揺り戻しはない――地方選が伝える現実
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しかし、今年に入ってからの地方選が、揺り戻しはないという厳しい現実を伝えています。 例えば2013年1月27日に投開票された北九州市議会議員選挙です。投票率が前回(2009年)の50.33%から41.95%へと8.38ポイントも低下したにもかかわらず、民主党の得票率は16.5%から10.8%へと4.7%も減少しています。得票数の減少率に換算し直すと、2009年の得票数の僅か54.55%しか得票できていない計算となり、支持者が全く戻っていない事を読み取れます。また2009年には得票率、議席数共に共産党を上回っていましたが、今回の選挙では両方とも共産党を下回り、退潮の深刻さを裏付ける数字となっています。 投票率の低下も興味深い現象です。もしも維新の会やみんなの党が民主党に変わる第三極として支持され、歓迎されているのであれば、投票率は横ばいか、あるいは上昇し、維新の会やみんなの党が大量得票を得て、大量の議席を獲得して大躍進しているはずですが、現実はそうはなっていません。その一方で、民主党に投票していた人達が、維新の会やみんなの党に投票した痕跡が窺われます。この事から読み取れる事は、昨年末の衆院選同様、民主党を支持してきた中道左派層、左翼層の選挙ボイコット(棄権行為)が継続していて、維新の会やみんなの党が、民主党に投票して来た人達の間で歓迎され、支持されているわけではないという事です。 中道左派層、左翼層にとっては新自由主義的すぎるみんなの党と、右派色の強い維新の会は投票対象とはならない為、民主党に投票しない人は、棄権する以外の選択肢がなかったのでしょう。 関連記事 北九州市議選:第三極、全6人当選 自公も無敗、民主後退 毎日新聞 2013年01月28日 00時46分(最終更新 01月28日 07時58分) http://mainichi.jp/select/news/20130128k0000m010086000c.html
そしてちょっとした話題になっているのが、2013年2月3日に投開票された横浜市神奈川区の市議補選です。民主党候補・井上大右氏が、共産党候補の後塵を拝するという選挙結果が出ました。 横浜市議会神奈川区選挙区は定数が5で、2011年の選挙では、下記のような結果が出ています。
ソース 横浜市議会議員選挙 開票速報 平成23(2011)年4月10日(日)執行
ソース http://www.city.yokohama.lg.jp/senkyo/tosho/data/070408/kaihyo-kanagawa.html 同補選に出馬したのは、2011年の市議会議員選挙で落選した井上大右氏ですので、得票数だけ見た場合、2011年の5885.781票から7252票へと1366.219票増加しています。ただし同氏は2007年にも出馬しており、その際には8662.068票取っていますので、その際の得票と比較すると1410.068票のマイナスとなります。補選という事で民主党候補が一人しか立っておらず、2011年に民主党候補・中山氏に投票した民主党支持者が井上氏に投票した可能性、同補選に出馬したのが自民、民主、共産、無所属の四氏のみで、みんなの党や維新の会、ネットワ−ク横浜や神奈川ネットワ−ク運動など2011年に多くの得票を上げた他の有力候補が不出馬であった事が有利に働いているであろう点を考慮すると、やはり相当な苦戦であったと分析するべきでしょう。 また、もう一つの重要な要素が、投票率が19.13%と「国政選挙を含め市内で行われた選挙で過去最低」(市選挙管理委員会)を記録している点です。民主党候補が出馬している以上、同補選は泡沫候補の共産党候補と、絶対に勝利が約束された自民党候補との選挙ではなく、自民党候補と民主党候補による事実上の一騎打ちです。2011年の地方選以前までなら、アンチ自民党層が投票所に足を運び、民主党候補に投票して、投票率も上昇していた事でしょう。ところが同補選ではその現象が起きていませんし、そればかりか、投票率が最低を記録したにもかかわらず、共産の本橋候補が8277票獲得し、2011年の共産党候補と比較して2000票近くも得票を伸ばし(2007年比でも350票増)、民主党・井上候補は1000票以上も共産党候補を下回り三番手となっています。つまり同補選では民主党候補は有権者にとって魅力的な存在でなく、あまり投票したいと思わない泡沫候補という位置づけに置かれていた事を示しています。この事は非常に重要な意味を持っています。 関連記事
この二つの選挙から読み解ける事は、民主党に対する揺り戻しなどないという事です。 民主党側は綱領を定め、中道・リベラル路線で行くという発言を世にアピールする事で、中道左派層、左翼層の支持を取り戻しつつ、現実の民主党の路線は、保守中道の海江田氏が代表である事が象徴的なように保守中道路線を採用して、穏健保守層、中道右派層の票を集める、という従来の民主党の手法(カメレオン手法とでも呼ぶべきもの)で乗り切るつもりでいるようですが、かつて民主党を支持した中道左派層、左翼層は、民主党が保守政党であり、中道・リベラル路線アピールは、自分達の票を集める為のリップサービスに過ぎないとみなしているようです。 そしてかつて民主党を支持した穏健保守層、中道右派層は自民党、みんなの党、維新の会に完全に支持政党を乗り換えてしまっており、もう戻ってくる事はないでしょう。北九州市議会議員選挙の結果が、その事実を雄弁に語っています。 民主党が国民の支持を集められなくなった最大の原因は、やはり東日本大震災における震災対応と原発事故対応であると考えられます。東日本大震災が起きる前の時点で、鳩山政権が普天間基地の移転問題で公約違反を犯したり、2010年の参院選では菅総理(当時)がマニフェスト違反をしていきなり消費税増税を口にしたり、また中道左派層や左翼層が求めてきたリベラル政策の実現も行われなかった事から、民主党を支持し、票を投じてきた中道左派層や左翼層は民主党に対して強い不満を抱くようになっていました。その状態で、リベラル派の代表的な政治家である菅氏を総理とする菅政権が、遅々とした震災対応や人の命を軽視したかのようなおぞましい原発事故対応を図った為、民主党とリベラル派に対する不信感が決定的なものとなったのでしょう。その上に更に野田政権による第二自民党と呼ばれるような保守路線が行われた為、民主党は保守政党であるとみなすに至ったものと考えられます。 左派系の政治家が綱領にリベラルという言葉を入れろと発言したくらいでは、中道左派層や左翼層の支持は戻りませんし、保守中道路線を取りながら、左派系の政治家が民主党支持を訴えて中道左派層や左翼層の票を集める従来の手法は全く通用しない局面を迎えているわけですが、民主党の政治家達がその事を理解しているかと言えば、甚だ疑問です。 今後どうなるかまだ不透明ですが、現時点では、民主党は保守中道路線で行くようですし、綱領問題でも中道左派路線の明確化を見送る方針のようですので、このまま夏の参院選に突入した場合、比例得票が昨年末の衆院選以上に減る可能性も考えられます。 両選挙の低投票率から見えてくる事は、民主党の党名では、もはや有権者から相手にしてもらえず、共産党候補と同じく、あるいはそれ以下の泡沫候補とみなされるようになったという事です。カナダの進歩保守党と同じ状況に民主党が追い込まれているという事なのでしょう。リベラル派の代表的政治家であり、中道左派層や左翼層の支持を集めるのに奔走してきた菅氏が、東日本大震災における震災対応と原発事故対応で支持者の不信を買った事は、中道左派票や左翼票が得票の半数以上を占めている民主党に取っては、致命的な出来事だったと言えます。 2013年2月8日作成 【注意!】 当サイトは有権者に特定の投票行動を呼びかけるものではありません 【注意!】 |