第五話
(んじゃ、危なくなったら救援を頼んだ)
『『ああ』』
教室を出る前に召喚したガンダム達、武者ナタクと騎士シェンロンへとそう頼んでおく。向こうが危害を加えそうになったら即座に飛び込んで貰えるようにしておけば、もう一人の妹分の護衛に着けていた騎士デスサイズと武者デスサイズも合わせて四人の
血縁上の兄弟である
比較対象が良い例が
そんな事を考えている間に通されたのは今は使われていない旧校舎。……よく怪談話や肝試しの舞台になりそうな場所だが、不思議と駒王学園ではそう言った話を聞かないのは此処を本拠にしている悪魔達の思惑が有っての事だろう。
それも無理は無い、誰でも自分の家に土足で勝手に入り込まれていい気分がしないのは当然の事だから。寧ろ、そうやって一般人を遠ざけるのは彼等の安全の為にもベターな判断だ。
『オカルト研究部』、ドアにはそう書かれていた。
(悪魔がオカルトを研究って?)
『いや、寧ろカモフラージュには良いんじゃないのか?』
『木を隠すには森の中。合理的な判断だ』
騎士ウイングとサイバーウイングゼロの言葉が聞こえてくる。確かにカモフラージュには丁度良いだろう。誰かに
『うあー……』
騎士ウイングは思わずそんな事を上げる。
中に入ると壁の至る所に魔法陣を思わせる幾何学模様が描かれていた。本物の悪魔だと言う事を知らなければ、オカルト研究部と言う立場はやはり『本格的だな』で済まされる範囲だ。
実際、それほど魔法陣について詳しくないので、中には適当に描いたデザインと何らかの目的で書かれた物も混ざっているかもしれない。正にサイバーウイングゼロの言う通り『木を隠すには森の中』だ。
どこぞの映画や漫画・アニメで有名な宇宙から来た金属生命体達も地球の機械の姿にカモフラージュしているのだし。
ぶっちゃけ、元天使の騎士ウイングにとっては少し複雑な物が有るのだろう。……スダ・ドアカワールドの天使はこの世界の天使の様に悪魔と戦っていたわけではないが。寧ろ、それはガンダム族の役割なのかもしれない。
『この部屋を見ていると、ハイドラの事を思い出すな』
武者ウイングゼロはそうコメントしていた。
呪術師と豪将の二つの顔を持った悪の武者ハイドラ。武者ウイングゼロに呪いをかけて子供の『羽丸』の姿に変えたのは『呪術師ハイドラ』の方だ。……騎士ウイング達も古代神バロックガンとの決戦の時に似た名前のモンスターと戦った事も有ったそうだ。
……ハイドラガンダム、と言うよりも双子座のガンダムに登場するガンダム達の扱いは騎士ガンダムが一番悪い気がする。主役なのにモンスターになったり(LOブースター)、主役の後継機なのに敵の幹部(ガンダムグリープ)だったりするし。
なお、主役はバロックガンを裏切った親衛隊の一人らしい。
「おお! あれは学園のマスコット、一年生の『搭城 小猫』ちゃんじゃないか!」
一誠が騒がしいので其方へと視線を向けてみると、
「……今朝ぶりです、祐司兄様」
「ああ、帰りは別だからな」
『搭城 小猫』……蛍よりも先に祐司の家族なった相手であり、祐司と一緒に騎士ガンダムに助けられた経緯がある。
本来の名前を隠す為に入学時に保護者である騎士ガンダムの付けた偽名なのだが、何故この名前にしたのか聞いた時は、『下手に世界意思に逆らわないため』だそうだ。蛍と違って黒野姓にしていないのもだ。……当の本人もそれで良いそうだし。
異世界の神である
「おい、祐司! 兄様ってどう言う意味だよ!? お前、小猫ちゃんとどう言う関係なんだよ!」
「どう言う関係って……同居人。保護者が同じなんだよ」
「同居人だとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
血涙でも流しそうな勢いで絶叫してイッセーが泣いている。正直対応に困るので無視する事にした祐司だった。
