18
「ねェ、ロビンの乗った海列車大丈夫?」
「――海列車はギリギリ高潮が来る前に嵐の海域を抜けるだろう…。直撃しなきゃ大抵の大波でも越えていく」
「それはまた凄い技術力だな。海を列車が走るなんて事自体考えられない技術力だというのに」
難を逃れ階段に座り込む達の目下にはバラバラに散らばった柱の残骸が見える。
この嵐では確かにパウリーの言う通り船を出せば転覆は免れないだろう。
基本的に陸を移動するアメストリスとは違いここでは海を超えなければ目的地へたどり着けないのだ。
どうにかならないものかとが口を開きかけた時、後ろから達に声がかかった。
「おい…!ナミとってのはお前達の事か…!?駅前広場にポツンと置き手紙が…!おめーの仲間だろ?」
「手紙って誰から?そんな小さいのよく見つかったわね」
とナミに声をかけてきた男の手には紙が一枚握られていた。
それを受け取り全員で階段を上がっていく。
いつまでもここに座り込んでいるわけにはいかない。
階段を上った達の前に見えたのは、行きには見向きもしなかった建物。
どうやら売店の様でその建物の壁面にどでかい文字がペンキで描かれていた。
「ここにポツンとあったんだ!」
男の指さす壁面には明らかに達に向けたメッセージ。
しかも文面を見るだけで誰が書いたのか丸わかりなものだ。
んナミさーん、ちゅわーんこれよんで!!ナミさんとちゃん以外はよまんでよし、アホだから。
文字の周りにはハートマークが所狭しと散りばめられている。
それを見たは黙りこみ、ナミは壁面を苛立った表情で見つめていた。
「…何が書いてあるんだ?」
「愛しのナミさんとちゃんへ。おれの心は今この荒れ狂う海の様に…」
「そんな部分読まなくていいのよ!!…待って、前半はだいぶ無駄なラブレターだから。本題は…ここね。はい、」
「私が読むのか。追伸…11時発の海列車にロビンちゃんを確認したのでおれも乗り込む事にする」
「え…サンジ君がさっきの列車に!?」
「どうやらウソップとフランキーも一緒らしいが…」
「あ、そうだ!この手紙と一緒に子電伝虫が一匹…」
先程手紙を持ってきてくれた男の手には子電伝虫が一匹。
それをナミが受け取りは再び手紙に目を落とした。
「海列車に一匹くらい電伝虫があるハズだから早めに連絡する。町で手に入れたその子電伝虫を持っていてほしい。そう…その子電伝虫を愛しいおれだと思って…」
「そっか!これに連絡をくれるのね!」
「ではナミが持っていてくれ。…二人でおれを取り合うケンカなんてしないで二人でおれを愛してくれればおれはそれを全力で…」
「もう読まんでよし!!」
放っておくといつまでもこの恥ずかしい文章を音読しそうなから手紙を取り上げるナミに苦笑して両手をあげる。
ようやくナミの表情にも笑顔が戻ってきたのを確認したはほっと溜息を零した。
「じゃそいつはニコ・ロビンの行く手を先読みしていたわけか!スゲーな」
「うん!ひとまずロビンにはサンジ君がついてる!私達も必ずエニエス・ロビーへ!!」
「では、とりあえず我々もルフィとゾロを探そう」
「ええ!戻りましょう!!」
ロビンを追ってエニエス・ロビーに行くにしろ、ルフィ達がいないのでは話にならない。
チョッパーはどちらかだけでも見つけられているのだろうか。
行きと同様ナミと共にヤガラに乗りこんだは辺りを見渡した。
夜のせいだけではない暗雲の立ち込める空と荒れ果てた風と海。
ルフィとゾロが吹っ飛ばされたのは恐らく宿屋の方角だったはずだ。
ゾロはともかくルフィは海に飲み込まれてしまえば助からない。
前方にチョッパーの乗ったヤガラの大群を見つけたとナミはそこで停止しヤガラから路地へ下りた。
やはり未だルフィ達は見つかっていないらしい。
チョッパーに事の顛末を説明し、三人は顔を見合せて頷いた。
「飛んでいった方角に見誤りはないからそこをとにかく探して!みんなもお願い!」
「悪いが頼む」
「野郎共よろしくー!!」
「任せとけ!!」
「ナミ」
「何?」
「この風でも一人ならば飛べる。走ると傷が痛むし空から探した方が早い。私は上から探す」
「わかったわ!頼んだわよ」
ナミとチョッパーと船大工達と別れは途中まで走ると傍に人がいない事を確認して飛び立った。
一々説明している暇などないのだ。
見られて困るものではないし、どちらにしても誰かしらには目撃されるだろう。
だがそれでも自身羽を出す所を誰かに見られるのはあまり気持ちの良いものではなかった。
強風に煽られながらもは上空を飛んでいく。
通常の人間より目がいいとは言えこの荒れ果てた広大な場所からルフィとゾロを見つける事は至難の業だ。
見落としのないように建物の隙間などをくまなく探すがそれらしき姿は見当たらない。
真っ暗な空からぽつりぽつりと雨粒が落ち始める。
雨足はどんどん激しさを増しみるみるうちに豪雨になっていった。
その時、の目にオレンジ色の髪が揺れているのが目に映る。
ナミが物凄い速度で駆けていく姿だった。
もしやルフィ達の姿を見つけたのかと思いが上空から下りていくと、見知った顔が三つ。
シフト駅で出会ったココロとチムニーとうさぎのゴンベであった。
近づいてみればココロの表情は険しく、ナミに向かって叫び声を上げている。
ココロのすぐ後ろに降り立ったは慌ててココロに駆け寄った。
「戻りなァ!!命がいらねェのかい!?
