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一日で随分様変わりしてしまったウォーターセブンの日が暮れる。
先程放送で幾度もアクアラグナという言葉を耳にした。
どうやら大型の台風のようなものらしい。
風は昼間とは比べ物にならないほど強くなり海はうねりを伴い波を堤防に叩きつけている。
荒れ狂う風と波はまるで今のウォーターセブンのようだった。
達はアイスバーグのいるガレーラカンパニーの本社が見える木の上にいた。
下では船大工達が多数構えて待機しているのが見える。
達を警戒しているのだろう。
だが彼らは本当の敵に気づいていない。
アイスバーグを襲ったのは達ではないという事をまだ彼らは知らないのだ。
「ちょっと遠いぞ」
「腕伸ばして飛んでいけばいいでしょ!騒ぎが起こってからね」
「すごい数の護衛だ…」
「そうだなこっちが先に騒ぎを起こしちゃそれを利用されるだけだ」
「…ん?何してるの?」
「羽を最小限に抑えて飛べるかどうかやってみてた。風があるからうまく利用すれば羽を見せずにいけそうだ」
は上着の中で小さな羽を動かしてみせる。
それは遠くからならまずわからないであろう大きさだった。
確かにこの風を利用すれば一人くらいならその程度の大きさでも充分飛べそうだ。
双眼鏡を持ったチョッパーがあちこちを覗く。
どこを見ても隙間などなく、びっしりと待機する船大工は威圧感を醸し出していた。
「みんな武器持ってて強そうだぞ!!」
「……そりゃそうでしょ。海賊だってねじ伏せちゃうのよ、ここの船大工達は」
「おまけに皆一丸となって我々を捕らえる気だ。チームワークの良さはこちらには不利になるな」
「こりゃあ下手に突っ込んだら大変な事になるぞ!」
「……どの口がそんな事言うのかしら…」
「何か動きがあったらすぐ知らせろよ」
「うんわかった!」
「夜は長ェが気を抜くな…今夜のチャンスを逃したら…何のわけもわからねェままお別れだ。もう二度とロビンを追うアテはねぇと思え…!」
「絶対捕まえてやるさ!」
「ああ、必ず連れ戻す」
チョッパーが再び双眼鏡を覗く。
もその横に立って目を細めて本社前を見つめた。
次の瞬間、ドォン!!と大きな音が響きわたり本社前が爆発した。
数人の船大工が爆風で吹っ飛ばされる。
砲弾が飛んできた感じではない。おそらく最初からセットされていたのだろう。
「うわーー!!爆発したぞ!!」
「…囮だろうな、恐らく」
本社前は既にパニック状態に陥っていた。
怒号や悲鳴があちこちで聞こえる。
沢山の船大工が走り回り本社内でも恐らく同じ事が起こっているだろう。
その時の目がある人物を捕らえた。
「うわぁー…もうだいぶ騒がしいぞ」
「あれ?ルフィは?」
「えっ!!?」
「…っ!?ロビン!!」
「「はっ!?」」
「先に行く!!」
「ちょっと!?ロビンってあんた!?」
「おい待てコラ!ーー!!」
「猛禽類なんだ私は。心配するな」
「意味がわからないわよ!!」
ルフィの姿が消えたかと思えば今度はが意味不明な言葉を残して突然飛び立って行ってしまった。
ゾロとナミの制止も無視しは本社に向かって下りていく。
その後ろ姿を見てナミはガックリと肩を落として溜息をついた。
が木の上から見たのは確かにロビンだったはずだ。
クマの被りものの様な物を被った大柄な人物と一緒にいた。
先程ナミに言った言葉では通じなかっただろうがは元々猛禽類との合成獣。
遠くを見るのも狙った顔を探すのも得意だった。
間違いなく、アレはロビンだったはずだ。
いくら変装していても仲間の顔を間違える筈などない。
上着の下で小さく羽ばたかせた羽で風に乗りながらロビンの居た場所を見る。
そこには既にもうロビンの姿も大柄な人物の姿もなかった。
先程までいたはずの二人は布を広げた瞬間船大工達に銃撃されたがその時には既に消えていたのだ。
上空から見ていたでも何が起こったのかを見極める事は出来なかった。
ロビンが消えてしまった以上正面突破するのは得策ではないと考え直しは本社の裏手側に回った。
恐らくロビンはもう既に本社内にいるはずだ。
早く接触しなくてはいけない。
が本社裏手側の窓に手をかけた時、下から叫び声が聞こえた。
「おい!あそこを見ろ!!あの女朝本社前に麦わらのルフィと一緒にいた奴だ!!」
「撃ち落とせ!!アイスバーグさんを守るんだ!!」
窓枠に足をかけたは慌てて窓を肘で勢いよく突いてガラスを割った。
下にいた船大工が放った弾丸がの頬を掠り血が滲んだが何とか中に侵入する。
だがに安心する間はなかった。
そこでを待ち受けていたのは手に武器を構えた船大工達。
「麦わらの一味だな!!」
「…だとしたらどうする」
「アイスバーグさんを狙う不届き者はおれ達の手で始末する!!」
「物騒だな。本当の敵は私達ではないのに」
弾丸と刃物がを襲う。
正確に放たれた弾丸はの腕を貫通し、投げられた刃物が腹をすり抜けていく。
その光景に船大工達は目を見開いた。
「どこを狙っている?私はここだ」
「…!!いつの間に!?」
呆気に取られる船大工達の背後には侵入する際に負った頬の傷以外無傷のの姿があった。
両腕を組み無表情で佇むの姿に船大工達は得体のしれない恐怖を覚える。
慌ててノコギリを振り落とすがそれもまた空を切った。
「二つ名が夢幻なので幻は得意なんだ」
「悪魔の実の能力者か!?」
「ただの…海賊見習いだ」
再びに向かって弾丸が放たれた瞬間、は両手を合わせると網目の細かいネットの様な物を作りだす。
そして全ての弾丸をそれで回収するとパラリと床に落とした。
時間にしてほんの数秒。
床に落とされた弾丸を見た船大工達の表情は青ざめていった。
「盾だと兆弾の恐れがあるからな。悪いが急いでいるので邪魔をしないで頂きたい」
「何だ…こいつ!!」
「つ…捕まえろ!!」
「おっと、そういう訳には行かないんだ」
弾丸も刃物もダメだと悟った船大工達が一斉にに向かって突進してくる。
はそれを避け船大工達の頭を飛び越えると両手を合わせて床に手をついた。
の手のついた場所は一瞬にして壁を作りだし船大工達との間にそびえ立つ。
壁の向こうから怒号が飛び、ドンドンと叩き壊そうとしている音が聞こえる。
「船大工を攻撃せずにまく、と言うのは難しいものだな」
の目の前には新たな船大工達の姿。
先に飛び出して行ったルフィはどこにいるのか、ロビンはどこにいるのか。
恐らく二人が目指すのはアイスバーグの寝室だろう。
気になるのは仮面の人物が一体何人の組織なのかという事だった。
市長暗殺も自分達に罪が降りかかるのもロビンを逃す事も避けたい。
新たに現れた船大工達の攻撃を上手くかわしながらは先を急ぐ足に力を込めた。
07.06.07
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