ姿をした者がゼイビアックスに従っていると言う事実は必要以上に彼を苛立たせてしまう。

 

「それはすまなかったな。オレは『仮面ライダーブレード』。将軍の忠実なる僕だ」

 

「…その姿で…その言葉を吐くな!!!」

 

苛立ちを含んだ叫び声と共にオニキスはブレードへと切りかかる。

 

 

 

 

 

 

 

ホテルの外…

 

(証明するんだ!)

 

ホテルの中にモンスター達が出現した事の報告を受けて焦りを見せた様子でガジェットの群と戦っていたフォワード陣と副隊長陣の中、ティアナは魔法陣を展開する。

 

(特別な才能や、凄い魔力や、特別な武器が無くたって…。)

 

彼女のデバイス『クロスミラージュ』がカートリッジをロードする度にティアナの周りには大量の魔力弾が出現する。

 

「私は……ランスターの弾丸は、ちゃんと敵を撃ち抜けるんだって!」

 

『無茶だ』と言う警告の声に『撃てます!』と返し、クロスミラージュも同意する。ティアナはクロスミラージュを構え、

 

「クロスファイヤー…シューット!!!」

 

彼女は一斉に魔力弾を放ち次々とガジェットを打ち抜いていく。

 

だが、偶然にもその中の一つの斜線軸にガジェットに突き飛ばされたスバルが入ってしまう。

 

それに気付いた時には既に時は既に遅かった。

 

彼女が声を上げるよりも早く、それはスバルに直撃するはずだった。

 

 

だが、

 

 

「だ、誰…?」

 

周囲のガジェットを破壊し、スバルを庇った影は…

 

「統夜さんに似てるけど…。」

 

ドラゴンナイトと同じ姿をした緑、青、紫の三人の騎士、その中の一人、青いドラゴンナイトが盾を構えてスバルを庇っていたのだ。

 

三人の騎士達は頷き会い、それぞれがガジェットと戦いながら鏡面世界へと消えて行った。

 

「バカ野郎!!!」

 

三色の騎士達の存在に呆然としていたスバルとティアナだったが、駆けつけたヴィータの叱責で正気に戻る。








 

 

 

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