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性別で最も多くみられる病気は生殖器系の疾患です。
犬における男の子の病気は、去勢手術をしていない中年から高齢に
発生が多く見られます。これからお話しする病気は、すべて精巣から
生じるホルモンの仕業です。そして、早めに去勢手術をしてあげることで、
これらの病気のほとんどを防ぐことができます。問題が生じてから手術する
のは犬にとっても苦痛ですし、手術時のリスクも高く、術後の治療にも時間が
かかります。去勢手術は生殖器系の病気を防ぐことができる唯一安全な
方法なのです。
| 前立腺肥大 | 前立腺は牡犬の膀胱背部から尿管近位に位置する、二葉に分かれた 副性腺です。前立腺からは前立腺液が産生され、射精の際に精子を 有効的に運び、その間精子に栄養を補給する役割があります。 生後、年齢と共に精巣ホルモンの働きによって、前立腺も成長して 大きくなりますが、一定の段階でそれも止まります。その後、加齢と 共に主に精巣のホルモン(アンドロゲン・エストロゲン)の作用を受け、 前立腺肥大が生じます。 症状は、まったく見られない場合もありますが、排尿・排便困難(しぶり など)を伴うこともあります。別の病気で来院し、腹部のレントゲン検査で 見つかることも多いものです。前立腺肥大が長く続くと、排尿・排便困難 の結果、会陰ヘルニアを誘発することとなります。 |
| 細菌性 前立腺炎 |
細菌性前立腺炎は前立腺に細菌感染が生じます。細菌は主に尿道や 膀胱の感染から上行性に移行するか、体のほかの部位から血行性に 感染する場合の両方がありますが、最も多く分離されるのは大腸菌の ようです。 症状は、急性と慢性とで多少異なります。急性では痛みも強く、背彎姿勢を とり、発熱や食欲低下、痛みによる嘔吐などの全身症状や、血尿や頻尿も 見られます。尿検査では通常、無菌的に採取した穿刺尿中に細菌が存在 しますから、培養と抗生物質の感受性テストを行い、有効と思われる 抗生物質を選択して治療にあたります。 慢性の症状は、急性に比べるとあまり顕著ではありません。しかし、 慢性前立腺炎が疑われる場合には、前立腺液を採取して細胞診と培養を 行います。慢性では、抗生物質による治療は急性よりも困難になります。 というのは、一度慢性化すると、血液ー前立腺液バリアーというものが成立 してしまうからです。これは、血液と前立腺液のpHの違いによるもので、 血液中から前立腺内への抗生物質の浸透を大変悪くする要因になって います。ですから、慢性の細菌性前立腺炎では採取した前立腺液のpHに 基づいて脂溶性の抗生物質を選択して長期間の治療が必要になって きます。 |
| 前立腺腫瘍 | 慢性細菌性前立腺炎が進行して重度になると、前立腺にアブセス(膿腫) が生じます。つまり、腺内部が嚢状となりそこに膿が貯留します。 通常サイズが大きくなりますが、レントゲン検査の他に超音波検査が 必要です。治療は外科的な治療を行わないと、破裂して細菌性腹膜炎 を生じる危険が十分にあります。手術後の内科治療が長期必要になる ことは言うまでもありません。 |
| 腫瘍 | 発生率はまだそれほど高くありませんが、前立腺に腫瘍ができることも あります。多くは腺癌や移行上皮癌などの悪性になります。 症状は、排尿困難やしぶり、血尿、前立腺腫大など前途した前立腺炎と 類似しています。各検査の他、確定診断には前立腺の一部を取って 組織病理学的検査(バイオプシー)を行う必要があります。 中年から老齢の牡犬では見た目にも精巣の大きさが左右違うことがあり ます。これは通常、精巣に腫瘍が生じているためです。しかし、サイズが 正常でも腫瘍化していることがしばしば見られますから、要注意です。 セルトリー細胞腫の症状は、特異的で腫瘍細胞から放出されるエストロ ゲンというホルモンによって、体の牝性化(乳頭の腫大など)や左右対称性 脱毛・皮膚の色素沈着・血小板減少症などが見られます。腫瘍の発生する 細胞組織によって、セルトリー細胞腫・精上皮腫・間質細胞腫やその混合型 があり、多くは良性ですが、時には腰仙骨下リンパ節などに転移する場合も あります。 |
| 肛門周囲腺 腫 |
くわしくは『肛門疾患』の所に書いてあります。 |
| 陰睾 | 若い犬では、優性遺伝や劣性遺伝、染色体の欠陥によって生殖器系に 解剖学的あるいは機能的な問題が生じることがまれに見られます。 その中でも一般的に見られるのは、牡犬の陰睾です。これは、通常二つの 精巣は約8週齢(長くても6ヶ月)で陰嚢内に下降してくるのですが、 そのまま下降せずに腹腔内やそけい部に留まってしまうことをいいます。 日本では人気の高い小型犬に発生率は高いようです。牡も牝も遺伝子の キャリアーになるので、陰睾であることがわかったら、その兄弟姉妹は 繁殖をさせないことです。また、陰睾は正常な精巣よりも腫瘍が発生する 危険度が大変高くなっていますから、去勢手術を早く行って下さい。 |