第一話

 

 

「ま、待ってくれ……もう、人間は食べないから……」

 

 完全に切り裂かれた獣の様な下半身……と言うよりも狼を思わせる獣の首から下の胴体を下半身として持つ化け物。それと対峙するのは真紅のマントを纏い純白の鎧を纏い大剣を持ち、背中からは天使を思わせる半透明の純白の翼を広げた騎士ガンダム……『騎士ウイング』。

 

「その言葉、人を喰らう前に言うべきだったな……」

 

 

バスターソードパワーズ!

 

 

 騎士ウイングの振り下ろしたバスターソードから放たれた光の奔流に飲み込まれながら、化け物……否、悪魔は悲鳴を上げる事も無く消滅していく。

 存在していたのが異世界『スダ・ドアカワールド』とは言え、存在していた世界こそ違えど元天使である騎士ウイングの力は悪魔にとって毒になる為に、生計を立てるハグレ悪魔の討伐には多用しているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの日、少年が黄金の竜の善の心の化身たる騎士ガンダムと出会ってから10年の月日が流れた。

 

 この世界には様々な神魔が存在している。それ故にこの世界は一つの世界の神であるスペリオルドラゴン等神々がこの世界に入っても十分に世界は受容れられる。

 そして、この世界で最も大きな勢力となっているのが『天使』『悪魔』『堕天使』の三つの種族で有り、裏を知っている者達からは『三大勢力』と呼ばれている。

 

 父と慕う騎士ガンダムから最初に託されたスダ・ドアカワールドの五人の騎士と天宮の国の五人の武者、後に送られてきた三人のガンダム達×2の計16人のガンダム達の力を有る程度使いこなせるようになってから、彼はその力を使いこの世界に逃げ込んだと言う闇の化身の影を追いながらも『ハグレ悪魔』の討伐で生計を立てていた。

 

 残念ながらこの十年の間この世界に入り込んだ闇の化身の動きはまったく掴めず、時折現れるその配下を倒しつつ、帰って来る騎士ガンダムには変わらぬ報告を続ける事となっていた。……闇の化身の本隊と戦う適合者の援護に忙しいらしいのだ。

 自分の居る世界の他に二つの世界に入り込んだ闇の化身と、それと戦うガンダム達の力の適合者の援護が多忙なのは理解している。寧ろ、贔屓して貰っていると言っても良いと思っている。

 四柱のガンダムの世界の神々の中で唯一英雄(ガンダム)達の一人でも有る騎士ガンダムことスペリオルドラゴンは特に多忙らしい。

 

(良い天気だな〜)

 

『はぁ……』

 

 現在、彼『黒野 祐司(くろの ゆうじ)』は一人屋上で授業をサボっていた。そんな祐司に対して溜息を吐くガンダム達だが、サボっている理由も知っている為に注意しても無駄だと完全に諦めていた。それでも、成績は良い方なので教師からも注意される事は少ない。

 

「なあ、ウイング……」

 

『何だ、祐司?』

 

「……あいつ……鎧闘神になって闇討ちして良いか?」

 

『止めろ、色んな意味で止めろ!』

 

 少なくとも『鎧闘神ウイング』の巨体で闇討ち等出来ないだろう。あの巨体ではどう見ても派手すぎて堂々と襲撃している様にしか見えない。付け加えるなら、この場所には別の世界の天使とは言え元天使である騎士ウイングが派手に動き回るのには多少問題の有る土地柄と言う物も有る。

 

 騎士ウイングを中心としてスダ・ドアカワールドの天使族の姫『リリーナ』を巡る古代神バロックガンの配下のオズワルドと五人の転生ガンダム達と仲間達の戦いに於いて、騎士ウイングは元々は天使族の守護天使『ヒイロ』だった。

 守護天使ヒイロがスペリオルドラゴンから与えられたバスターソードの力でガンダムへと転生して誕生したのが騎士ウイングだ。

 だが、彼の元に託されたカードに宿っている騎士ウイングの意識は天使ヒイロから分離され、彼の人格を元に生まれた別人となっている。

 

