愚かな人の住処


 

 

 とある晴れた日の雲のない空の下での出来事。

 

とある一軒家の縁側に二人の若い男女が座ってお茶を飲んでいる。

 

二人ともだいたい10歳前後の年齢だ。

 

男の子の方はスポーツ刈りの活発そうな少年。

 

女の子の方は髪が肩位まで伸びたおとなしそうな女の子だ

 

「ねえ、***」

 

「なに、姉さん」

 

女の子の方が男の子に話しかける。

 

「うちの家の起源って知ってる」

 

「いんや、というかうちの家ってなんか特殊な家柄だったの」

 

男の子はお茶と一緒に置かれたせんべいに手を伸ばす。

 

白いせんべえで横においてある袋には豆乳せんべいとかいてある。

 

「ええ、なんでも結構古い家柄でね異能持ちの家だったらしいの。

 

その昔はそれで家を建ててその筋には結構有名だったらしいわ」

 

「その割には家は普通の一軒やだけど」

 

「うちは何でも分家らしいからね。

 

結構前には能力者は途絶えてたらしいけど。

 

ときどき先祖がえりがいるらしいわ。

 

ちなみに母さんが家を出て父さんと結婚して今に至るらしいわよ」

 

そういって女の子もせんべいに手を伸ばす。

 

こちらのせんべいは緑色をしていている。

 

こちらの袋にはほうれん草せんべいと書いてある。

 

「ふ〜ん」

 

「反応が薄いわね」

 

少年は音を立ててせんべいをかじる。

 

それを味わってからお茶で飲み込んで少し顔をゆがめて一息つくと答える。

 

どうやら豆乳味とお茶の相性はあまりよくなかったようだ。

 

「こんな身近にそんな神秘があったことにはびっくりだけど結構テレビでなんか人間ビックリとか予知やら何やら色々あるしねぇ」

 

「まあね、ああいうのは実は祖先にそういうのがいたりとか突然変異とからしいわよ」

 

そういって女の子は苦笑する。

 

「ていうかさ、何でそんなに知ってるの」

 

「母さんから聞いた」

 

「俺聞いてないのに」

 

男のこの方は少し不機嫌そうな顔になる。

 

「ふふ〜ん、私は特別だからね」

 

「なんで」

 

「なんと私は先祖がえりなのだ」

 

男の子は女の子の目を見つめる。

 

女の子も男の目を見つめ返す。

 

「マジで」

 

「マジ」

 

「…」

 

「…」

 

「まあ、とりあえず信じよう」

 

男の子はそういって目線をはずす。

 

「その目は信じてないな」

 

「普通信じると思う?」

 

そういってから担ったコップにお茶を継ぎ足す。

 

「思わない」

 

「だよね」

 

「うん、――でホントのところは」

 

「マジで能力者」

 

そういって女の子はせんべいにまた手を伸ばす。

 

「ふ〜ん、でどんなことができんの」

 

男の子がたずねると女の子が得意そうに胸を張る。

 

「ふふ〜ん。

 

よくみてなさいよ。

 

私の能力は*****なのよ」

 

 

 

 

 

それは遠い過去、もう思い出すことも少ないまだネギになる前の……、

 

まだ***であったときの姉さんとの会話の記憶……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

転生先生ネギま

第4話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

机に突っ伏して本を片手に寝ていたメガネをかけた少年が目を覚ます。

 

「んっ、寝ちゃってたのかな」

 

机には書きかけのノートと開かれた本、横には本が積まれている。

 

どうやら勉強をしている途中で眠ってたみたいだ。

 

肩に毛布がかけられている。

 

きっとネカネ姉さんが掛けてくれたんだろう。

 

ネカネ姉さんの気遣いが身にしみるなぁ。

 

僕はただいま猛勉強中です。

 

といっても魔法の勉強ではないんです。

 

無論、魔法の勉強もしてますけどそこまで気を入れてはやってないです。

 

何の勉強かというと……、受験勉強です。

 

それも大学受験。

 

おまけにオックスフォード大学。

 

自分で言ってて正気を疑います。

 

まったく校長先生は何でこんな課題を出すかなぁ。

 

一応僕まだ5歳なんだけどなぁ。

 

いくら飛び級でも飛びすぎでしょ。

 

本当に魔法の匿名できてるのかなぁ。

 

魔法使いの、というより校長先生の神経を疑っちゃいます。

 

でも、これも僕の目標のためで突き進むしかないというのが現状です。

 

なぜ僕がこんな超難関大学の受験勉強をしているのかというと数ヶ月前のことになります。

 

