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俺が眠い眼をこすりながら出社すると仕事場の前の休憩所でMy.同僚が腰に手を当てて牛乳の一気飲みをしているのが見えた。
うむ、いつもながら惚れ惚れするような飲みっぷりだ。
「ぐっど〜も〜〜にんぐ、マイフレンド」
「うむ、栗間。おはよう。ずいぶんと眠そうだな」
「昨日、ゲームしてたら夜更かししちゃって」
「子供のうちはちゃんと寝ないと背が伸びないぞ」
「もう大体どのくらいで止まるか分かってるからあんま気にしてないというかもう諦めてる」
「そんなやつには朝の牛乳をプレゼントだ」
どういってビンを一つ投げ渡される。
「お〜う、さんきゅ〜、ってなんじゃこりゃ『漢の朝専用!漢汁〜ほとばしる朝のパッション仕様』?」
「おう、今度新しく出そうとしている奴の試作品だ」
こいつの趣味は怪しげな通販商品の開発でいつも俺がモニターをやらされる。
作るものの中身はとりあえず普通なのだがネーミングセンスがいつもキチガイな物ばかりだがなぜか結構売れているらしい。
謎だ・・・。
「こんないかにもむさ苦しくて怪しげな奴飲めるか!?」
「問題ない。中身はバナナ味のカルピスの原液を牛乳で割っただけだから」
「なら普通の名前にしろよ。それが無理なら名前の書いてない奴をくれ。
朝からなんか気持ち悪くなるだろ」
「普通に書いたら面白くないだろ。俺が毎夜お前のためにそのビンに貼る奇想奇天烈なネームを考えているというのに・・・くぅぅぅ。
お前はこの献身的な好意を踏みにじるというのか!」
同僚がこぶしを効かせて暑苦しく語る。
「献身的な好意というならせめて朝が爽やかになるような普通の名前を考えてくれ」
そういってもらったビンのふたを開けて片手を腰に当てて一気に飲み干す。
「っふう、今日のはちょっとカルピスの原液が濃いかな。
少し甘すぎる気がする」
「ふむ、なるほど。参考にさせてもらおう」
ビンを返して他の同僚にも挨拶を適当にして俺は自分のデスクへついて自分の仕事を始めた。
「明日はビンビンになれるような名前を考えておこう」
「いらんわ!!」
「ねみぃ〜〜、あ、これ広報部にまわしてください」
「第45世界の大使のお迎えの予算?んなもんこっちにまわすな。予算課にまわせ」
「キャバクラ『はらぺこレース』?接待費でおとせなんて無茶な。つかそこはキャバクラなのか?ショッキングピンクな一頭身の食いしん坊いないよな?」
しばらく仕事を続けていると電話を受けた同僚が話しかけてきた。
「おい、栗間。課長がお呼びだぞ。応接間にこいだってよ」
「はいはいりょ〜かいで〜すっと。
また勧誘かいな。俺はやらないってゆ〜とんのに」
そういって今書き終わったばかりの書類を軽くまとめて立ち上がる」
「まあ、お前の場合はなぁ。ただでさえ人手不足なのに宝の持ち腐れしてたらそりゃあ勧誘の一つ二つはしたくもなるだろう」
「一つ二つで課長だけならまだともかくなんか上の人まで来るから嫌なの。
最近じゃそういう話がくるたびに懐に辞表装備だぞ」
「上からは好待遇で迎えるって言ってんだろ。いきゃあいいじゃないか。
誰もが羨ましがるもんもってんだから」
「回りが羨ましがられても必ずしもそれが俺にとってプラスポイントになるもんじゃないの」
「はぁ〜、お前は変わってるねぇ〜。へたすりゃ将来は幹部候補、それじゃなくてもかなりの地位まで上れるってのにそれを自分から捨てるなんて」
「人の価値観なんて人それぞれだろ。
それじゃさっさといってくるわ」
「おう、書類がまだたくさん残ってるからさっさと帰ってこいよ」
「あいあい、りょ〜かいしやしたよ」
同僚に適当に返事して俺は課長の待つ応接間へと向かった。
応接間の前で軽くノックをする。
「総務課、栗間十一等陸士事務員、ただいま参りました」
「おう、入れ」
「失礼します」
そういって応接間に入る。
恐らくまた勧誘に来た高官がいると思っていたが予想に反して応接間の中にはソファーに座った課長しかいなかった。
「何か御用でしょうか」
「まあ、色々とだ。
堅苦しくしなくてもいいぞ。とりあえず座れや」
「それじゃ遠慮なく失礼します」
課長がそういうのでとりあえず座った。
「それで栗間、いつものことごとくなんだが武装局員になるつもりは「ありませんよ」だよなぁ」
いつもの質問なので即答どころか最後まで言わさずに返した。
目上に対してどうなんだと言われそうだがいつものことなので課長も目くじらを立てない。
課長は机においてあるお茶を一口飲んでため息を吐いた。
「ほんと、なにがそんなに武装局員が嫌なんだ?