 同じクラスになってしまったこの世界に闇の化身が渡る事になった二つ目の切欠、転生者の元弟を含んだ元家族への嫌悪感は今でも消えていない。向こうは既に祐司の事は忘れている様子だが。

 付け加えると、元両親は直ぐに亡くなっているらしい。……既に家族とも親とも思っていない連中だ、その死を知った時も何の感慨も湧かなかった。何の感慨も沸かなかった自分の中の感情に返って驚いたほどだ。

 

「で、あのバカ共は何をやってるんだ?」

 

 

 

『こらー! 待ちなさい! 変態共!!!』

 

 

 

 三人の男子生徒が大勢の女子に追いかけられていた。彼の通っている高校の名は『駒王学園』。少し前までは女子高だったため男女比は女子の方が多い。多少男子にとって居心地が悪い気もするが、近かった為と妹分の同居人の事を考えて此処を選んだ祐司だった。

 まあ、思いっきり不純な動機で此処を受験した連中もいるが。主に現在進行形で追いかけられている三人とか。

 

 付け加えておくと、彼女の過去を考えてコールの魔法で召喚した『騎士デスサイズ』と『武者デスサイズ』の元死神と忍者の元ネタ同じな、隠密行動が得意な死神コンビを護衛着けている辺り過保護と言われても仕方ないだろう。……実際過保護だし。

 だが、騎士デスサイズと武者デスサイズの話では祐司の過保護も行き過ぎでは無いらしい。……最近二年生の生徒が一人彼女に声を掛け様としたとか……二人からの話ではどうも、悪魔らしい。

 

 起き上がって完全に呆れた目を裏庭へと向ける。女子に追いかけられているのは祐司にとってのクラスメイト三人。『兵藤 一誠』、通称『イッセー』と丸刈りの『松田』とメガネの『元浜』。覗きやセクハラ発言を繰り返して、女子からは蛇蝎の如く嫌われて、『変態三人組』と言われている。

 

「……今朝、更衣室で覗きをするとか言ってたけど……。まさか、本当に実行したのか?」

 

 流石に人目の多い所で堂々と犯罪行為の打ち合わせをする訳も無いだろうと、冗談として聞き流していたが…………あの連中本当にやってしまったらしい。

 

『いや、そんな事聞いたなら止めてやれ!』

 

「……悪い、流石に聞いた時は冗談だと思った。第一そんな計画を大声で話すなんて思わないだろう」

 

 思わずツッコミを入れてくる『武者ウイングゼロ』の言葉にそう返す。本気で実行に移すとは夢にも思ってなかったのだし。

 

『祐司、友は選んだ方が良いぞ』

 

「いや、結構良い奴らなんだ……あれでも」

 

『なら、友が道を踏み外した時は正してやるのも友情だぞ』

 

「ごめん、それは流石に疲れた」

 

 心底呆れたように呟く『騎士シェンロン』と諭すように呟く『武者ナタク』。正義感の強い二人だけに朱に交わって祐司が妙な方向に行かないのか心配なのだろう。……ナタクの言うとおりに何度か去年からそうしていたのに何度注意しても効果が無い為に既に諦めている。

 

『ですが、流石にあれはやり過ぎなのでは……』

 

『まあ、警察とかのお世話になるよりもマシなんだろうけどね』

 

「いつも繰り返してるからな……あいつ等」

 

 捕まったら最後袋叩きにされそうな三人に対して同情的な意見を向ける良心的な『騎士サンドロック』と『武者サンドロック』。

 

『ああなるのも自業自得と言う所か?』

 

『そうなるな』

 

 一瞥しつつ冷静に切り捨てる『騎士ヘビーアームズ』と『武者ヘビーアームズ』。午後の授業もサボるべくもう一眠りするべきかと祐司は、逃げ回っている三人から意識を話してそんな事を考え始める。

