Revelation 後編




物陰に隠れて移動するに気づく者はいない。
だがそれも時間の問題だろう。ナミとウソップの居た檻は既にもぬけの殻なのだ。
上階で起こした騒ぎのせいで地下層も混乱に陥っている。
重装備な人間があちこちを走る姿は宛ら戦場のように見えた。
ナミとウソップは上手く上階へ逃れられただろうか、ルフィ達の身はどうだろうか、青キジは…。
気にかかる事が多いが今はとにかく皆を信じ自分に出来る事をするしかない。
途中幾度か接触してしまった敵を上手くかわしつつは歩を進めた。

そしてそれは呆気ないほど簡単に見つかった。

が探していたのは海楼石の檻の鍵、つまりそれを持った人物。
上階の人間は所長が所持していると言っていたのもありそれらしき者を探していたのだ。
簡素なつくりの一室の扉は開け放たれ、中央にあるデスクにどんと構える人物。
その人物は微動だにせず座っていた。
否、座らされていた。

青キジによって氷結された状態で。

そして彼の座る目の前のデスクの上にはが探し求めていた鍵が置かれていた。
素早く扉の内側に回り防護マスクを外してみる。
大きく息を吸い込んだは眩暈に襲われ慌てて防護マスクをつけ直した。
未だ薬物を散布する装置は止まっていない。
数度深呼吸をし呼吸を整え眩暈が治まるのを待っては氷結された彼の後ろ手に回った。
足に何かがあたった感覚にが視線を下に移すとそこには幾度か目にしているアイマスク。
青キジが落としたのだろう。
アイマスクを手に取って腰元のポケットに突っ込むと鍵に手を伸ばした。


鍵を手にした瞬間、発砲音と共にの左肩に鋭い痛みが走る。


気づけば入口を塞ぐように複数の敵がこちらに向かって銃を向けていた。
少しでも動けば彼らの手によってはハチの巣にされるだろう。
の左肩からポタリポタリとデスクに血が落ちる。
一番前に立ち片頬を引き上げ歪んだ笑みを浮かべる男が口を開いた。


「鼠一匹に随分引っ掻きまわされたものだ。ここが世界政府管轄機関という事をわかっての暴動かね」
「私の仲間を誘拐し監禁しておいて何を言う」
「どこでこの場所を知り対処法まで嗅ぎ分けたのかね」
「秘密だ」
「鍵を返して貰おう」


卑下た笑みを浮かべる男との視線が交わる。
相手はさほど強くないとしても所持している武器と人数が厄介だ。
青キジとの確約もある。
それを無視する訳にはいかないだろう。
彼はここの場所を教える条件にに一つの条件を突き付けてきたのだ。
この施設の人間を決して殺めず出来るだけ傷つけない事。
怪我をさせる事は仕方ないが被害は出来るだけ最小限に止める事。
それが青キジの出した条件だった。
条件を満たす為には彼らに向かって焔を出す事も盾を錬成し銃弾を跳ね返す事も出来ない。
例え威嚇程度の焔を出した所で自分が銃殺されるのは目に見えている。

その時ふと視界に動くものが見えた。
彼らの立つもっと後方に見慣れた長い鼻。
上階へ逃がしたはずのウソップの姿があった。
ウソップは彼らに向かって苦しそうな表情を浮かべながらもパチンコを向けている。

ウソップの姿を確認したは先程までの真剣な表情を変え不敵な笑みを浮かべた。
ウソップの後方の奥には海楼石の檻が並んでいるのを確認している。
一か八かだ。
は男に視線を戻すと笑みを浮かべたまま口を開いた。


「わかった。鍵を返そう」
「話が早くて助かるよ」


男の卑下た笑いを見つめながらは鍵を持つ右手を上へと掲げた。
男達の間を縫ってウソップにこの鍵をが所持しているという事をわからせるように。
そしてウソップはの願った通り掲げられた鍵を見て一瞬驚いた表情を浮かべた後ゆっくりと頷いた。
向けられている銃口は7つ。
掲げていた右手を下ろし男の方へ差し出すふりをしては鍵を思い切り投げそのまま男達に向かって体を突っ込んだ。
突然の事に慌てた男達の上をの投げた鍵は上手くすり抜け落ちていく。
激しい発砲音が鳴り響き三発ほどの腕や足をかすったものの体を突っ込ませたおかげで急所を狙う事が出来ないようだ。
男達の間からウソップが鍵を掴んだのを見届けるとは声を張り上げた。


「ウソップ!!まずはサンジかゾロかフランキーだ!」
「任せろ!!」


ウソップが走りだしたのを見ては思わず声をあげた。
先程までかすかに聞こえていたはずの空気音が消えている。
装置が止まった。
男達から身を離し銃弾を避けながらウソップの消えた方向へと走る
だがやはり簡単には逃がしてくれないようだ。
後方から飛んできた銃弾がの右足を掠りバランスを崩したの体はその場に崩れ落ちた。
襲いかかる銃弾にとっさに身構えた