お前は魔力もはっきりいって十分すぎるどころか過剰すぎるほど持っているし、センスも悪くないと聞くし、少しがんばりゃ直ぐに俺より高官になれるだろ」
「いやぁ、課長。
いつも言ってますけど魔力もってて戦えるからってだから武装局員になるとは限りませんよ。
第一俺ドンパチするの好きじゃないですし、そんな地位とか欲もそんなありませんしね。
せいぜいひび普通に生活していけて年金払えるくらいのお金があれば十分です」
「お前枯れてんなぁ〜」
課長の言葉に口に含んだお茶を噴出しそうになった。
「酷!、なんすか枯れてるって、一応まだ十代前半ですよ俺!?」
「十代前半の青年が日々生活できるだけで満足してんじゃねえって言いたいの。
夢とかないのかよ」
「夢ですかぁ〜、そうですねぇ。
かわいい嫁さんもらってのんびり過ごしたいですね」
「やっぱ枯れてんじゃねぇか」
「失礼な、十分夢ある目標でしょう」
「他にもあるだろ、こう、大冒険したり、大幹部になって大きな改革したりとか、こう刺激的なこととか」
「俺からすればこの世界に来る前と来たことで刺激的なことはもう十分お腹いっぱいです。
後はもう平穏な余生を過ごしたいんです」
「お前、枯れてるというかふけてんな」
「余計なお世話です。
で、結局用とはなんです?まさか実りのない勧誘のためにわざわざ応接間に呼んだわけではないでしょう」
そういってぬるくなったお茶に手をつける。
「まあ、正直関係あるっちゃ関係あるんだがな。
管理局は人手不足なのにこんなところに高ランクで将来有望な人材がいるのにこのとうり本人にやる気がなくて困ってるわけだ」
「ふむふむ」
「それでお上の方は環境を変えてみたらどうかって通達がきてな。
うちの部署は完璧にデスクワークだけの部署だからな。
武装局員がいるところとかに置いたらもしかしたらその気になるかも見たいな考えらしいぞ」
「あ〜〜、つまるところ」
課長はテーブルにおいてあった封筒から書類を出してみせる。
「異動だ。まあ、元気にやって来い」
「うぉぉ〜〜い、そんな簡単に異動させられちゃっていいんですカイ!?」
「上からの指示だしな。根回しはバッチリだろ。
どうせ俺達は中間管理職だしな。上からかかれば異動なんてチョチョイのチョイって奴だろ」
「そんな〜〜」
「まあいいじゃねえか。
ほら、よくドラマで上の権力争いみたいな感じで強制的に武装局員にならされるよりましな一応平和的な意識改革だろ。
俺がこういうのもなんだが今までどおりにお前が跳ね除けてしまえば結局のところ変わりなしなんだから。・・・・・・まあ、何時まで穏健的な手段でこられるかは分からんが」
「なんか、最後の方サラリと恐いこと言ったーーーー!?」
「ほら、さっさと荷物まとめとけ。
新しいお前の職場は明日から正式に動く新しい部隊らしいからな。
なんかここからはちょっと遠いらしいから早く準備しないと間に合わないぞ〜〜」
「んな人事みたいに。
つか、何でそんなに急なんですか!?」
「ん〜、本当は三日くらい前に来てたんだけど書類の山に埋もれてしまってな。
つい、やっちまったZE☆」
「やっちまったZEじゃないっすよ。
みんなに挨拶もしなきゃならないですし寮の荷物は・・・元々少ないから直ぐ終わるとしてもデスクや書類の引継ぎもしなきゃいけないですし、どうしてくれるんですか!?」
「へへ、やっちまったZE☆」
「やっちまったじゃねーーー!?」
「まあ、冗談はここら辺にしといて引継ぎとかは部署のみんなにも手伝うように言っておくから今日の午前中に全部終わらせて、昼には部屋の荷物片付けてあっちにいけるようにしておけ。
荷物はまとめておいたら宅急便で送っといてやるから」
「はぁ〜、了解です。
それじゃ、今から片付けに入ります。
とりあえず・・・・・・、長年お世話になりました、課長」
なんだかんだいって結構な時間をこの部署でやってきたので課長には結構世話になった。
色々と感謝をこめて頭を下げた。
同僚とは会うこともあるだろうがこの思いである部署に帰ってくることはないだろう。
ベストプレイスというわけではなかったがそれなりに思い入れはあったと思う。
――やべ、そう思うとちょっとうるっと来たかも。
「おう、あっちでも元気にやって来い。
まあ、お前が行く部隊は試験部隊で1年だけの部隊だからな。
お前が武装局員にならなかったらここにまた戻ってくるかもしれんしな。
そん時はこき使ってやるから安心しろ」
「は?」
「ん?お前書類読んでなかったのか?