 

『いや、サボりたいならここから離れた方が良いぞ』

 

「どう言う意味だよ?」

 

 そう言って頭の中に聞こえてきた武者ウイングゼロの言葉に聞き返す。

 

『誰かがこっちに向かって来てる。あの連中ほどじゃないとは言え、お前も問題児だからな。お前のクラスにどうして問題児ばかり集まるんだ……』

 

「オレが問題児なのは自覚してるけど、三馬鹿とアホと一緒にするな。それより何が……」

 

『生徒会の誰かだろう。奴等の気配が近づいてる』

 

「それを早く言え!!!」

 

 武者ウイングゼロに対してそう叫んで慌てて屋上を後にする祐司だった。

 

『流石にサボりの常習犯と言うのも拙いだろう。最悪留年するぞ』

 

「異世界出身の割りにこっちの世界に詳しいな!?」

 

『似た世界で生活経験あるからな』

 

 主に武者○伝の物語で。そんな訳で騎士ウイングチームは武者ウイングチームの現代日本生活経験者組に現代社会について勉強していた。

 ……どうも、剣と魔法のファンタジーな世界(スダ・ドアカワールド)出身のメンバーには現代社会はどれも珍しいらしい。……この世界も十分にファンタジーだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日……一誠に彼女が出来たと言う噂が流れていたが、祐司は祐司で早朝からサボっていたので真偽の程は定かではなかった。

 

『これで奴も少しは真っ当な道に進んでくれるだろうな』

 

『ああ』

 

 噂を信じている騎士シェンロンと武者ナタクがそんな会話を交わしていた。

 

「いや、あいつに彼女が出来たなんて単なる噂だろ? そんな事は……いや、他校の生徒と言う可能性なら有りだな。実体を知らなきゃ運が良ければ相手も騙されるだろうし。……実体を知ったら振られそうだけだな」

 

 友人だが近場に居ない為にサラリと失礼な事を言ってくれる祐司だった。

 

『いや、幸せを祈ってあげるべきだろう、友人なんだから』

 

 そんな祐司へと注意する騎士サンドロック。すっかりと一誠の噂の真偽についてワイワイと話しているガンダム達と祐司だが、そんな中で騎士ウイングが参加していない事に気付く。

 

「どうした?」

 

『いや、この世界の事を考えれば不思議は無いんだろうが……オレに近い力を四つ感じた』

 

「……お前(騎士ウイング)に近い?」

 

 騎士ウイングに近い力と言えば天使又は堕天使の二択しかないだろうが、この町は悪魔の管轄する地−人間で有る祐司としては非常に気に入らない事だが−で、この場所に天使か堕天使が居るとなると……。

 

「何かの用が有って正式な許可を受けた連中か? それとも……」

 

 そう呟いて手の中に出現させる一枚のカード。もう一つ考えるのは悪い可能性。

 

「何かを企んでこの土地をその拠点に選んだ、か?」

 

 表情を鋭くさせギリッと音が鳴るほど強く歯を食いしばる。祐司は三大勢力と言われる連中に対して殆ど良い感情を持っていない。本来の領土があるのなら、其処に引き篭もっていろ、お前達の都合で無関係な人間を巻き込むな、そう思う程度には。

 

「……後者だとしたら落伍者の鴉(堕天使)共か。良いだろう……もしそうだったら……この世界のふざけた天使共に変わって天の裁きって奴を下してやるよ」

 

 騎士ウイングのカードを握り締めながらそう宣言する。

 

『落ち着け、祐司。まだそうだと決まった訳じゃない。先ずは調査から始めるべきだ』

 

「そうだな。放課後から居そうな場所を探ってみるか」

 

 騎士ウイングの言葉に冷静になると握り締めていたカードを消す。相手の目的が何も分からない以上動きようも無いのだから。僅かな可能性だが後者の場合は闇の化身の影も有るかも知れないのだし。

