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ナミとがメリー号で待つ事数時間。
ウソップ担架に乗せてルフィ達が戻ってきた。
様子からしてフランキー一家を倒してきたはずなのにそれぞれの表情は冴えない。



「ウソップが先程より重症化しているように見えるのだが」
「……一人でフランキー一家に乗り込んだんだ」
「えっ!?そんな…何で」
「――男、だからだろ」

「……それで潰してきたんでしょうね?フランキー一家」
「ああ」
「お金は?2億ベリーは!?」
「ダメだった。もうどっかへ持っていっちまったみてェだ」
「もう戻ってこねェよ、多分な」
「そんなァ……そうだ!!あんた…」
「無理だ」
「まだ何も言ってないじゃない!」
「金を作るのは無理だ。材質がなきゃどうにもならない」



肩を落とすナミを横目には椅子から立ち上がりキッチンの扉に手をかけた。



「どこ行くの?」
「…ロビンが戻ってこないのでそこら辺を見てくる。すぐ戻れる程度の場所にいる」
「そう言えば…ロビンどうしたのかしらね」
「おれも行く」
「あぁん?てめェちゃんと二人っきりで行こうってのか?」
「うるせェ」



サンジとゾロのやり取りも心なしかいつもより覇気がない。
はそれに気づかない振りをして扉を開け外へ出た。
ゾロも頭をかきながらの後ろからゆっくりと歩いてくる。


歩いていける路地を辺りを見渡しながら歩いていくがロビンの姿は見当たらない。
仮面の人物に言われた言葉がの頭を過ぎった。
―だが不確定な事を口に出し少しでも不安を与える事は避けたい。
そう思っての行動だった。

しばらく歩いて船の近くまで戻ってくると今までずっと無言で後ろを歩いていたゾロが口を開いた。



、……おめェあの女の事何か知ってんじゃねェのか?」
「あの女とは?」
「わかってんだろ」
「…ロビンの事か。何も」



は疑わしそうな視線を送ってくるゾロの視線を真っ向から受け止めた。



「私は、情報という物は基本的に本人から聞いた事と信頼できる筋からのものしか信用しない」
「……」
「だが…何か、あったんだろうな。あのしっかり者のロビンが連絡もなく未だ戻ってこないんだ」
「ああ。まだ他のやつらには」
「言ってない。わざわざ無駄に不安にさせる事はないだろう。時間の問題だと思うがな」

「早く、戻ってくるといいな…ロビン」




その時船からチョッパーがこちらに向かって大声で叫ぶ声が聞こえた。
表情が少しだけ明るくなっている所を見るとどうやら何かいい事があったのだろう。


「おーい!ウソップが目を覚ましたぞ!!」
「…わかった。船へ戻ろう」
「ああ」


はもう一度街の方へ振り返った。
やはりこちらに向かってくる人影など見つからない。
不安な気持ちを吐き出すようにため息をつくともゾロの後を追って船へ戻っていった。


とゾロが船に戻ると既にロビン以外の人間はキッチンヘ集まっていた。
全身ボロボロで包帯だらけになったウソップは涙を浮かべて皆に謝罪の言葉を述べる。
その姿は痛々しく、起き上がっているだけでもつらそうだ。



「面目ねェ!!!みんな…!!大事な金をおれは!!!」
「おいおいちょっと待て、落ち着けよ!」
「だけど…!!!おれァせっかく手に入ったとんでもねェ大金をみすみすあいづら゛に゛ィ!!!」
「ウソップ!まだ寝てなきゃダメだ!!!」


チョッパーが慌ててウソップを止め、興奮しきっているウソップを宥めて何とか座らせた。
ウソップは俯いて落ち込んでいたが、他の船員達は皆いつもと変わりない表情を浮かべている。
ウソップを落ち込ませない為なのだろう。
はそんな仲間達を見てほんの少しだけ笑みを取り戻す。


「……じゃあやっぱり金は戻らねェのか…」
「いや、それもフランキーってのが帰って来ねェとわかんねェんだ。もしダメでもまだ1億ベリーもあるんだからいいよ!気にすんなよ!!」

「――まったく無茶しやがる…!!命があったからよかったものの…!!」
「よくないわよ!お金は!!」
「まぁお金は生きている間は自力で稼げるしな。ウソップが無事でよかった」

「……すまねェ……」



ルフィは気にするなと豪快に笑いチョッパーも笑顔を見せ、サンジともウソップの無事を各々なりに喜んだ。
ナミの言葉も冷たく聞こえるがそれがナミなりの表現なのだろう。



「だけど…じゃあ船は…メリー号は1億ありゃ何とか直せるのか!?せっかくこんな一流の造船所で修理できるんだ。
この先の海も渡って行ける様に今まで以上に強い船に…!!!」
「いや、それがウソップ」



「船はよ!乗り換える事にしたんだ!ゴーイングメリー号には世話になったけどこの船での航海はここまでだ!」




ルフィの口から出た言葉にウソップは目を見開きぽかんと口を開けて固まってしまった。
チョッパーはウソップを心配そうに見つめ、とゾロは壁にもたれ掛かりながらウソップの様子を伺っている。
ルフィはカリファに貰ったカタログをパラパラとめくりながら言葉を続けた。


「ほんでな、新しく買える船を調べてたんだけどカタログ見てたらまァ1億あれば中古でも今よりデカイ船が…」
「待てよ待てよ。そんなお前…!!冗談キツイぞバカバカしい…何だやっぱり修理代……足りなくなったって事か!?
おれがあの2億奪られちまったから……!!金が足りなくなったんだろ!!!一流の造船所はやっぱり取る金額も一流で…」
「違うよ、そうじゃねェ!!」



ルフィとのやり取りに業を煮やしたウソップが立ち上がる。
そしてルフィに噛み付くように叫び声を上げた。


「じゃ何だよはっきり言え!!!おれに気ィ使ってんのか」
「使わねェよ!!あの金が奪られた事は関係ねェんだ!!!」
「だったら!何で乗り換えるなんて下らねェ事言うんだ!!!」


ルフィとウソップの言い争いはどんどん激しく勢いを増していく。
今にも掴み掛かりそうな勢いの二人に慌ててサンジとチョッパーが二人に近寄る。
サンジがルフィを押さえ、チョッパーがウソップを押さえたが二人の勢いは止まらなかった。
互いに睨み合い大声を張り上げるルフィとウソップにゾロも険しい顔つきで二人を戒めようと怒鳴り声を上げる。


「おいお前らどなり合ってどうなるんだよ。もっと落ち着いて話をしろよ!」
「落ち着いていられるか!!バカな事言い出しやがって!」
「ちょっと!大事な話なんだからちゃんと順序良く!」
「ルフィも落ち着け!ウソップも!これじゃあ話が進まないだろう!」
「ちゃんとおれだって悩んで決めたんだ!!」
「ウソップ!体にさわるよ!!熱くなったらダメだっ!!」




「メリー号はもう直せねェんだよ!!!!」




拳を握り締め全身を使って叫んだルフィの言葉が響き渡り船内は奇妙な沈黙に包まれる。
ただただ各々の胸にルフィの言葉が痛々しく木霊していった。








07.05.04

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