10
「私の目の錯覚でなければ、ここはどう見ても祭りの会場にしか見えないのだが」
「大丈夫よ。間違っていないわ」
フランクフルト屋に焼きそば屋、りんご飴屋にわたあめ屋。
敵も味方も関係なく皆がわいわいとその雰囲気を楽しんでいるように見える。
いつの間にか作られていたステージでは敵船のポルチェちゃんという女性が開会の挨拶をしていた。
そのステージ上ではルフィが焼きそばを頬張っている。
の目はステージ上のおやびんに釘付けだった。
「敵船の船長は、これはまた珍しいタイプだな。あんな頭見た事がない」
「ナミさん、ロビンちゃん、ちゃん、わたあめ売ってたよ」
サンジがわたあめを抱えてハートを撒き散らしながら戻ってきた。
妙にウキウキとする空気の中、ナミはまだ落ち込んでいるらしい。ナミの周りだけ妙に空気が重い。
「敗戦における3ヶ条か」
ステージ上で説明されているルールを聞いて海賊同士にもルールが存在するのかとは感心した。
ゲーム自体にルールはあっても後は問答無用の争いに発展するのではないかと思っていたばかりに少しだけ安心する。
サンジの説明によれば、デービーバックファイトによって奪われた仲間、印全てのものはデービーバックファイトによる奪回の他認められない。
勝者に選ばれ引き渡された者は速やかに敵船の船長に忠誠を誓う。奪われた印は二度と掲げる事を許されない。
これが敗戦における3ヶ条らしい。
「結構厳しい決まりがあるんだな」
「あんた達なんで平然としてられるわけ?」
「おめェまだウジウジ言ってんのか」
「大丈夫だ、ナミ強そうだし」
「強いわけないでしょ!」
こんなやりとりをしているうちにもステージ上ではどんどん事が進んでいく。
相手方のおやびんの不思議な笑い声は遠くに居ても聞き分けられるほど特徴的なものだった。
「んーーー、フェッフェッフェ…」
「お気に入りは誰です?オヤビン」
「船長に剣士…、航海士、狙撃手、コックに船医に考古学者に銃撃手か…。さーてどいつから貰ってしまおうか。………やはりあいつかなー!!あいつが欲しいなァーー!!!」
ちなみに何故が銃撃手になっているかと言うと、相手に聞かれた際に錬金術師と言うのもまずいのでとっさにナミが答えたのだ。
単にがたまたま銃を所持していたので銃撃手という事にしてしまったのである。
安易に出された結果にはどうか銃を使う機会がないようにと心の中で願った。
実はは銃の扱いがあまり得意ではないのだ。
ただ特務の軍人として携帯が義務付けられていたため持っていただけで普段なら脅しにしか使用しない。
「おい!オーソドックスルールはわかるな?おめェら。出場者は3ゲームで七人以下!一人につき出場は1回まで。一度決めた出場者に変更はなしだ!」
「わかってる。あっち行ってろ!」
「それと最終戦の戦闘にはセコンドが必要だぜ。一人用意しときな!そうすればそっちは全員出場だ」
陽気に言い放つ相手にサンジがシッシと手で追い払う仕草をして、作戦会議となった。
麦わらの一味の人数はを入れて八人。
3ゲームで七人以下、セコンドで一人。最終戦は1対1で行われるらしいので他は三人ずつの編成になる。
「まったく!えらい事してくれたわねルフィ!」
「勝ちゃいいじゃねぇか」
怒り心頭のナミとウソップがルフィを責めるもルフィは全く動じておらず、ニコニコとしていた。
焦りも何も感じていない様子だ。
「勝てば船大工もらえるかも知れねェぞ?」
「いらねェよ!あんな海賊船から!!」
「競技種目はレース・球技・戦闘か」
レース、球技、戦闘、どれも出たくない。
出来れば戦いたくないは真っ先に手を上げた。
「私はセコンドがいいな」
「何言ってんのよ!強いんだからあんたは強制出場よ」
「面倒くさい上に強くない」
「うっさい!セコンドはか弱い私がなるべきよ!」
「いや、セコンドはおれ様キャプテンウソップが」
あーでもない、こーでもないを繰り返し結局
第一回戦「ドーナツレース」にはナミとロビンとが。
第二回戦「グロッキーリング」にはゾロとサンジとチョッパーが。
第三回戦「コンバット」にはルフィ、セコンドにはウソップが出る事が決まった。
奪い合いになったセコンドはナミとウソップによる公正なるジャンケンで決められた。
勿論負けたナミはウソップに鉄槌を落とすのを忘れなかったが…。
