第七話
あの後、『二極の龍神』についてリアスに質問してみたが、何でも先代の魔王達が命を落とした戦争に於いて乱入してきた二天龍を金色の光と共に表れた黄金の双頭龍が姿を変えた巨神が二天龍を治め、その力に引かれて現れたもう一体の龍神と戦い次元の狭間へと送り返した事から、たった一度しか姿を表していないとは言え『絶対なる黄金龍』と言う呼び名を与えられ、真なる世界最強の存在として認識されているそうだ。
……結論から言うと、
(……父さんだな、絶対)
(……父様ですね、絶対)
それは間違いなく黄金神スペリオルカイザーとなったスペリオルドラゴンだ。実際、僅か一度しか姿を表していないが……恐らくこの世界に於いてスペリオルドラゴンとして活動してたのはその一度きりだろう。主にこの世界では影響を出さないように騎士ガンダムとサタンガンダムに分離しているし。
祐司と小猫が自分達の保護者が過去に何をやったのかを知って、何気に尊敬を強めていた時、一人一誠は頭を抱えていた。
「……ハーレム王に、オレは成るっっっっ!!!」
訂正、頭を抱えていたと思えば突然叫びだした。……どうやら、色々と葛藤が有ったらしいが、結局の所悪魔として生きる事を選択したらしい。
(まあ、それ以外の選択肢なんて最初から無かったけどな……)
本人が望んだにしろ、望まなかったにしろ、非常事態だったにしろ、一度悪魔に転生した以上は既に人間には戻れず後戻りは出来ない。付け加えるなら、あの時の一誠は瀕死の重傷だった。戻れたとしても精々死体にしか戻れない。
まあ、悪魔に転生した一誠に選択肢など初めから存在などしていないのだ。拒否した場合にはハグレ悪魔として処罰される事になる。
「えーと、貴方達と黄金龍の関係って教えてもらえるかしら?」
「オレ達の保護者です」
即答。
取り合えず、突然絶叫した一誠を一時放置してリアスは祐司達と黄金龍の関係を聞いてきたが、返ってきた返事に対してよく分かっていない一誠を除いて思いっきり固まってしまった。
「そ、そうなの……」
「あ、あのリアス先輩。祐司の親父さんがどうかしたんですか?」
「……もうそれには触れないで、お願いだから」
あっさりと答えた祐司に頭痛を感じているリアスだった。仮にも一度しか姿を表さなかったために公的には認められていないが、現最強の『
故に並び立つ存在として『二極の龍神』と呼ばれている。そんな相手の義理の子供がこんな身近に居るとは思いもしなかったリアスだった。
……後にその事を知った某混沌龍がスペリオルドラゴンに会いに祐司達のところに来るのだが……それはまた別の話。
色々と想像の斜め上を行っている祐司達の家庭事情に本気で頭を抱えているリアスはそれ以上考えない事にしたようだった。
「一誠は私の下僕で良いわね? 大丈夫よ、実力があれば何れ頭角を顕すわ。そして、爵位も貰えるかも知れない」
「はい、リアス先輩!」
「違うわ、私の事は部長と呼ぶ事!」
そんな会話を一誠とリアスが交わす中、祐司と小猫と騎士デスサイズは……
「……良いのか、そんなノリで人を捨てて……」
「まあ、アイツの場合選択しなかったんだから仕方ないんじゃないのか?」
「……本人が構わないなら良いと思います」
「いや、オレがガンダム族に転生した時の事を思い出すとだな……」
随分と軽いノリで悪魔として生きて行く事を選んだ一誠に頭を抱えている騎士デスサイズ。騎士デスサイズが真面目と言うのもあるだろうが、ガンダム族と悪魔……異世界スダ・ドアカワールドと言う違いは有っても、騎士デスサイズもスペリオルドラゴンの力によって死神としての生ではなくガンダム族としての人生を選んだ身の上だ。
