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ココロに案内され達がやってきたのはゴミ処理場裏レンガ倉庫という場所だった。
ナミは何か用事があるらしく先へ行っていてくれと言われここにナミの姿はない。
ナンバーのふられた建物は皆古そうで手入れをされていない事が一目でわかる。
苔が生えさびれた倉庫の一角であるNO,2とかかれた扉を開けココロの案内で中へ入っていく。
少々カビ臭いが古いというだけで中は外観ほどさびれてはいなかった。


「この倉庫も8年は放置されてる。海列車に至っちゃ12年以上手つかずら。もう動かねェかも知れねェな!んががが!」
「おいそれじゃ困るぞ!」
「正面の扉にも鍵がかかって…ん?何ら?開いてるねェ」


ココロの言う通り正面の扉は半開き状態で明かりが漏れていた。
ルフィとチョッパーは待ちきれないといった様子でココロの前を走っていく。
とゾロはココロの後をゆっくりとついていった。
扉を抜け達の目に飛び込んできた光景はまさに圧巻のものだった。


「うおー!!あった!かっこいいぞー!!」
「言っとくがマトモなもんじゃねェぞ。こいつの名はロケットマン。とても客など乗せられねェ暴走海列車ら」
「暴走海列車!?」
「サメのヘッドは洒落でつけてあんらがね」
「速そーー!!」


先端部分は確かにサメの頭にもロケットにも見える形状だ。
大きな煙突がつけられており、後方部分には幾つかの車両も見える。
ルフィとチョッパーは目を輝かせ、もまた初めての物を見る目が若干輝いていた。
達がロケットマンを眺めていると扉を閉める音が響き、ロケットマンからアイスバーグが下りてくる。
ルフィがいち早くアイスバーグに気づき、アイスバーグもまた達に気づいて顔を上げた。


「あれ?アイスのおっさん!!」
「麦わら…よく無事だったな…海賊娘達の言った通りだ…ココロさんが連れてきたのか」
「命はあったようらねアイスバーグ。おめーここれ何してんらい?」
「……ここにいるって事はあんたと同じ事を考えてたのさ。――バカは放っとけねェもんだ。使え。整備は済んだ…水も石炭も積んで今蒸気をためてる」
「おっさん準備しててくれたのかー」
「喜ぶのは生きてられてからにしろ。このロケットマンはパッフィング・トム完成以前の失敗作だ。どう調整しても蒸気機関がスピードを抑えられず暴走するんだ。命の保障などできねェ」
「ああ!!ありがとうアイスのおっさん!」


どうやらアイスバーグはココロと達の行動を先読みしロケットマンを使うだろうと予測を立て準備をしておいてくれたらしかった。
木箱の上に腰をおろしたアイスバーグの表情には幾らか疲労の色が滲んでいる。
あの怪我を負いながらも一人で準備をしてくれたアイスバーグにも礼の言葉を述べた。
彼らの手助けがなければロビンを追う事など不可能だっただろう。
つくづくこの世界の住人達は人が好いと実感する。
勿論ルフィ達の人柄もあるだろうがこの状況でも希望を捨てない彼らには心底頼もしさを感じた。


「よーし!!行くぞお前ら乗れー!!」
「ばーさんナミが来たらすぐ出してくれ!!……ん…おっと」


勢いよくロケットマンに乗り込もうとした足がもつれ、膝を折って地面に座り込むルフィ。
その様子を見ていたチョッパーが心配そうな表情を浮かべた。


「ルフィ大丈夫か!?さっきから足元ふらふらしてるぞ」
「血を流しすぎたんだろ」
「あァちょっとうまく力が出ねェ…肉でもあれば」
も顔色悪いぞ平気か?」
「ああ、私は大丈夫だ。ルフィと同じで血を流し過ぎただけだから」


実際の顔色も青白くとてもではないが状態が良いとは言えないものだった。
傷自体は塞いでしまったから良いもののやはり貧血状態はどうにもならない。
何か血を補えるものがなかったかとが胸ポケットから小瓶をあさっていた時、正面の扉が開きナミの姿が見えた。
駅で見かけた駅員が二人何か大きな荷物をリヤカーに乗せてナミの後ろを追ってきている。


「ごめん遅くなった!!」
「ナミ!!おい何やってんだお前!!早く乗れバカヤロー!!」
「わっ!すごいこれも海列車!?」
「どこ行ってたんだ!時間がねェつったの誰だよ!!その荷物何だ」
「肉とお酒」
文句言ってごめんなさい!!も食え!」
「ああ、そうする」


