6




フランキーが自らを犠牲にし車両を引き離した。
少しずつ離れていく車両にロビンが慌てて声を荒げる。

「何て事を…待って!!私は逃げたりしないわ!!」
「待てよロビンちゃん!!この期に及んで何だってんだよ!!オレ達ァ全ての事情も知って助けに来たんだぞ!!」
「政府のバスターコールと言う攻撃さえ何とかすればロビンがあいつらに従う必要はないのだろう?」


とサンジの言葉にもロビンの顔色は決して良くはならなかった。
バスターコールの持つ恐ろしさをもサンジも知らない。
だが、ロビンがここまでこだわるという事は最悪のモノを簡単に想像させる。
も世界が違うと言えど元は軍人だ。
軍の持つ威力の大きさはこの身でしっかりと実感している。
…もしもがこの世界に来ていなければはロビンの様な人物を追い詰める側だったはずだ。
そして恐らくバスターコールと同様な攻撃の指揮を執る側の人間だったはずだ。
それらを加味して考えればロビンの行動は尤もだと言えるだろう。
彼女は、自分達の為に犠牲になろうとしているのだ。

そんな事、許せる筈がない。
もう二度と大切な人を失うわけにはいかないのだ。

が叫び声をあげるロビンの肩を掴むとロビンの肩が小さく震えたのがわかった。
その震えはまるでへの訴えの様だった。
決意を、揺るがせないでくれ、とでもいうような。


「例えロビンが我々を救ったとして、残されたものの…苦しみはどうなる」
…」
「私は、誰か大切な人が犠牲になって守られるより共に戦う方がいい。…自分が死んだ方がマシだという思いを何度もしてきた」
「……」
「ロビンが我々を思ってくれているようにロビンの事を思っている人間の気持ちを、ロビンはどうするんだ」


の言葉にロビンの目が大きく見開かれた。
その瞳は戸惑いに揺れ、うっすらと涙が溜められている。
瞬きもせずじっと見つめ合うとロビンの間には様々な思いが込められていた。
互いに辿ってきた道の重さをその一瞬で知る事が出来たような感覚に陥る。


「そうだぜロビンちゃん。ちゃんの言う通りだ」
「ああ!バスターコールなんてこのそげキングに任せておけば…」
「そのバスターコールが問題なんだ」


そげキングの言葉を遮って、突如車両内に声が響いた。


「え…」


達の目が異質な光景を捉える。
サンジの後ろにはいつの間にかブルーノの姿があった。
それだけではない。
異質なのはブルーノが現われたその状態だった。
何もない所にドアのようなものを作りだし現われたのだ。
その不可思議な光景にサンジの対応が遅れ、サンジはブルーノの放った鎌風のようなもので吹っ飛んだ。


「サンジィ!!…な、何だあいつ何もねェ所から現れた!!」


そげキングの声が響いた時、ブルーノの背にひやりと冷たい汗が流れる。
間近で感じる強すぎるほどの殺気。
サンジを吹っ飛ばしたブルーノが視線を下に移すとそこには首元にナイフを突き付けるの姿があった。
視線は凍てつくように冷たく鋭い。


「一度死んでみるか?」
「何を…」
「私をずっとつけてたのはお前だな。邪魔をするのなら…手加減はしない」
「やめて!!」


ロビンの声が響くもはブルーノの首筋にナイフを突き立てたまま視線を外さなかった。
動けばすぐに喉元から全てを切り裂ける状態だ。
の纏う空気には戸惑いも迷いも一切感じられない。

ブルーノの指が動いた瞬間、は宙を舞った。
確実にの心臓を狙ってきた指をかわしたのナイフがブルーノの鎖骨部分を切り裂く。
その威力にブルーノは驚きを隠せずを見つめた。


「…鉄のように硬いこの体に傷をつけるとは」
「硬いものの扱いには慣れてるんだ」
「ではこうしよう」


ブルーノが消えたと思った次の瞬間、今度はそげキングに向かってブルーノが攻撃を開始した。
そげキングはブルーノの指で正面から突かれ、血を流しながらばたりとうつぶせに倒れる。
そげキングに駆け寄ろうとしたがハッと気づいた時には既にブルーノの腕の中にロビンの姿があった。


「仲間を攻撃され隙をつかれるとはな。ニコ・ロビンを盾にすれば貴様も手を出す訳にはいくまい」
「…無粋な真似を」
「おいクソ野郎、ロビンちゃんを放しやがれ!!」


ブルーノの前には締め上げられたロビンの姿。
それを見ては小さく舌打ちをした。
攻撃する方法があるにはある。
だがそれをやってしまえば恐らくブルーノ以外の誰かも共に傷つけてしまうかもしれない。
イチかバチか。
はブルーノを睨みつけたまま右腰に携帯している銃を手に取った。


「ニコ・ロビンに貫通させて攻撃する気か?」
「まさか。だが私は銃の扱いが苦手なんだ。急所以外当てる事が出来ない」


が銃をかまえた瞬間、捕らえられていたロビンが大声をあげた。


「やめて私は逃げる気はないわ!それでいい筈よ!!」
「向こうからかかって来るんだ。仕方ない」
「…じゃあ早くここを離れましょう」
「ロビン!!」
「待て!!」


そげキングの声が響く。
ブルーノに攻撃され血を流し荒い息を吐きながらも喋る姿にも銃をかまえたまま立ち止まった。
ロビンもまた、背を向けたままだったが足を止めている。


「…大丈夫だ…!!ロビンお前…大丈夫だぞ」
「ウソップ…」
「お前まだ何か隠してんな…!別に…それはいい。…ただし海賊は…船長の許可なく一味を抜ける事は出来ない…だからお前…」

「ルフィを信じろ!!」


そげキングの言葉にロビンの瞳がぐらりと揺れた。
その瞬間、ブルーノの蹴りがそげキングを吹っ飛ばす。
だが同時にも構えていた銃をブルーノに向かって放ち、場は一時騒然とした。

血を流し吹っ飛んだそげキング。
硝煙の匂いの中ほんの少し震えている
眉間から少しだけ血を流しているブルーノ。

そして、既に姿を消してしまったロビン。


「ロビンちゃん!!」
「無駄だ。ニコ・ロビンは協定を破らない」
「…何でそう言える!!」


「――その昔発動された政府のバスターコールによってある島が焼き尽くされ跡形もなく滅びる事件が起きた。 その時のたった一人の生き残りがまだ幼い日のニコ・ロビンだ
「何だと…!?」
「――つまりバスターコールとはあの女にとって拭いきれない悪夢。幼い頃植えつけられた恐怖の記憶そのものが仲間達に向けられていては ――もはや我々に逆らう気力も失せる」
「まさか…それ全部知ってて…」
「当然だ」

「どこまで腐ってんだてめェらはァ!!」


サンジの怒号が車両内に響き渡る。
はただ淡々とそげキングの応急処置を続けていた。
その右手は、そげキングのものではない血で濡れている。


「全ては正義の為。あの女には深く同情している」
「ふざけんなァ!!」


立ち上がったサンジがドアを蹴りあげるが、蹴りが入る直前にドアは無の空間へ消えてしまった。
サンジの蹴り上げた足が虚しく空を切る。


「畜生ォー!!」


膝をつき雄たけびを上げるサンジの声は、表現しがたいほどの怒りがにじみ出ていた。








07.08.03

  << Back   TOP   Next>>