幼い頃のデュオと言う法術師ニューが人として転生した少年を守る為、騎士デスサイズはスペリオルドラゴンの力によってガンダム族となり、同僚であった他の死神達と戦ったのだ。
「違うわ、私の事は部長と呼ぶ事!」
「部長ですか? お姉さまではダメですか?」
「うーん、それも素敵ではあるんだけど、私はこの学校を中心に活動してるから、やっぱり部長の方がシックリ来るわ。一応、オカルト研究部だから、その呼び名で皆も呼んでくれてるし」
一誠の言葉に暫く悩んでから首を横に振る。『お姉さま』と言う呼び名も悪くないと思っていたのだろう。
「分かりました。じゃあ部長、オレに『悪魔』を教えてください!」
一誠の言葉に満足げに頷くリアスを眺めつつ祐司は、
「イッセーらしいな」
呆れの篭った口調でそう呟く。少なくとも一誠の目指しているハーレムには悪魔に転生したのは最短ルートと言えるだろうが。
「……騎士デスサイズ……」
「何だ?」
「……シェンロンは何て?」
「……性根を叩きなおすと決意を新たにしているぞ……あと、武者ナタクも協力するらしい」
「……ご愁傷様です、イッセー先輩」
「……死ぬなよ、イッセー」
拳を天高く振り上げて『ハーレム王にオレはなる!』とどこぞの人気漫画の主人公のように叫んでいる一誠を眺めつつ心底同情する祐司と小猫だった。
どうも、持っている神器が龍を封じた物であるのが原因なのか、騎士シェンロンが本気でやる気を出している。一人の少年を守りつつも立派に剣士として育てあげた彼ならば問題は無いだろう……強くなれると言う意味でも、加減と言う意味でも。
哀れ、武者ナタクと騎士シェンロンとの模擬戦が必須科目なイッセーの訓練メニューが組まれているのだった。現在祐司の元に居る機動烈士隊と転生ガンダム達の中でかなり真面目な方に分類される二人に完全に目を付けられた様子だった。
「部長、オレに【悪魔】を教えてください!」
「良い返事ね、イッセー。良いわ、私がイッセーを男にしてあげるわ!」
一誠の返事に満足げに頷くリアス。何の問題も無く一誠は悪魔として生きて行く事を決めたようだ。
(……他種族からの転生悪魔が出世するのって大変らしいのにな……)
あえて口には出さずに心の中で、何も知らない一誠の背中を眺めつつそう思う祐司だった。
やはり何処の業界も新参者は肩身が狭い物らしい。ガンダム族、もっと言えばユニオン族はその限りでも無さそうだが……。経験者は五人もいるし。
特に騎士ガンダムの伝説の始まりでは、記憶喪失だった頃の騎士ガンダムは快くラクロアの騎士として迎え入れられたし。
まあ、そう簡単に転生悪魔から上級……王となれる悪魔がポンポン誕生していたら、天子も堕天使も大変だろう。
「ところでもう一つ聞いてもいいかしら?」
「良いですけど」
微かにリアスの纏っている雰囲気が変わる。それに気付いたのか先程まで呆れていた表情を浮べていた騎士デスサイズの視線も鋭さを増す。
「……貴方は、その子のお姉さんの事、知ってるの?」
「知ってますが、それが何か?」
……現レヴィアタンと親しいと言うのに悪魔と言う勢力に積極的に協力していない、転生者以外の理由がそれだ。逆に蛍の元に有るのが天使を嫌う理由で有り、祐司が持っているのが堕天使を嫌う理由だ。
結局の所個人と仲良くした所で勢力には加わらない。三人がそれぞれ持っている理由の為に黄金龍の眷属は完全に中立と言う立場を取っている。
……まあ、祐司自身悪魔と敵対したくないと思っている辺り、現レヴィアタンである最強の女性悪魔『セラフォルー・レヴィアタン』は外交が担当らしいが……面目躍如と言った所だろうか?