小猫を一瞥しつつ内心、『これで蛍の事まで知られたらどうなるか?』とも思う。彼女もまた十分に美少女と呼べる外見なのだし。血の繋がらない義理の妹と兄と慕う同居人と、祐司は一誠にしてみれば羨ましいであろうシュチエーションの中に居るのだろう。
ふと、小猫の護衛に着けていた騎士デスサイズと武者デスサイズの存在も確認する。祐斗や他のグレモリーの眷族にも気付かれないのが二人の技量の高さを物語っている。
「それで、なんで此処に?」
「……兄様も来るといわれたからです。……あと、お菓子をくれると言われたからです」
祐司とお菓子に釣られたらしい。ソファーに座って羊羹を食べているのでそれに釣られたのだろう。……確かに着けている護衛の実力を考えれば危険は無いのだろうが……
「まあいいか」
取り合えず、それは大して気にしない事にしておく。『罠ごと敵を正面から食い破る』と言うのはある意味黒野家の家訓なのだし。
そんな事を考えていると何故か部室の中からシャワーの音が聞こえる。旧校舎の部室の中にシャワーが有るらしい。
(……ある意味、彼女にとっての城だな、此処は)
思わず苦笑する。この学園の上の人間の事を考えると、この旧校舎と言う場所は正にリアス・グレモリーにとっての城なのだろう。……別に上の許可が有るなら文句は言わないし言う必要も無い。
ある意味じゃ、一人しか居ない廃部寸前の部活に入って学校内にプライベートスペースを持っている生徒と変わりは無いのだし。
「部長、これを」
「ありがとう、朱乃」
聞き覚えの無い事が二つ聞こえてくる。声の感じから言って二つとも女性の物で、会話の内容から推測すると一人がリアス・グレモリーなのだろう。
「……いやらしい顔」
小猫の呟きに一誠の方に視線を向けると、『変態』と言うのが良く似合う顔をしていた。……彼の中の神器は龍に関係するらしいが、騎士シェンロンが居たら元龍神として性根を叩きなおすとか言い出しそうだ。武者ナタクも喜んで協力しそうだし。性格が合うのかこの二人は本当に仲が良い。一誠には予め召喚して離れている事を感謝して欲しいとも思ったが、
『……すまない、知られたみたいだ』
騎士サンドロックの声が響く。騎士シェンロンにしっかりと知られたようだ……哀れにも。『変態』と言う言葉が良く似合う一誠の顔に怒りを感じて性根を叩きなおすと意気込んでいるらしい。……結果的に強くなれるのだけは間違いないし、死にはしないだろうから、この友人が無事に帰ってくる事を祈っておく。
元一般人の一誠にとって能力の強化は必須だろう。力が必要な時に慌てて鍛えた所で強くなれない。現実はゲームの様に簡単に強くはなれないのだし。騎士シェンロンが意気込んでいるのなら任せるのも良いかも知れない。
(イッセー、死ぬなよ」
「って、おい! 何で行き成りオレが生きるか死ぬかの問題になってるんだよ!」
「……声に出てたか?」
「思いっきり出てたよ!」
「……じゃあ気にするな。お前の変態が治らない限り近い内起こる未来だ」
「どんな未来だよ!?」
「具体的に言うと……近い内お前を鍛えなおしてやるって言ってる人(?)が居る」
「そ、それが危ないのか?」
青い顔で震え居ている一誠から目を逸らしつつ無言を貫く祐司。ぶっちゃけ一誠にはそれだけで十分恐怖の対象だった。
「まあ、死ぬほどきついってのだけは確かだな……」
「なんだそりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
……其処に
「ごめんなさいね。昨日はイッセーの家に泊まったままだったから、シャワーを浴びていなかったのよ」
流石に何も知らずに騎士シェンロンに連行されて強制的に鍛えさせられるのは哀れと思い、覚悟してもらおうと忠告していると黒髪ポニーテールの美人な女性とリアス・グレモリーがカーテンの奥から出てきた。
