19
ルフィとフォクシーが船内へ消えて、相当な時間が経過していた。
未だ二人は姿を見せない。
時折聞こえる爆発音や何かがぶつかる音などからは、どちらが勝っているのか判断が付かなかった。
麦わらの船員達からも妙な焦りと不安の入り混じった会話が幾度に渡って交わされている。
「負けやしねェよ…」
「そうさ、ルフィだもんな!」
「ルフィで・・
アフロ
だからだ!」
「ルフィだからで充分だろ、あんなクソギツネ」
「何でアフロをパワーアップだと解釈してるの?」
「だけど強そうに見えたわ」
「確かに。だが面白さで言えば負けてるけどな」
「面白さは競ってねぇだろ」
「カニの手みたいじゃないか」
「キツネだろうが」
「とにかくアフロはすごいんだって!!」
敵船の船員達からも
”ゴム人間でアフロだもんなァ”
と言う会話が聞こえた。
どうやらアフロはかなり重要らしい。
はこの世界の常識を知る為にも自分も一度くらいアフロにしてみようかなどとこっそり思っていた。
内容の薄い会話がぽつりぽつりと繰り返し交わされていた時、フィールドになっていた敵船から大きな爆発音が響いた。
「おっと甲板で動きがあったよ!!さァ形勢はどっちだ!?はたまた勝負がついたのかなーー!?」
上空からイトミミズの興奮した声で実況が聞こえてくる。
船上は白い煙に包まれており、観客席からはその様子を窺い知る事は出来ない。
「影が二つ!」
「フェーフェッフェッフェー!!」
「
立っているのはオヤビンだーーー!!
一方麦わらまっ黒コゲ!余程ヘビーなパンチを貰った模様!!」
白い煙が晴れ、船上には若干ボロボロになりながらも両手を天に突き上げているフォクシー。
そしてその足元にはうつぶせになって倒れているルフィの姿が見えた。
その姿に敵船の船員達は盛り上がり、麦わらの船員達は厳しい表情になる。
「ルフィー!!」
「ばかな…」
「どうしてただのパンチでコゲるのよ!!何したの!?」
「いや、まだ大丈夫だ」
「え?」
「見て!」
とロビンの言葉に全員が船上を見る。
ルフィはふらついて荒い息を吐きボロボロになりながらもしっかりと立ち上がっていた。
「立ったー!!麦わらのルフィ!もうノックダウンかと思いきや!立ち上がったよー!!」
イトミミズの声が響き渡ると観客席から怒号にも似た歓声が起こり会場のボルテージが再度上昇した。
全員が声を枯らし自分の船の船長を応援する。
ルフィは何度もビームを受け、フォクシーの激しい殴打をくらった。
しかし、何度打たれようがビームをくらおうがルフィは何度でも立ち上がった。
仲間の顔にも悲痛の色や怒りの色が浮かび、ウソップは体を乗り出して涙ながらに声をあげた。
も厳しい顔をして痛いほどに唇をかみ締める。
誰もが二人の迎える結末に釘付けになっていた。
見ていられないほどにボロボロになってもルフィは諦めずにフラつく体を叱咤して立ち上がる。
その姿に会場中が息をのんだ。
敵船の船員達も驚きに息を潜め背筋を這い上がってくる感情に体を振るわせた。
一際激しい攻撃を受けたルフィは太い柱が折れるほど体を打ちつけ、うつぶせに倒れた。
フォクシーも息を荒く吐き出しており、そろそろ限界のようだった。
しかし、ルフィは立ち上がった。
血を流し、息も絶え絶えな状態でゆっくりとフォクシーを見つめるとルフィは、吼えた。
「…おれの仲間は……誰一人…!!死んでもやらん!!!」
誰もが圧倒されるほどの気迫を見せ大声で吼えたルフィに会場は一瞬シンと静まり返った。
「恐るべき気力で立ち上がった麦わらのルフィ!!倒されても…倒されても立ち上がる!!足元をふらつかせ息も絶え絶えに…!
しかし!まだ目を光らせて彼は立ち上がる!!」
上空で実況をしているイトミミズが涙を流しながら大声で叫んだ。
「仲間の為!!そうだこれが「デービーバックファイト」!!私涙で…涙で前が見えばぜんっ!!」
ルフィの姿に感動した敵船の船員達からも泣き声や叫び声が上がる。
会場は”ルフィコール”一色となった。
あちこちからルフィの名を叫ぶ声が聞こえてくる。
ある者は絶叫し、ある者は涙ながらに、ある者は体を乗り出し、ある者は拳を突き上げルフィの名を呼んだ。
「沸き上がる会場はルフィコール!!かつてこれほどまでにオヤビンを苦しめた敵がいたでしょうか!?」
敵船の船員達から上がるルフィコールに激怒したフォクシーが仲間達を一喝すると会場はオヤビンコールに変わった。
その声に気を取り直したフォクシーが再度ルフィに襲い掛かる。
ビームを浴びてしまったルフィに対し、フォクシーはフォクシーファイターという飛行機のようなものに乗ってルフィへ向かっていく。
フォクシーファイターの速度で勢いに乗ったフォクシーの殴打がルフィに入るとルフィは白目を向いて吹っ飛んだ。
そこへ砲弾を抱えたフォクシーファイターが突っ込み、ルフィを巻き込んで大爆発を起こした。
観客席からもその爆発の規模が分かるほど大きな爆発を見せた船からはもうもうと煙が上がっている。
それでも立ち上がったルフィとフォクシーは最後の応酬とでも言わんばかりの激しい攻防を繰り広げた。
観客席の応援も自然と熱が篭り歓声はどんどん大きくなっていく。
フォクシーがお得意のノロノロビームを繰り出したと思われた瞬間、そのビームの波紋が何故かフォクシーに向かって広がっていった。
会場にいた全員の間に戸惑いが広がる。
「え?」
「何だ?」
「動かない……!!」
「ほぉ、考えたな。さすがだ」
全員が戸惑いを隠せない中、はニヤリと笑った。
ルフィがガクンと床に膝をつく。
「た…!!倒れたのは麦わら……いや違う!!
動いたのが麦わら!!
これは一体どういう事だァ!?」
ビームは確かにフォクシーから放たれ、ルフィがノロくなるはずだった。
しかし、今目の前で実際にノロくなっているのはフォクシー自身だ。
何かに気づいたイトミミズが声を張り上げた。
「鏡!!麦わらの手から鏡の破片が!!」
イトミミズの言うとおりだった。
つまりルフィは偶然アフロに引っかかっていた鏡の破片でフォクシーのノロノロビームを跳ね返したのだ。
結果、フォクシーは自身でかけたノロノロビームのせいでノロくなってしまったと言う訳だった。
フォクシーがノロくなっている間にもルフィは長く伸びた腕をグルグルと回し勢いをつける。
そして渾身の力を込めたルフィの殴打がフォクシーの顔面に直撃した。
「ゴムゴムの……連接鎚矛!!!」
後1話でようやくデービーバックファイトが終わります。
07.03.31
<< Back
TOP
Next >>