 

 こう言う時に忍者出身の武者デスサイズが居てくれれば良い、とも思うが現在進行形で騎士デスサイズと共に行動して貰っているので外せないのが現状だ。

 

『どうせサボるんだから今からでも良いだろう?』

 

「そう言うのは気分の問題、だろ?」

 

 呆れたように呟く武者ウイングゼロの言葉にそう答えつつ、祐司は屋上を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後の公園……

 

 放課後からある程度町を廻っていたが、どうも怪しい場所は一箇所しかない。

 

(教会……だった場所か。まあ、鴉共の巣には丁度良い場所だろうけどな)

 

 実際そうだとすれば最悪は鎧闘神にでもなって問答無用で叩き潰せば良い、等と危険な事を考えている祐司だった。

 

『だが、あそこに居るとは限らないんじゃないのか。流石に、あからさま過ぎるだろう?』

 

(確かに。鴉は結構頭が良いからな。最も……落伍者にそんな知恵が有るとは思えないけどな)

 

 武者ウイングゼロの言葉に対して口ではそう言っているが決して甘く見ては居ない。だからこそ行動は慎重になっているのだが……

 

『っ!? 祐司、この近くに堕天使が居る』

 

「そうか!?」

 

 騎士ウイングのカードを取り出し、

 

「何処だ?」

 

『公園の中……オレが案内する』

 

「分かった。騎士変化!」

 

 カードの光の中を潜り抜け騎士ウイングの姿へと変身すると、騎士ウイングは地面を蹴って其方へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「『っ!?』」

 

 その場へと駆けつけた時祐司が見たのは、黒い一対の翼を背に生やす女の光の槍が、一誠の腹部を貫いている場面だった。

 

(……あの、鴉が)

 

『落ち着け、祐司。怒りは判断力を狂わせるぞ』

 

 怒りを覚える祐司を騎士ウイングが嗜める。冷静な口調だが付き合いの長い彼にはわかる怒りが込められていた。

 

 

 

「御免ね。貴方が私達にとって危険因子だったから、早めに始末させて貰ったわ。恨むなら、その身に神器を宿らせた神を恨んで頂戴ね」

 

 

 

(……あの雌鴉)

 

 女堕天使の言葉が騎士ウイングにも聞こえる。彼女の言っている神とはこの世界の存在である祐司にとっては、『この手で叩き切りたい』と思っている聖書の神なのだろうから、それを侮辱する事は別に良い。

 ……祐司にとって本当の意味での『』とは自分を救ってくれた人であり父の様に思って尊敬もしている騎士ガンダム……黄金神スペリオルカイザーだ。少なくとも、広域的な意味では神である事に変わりない……そんな相手を気に入らない相手が間接的な上に意図していないとは言え侮辱した。

 

「バスターソード……」

 

 バスターソードを振りかぶる騎士ウイング。彼の背中に広がる半透明の一対の純白の翼。そして、女堕天使を狙い一気に振り下ろす。

 

「パワーズ!!!」

 

 バスターソードより放たれた光の奔流が堕天使を飲み込まんと襲い掛かるが、それによりも早く襲撃に気付いた堕天使はそれを避ける。

 必殺技はその名の通り一撃必殺の破壊力を持っているが、それ故強力な物ほど隙も大きくなる。不意打ちとしては派手過ぎたと言う事だろう。

 

 半透明の翼を広げながら騎士ウイングはゆっくりと堕天使の前に降り立つ。

 

「っ!? まさか……天使!? 何でこの町に天使が!?」

 

「正確には『』天使だ。ガンダム族の騎士、騎士ウイング」

 

 バスターソードを相手へと向けて宣言する。

 

「ターゲットロック、抹殺する」

 

『いや、少し物騒すぎないか?』

 

 祐司の意識で言った言葉に騎士ウイングの突っ込みが入るが、『お前を殺す』と言う言葉よりも良いかな〜と判断した結果だ。








 

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