彼女が一誠と一緒に登校してきた理由はそれなのだろう。主に祐司が堕天使を跡形も無く吹っ飛ばした時に彼女が彼を回収して行った後で起こった事は。詳しくは聞く気もないし興味も無いが。
「こんにちは、『姫島 朱乃』と言います」
「始めまして、小猫の同居人の一人で黒野祐司です」
「こ、こんにちは。兵藤一誠です」
朱乃と名乗った女性に多少警戒心を持って答える祐司と、緊張気味に答える一誠の二人。
「
リアス・グレモリーが一名を除いて全員が居るのを確認した後祐司達三人の方へと視線を向ける。
そう、この場には祐司にとって不愉快と言う言葉の集合体である血縁上の兄弟の
「ようこそ、オカルト研究部へ。私達は貴方達三人を歓迎するわ…………
彼女の言葉に祐司は、何時かは来ると予想していたが、なるべく関わりたくない方からの接触に思わず心の中で溜息を吐きつつ『歓迎されたくない』と思う。
「粗茶です」
「あっ、どうも」
「すみません」
改めてソファーに座ると朱乃がお茶を淹れてくれた。
「うまいです」
「あらあら、ありがとうございます」
一飲みしている一誠を横目で一瞥しつつ、少なくとも自分よりも前に此処に来ていた妹分が飲んでいる事から問題は無いとは思うのだが、やはり
流石に信頼すべきか分からない相手の拠点で出された物に簡単に口をつけるほど甘い性格はしていないのだ。……ぶっちゃけ、小猫に何かしていたら彼女の身内の魔王が出てこようが、どうなろうが後先考えず問答無用で叩き潰していたが。鎧闘神になってでも。
物騒な方向に考えが向かっていた事に気付いて軽く息を吐くと朱乃が祐司の方を見ていた事に気付く。
「飲まないんですか?」
「喉渇いてないんで」
取り合えず、牽制として『思いっきり警戒しています』と言う態度を見せておく。極力敵対はしたくないのだし、下手に相手に変な気を起させないのもまた優しさだろう。下手に変な気を起させて敵対したら悪魔側の知人達に迷惑をかけそうだし。
「朱乃、貴女も此方に座ってちょうだい」
「はい、部長」
「単刀直入に言うわ、私達は“悪魔”なの」
朱乃がソファーに座るとその言葉を切欠にリアスから一誠と祐司達への説明が行なわれる。ぶっちゃけ、祐司と小猫にとっては知っている事だ。
悪魔と堕天使はその二つの勢力の領土である冥界……俗に言う地獄の派遣を狙い敵対している事。そして、神の命を受けて悪魔と堕天使を滅ぼしに来る天使も含めた賛成力が有ると言う事。
祐司自身は悪魔と堕天使に対しては常々敵の敵は同じだから仲良くしろよ、とも思っていたりする。
神の下僕である天使。
冥界の本来の一族である悪魔。
神に叛き冥界へと堕ちた堕天使。
その三勢力が三竦みの形を形成して睨み合い……その睨み合いのとばっちりを人間が受けている事も祐司達二人は知っている。付け加えるならば、小猫は悪魔の、蛍は天使の被害者だ。どうでも言いと思っているが、祐司自身は堕天使の被害も受けた経験が有る。
なお、祐司を襲ったのは下級の堕天使で、その時は祐司もガンダム達の力を使えなかったが騎士ガンダムによって一瞬で返り討ちにされた挙句……スペリオルドラゴンの悪の心と龍の力たる魔王『サタンガンダム』と一緒に冥界の堕天使の領土にフル装備で二人仲良く乗り込んで幹部達を一人残らず叩きのめして締め上げたらしいが……真相は知らない。っと言うよりも、興味が無い上に怖くて知りたくない。
小猫と蛍の事については小猫の場合は過去の事なので直接的に黄金龍の逆鱗に触れなかったらしく、蛍についてはガンダムの力を使えるようになった祐司が対処した事なので手を出さなかったらしい。……そう言った意味では堕天使達は運が悪いとしか言いようが無いだろう、伝説の勇者と魔王の二人を怒らせてしまったのだから。……その時アルガス騎士団が居なかった分まだ幸運かもしれないが。
まあ、祐司はその時からもう一人の父と末っ子に見える長男が増えた程度の認識に留めておいた。