だが銃弾はの元まで届かず、ふいに訪れた背中の温かみに驚いて目を開ける。
目の前にはフランキー、そしての体を覆うサンジの姿があった。


「オウ!遅くなっちまってすまねェ!!大丈夫か?」
ちゅわーん!あなたのプリンスサンジが助けに来ましたよー!!」
「フランキーにサンジ…よかった無事で」


ほっと息を吐き出し微笑むにフランキーもサンジも頷いて笑みを浮かべるとの前後を守る様に立つ。


「もう許さねェ今週のおれはかなりスーパーだぜ」
「おいコラこのクソ野郎共!!おれのちゃんに怪我させるとは…三枚にオロす!」
「ちょっと待て、他の檻は……」
「それなら心配ねェ。ゾロとウソップが今頃全員助けだしてるはずだ」
「そうか。所で困った事にこの建物はもうすぐ崩落すると思う。もう一部崩れ始めているしな」


戦闘の手を休めないまま移動し続けるがしれっと言い放った言葉にフランキーもサンジも慌てて移動を始める。
ナミが一人で船の準備をしている事をサンジに伝え先に行かせとフランキーは走り続けた。
進路に立ち塞がる敵を蹴散らしながら移動しているとは後ろから激しい衝撃に襲われた。
そこにはニコニコ笑顔のルフィとチョッパーの姿。
そして後ろからは微笑むロビンに頭をかきながらバツの悪そうな表情を浮かべるゾロと得意そうに笑うウソップの姿があった。


ー!!助けにきてくれてありがとな!!」
「って…怪我ァー!!医者ァー!!」
「落ち着いて、貴方が医者でしょう?」
「助かったぜ」
「全てはおれ様の作戦通りだ!!」


隣に立ち笑うウソップとは拳を突き合わせ無言ながらも健闘を称え合った。
自由に動き回れる様になった彼らにとってこの施設にいる敵など微々たるもので一行は無事脱出に成功した。
重装備の彼らにルフィ達が制裁という名のお仕置きを加えた事は見なかった事にする。
崩れ落ちた建物に茫然となる彼らの元まで歩いて行ったはニヤリと笑って口を開いた。


「麦わら海賊団に手を出した事、後悔しただろう?」


悔しそうな表情を浮かべる彼らに一瞥をくれて船に乗り込んだルフィ達に向かっては微笑んだ。


「悪いが…ウォーターセブンでアイスバーグ氏らに頂いた小舟を止めてあるんだ。それを回収して合流するので近くで待っていてくれないか?」


の言葉におれも行く!とルフィやサンジが身を乗り出すがはそれを上手く言いくるめルフィ達が出港したのを見届け自らも羽を出し飛び立った。
程なくして小舟を止めた小さな島に降り立ったは辺りを見回し森へ入っていく。
一際大きな木の下で青キジは待ちくたびれたというように横になっていた。
が近づくと青キジも閉じていた瞼を開けてを見つめる。
口元には小さな笑み。


「随分派手にやってくれちゃったじゃないの」
「派手に突入しろと言ったのはそっちだろう。それに…派手にぶち壊した方が都合がいいのだろう?」
「まァそりゃそうだが。怪我してるじゃないの」
「かすり傷だ。では私はもう行く」
「あららら、待ちなさいって」


起き上がった青キジはの腕をぐいっと引いて自らに引き寄せる。
刹那の右手の指輪が淡い光を灯し小型のナイフが青キジの頬すれすれに突き付けられた。
穏やかとは言えない笑みを互いに浮かべと青キジは視線を交わらせる。


「貸し一つって言ったつもりだったんだが。一緒に来てもらおうか」
「借りはもう返した」
「あららら姉ちゃんそりゃないんじゃないの?」
「胸ポケットを見てみろ」


の言葉に青キジの視線が自分の胸ポケットへと移る。
そこに映ったのは先程から自分が探していた愛用のアイマスクだった。


「…あららら、なくしたと思ったら」
「拾った。証拠を残さない為にも感謝して欲しいものだな」


いつの間にか青キジの腕を逃れ人の悪い笑みを浮かべて立つの姿を見て青キジは盛大な笑い声をあげた。


「まったく…姉ちゃんには敵わないねェ」
「そういう訳だ。では私は行く。………今回の事は感謝している」


返事も聞かず足早に去っていくの背中を見つめ青キジは笑いの治まらない口元を押さえる。


「素直にありがとうって言えないもんかねェ。まァそれが姉ちゃんらしいっちゃらしいけど」


青キジの手には愛用のアイマスクが握られていた。




UP DATE : 2007.10.21


五万打リクエスト企画で綾瀬様から頂いた「青キジと協力して麦わらの一味を助ける」お話後編です
たった3話なのに遅くなってしまい申し訳ないです
まとまりきらなくて何と無くだらだら感が出てしまいましたが一生懸命書かせて頂きました!
想像と違ったらすみません!
非常に楽しく書かせて頂きました
綾瀬様、素敵なリクエスト有難う御座いました!!
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