 

 

 

…回想

 

数ヶ月前、メルディアナ魔法学校校長室

 

校長室には立派なひげを生やした老人、校長先生とメガネをかけた少年、ネギの二人がいる。

 

「あの、校長」

 

「何かのう、ネギ。

 

一応今の時間は授業中のはずなんじゃが」

 

「今日の授業はもう覚えてるから大丈夫です」

 

「とはいってものぅ、おぬしの場合は今日に限らずたいていの授業はサボっておるじゃろう」

 

そういって校長はひげをさする。

 

「テストはちゃんと毎回出て満点キープしているからOKです。

 

それにテストで満点とっているうちはサボってもいいって言ってくれたのはほかならぬ校長でしょう」

 

「まあ、そうなんじゃがのぅ。

 

ところで何か用があったのではないのか」

 

 

校長が言うとネギは真剣な顔になる。

 

「そうでした。

 

今日はお願いがあってきました」

 

「何じゃ、確かこの前は閲覧禁止欄の魔法書を見せてくれだったかのう」

 

そういって校長は顔をしかめる。

 

「そういわずに。

 

それにちゃんとあの時は校長に出された課題、あの魔法書の封印を自力で解くという条件をこなしたんですから文句はないはずですよ」

 

「一応あの封印は並みの魔法使いでは解けんはずなんじゃがのう」

 

「自分もそれなりに努力してますから。

 

まあ、その話はおいといて」

 

そうやって手でものを横に置くジェスチャーをする。

 

「うむ、今度は何じゃ」

 

「僕に魔法使いの仕事を頂けないでしょうか。

 

できたら戦闘関係のものだったりすると嬉しかったりするのですが」

 

「却下じゃ」

 

校長は即答した。

 

「なんでですかっ。

 

理由は何ですか」

 

ネギは校長に食って掛かる。

 

校長はそれに目を細めて対応する。

 

「きまってるじゃろう。

 

おぬしはまだ5歳じゃぞ。

 

まだ早すぎる」

 

「お言葉ですが、自分で言うのもなんですが自分の実力、知識は最低でも魔法使いの中の下はあるつもりです。

 

ランクの低い仕事なら大丈夫なはずです。

 

戦闘が危ないというなら別に戦闘関係じゃなくてもかまいません」

 

そういって返すが校長もひかない。

 

確かに天才というにふさわしい成績を修めているとはいえまだネギは5歳。

 

仕事といえば難易度が低くても魔法使いの仕事に危険はつき物である。

 

大人びたネギとはいえ早いと感じているのだろう。

 

「実戦経験をつみたいのじゃな。

 

別に今すぐ仕事をしなくても授業でも経験はつめるじゃろう。

 

特別に上級生の実習の参加を認めるからそっちで我慢してくれないかのう」

 

「実を言うと上級生がやる実習範囲はすでに自分で修めてます。

 

いったでしょう。

 

最低でも中の下はあるつもりですと」

 

いつも授業をサボって図書室に引きこもって魔法書を開いたり外で明らかに魔法学校で教える範囲外のことをやっているネギである。

 

事実すでに魔法学校で習う範囲はすでに全部習得している。

 

よって次に求めるものは経験値。

 

つまり実戦経験である。

 

しかし、校長も人の子。

 

確かにネギの実力なら下位ランクの仕事であれば十分仕事も果たせるだろうしやらせてやりたいとも思うが、かわいい孫をこんな早くに出したくないという気持ちがある。

 

故に悩む。

 

悩んで思いついた。

 

「うむ、そうじゃ。

 

そもそも学校で習うこともなくなって実戦を積みたいといってるんじゃ」

 

「まあ、そんなところですけど」

 

そう返すが妙に笑顔になった校長の顔が気になる。

 

あの笑顔は何かいたずらを思いついたときの顔だ。

 

事実あの笑顔の後に無理難題を突きつけられたのは一度や二度ではない

 

嫌な予感しかしない。

 

「ならもっと高度な教育を受けてみなさい」

 

「はっ?」

 

「大学にでも受けてみろということじゃ。

 

まあ、歳と環境がアレじゃから流石に通信制になるがの」

 

そういって名案じゃといわんばかりに話を進めようとするがネギが待ったを掛ける。

 

「や、ちょっとまってください。

 

突拍子すぎるでしょう。

 

それに僕の進路上あんまり意味ないでしょう」

 

「なあに、備えあれば憂いなしじゃ。

 

人生なにがあるかわからんしのぅ。

 