なお、一誠は部活動の一環と思っているので流石に引き気味である。少なくとも、オカルト研等どう考えても一般的な学生には敷居の高い部活だ。
「いやいや、先輩。幾らなんでもそれは普通の男子生徒であるオレにはちょっと、難易度の高いお話ですよ」
「オカルト関係には興味は無いんですが」
一誠の言葉に便乗してそう呟いておく。
「オカルト研究部は仮の姿よ。本当は私達、悪魔の集まりなの」
「んなバカな……」
悪魔などと言われて普通の人間は理解できるわけが無い。実際に見てしまったとしても夢としか思わないだろう。
「そ、そりゃ……昨日こいつが妙な姿に変身して黒い羽が生えた変質者と戦ったって言う妙な夢を見たって話しましたけど……」
一誠のその言葉に祐司は僅かに#マークを浮べる。
「イッセー……後でボコる」
「だからそれは夢の話だよ!!!」
「……手伝いますか、兄様?」
「いや、一人で十分」
「おいぃぃぃぃぃぃ!!!」
悪魔だの何だのと言う話よりも、直接的な危機の方に慌てる一誠だった。仲間であるガンダム達を妙な姿と言われた事の方が頭にきていたりするが、それはそれ。
「……天野夕麻」
「っ!?」
その名前を聞いて一誠は思いっきり目を見開く。驚いた表情を浮べてその視線をリアスへと向けている。
「あの日、貴方は天野夕麻とデートしていたわね?」
「……冗談なら止めてください。正直こんな雰囲気で話したくないです」
怒気の篭った声で言う一誠。
「……その天野夕麻って誰だ?」
「……一誠先輩の彼女の名前らしいです」
「ああ、あの噂の」
そんな一誠は放置しつつ小猫とそんな会話を交わす祐司。初めて噂の内容を今知ったのだ。
「ん?」
そして、何時かの一誠の言葉と態度の意味が祐司の中に一つに繋がる。
「イッセー、少し落ち着け。それと……勘違いしてるから言っておくぞ」
「何をだよ!?」
「……オレはお前から噂になっていたお前の彼女を紹介されてない」
「あっ!?」
そう言われて初めて気が付いた。一誠は祐司に夕麻の事を紹介していない。知っていないのも無理は無い……祐司にだけはまだ紹介していないのだから。
「第一、此処で関係無い話をするわけ無いだろう」
そう言って祐司はリアスの方へと視線を向けて続きを促す。
「天野夕麻。アレは昨夜貴方を襲った堕天使と同じ存在よ」
「あれって、夢じゃなかったんですか?」
「そうよ。そう言えば、昨日イッセーを襲った堕天使を貴方が討った様だけど、あれって何だったの?」
「……純度100%の科学の力で消し飛ばしましたが。それが何か?」
「か、科学って……人間の力じゃ堕天使を滅ぼすなんて出来ないはずよ」
「そりゃ、現行の技術じゃ一部を除けばそうでしょうね。サイバーウイングゼロの力は『超常』の域に到達した科学。よく言うでしょう……進みすぎた科学は魔法と変わらない、ってね」
現行の科学の力では無理だろうが、サイバーウイングゼロの世界にある科学力は既に超常の力と対等に渡り合える粋に有る。
「ああ、下手に他勢力の奴を始末すると問題有るって話ですね。まあ、人間であるオレには関係ない話ですから」
「関係ないって、貴方ね。此処は私が魔王様から管理を任されている土地なのよ」
「……それこそ知った事じゃない。此処は悪魔と堕天使の領域の冥界でもなきゃ、天使たちの領域の天界でもない。こっちの世界で人間に迷惑を掛けるなら……討つのは当然だろ」
「当然、って」
「……取り合えず、こいつを殺した烏女にオレはケンカを売られた。だからその仲間と思われるあのカラスを始末した。それだけだ、そっちには関係ない」
「関係は有るわ、何度も言うようだけど此処は……」
「一応、魔王様の一角はオレの事知ってるぞ」
「え゛?」
祐司の呟きにそんな反応を示すリアス。なるべく悪魔側の知人には口止めを頼んでおいたが、それがマイナス方面に動いたようだ。
「当代の『レヴィアタン』とは知り合いなんでね」
友好的と言うよりも、