眼はどんな動物でもとても重要な器官です。犬の視覚器は眼球とその付属器
    (眼瞼、涙器、眼筋)からなり、眼球の付属器は眼球の働きを助け、眼球を保護
    するものです。これら視覚器疾患を眼科疾患と呼び、症状としては視覚障害、
    視野障害らが現れます。眼科疾患の中には生まれつき存在していた病気
    (先天性疾患)も数多く見られます。
    いつかは治るだろうと素人判断で放っておいたりすると、後遺症を残したり、
    ひどい場合は失明を起こすこともあります。他領域疾患と動揺に早期発見、
    早期治療がとても重要です。

 眼科の基礎知識 
○瞳孔反応・・瞳孔反応には対光反射と近見反射があり、神経支配が多少異なります。
  対光反射・・・瞳孔は、正常では光を当てると素早く縮瞳します。光を消すと直ちに
          散瞳して元の大きさに戻ります。光を当てていない他眼にも同じように
          起こります。前者を直接対光反射、後者を関節対光反射と言います。
  近見反射・・・両眼で15〜20cmの近くを見つめると、瞳孔が縮小する反応を
          言います。

○充血と出血の違い・・出血は血管が破れて血液が出たもので、充血は細かい血管が
              拡張した状態をいいます。血管縮小剤を使用すると、前者は
              変わりませんが、後者は赤みが少なくなります。

○目薬のさしかた・・・まず下眼瞼(下まぶた)をめくって、そこへ目薬を一滴入れ、2〜3回
             下眼瞼を開いたり閉じたりします。犬は目薬をさすと顔を振り目薬を
             眼瞼の外にこぼしてしまうので、点眼直後は気を付けます。

 では、代表的疾患をお話しします。 

先天性眼科疾患
眼瞼閉鎖症 眼瞼の部分的または全層の先天性欠損です。
治療として眼瞼形成術という手術が行われます。
マツ毛乱生症
マツ毛重生症
いわゆる逆さまつげのことで、まつげが二列にはえていたり、あるいは
眼の外側でなく内側に向かって生える病気です。この先天性マツ毛疾患
は、プードル、コッカーに多く認められます。
これらのマツ毛が結膜や角膜を刺激しなければ問題はありませんが、
刺激して涙が多く流れ出したり、眼瞼が痙攣するような場合は治療しな
ければなりません。このような異常なマツ毛の数が少ない場合は毛を
抜くことで一時的に治るものもありますが、数が多い場合は手術が必要
になります。
眼瞼癒着 眼瞼癒着は、眼瞼縁が相互に癒着を起こした状態をいいます。犬は、
生後2週間は眼が閉じられたままで先天的に眼瞼癒着をしています。
もし、生後14〜16日経っても目が開かなければ、それを開いてあげる
必要があります。
眼瞼外反症 眼瞼外反症とは、結膜表面の露出を伴う眼瞼の反対をいい、下眼瞼に
起こります。セント・バーナード、スパニエル系犬種などの顔面皮膚の
弛んだ犬に多く見られます。眼球は外気の刺激を受けやすくなり結膜症
角膜炎、流涙症らを発症します。これは外科的処置の対象となることが
多くあります。
瞳孔膜遺残症 犬の胎児は薄い瞳孔膜で瞳孔が閉じられ、誕生前に吸収されます。
瞳孔膜遺残症は生後も瞳孔膜が吸収されず眼球内に残ってしまう病気
です。遺伝的要因も考えられ、瞳孔膜遺残症の犬は繁殖に使うべきでは
ありません。
先天性白内障 胎児期に始まり、出生児には存在し、停止性あるいは進行性があります。
原因としては遺伝性か、眼の発育異常に続発するか、母体の影響の結果
として現れるかのいずれかが考えられます。他犬種に比べてゴールデン
レトリーバーで多く発生するという報告があります。
薬物による内科的治療効果は期待できません。外科処置が望ましいです。
遺伝性網膜
萎縮(変性)症
眼球内の網膜という組織に萎縮が起こり瞳孔反射の低下、視力低下、
失明の経過をとります。現在の所良い治療方法はありません。
コリーアイ
症候群
コリーにおける遺伝性眼疾患であり、この疾患は視神経および網膜の
発達異常を特徴とします。軽度では視力に異常は認められず、重度に
おいては網膜剥離、眼内出血を起こし視力障害が認められます。