ついては受ける大学は…そうじゃの、オックスフォード大学のどこかでも受けてもらおうかのう」

 

「ちょ」っ、なにもう受けることになっちゃってるんですか」

 

冗談ではない。

 

いくら生まれ変わってから前世と比べ物にならないくらいに頭の回転が良くなったからって世界最高峰の大学に受かるのは容易ではない。

 

それにそれ関連の勉強は特にしていないし、覚えてもいないので勉強しなおしになる。

 

そうなると鍛錬の時間も少なくなるし魔法書漁りの時間も少なくなる。

 

「僕はうk「そうじゃのぉ、もし受かってそのまま卒業する気があるんじゃったら入学の暁には仕事を一つ任せようかのう」っぐ、卑怯な」

 

「ほっほっほっほっほ」

 

校長はとても楽しそうだ。

 

それに反比例してネギのテンションは低くなっていく。

 

「うぐぅ、分かりました。

 

受かって見せましょう。

 

見せますよ。

 

それで絶対仕事をもらいますから」

 

「そうかの、それじゃあ、書類はこちらで用意しておくから頑張るんじゃぞ」

 

「分かりました」

 

そういってネギは校長室から出て行こうとするがドアの前で立ち止まる。

 

「にしてもなんでオックスフォード大学なんですか」

 

振り返ってたずねる。

 

うろ覚えだが確かに原作ではそんな名前の大学卒業という設定というかそんなのがあったようなしますけど

 

「なにって、その方が面白そうだからじゃ」

 

あんまりな回答にネギはメガネをはずして絶叫する。

 

「くぉんのぉぉくそじじぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

その日校長室から閃光が奔り校長室は全壊した。

 

校長は全治一週間の怪我を負うが犯人は今だ不明である。

 

回想終了…

 

まあ、こういうわけでどこぞのふざけた爺さんの陰謀のせいでこうやって頑張ってるわけです。

 

っん?数ヶ月前のの校長室全壊事件の犯人?

 

知りませんよ。

 

まあ、胸が少しだけスカッとしたとだけ答えておきましょう。

 

あの後ネカネ姉さんやアーニャにも話したがアーニャには当然のごとく大学に受かるのはムリだといわれた。

 

ネカネ姉さんはアーニャをたしなめているが否定的だ。

 

恐らく僕が仕事をこの歳で請けるのに反対なんでしょう。

 

でも何とか説得して今では勉強のサポートをしてくれています。

 

勉強の合間に入れてくれるココアには何度もお世話になりました。

 

ネカネ姉さんの応援に答えるためにも絶対に受かろうと思います。

 

 

 

 

数ヵ月後…

 

 

 

森の開けたところでネギは魔法の練習をしている。

 

「集束、光の矢17矢、見よう見まねの衝撃のぉぉぉシェルブレットォォォォォーーー!!」

 

轟音とともにネギくらいの岩が砕かれる。

 

岩を砕くネギの顔にはどこか爽快感が見られる。

 

「くぅぅぅ、やっぱいいねぇ。

 

こんなに体を動かすのが気持ちいいなんて初めて知った今日この頃だぜぃ」

 

そういって背伸びをして体をほぐす。

 

長い試験準備の間ネギは魔法書漁りも鍛錬も極端に減らし、気分転換程度しかしていなかった。

 

そして今試験も終わり今までの鬱憤を晴らすかのように体を動かしている。

 

もう二週間はこんなハイな感じである。

 

ネギが体をクールダウンしているところでネカネとアーニャがやってくる。

 

「ネギーっ、大学からの合格通知がきたわよー!」

 

アーニャの振る手には封筒が握られている。

 

「おぉー、ついにこの運命の日がやってきましたかぁ〜。

 

すでに誰か確認済み?」

 

「まだ誰も見てないわよ。

 

さあ、開いてみなさい」

 

「ハイ、ネギ。

 

ま、まあ、あんたも頑張ったし期待してもいいんじゃない」

 

そういって目をそらしながらネギに封筒を渡す。

 

「あいあい、サンキュ、アーニャ。

 

しかし、アーニャがそんな言葉をくれるとはねぇ」

 

ニヤニヤしながら封筒を受け取る。

 

「う、うるさーい。

 

さっさと中身を見なさいよ」

 

そう怒鳴る顔は若干赤い。

 

「そう照れるなって。

 

光の精霊1柱、光の刃、よっと」

 

指先に小さな光の刃を発生させて封筒の口を切る。

 

その魔法の行使にアーニャは驚く。

 

「あんた、始動キーとなえてなかったわよね。

 

なに、もう無詠唱できてんの」

 

封筒から紙束を出しながら答える。

 

「まあ、簡単なものくらいならできるよ。

 

さて」

 

そういって紙束をひろげる。

 

ネカネとアーニャもネギの後ろから紙を覗き込む。

 

「ネギ・スプリングフィールド……合格……貴殿の本校への入学を認めますってッ!