そこは試験的な部隊でな。
稼動期間は基本1年なんだ」
「俺のシンミリをかえせぇぇーー!」
機動六課施設前に一台のタクシーが止まる。
「あんがとございました〜」
そんな言葉と共に後部座席から一人の男が降りてくる。
「あぁ〜、何でこんな微妙なところにあるかな。
前のとこ近くやったら部屋の整理もしないで職場変更だけですんだのに」
機動六課は今日から稼動するためかあわただしく人が働いている。
「んん〜、まずは部隊長のところか。
フロントでええかな? すいません。」
「あ、はい。なんでしょうか」
「この度機動六課に出向してきた栗間十一等陸士事務員です。
部隊長の方へ挨拶させていただこうと思ったのですが部隊長はどこにいらっしゃいますでしょうか?」
――やっぱ最初の印象は大事だよな。
「少々お待ちください。――八神部隊長、本日出向してきた栗間十一等陸士事務員が面会を求めていますが・・・あ、はい。分かりました。失礼します。
八神部隊長は部隊長室でお待ちしているそうです。
部隊長室のほうへ行って頂けますか」
「了解しました。これからもよろしくおねがいします」
「はい、こちらこそお願いしますね。
あ、こちらが機動六課の見取り図になってます」
「あぁ、ご丁寧にどうもです」
そういって栗間はフロントを離れた。
――それにしても女性比がたけえな。
周りの働いている人を見る限り女、女、女、男、女な感じだ。
――なんでこんなに。部隊長の趣味か?
ならば部隊長はきっと中年の変態親父に違いない。
きっと色目で女性局員を舐めまわしたり権力使ってセクハラしたりするに違いない。
むう、なんて羨mげふんげふん・・・けしからん。
こうなったら決定的瞬間を抑えて密告しなくては。
栗間がそんなくだらないことを考えているうちに部隊長室についた。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか・・・・・・失礼します。栗間十一等陸士事務員出頭しました」
「はいってええで」
――あれ、女の人の声?
「失礼します」
中に入ると自分たちが普段使っている物よりも大きくて綺麗な机になぜか明らかに小さい机?
そしてその机には小柄で前髪をばってんの紐で結わえた女性の人が座っていた。
よくみるとその女の人の横には30センチくらいの小さな人形?が浮いていた。
あれ?中年の変態親父は?つかアレ人形?
「どうしたんか?」
気づくと目の前の二人?が訝しげな顔で見ている。
――っは、しまった。
「はっ、失礼いたしました。本日付で出向となりました栗間十一等陸士事務員です。
若輩者ですがどうぞよろしくおねがいします」
「私が機動六課課長、そしてこの本部隊舎の総部隊長の八神はやてです。
機動六課へようこそ」
「ですぅ〜」
――なんか人形が喋ってるぅーー!!