後天性眼科疾患
眼瞼炎 化膿性眼瞼炎
 この疾患は眼瞼の著明な肥厚、炎症で、ブドウ球菌感染症が最も多く
 見られます。痒みを伴う場合があり、角膜炎や結膜炎を併発することが
 あります。また免疫性疾患の可能性もあり、原因によっては治療に
 なかなか反応しないケースや再発することもあります。
単純性眼瞼炎
 刺激性物質、花粉などとの接触や自傷性外傷の結果として現れる眼瞼
 の炎症です。原因療法をすれば眼瞼の炎症は治癒します。
眼瞼浮腫 虫さされ、蕁麻疹などにより起こる眼瞼の腫脹です。痛みや痒みを伴う
ことが多く見られます。
眼瞼腫瘍 眼瞼にできる腫瘍のことで、眼瞼腫瘍は眼の新生物のうち最も頻度の
高いものです。外科的な治療を必要とし、眼瞼から摘出された腫瘍は、
すべて細胞の種類と悪性度について組織学的診断が必要となります。
流涙症 眼の外に流れ出す涙の量が増えることにより起こり、マルチーズや
プードルなどに多く見られます。眼疾患における涙の分泌量の増加や
結膜炎による涙小点の閉塞、鼻涙管の異常などによる涙の鼻への
排出障害によるなどの原因が考えられます。白い毛の犬では、眼の
周囲が茶色や黒に変色するのですぐにわかります。
原因を検査して知ることが大切です。
結膜炎 細菌性結膜炎
 結膜に細菌感染が起こり、黄色や緑色の目ヤニを伴う結膜の炎症を
 いいます。重度のケースでは目ヤニで眼が開かないこともあります。
 適切な治療により完治します。
アレルギー性
 アレルギーによる結膜の炎症です。他の結膜炎より痒みがひどい
 場合が多いようです。
外傷性角膜炎 喧嘩などによって角膜に傷を負ったり、眼の周りの皮膚病や、痒みを
伴う眼の病気などを気にして、自分で眼をこすり、角膜に傷を付けて
しまうことがあります。涙を流し、眼を開くことが出来ず、やがて眼の
表面は白く混濁して来ます。傷は、ごく浅い物から他の病気を
引き起こす原因になるほど深い傷に至るものまでさまざまです。
外傷性角膜炎は眼球内部の病気に進行することが多いので、
ただちに獣医の適切な診断と治療を必要とします。
ブルーアイ 犬伝染性肝炎(犬アデノウィルスT型感染症)による眼病変
です。くわしくは伝染病のページに書いてあります。
デスメ瘤 角膜に透明なデスメ膜が突出し、水疱を形成したものをいい
ます。突出した眼を持つ犬の角膜中心部腫瘍ではしばしば
見られます。早期の外科的治療法が必要です。
老齢性白内障 犬の老齢性白内障は水晶体が濁る病気です。水晶体が濁ると
濁りを通して物を見るようになりますからかすんで見えるようになり
ます。痛みや充血は起こりませんし、他の犬に感染することは
ありませんが、白内障の原因は明らかではありません。
白内障の進行は初期では水晶体の周辺部から濁ってくることが
多いようです。周辺部はいくら濁っても視力には関係しません。
さらに進行して中心部が濁ってくると、光の通過が邪魔され磨りガラス
を通して見ているのと同じようになります。一度濁った水晶体は内科的
治療をしても透明には戻りません。軽度のうちに進行を少しでも遅らせる
ような薬を使うか専門医の外科的処置が必要となります。
緑内障 この疾患は眼の中の液体の圧力が上がり眼球が腫れてくる病気を
いいます。眼球内の房水という水が多くなることで起こります。
痛みを伴うケースが多いようです。