アクア・ラグナが来るよ!!
」
「ココロさん!今のはまさかナミか?」
「あんた!海賊娘の仲間…そうだよ!裏町へ下りちまった!!」
とココロの視線の先には完全に干上がってしまった海と裏町。
そしてどんどん低い場所へ下りていくナミの姿。
はココロの立っていた場所へ立つと勢いよく身を投げ出した。
「…っ!!ナミ!!」
「おめェも!!待ちなァ!!」
「海賊女がもう一人の女を追って飛び降りたー!?」
「トナカイ!!お前まで!!」
「見ろ!!…あの女の背中!!羽が生えてる!?」
後方から船大工達の叫び声が聞こえる。
身を投げ出したの背からふわりと羽が生えの体は一気にナミへと向かう。
ナミは豪雨の中屋根から屋根へと飛び移ってどんどん先へ進んでいった。
「ナミ!!」
「…!!あそこにルフィが!!」
「私が行く。ナミはそこにいろ!!」
走りながらナミが指さす場所には高い建物の間に挟まったルフィの姿があった。
ルフィの姿を確認したが一気に体を上昇させていく。
ナミもまたの言葉を無視し屋根を走り続けた。
だが、ルフィの背が確認出来る距離まできた所でそこから先は屋根が続いておらず、ナミの足が止まる。
視線をルフィに戻せばそこにはがルフィに向かって飛んでいく姿があった。
「ルフィー!!!あんたそこで何やってんのよ!!」
「ナミ!?うひろいんのか!?いやーおい聞いてくれよしかしー!あのハトの奴に飛ばされてよー!ほのまま飛んれコレがうめーコトにここに…!!」
いつも通りの明るいルフィの声が響いたがそれはすぐにナミの声でかき消された。
唇を噛みしめ大粒の涙をボロボロと零し始めたナミの姿にの動きが一瞬止まる。
豪雨の中、ナミの叫びが裏町に響いた。
「フザケてんじゃないわよこんな大事な時に!!あんたがグズグズしてる間にロビンが連れてかれちゃったじゃないっ!!
ロビンは私達の為に…死ぬつもりなのよ!!」
「自分一人犠牲になってロビンは!!私達を政府の攻撃から守ってくれたの!連行されれば殺される事もわかってるのに!!」
「じゃあやっぱりロビンは…ウソついてたのか!!」
「うん」
「……よかった!!安心しろ…!ロビンは死なせねェ!!」
強風に煽られていたがルフィの挟まれている建物までたどり着いた。
必死に羽ばたきながらルフィの手をぎゅっと握って引っ張る。
「ルフィ!!思い切り引っ張るから自力で建物を壊して出ろ!!そのまま飛んでナミを連れて逃げる!!」
「ああ!」
とルフィの目前には首が痛くなるほど見上げなければ先が見えないほどの大波が押し寄せて来ていた。
波が迫りくる激しい音が耳に響く。
高台から船大工やココロ達が達に向かって叫び声をあげているのが聞こえた。
裏町全てを飲み込んでもまだ足りなそうな程巨大な波。
もうダメかと思いかけた時、ルフィの挟まっていた建物に亀裂が走り一気に崩れ落ちた。
の腕に確かな重みを感じた瞬間、の体は一気にルフィへと引き寄せられた。
「行くぞナミ!!ー!!」
ルフィの伸ばした片腕は一際高い塔を掴み、もう片方の腕でと屋根の上に居たナミを抱いて宙を浮く。
そしてそのまま勢いで大波から逃れ大橋へと飛び移る。
が顔をあげるとそこにはゾロとチョッパーの姿が確認できた。
が、安堵した瞬間達は予想以上の激しさの大波に飲みこまれ姿を消した。
「麦わら達が!!アクア・ラグナにのまれたァ!!」
07.06.26
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