「さぁさぁまずは海岸づたいの島1周妨害ボートレース「ドーナツレース」!!手作りボートの木材は
オール2本空ダル3個!それ以外の部品は使っちゃその場で失格!船大工の腕の見せ所だ!」
司会を務める男の言う通り舞台にはオール2本と空樽3個がぽつんと置かれていた。
あれだけで船を作れというのだから相当小さなものしか出来上がらないだろう。
第一、こちらは船大工がいない。
ルフィは船大工が欲しい故この戦いを受けたというのに、最初の競技からしてこちらには不利な条件だ。
「ナミ、ロビン」
「何?」
「船なんて作った事あるか?」
の問いにナミとロビンは顔を見合わせた。
問う方が間違っているかもしれないが、もしかしてという可能性もある。
「ないわ」
「私もないわよ」
「じゃあ仕方ないな」
返ってきた言葉はやはり予想通りだった。
勿論もない。
船を見た事はあちらの世界でも数度だがある。
東部にある観光都市に訪れた際、湖を渡る船を見たのだ。
だが乗ったのはつい最近、麦わらの一味に出会ってからの数日だけ。
更に構造など何もわからない。
形だけでもそれっぽくすればいいかと腹を決め歩き出す。
はステージの横へ移動すると、説明をしていた男の前に立った。
「おい」
「え?」
「樽3個とオール2本以外使わなければどんな作り方をしても構わないのだな?」
の問いに男は一瞬戸惑ったがすぐに頷いた。
「どんな作り方をしても構わないよー。ただし不正をなくす為に作っている過程は見せてもらうけどね」
「了承した」
は樽3個を地面に置いた。
女のが船を作るのが気になるのか、相手の船がどんなものになるのかが気になるのかはわからないがいつの間にかの周りには小さな人だかりが出来ていた。
錬金術師という言葉を言わなかったのにここで使うのもどうかと思うが、大丈夫だろう。
何せこちらの世界には錬金術自体が存在しないというのだから。
不思議な魔法だとでも思ってもらえればそれでいい。
は樽の前にしゃがんで胸の前で一度手を合わせるとその両手の平を地面に押し付けた。
たちまち地面から錬成の光が溢れ、次の瞬間に樽は姿を変え小船になって現れる。
それを見ていた周りからどよめきが起こった。
「ちゃん素敵だぁーーっ!!」
サンジがの錬成を見てくるくると回りながらハートを撒き散らした。
フォクシー海賊団の船員達から驚きの声があがる。
「なっ何だ?あの女銃撃手じゃなかったのか?」
「すげェ!どうやって作ったんだ?」
「おーっと!麦わらの一味の銃撃手は不思議な能力の持ち主だったよー。これはまさか悪魔の実の能力者かー!?」
「まぁそのようなものだ。これは反則にはならないな?」
「勿論大丈夫だよー!」
は小船を抱えるとそれをそっと海辺に下ろした。
一応それらしく見える形にはなった。
だがどうなるかは保障出来ない。
「やるわねー」
「さすがね」
ナミとロビンが感心していると、さきほどの男が大きな鳥に乗って上空へ現れた。
「なお、司会は私フォクシー海賊団宴会隊長イトミミズ。南の海の珍鳥”超スズメ”のチュチューンにのって空から実況をお伝えするよ!!」
「まずは麦わらチーム!航海士ナミ!考古学者ロビン!銃撃手!乗り込むボートはメロリンプリンセス号(サンジ命名)銃撃手が不思議な力で作った船だよーっ!」
男が紹介すると周りから歓声とはやし立てる声が響き渡った。
完全に雰囲気は戦いのそれではなくお祭り騒ぎだ。
こんな雰囲気で負ければ仲間を取られるというのは何だか信じられないものがある。
「ウォォーー!あのオレンジの女イカスぜ!」
「おれァ黒髪の姉さんが仲間に欲しいぞ!」
「いやー俺はあの不思議な力の美人がいいな!」
「あの姉ちゃん欲しいー!」
周りが興奮する中、は一人上空を見上げていた。
の見つめる先には超スズメのチュチューンが気持ちよさそうに空を飛ぶ姿。
何とも可愛らしい表情につい見とれてしまう。
「いいな、あの鳥。勝ったらくれるかな」
「どうかしら?船員として数えられているなら可能でしょうけど」
「あんた達はどうしてこう緊張感がないのよ」
沿岸からはルフィやサンジの応援する声が響いてくる。
「さぁ両組スタートラインへ!!」
07.03.21
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