 

いぃぃよぉぉぉっっっっっしゃぁぁぁっぁぁぁぁ!!!」

 

「あらあら、ネギ、良かったわねぇ」

 

そういってネカネは自分の目に浮かんだ涙をハンカチで拭く。

 

「ふ、ふん、まあ、ネギにしては良くやったんじゃない」

 

「おう。

 

よっしゃぁ〜〜、これで校長から仕事がもらえるぜ」

 

「ほらネギ、校長先生に報告をしにいかなくちゃいけないわ」

 

「あ、そうよ、ネギ。

 

さっさといくわよ」

 

そういってネギをせかす。

 

「はいはい、それじゃあ報告がてらにしごともらいにいきますか」

 

 

校長室

 

「うぉら、校長。

 

合格してやったぞ、こんにゃろう」

 

そういってネギは合格通知書を校長に突きつけた。

 

校長はそれを受け取りひげをなでながらそれを眺める。

 

「ふうむ、まさか本当に合格するとは。

 

とりあえずおめでとうといっておこうかの」

 

「あんだけ苦労させられたんだ。

 

約束通りお仕事くれよ」

 

そういってネギはにやりと笑う。

 

それを見て校長はため息をつく。

 

「はぁ〜、しょうがないの。

 

おぬしの場合だと色々手続きが面倒での、仕事を回すまで一ヶ月くらいはかかるが良いかの」

 

「まあ、それくらいは待つぜ。

 

それにちょっと行きたいとこがあるからな。

 

ちょうどいいからちょっと合格おめでとう旅行にでも言ってくるぜ」

 

「ほっ、どこに行くのじゃ」

 

ネギは髪をいじりながら答える。

 

「ヒミツといいたいとこだけどそれじゃあ行かせてくれないだろうからな。

 

とりあえず日本だよ。

 

ちょっと行っておきたいところがあるんだ」

 

本当は試験準備を始める前から計画はしていたのだが校長に課題を出されたせいで結局いけずじまいに終わっていた。

 

「観光かの」

 

「いんや。

 

ちょっと個人的なこと。

 

俺の捜し求めるもんがちょっとそこにあんよ」

 

「ふぅむ」

 

校長はうなる。

 

「まあ、よいかの。

 

おぬしも割りと頭も回るしの。

 

ただし、誰か付き添いはつけねばならんぞ」

 

「了解了解。

 

本当は一人で行くつもりだったけど流石にそれじゃ色々と問題あるしね

 

ネカネ姉さんにでも付いていってもらうわ。

 

ネカネ姉さんもいい?」

 

「ええ、学校のほうも申請すれば大丈夫だと思うわ」

 

「ありがとね、ネカネ姉さん。

 

それじゃ、お仕事の方ヨロシクね、校長先生」

 

そういってネギは校長室から出て行く。

 

「うむ、旅行の方も楽しんでくると良いぞ」

 

「それでは、校長先生。

 

失礼します」

 

そういってネカネも退出した。

 

 

ドアのところで待っていたネギに合流し、歩き出して少ししてからネカネがネギにたずねる。

 

「それで、ネギ。

 

日本といってもどこに行くつもりなの」

 

「うん、茨城県の悠里ってところ。

 

都心から離れたとこだけどそこまで交通の便の悪いところじゃないからそんなに時間はかからないと思うよ」

 

そういって校長から返された通知書を折りたたんでローブのポケットに入れる。

 

「そんなところになにがあるの。

 

さっきも校長先生に観光目的じゃないって言ってたけど」

 

「ちょっとね、とある人の生きた証が残ってるかを確かめにね」

 

そういわれてネカネは不思議そうに首をかしげる。

 

俺は今この世界はネギまの世界とおもっているが結局のところ俺がいた世界の平行世界の一つだと思っている。

 

魔法使いなど細部の違いを除けば基本的に同じ歴史をたどってきているからだ。

 

そのとき俺はふと思いついた。

 

ならばこの世界にも俺が住んでいたところは存在しているのではないだろうかと。

 

そして俺はすぐに地図で俺がいた町のことを調べてみた。

 

すると俺が住んでいたはずの町、悠里は存在していた。

 