……親戚の叔父さん達感覚の
「そう、なら良いわ。それと……貴方は何処で異世界の存在と仲間になったのか聞いても良いかしら」
「それは「オレが話そう」デスサイズ」
リアスの言葉に答えようとした祐司の声を遮って騎士デスサイズの言葉が響く。
「オレ以外にも四つの世界の戦士達が祐司の仲間になっているが、オレ達は元々ある者達を追ってこの世界に、それぞれの世界の神がこの世界に使わした。だが、オレ達がこの世界で自由に活動する為には彼の力を借りなければならないわけだ」
「神って……」
悪魔であるリアス達にとって、目の前の相手が神の側の存在と言うのは複雑な心境なのだろう。
「オレ達やオレ達の前の勇者達が倒してきた闇の王。総称してオレ達は『闇の化身』と呼んでいる者達とその配下だ。この世界は自分達が本来の世界で出来なかった野望を果たす為の場所になってしまった。それを防ぐ為にオレ達はその配下と戦っている」
実際、この世界に逃げ込んだ闇の化身が何者なのかは分かっていない。比較的それぞれの世界での新しい英雄である彼らならばある程度優位に戦えるだろう、未知では無く既知の相手として。
「それがオレ達の目的だ」
「まあ、頻繁に現れる訳でもないし、依頼を受けて他の相手と戦っているけどな」
「貴方の言う敵の定義は?」
「主に依頼を受けて討伐を頼まれた相手。ハグレ悪魔や場合によってははぐれエクソシストも含まれるな」
内容によっては他勢力の依頼で他の勢力の相手とも戦うが、それは敢えて口には出さないでおく。一応、倒すべきターゲットは依頼の場合詳しく調べてからにしておくが。依頼と言う理由で過激派の手駒にされたくないので。
要するに賞金稼ぎ兼傭兵と言った所だ。
「あとは……依頼に関係なく、人間に害を成す存在は問答無用で、って所だな」
「も、問答無用? それに人間に害って」
あまりにも物騒すぎる台詞にリアスの表情が引き攣る。
「弱者の暴力って言葉も有るけど、三大勢力だけじゃない、力を持つ存在の被害を受けるのは力の無い人間だ。だからこそ、害を成した相手は迷わずに討つ。それがオレ達黄金龍の眷属の基本姿勢だな」
そう言った後祐司は一誠の方に視線を向ける。……そんな話の後で視線を向けられると流石に色んな意味で恐怖を覚える一誠だが……。
「主に人間であった頃の一誠を襲った夕麻と名乗った堕天使や、つい最近始末したあの男もその対象だな」
「……幾ら魔王様の知り合いだからって、私の領地で何の断りも無く勝手な真似しないで貰いたいんだけど」
「……此処は人間の世界で、どちらかと言えば日本神話の勢力圏だろ? 西洋の悪魔に言われる筋合いは無いな」
日本神話の勢力の元でなら文句を言われても仕方ないが、この国とは無関係の悪魔に言われてもそう言い返すしかない。
「ところで貴方にも聞きたいんだけど、悪魔になる気は」
「無いな。流石に一度ガンダム族に転生した身の上だ。ガンダム族であると言う事に誇りも有るし、二度も転生する気は無い」
騎士デスサイズにあっさりと断られる。
「えっと……二度目の転生ってどう言う意味なのかしら?」
「オレはスペリオルドラゴンの力でガンダム族に転生した元死神だ。オレの仲間達も別の種族からガンダム族に転生した騎士達だな」
「付け加えると、僅か六人だけで与えられる物は純粋に戦闘力だな」
「ああ。闘神の姿へ変身する能力と合わせて、ただの死神だった頃とは比べ物にならないほどの、な」
「そ、そう……」
二人の言葉から騎士デスサイズに匹敵するであろう実力の持ち主が、最低でもあと五人は居るであると言う事実下手な事をしたら彼らに加えて絶対なる黄金龍まで敵にする危険も有るのだから。
タダでさえ問題ばかり起す問題児を抱えているのだから、下手にオカルト研究部のメンバーになるように頼んだら……
(そっちの方が問題よね)
転生者が祐司に喧嘩を売りかねないのだから、その結果どっちが勝っても自分達に利益はない。
(寧ろ負けた方が良いかしら? ホント、私……何で彼を眷属に加えちゃったんだろう……)
心底後悔しているリアスだった。
「ま、まあ、依頼してくれるなら協力しても構いませんけど……先輩」
「そうね。それで力を貸してもらえるなら良いかしら。寧ろそっちの方が……」
一誠は兎も角転生者を嫌っている祐司に無理に所属して貰っても問題が生まれるだけで利益も無い。元々もう一人の
(……彼が此処に来る時は外に出てて貰えば良いわよね)
そう心に誓うリアスだった。