裏町の宿屋の屋上にそれぞれがバラバラに座っていた。
皆、眠れない夜を過ごし、ほんの少し疲労の色が滲んでいる。
「おはようちゃん」
「ああ、サンジか。おはよう」
「せっかく宿とったのに部屋に誰もいねェ。――みんな揃って眠れてねェんだろ…」
「そうだな。まぁ、仕方ないだろう」
「ルフィは?」
「あそこだ」
が指さした場所は宿屋の屋上の隣の建物。
その上で遠くを見つめているルフィの姿にサンジは小さくため息をついた。
柵に寄りかかるサンジのタバコの煙がゆらゆらと揺れる。
「サンジどこ行ってたんだ?」
「夜中中岩場の岬を見張ってた……。ロビンちゃんが…帰って来やしねェかと思ってよ」
「私も一応メインの通りを見ていたのだがやはり通らなかったな」
「…どこ行ったんだろうな。何も言わずに…」
「おれは今日は町中を探してみようと思う。もし何かあってもこの宿を落ち合い場所にしとこう」
「お…おれも行くぞ!探しに!」
「そうか…よし」
チョッパーもサンジの意見に賛同し、も声をかけようと思った瞬間、ナミが屋上の扉を開けた。
だいぶ慌てているようだ。
走ってきたのか息が上がっている。
「ルフィ!!」
「ナミさん……」
「大変なの!今町中この話で持ちきりで…!!ルフィ…!!」
「昨日の夜、造船所のアイスバーグさんが…!!自宅で撃たれたって!!」
ナミの言葉にとルフィは目を見開いて驚いた。
サンジとチョッパーとゾロはナミの言っている意味がよくわからないようだ。
首をかしげ三人を不思議そうに見つめている。
「アイスのおっさんが…?」
「ええ、撃たれて今意識不明だって…!!」
「何故あの人が…」
「誰だいそりゃ、ナミさん」
「昨日造船所で私達がお世話になった人よ」
「造船会社の社長でウォーターセブンの市長らしい」
「そりゃまたずいぶんと大物が…」
「この都市ではこの上ない大事件よ」
「――あんなにみんなに慕われてるおっさんが…ちょっと行ってみる」
「待ってルフィ!私も行くから」
そう言って建物の屋根から飛び降りて行ってしまったルフィにナミが慌てて声をかけた。
ルフィを追いかけようとナミはの首根っこを掴んで階下へ繋がる扉へと向かって走っていく。
首を絞められた状態でズルズルと引きずられていくの顔がどんどん青ざめていった。
「ナミ…苦しいんだが」
「も一緒に来て頂戴!私一人じゃあいつを止められないし何かあったら…!!」
「わかったから…離してくれ。一緒に行く前に死にそうだ」
「いいから行くわよっ!!」
「ちょっ!!助け……!!」
の訴えを聞いているのかいないのか。
ナミはの首根っこの襟首を掴んだまま足早に屋上から消えていった。
その光景を見ていたサンジもチョッパーもゾロも視線を合わせ黙り込んでいる。
ナミの迫力に負けて口を挿む事が出来なかったのだ。
「んナミさんもちゃんも大丈夫かァ?」
「、窒息死しないかな…」
三人の間に沈黙が走る。
「お、おれ達はじゃあロビンちゃんを探しに行くぞ。お前は?」
「……いや、おれはもう少し……成り行きを見てる…」
何か思案気な顔をしてどっかりと座りこむゾロにサンジもチョッパーも不思議そうな顔を浮かべつつ屋上から出て行った。
その頃、達はブルに乗って水路を走っていた。
ナミが一番前に乗り、真中にルフィ、後ろにが乗っている。
サンジが見たら問答無用でルフィに殴りかかりそうな光景であった。
1番ドックの前は既にかなりの人だかりが出来ていた。
とてもじゃないが中に入れそうにない。
ドックの入口は封鎖されており、ブルに乗ったウォーターセブンの住人が所狭しと水路に並んでいる。
「やっぱり…すごい人だかり…」
「造船所にも入れねェな…」
「ああ、別の入口を探した方が早そうだ」
「どの道もっかい会わなきゃなんねェんだけどな…アイスのおっさんには」
「しかし襲撃されたとなれば怪我の具合によってはすぐには会えない可能性の方が高いぞ」
「ねぇ、すいません。本社の場所わかりますか?」
ナミが傍にいたウォーターセブンの住人らしき男に声をかけた。
男は心配そうな顔をしながらもナミに向き合って答えてくれた。
「ああ無駄だぞ。1番ドックの中から入るんだ。門内には関係者か特定の記者達しか入れねェんだ」
「そうか」
「何とかいち早い情報だけでも聞けねェかとこれだけ人が集まってる。みんな心配でいてもたってもいられねェのさ」
「そうだな。大した事ないといいが、心配だな。すまなかった、ありがとう」
「いや、いいんだよ。心配なのはみんな一緒さ」
の言葉に気を良くしたのか男は照れくさそうに頭をかきながら再び住民達の輪に戻っていく。
あちこちからアイスバーグの名を呼ぶ声や安否を気遣う声が聞こえてくる。
「…すごい人望。近づけそうにないわね」
「ああ、だが何故これほど人望のある人物が…解せないな」
「そのうち新聞ででも安否はわかるわよ」
「無駄足だったかな」
「そうみたいね。仕方ないから戻りましょう」
そう言って達を乗せたブルが引き返そうとした時、どこからかおかしなリズムが聞こえてきた。
場の雰囲気に不似合いなリズムが1番ドック前に響き渡る。
「うわぁ!こ…このリズムは!!」
「まさか!そんなバカな!!」
突然焦りだした住民達に達はただただ疑問符を浮かべた。