それに関連してその町のことについて情報屋などやまほネットを使って調べてみると驚くべきことが分かった。

 

なんとその町には昔異能持ちの一族が住んでいた記録があり、その名前は紅。

 

俺の前世の姓だ。

 

ただその家はすでに潰れており今は一般人になっているらしい。

 

この経歴は俺の家に似ている。

 

流石に今この世界の俺の家があるかまでは分からなかったがこれなら可能性がある。

 

別にこの世界の町を見てなにがってなわけではないが一目くらいは見ておきたい。

 

ネギがそうやって考えにふけっているとネカネが声を掛けた。

 

「そういえば、飛行機のチケットはいつのを取るの」

 

「ん〜、ネカネ姉さんの都合のいい時でいいよ。

 

学校はサボる氣満々だしな」

 

「ダメよ、ネギ。

 

授業も出なきゃ」

 

「だいじょうぶ。

 

これからは嫌でも大学の勉強もせにゃならんし」

 

そういいながらネギは顔をしかめた。

 

「うふふふ、そうね。

 

ネギもはれて大学生だものね」

 

「あぁ〜、ほら、はやく休みの申請してきてよ」

 

「はいはい」

 

ふくれるネギの様子を見てネカネは苦笑した。

 

 

 

 

 

 

茨城県   悠里

 

町の中央に位置する駅で俺とネカネ姉さんは降りた。

 

俺の世界どおりだったらこの駅からが住んでた家に一番近い。

 

少なくともここまでくるのに記憶の中の町並みと目の前に広がる町並みは少しも変わらなかった。

 

「私達の町はまた違ったよさのある町ね」

 

「あぁ、そういえばここは温泉地としても有名だからそういう趣の町並みも見れると思うよ」

 

この町は草津とかほどではないが割りと有名な温泉地だったからな。

 

駅の前にある旅館やホテルの看板が懐かしく感じる。

 

「よかったら先にホテルに行ってお風呂に入ってきたら。

 

俺はちょっと寄り道したいところがあるからさ」

 

とりあえず俺が死んだ大学前の駅に行っておきたいがネカネ姉さんが一緒だとちょっとまずいだろう。

 

「あら、遠慮しなくても私も付き合ってあげるわよ」

 

「ネカネ姉さんこっちに来る前あんなに目を輝かせてたじゃないか。

 

俺はそこまでお風呂は好きじゃないからゆっくりなが風呂でもしててよ。

 

それに俺の行きたいところは見るものも何にもないよ」

 

ネカネ姉さん飛行機の中であんなに目を輝かせてパンフレットを見てたからなぁ。

 

昔一緒に言った山奥の温泉がかなり気に入ったらしい。

 

「そう、それじゃ気をつけるのよ」

 

「大丈夫って」

 

ネカネ姉さんは残念そうに言ってからバスに乗ってホテルへ向かった。

 

 

 

大学前の駅

 

本当に俺の世界と変わらないな。

 

大学の形も変わらなくそこに存在しているし、駅の構内も変わらず懐かしく感じる。

 

「確か俺が死んだのは2番線だったかな」

 

俺は2番線の俺が死んだ場所へ向かった。

 

ん?

 

ホームの柱に花を供えている人がいる。

 

綺麗な黒色の長い髪で白いワンピースを着た、おそらく20代前後の人の女の人だ。

 

その人はしゃがんで顔が陰になっているせいで顔が良く見えない。

 

誰かあそこで死んだのか。

 

そんなことを考えながら俺はその人に近づいていった。

 

近くまでよってその人を見るが自分から見て後ろを向いてしまって顔が分からないがその後姿がなぜかとても懐かしく感じた。

 

「すいません、ここで誰っ!?」

 

俺が声で気づいてこちらを振り向いた女の人の顔を見て思わず言葉を途切れさせてしまった。

 

「あら、日本語上手ね。

 

こんなところに一人でどうしたの?」

 

その流れるような黒い髪を見たことがあった。

 

その大きな黒い目に見覚えがあった。

 

その明るい顔がとても懐かしかった。

 

この世界の俺が生きていた町を見るだけのつもりだったからまさかこんなところで会うとは思わなかった。

 

もう死んでからまた生まれ変わって5年たったが忘れることのなかった顔がそこにあった。

 

「ん?

 

どうしたの、豆鉄砲が鳩で打たれたような顔をして。

 

あぁ、違った。

 

鳩が豆鉄砲で、か」

 

 

――みこ、と、姉さん……

 

 

 

 

 

 

運命の糸がこの町で絡み合った