駅員達がリヤカーに乗せて持ってきてくれたものは大量の肉と酒だった。
嬉々とした表情で酒を抱えるゾロと物凄い勢いで肉を平らげていくルフィ。
もルフィに手渡された骨付きの肉を頬張りようやく生気が戻ってくるのを感じた。
ナミと駅員達に礼を告げながらはルフィの肩を叩く。
口いっぱいに肉を頬張りながらルフィはもう一つ骨付きの肉をに差し出したがは首を振って否定した。
別に肉が欲しかった訳ではないのだ。


「ルフィ」
「ん?何だ
「食べながらでいいから聞いてくれ。私は皆より一歩先にこの島を出ようと思う」
「出るって
「飛んでいく。向こうはサンジ達三人だ。私だけでも先に行けば多少は役に立てるだろう」


の言葉にチョッパーとナミは心配そうな表情を浮かべ、ゾロもまた何かを考えているような表情を浮かべた。
ルフィは肉を頬張ったままの目をじっと見つめている。
一瞬の沈黙の後、口の中の物を全て飲みこんだルフィが真剣な表情で口を開いた。


「…わかった。けどあんまり無茶すんなよ!…後」
「何だ?」
はおれの仲間なんだから…変な事考えんなよ」
「…了解した。心得ておく」


普段のルフィからは想像出来ないほど真剣な表情で告げられた言葉には笑みを浮かべて頷いた。
やはり彼は船長なのだ。
そして自分はその船に乗る仲間なのだと言葉にされた事がにとって嬉しくもあり心に何か温かいものを感じた。
再び笑顔で肉を食べ始めたルフィを見て、は小さく微笑みながら心配そうに見つめるナミとチョッパーに向き合った。


「そういう訳で先に行く」
「気をつけてよ!!」
「わかっている。運は意外といい方なん……」

「麦わらァーーー!!」


突然の言葉を遮って叫び声が響いた。
何事かと全員が扉の方へ振り返るとそこにはフランキー一家の姿。
全員ボロボロの格好になっている所を見ればルフィ達にこっぴどくやられたのだという事がわかる。
このタイミングで仕返しかと達は一同に表情を硬くした。
邪魔をされるのなら戦うしかない。
そう思った達が構えようとした瞬間、叫び声をあげた男の目からは唐突に大量の涙が溢れ出す。
呆気に取られた達の前で男は再び口を開き叫び声をあげた。


頼む!!おれ達も連れてってくれェ!!エニエス・ロビーへ行くってガレーラの奴らに聞いた!!アニキが政府に連行されちまったんだ!!追いかけてェけど…アクア・ラグナを越えられねェ!!」

「相手は世界政府らよ」
「誰だろうと構うかァ!!アニキを取り返すんだ!!」
「あたしらアニキの為なら命だって惜しくないわいな!!」


フランキー一家の全員が口々に叫び涙を流し訴える。
だが、彼らが達にしてきた事を考えればそれは虫のいい話でしかない。
当然のごとくナミが抗議の声をあげた。


「冗談じゃないわ!!あんた達が今まで私達に何をしたかわかってんの!?」
「恥をしのんで頼んでる!!アニキを助けてェんだ!!」


ナミの言葉に男は涙を流しながら土下座して一歩も引かない。
これには達も全員戸惑いの表情を浮かべた。
彼らの気持ちはわからないでもない。
だが最終的に決めるのは船長のルフィだろうとが振り返ればルフィは頷いて口を開いた。


「乗れ!!急げ!!」
「……!!麦わらァ!!」
「ちょっとルフィ!!」
「ま、いいよ」


「すまねェっ!!恩にきる!!」


快諾したルフィに男は床に頭を打ちつけるほど礼を言い準備の為全員を引き連れ駆け出していく。
ニっと笑うルフィにナミが若干不愉快そうに怒るがそれでも心底怒っているわけではなさそうだ。
そんなルフィ達を見つめながらは腕をぐるんぐるんと回す。
体の方は大丈夫そうだと確認し、背中に力を入れ羽を出すとルフィ達の前に立って二、三度羽を動かした。


「では私は先に行く」
「あァ気をつけろよ!!」


頷き微笑んだまま一足先に飛び立っていったを見送り全員がロケットマンへ乗り込む。


「さァ海賊共振り落とされんじゃらいよ!!ウォーターセブン発エニエス・ロビー行き暴走海列車ロケットマン!!」
「よし出航!!行くぞォ!!全部奪い返しに!!」








07.07.02

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