俺がじーーっと人形のほうを見ているのが気になったのか声をかけてきた。
「え、え〜と、リインの顔に何か付いているですか?」
「え、え〜っと、八神部隊長、このお人形さんは?」
俺がたずねると人形はプンスカ怒り出した。
「リインはお人形さんじゃないですよぉ〜」
「へっ?」
「そうやで〜、ほら、リイン。
挨拶せえや」
そういうと人形は小さな顔を少しゆがめながら挨拶した。
「機動六課 ロングアーチのリインフォース・ツヴァイ空曹長ですぅ。
貴方より階級は上ですから敬うですよぉ〜」
「なっ、なに〜〜〜っ!!」
「驚いたかですぅ!」
目の前の机の上でリインフォース空曹長が胸を張っている。
「流石は管理局。人形に感情表現できるAIを備え付けて挙句の果て階級まで持っているなんて・・・しかも若干高い。
管理局の科学は世界イチィィィィィイ!!ってやつか」
「だから人形っていうなぁ〜ですぅ」
なぜか後ろで八神部隊長がリインフォース空曹長に「ナイス突っ込みやで、リイン」とかいっていた。
この人は生粋の関西人だと思った今日この頃。
その後機動六課の勤務について説明されてリイン空曹長(長いから省略!)の見た目微笑ましいツッコミもはいるなかやっと話が終わった」
「誰のせいですか!」
「おおぅ、心の中まで読むなんて。
なんつーハイスペック」
「だから人形じゃないですぅ。
じゃなくて普通に声に出してたですよ」
「おう、シット。
ついやっちまったぜ」
「ナイスボケやなぁ。
どうや、一緒にM●目指さんか?」
八神部隊長が笑顔でサムズアップしている。
なかなかできるなこの人は。
「ふむ、それも面白いかもしれん。
管理局員の漫才界デビュー、管理局に新しい風がやってくるかもしれない」
「そんな風はいらないですぅ」
「まっ、冗談は置いといてや。
栗間君がくるって聞いたから人を呼んどいたんやけど・・・もうそろそろくると思うんやけどなぁ」
「しがない雑務官に人なんか呼んでどうするんです?」
「それは来てからのお楽しみや。「はやてちゃん。きたよ〜」おぉ、ごくろうさま。
はいってや」
なぜかこの声は聞いたことがある気がする。いつだったか。
「しつれいしま〜す」の声と共に入ってくるのは栗毛色の髪をサイドポニーにした見覚えのある女性。
「はやてちゃん、用があるって言ってたけど。
あれ、こっちのひ「まさか、お前はいつかのドジっ娘ワーカホリック!」えっ?って君はいつかのって、それはやめてっていったじゃない」
「なんやなのはちゃん知り合いやったんか。
ていうかなんやその・・・」
「ドジっ娘ワーカホリックか?」
「そうや、悪魔やら鬼なら聞くけどそんなの初めて聞いたで」
「はやてちゃん、後でお話があるの「イヤーー!」」
なんか八神部隊長が頭を抑えて震えているが本能が聞くのをヤメロと絶叫しているので無視。
とりあえず話を戻す。
「あぁ、それはだな、そっウグゥッ」
喋ろうとしたところでワーカホリックに口を塞がれた。
「あはははは、そ、それでなんで十君がいるの?」
(((誤魔化したな)))
「栗間さんは六課に今日から出向なんですぅ」
「へえ、十君も管理局員だったんだ」
「しがない雑務官だけどな。
俺としてはこんなところで会うとは思わなかったが」
「それよりさっきのは」
「はやてちゃん、後で久しぶりにも模擬戦でもやらない?
デスクワークばっかで体なまってると思うんだけどどうかな?
あっ、もちろんリミッター解除で」
「そうや!なのはちゃん呼んだ理由やったな!」
「くるしいですよー、はやてちゃん」
「栗間君は雑務官なんやけど実は魔力ランクAAA持ちなんや」
ちっ、予想通りではあるがやはり勧誘はあるか。
「えっ、うそぉ。ほんとなの、十君」
「まあ、一応ね。先に言っときますけどやりませんよ武装局員」
「なんでや、もったいない。
それだけあれば直ぐに上にいけるで。
しかも今なら若手エースオブエースの指導付き。
こんなお得な物はないで」
「そうだよ、十君。
私も頑張るからやってみようよ」
「や〜〜、せっかくのお誘いですがノーサンキューです」
「エ〜〜、でももったいないですよぉ〜〜」
やばい、課長は最近は少し勧誘したらさっさと引いてくれたがここではそれがきかないか。
「あ〜〜、すいません。これから他の部署とかもまわらなければならないのでそろそろ失礼しますね」
そういってさっさと部隊長室から脱出する。
後ろから3人の声が聞こえるが無視。
ワーカホリック娘もいるしこのままここにいたら無理やり引きずり込まれるかもしれん。
「あ〜〜、いっちゃったなぁ」
「十君、そんなに魔力を持ってるならやればいいのにもったいないなぁ〜」
「なんでもいままでも上からお誘いは来てたらしいけど全部蹴っとるらしいで」
はやてちゃんが手元の資料を見ながら話す。
多分それには前の部隊でのことが書いてあるのだろう。
「何かわけがあるですか〜?」
そうかもしれない。もしそうだったら相談に乗ってあげたいと思う。
「特に問題があったわけでもなさそうやけどな。
まあ、とりあえずこれから一緒の職場なんやしどんどん勧誘して引き入れたってや。
人手不足の管理局には喉から手が出るほどほしい人材やしな」
「あんまり無理しいちゃダメだよ、はやてちゃん」
「わこうとるって」
「ほんとかなぁ」
「だいじょうぶやて、部隊長権限で色々やって男の子の弱みさえ握ってしまえば・・・グフフ」
疾風の後ろから黒い瘴気が見える。
「「は、はやてちゃん!?」」
「うそやて、うそうそ。
やるわけないやん」
(とりあえず頑張って十君)
届くかは分からないけど十君のこれからを祈っておいた。
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