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船に戻ったを迎えたのは、どことなく殺伐とした雰囲気の船員達だった。
皆違う方向を見て、会話を交わしている者もいない。



ちゃん、おかえり。どうだった?」
「ああ、残念だが見当たらなかった。造船所まで歩いたから恐らく見落としはないはずだが」
「そう…。どこ行っちゃったのかしらね、ロビン」



そこで会話はまた途切れてしまった。
ゾロは座って目を閉じ、サンジはキッチンでタバコをふかしている。
チョッパーは座り込んで医療道具をカチャカチャと動かし、ナミは椅子に座って肘をついて呆けていた。

さすがにこの状況で先程の事を誰かに話す事など出来そうにない。
これからウソップとの決闘が始まるのだ。
この不安定な状態でさらに不安要素が加わればどうなるかくらい直ぐに想像がつく。
黙っておくのが得策だと思いつつも、も表情に陰りが出るのを隠せなかった。


が椅子に座ろうとした時、廊下に繋がる扉がゆっくりと開いた。

現われたのは麦わら帽子を目深に被り、どこか人を寄せ付けない雰囲気をまとったルフィ。
ちらりと覗いた瞳は強い意志の光を宿していた。




「約束の10時だ。ウソップが来るぞ」
「もうそんな時間なの?」
「ああ、そうだな。もう10時だ」

「お前ら船から下りて来るなよ」




ルフィの強い瞳に全員が静かに頷いた。
しっかりとした足取りで船から下りていくルフィの後姿を見守る。
そして前方から人影が、こちらもしっかりとした足取りで船へ向かってくるのが見えた。

その人影はもちろんウソップである。



「来た!!」
「ウソップーーー!!」



数時間で怪我がどうにかなるわけはなく、ウソップの体は遠目から見てもボロボロだった。
全身の包帯が非常に痛々しい。
しっかりとした足取りで歩いてきたウソップは、ルフィの正面で立ち止まった。
二人の距離はまるで現在の心境を語っているかのようにあいている。


静まり返る中、ウソップとルフィが視線を交わした。
二人の間にあるのは決意と自分の心の葛藤。
戸惑いも何もかもを全て押し込めて、二人はギラギラとした視線をぶつけ合った。




「怖気づかずに来たな……どんな目にあっても後悔するな!!お前が望んだ決闘だ!!」
「当たり前だ。殺す気で来いよ。返り討ちにしてやる!!もうお前を倒す算段はつけてきた!!」




「手の内を知らねェ今までの敵と一緒にするなルフィ。おれとお前は長ェ付き合いだ。お前の能力はよく知ってる」




ゾロもサンジもナミもチョッパーもも全員が甲板で二人の決闘を見守る。
ウソップの状態を見たチョッパーは心配で仕方ないと言った様子でゾロに話しかけた。



「止められねェのか!?ウソップひどいケガなんだよ!!」
「見てられねェなら部屋にいろ」



そんなチョッパーの願いも虚しくゾロはチョッパーの一言を一蹴した。
サンジもナミももやはり真剣な表情でルフィとウソップを見つめている。
もう、誰にも止める事など出来る筈がなかった。



「聞いて驚くなよルフィ、おれには8千人の部下がいる!!命が惜しけりゃ今すぐ降参しろォ!!」



「ええー!?8千人も!?」
「それは凄いな。だが会った事ないがどこにいるんだ?」
「お前ら部屋に入ってろ」


「お前にそんな部下はいねェ事くらい知ってる!!」
「ウソーップ呪文!!全ての歯の間にカミソリがはさまった!!」


「ギャー!!」
「うわ、想像するだけで痛いなそれは。何か口の中が気持ち悪い」
までそんな事言わないでよ!!」
「そんな純真なちゃんも素敵だァー!!」
「お前ら部屋に入ってろ」



とチョッパーが青い顔をして騒ぎ立てるのをナミが拳で黙らせる。
真剣なのか真剣ではないのか、甲板の上は妙な雰囲気に包まれていた。



「ゴムゴムの……!!!」




ルフィが攻撃に出ようと腕まくりし力を込めた瞬間、ウソップが口から赤い液体を吐き出して地面に倒れこんだ。
その行動に思わずルフィの動きが止まる。
ウソップを見たナミとチョッパーが慌てて甲板から体を乗り出してウソップに向かって叫び声をあげた。



「ウソップ!!」
「うわーーー!!ほら!!もうやっぱり体がーー!!」
「いや、あれは血じゃないだろうが」



の指摘通りウソップは何事もなかったかのようにしっかりと体を起こし顔をあげた。



「必殺ケチャップ星…何だ!?敵に同情か!?」



ルフィがひるんだ隙にウソップが閃光貝を投げつけ、ルフィの目の前に眩しい光が広がった。
目つぶしをくらったルフィが立ち止っているうちにウソップはパチンコを取り出し何かを投げつける。
ウソップが投げつけたのは、卵。



「必殺卵星!!星!!」


「うわっ!くせェ!!腐ってる!くそっ!!この野郎マジメにやれェ!!」
「ばかばかしいか!?大マジだぞルフィ…!!これがおれの戦闘だ!!ホラそんな大口開けてると火傷すんぞ!!」



そう言うとウソップは大口を開けているルフィに向かって再びパチンコを使い何かを投げつけた。
その小さな何かはルフィの口に見事に入ると途端にルフィの顔面が真っ赤になる。



「必殺タバスコ星」
「辛ェーーーーっ!!」


「のたうち回るのも気をつけろよ。足元は既にまきびし地獄だ!!」
「うわああああ!!痛ェっ!!」



タバスコ星をくらったルフィはあまりの辛さに地面に倒れるが、そこには既にウソップによってまきびしが撒かれていた。
まきびしの鋭い棘がルフィの体を無数に突き刺す。
戦いの様子を見ていたナミとチョッパーはウソップの思わぬ善戦に驚きを隠せない表情をしていた。


「ウソップのペースだ…!!!」



「ルフィ!!お前を倒してメリー号は貰っていく!!どんな手を使ってもな!!!」








07.05.14

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